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イランの核が真の問題なのか?

5月28日

イランの核問題をめぐる国連安全保障理事会とドイツによる六カ国の外相会議が来週末、欧州で開かれることとなったようです。外相会議では、ウラン濃縮活動の停止を求めているイランに提示する予定の「見返り」と「制裁」の双方を含む包括提案を最終協議する予定のようです。ただ、中国とロシアは「制裁」に慎重な立場であり、隔たりが埋まるかどうかは不透明な状況であり、包括提案に対する合意が六カ国で得られたとしても、イランは「見返り」案そのものに反発しており、調整は難航が避けられないと、日本経済新聞(5月28日夕刊)は報じています。

一方、イランのザリフ国連大使は5月26日、核開発のための国際事業体を設立する構想を提唱し、米国を含めた主要国に検討を求めたとのことです。イラン単独で行う活動については濃縮レベルに上限を設定し、核兵器開発につながらない8%以下の低濃縮ウラン製造に限定する用意があるとの新たな妥協案です。国際事業体に濃縮を委託することで核開発の透明性を確保しながら、一定の枠内で濃縮を継続するのがイラン側の狙いと見られるが、イランの濃縮技術開発取得に反対する米国の反発は必至だろうと、日本経済新聞(同上)は報じています。

いずれにしても、これら関係当事国の問題打開のための努力が実を結び、事態が平穏に解決されることを望んでいますが、当ブログではこれまで、アメリカがEU3(英、独、仏)を交渉の前面に立て、イランとの直接対話を避けていることに対して批判が出ており、直接対話を求める声が出ていることを指摘してきました。そして、前回は、直接対話を避けるべきだという、ネオコンと目されるデビッド・フラムの主張を紹介しました。

この直接対話を求める声はますます強くなっていますが、ブッシュ政権内部でもこれまでのイランとの直接協議をタブー視する政策を一時棚上げすべきかどうかについての論議が行われたと、ニューヨークタイムズ(5月27日電子版Steven・R・Weismanの記事)は報じています。

同記事によれば、ヨーロッパの指導者たちは、制裁をめぐっての争いや軍事行動という結果に陥ることになりかねない対立を回避することを目的にアメリカが一層の努力をしたことを示すためにも、イランとの協議にアメリカが参加することを望んでいるとのことです。

ライス国務長官はこの問題を国務省内の側近上層部と協議をしたが、最終的には政権の国家安全保障担当者によって取り組まれるべき問題だと感じているようだと、ヨーロッパのこの問題を担当している高官は述べたとのことです。

しかし、ライス国務長官をよく知っている他の関係者は、対話をする意欲があることを示すシグナルを送ることは弱さを見せ、ヨーロッパが行っている微妙な交渉に悪影響を与えることになるだろうという根拠で、ライスが直接交渉に抵抗している、また、ブッシュ政権がイランに対して最終的に譲歩しすぎることになることをライスは恐れていると述べたとのことです。

政権内では、ブッシュ大統領、副大統領ディック・チェイニー、国防長官ドナルド・ラムズフェルドが非公式な裏ルートを通してであっても直接対話に反対している。したがって、すぐに対話を行うという決定がなされる可能性は低い。政権高官はニューヨークタイムズにそう伝えたとのことです。

米国国内では、ヘンリー・キッシンジャー、外交評議会会長でパウエル前国務長官のトップ補佐官であったリチャード・ハースやパウエルの下で国務副長官を務めたリチャード・アーミテージなども最近直接対話を提唱しています。また、ライスにイランとの直接交渉を促したヨーロッパの外交当局者はドイツのシュタインマイアー外相、ソラナEU共通外交・安全保障上級代表などであり、ドイツのメルケル首相はブッシュに問題提起をしていると、同紙は伝えています。

同記事によれば、アメリカとイランとの直接対話に関する議論は現在協議されているイランに対する包括提案には含まれていないが、イランとの交渉をめぐる雰囲気を改善する一つの方法となるだろうと、ヨーロッパの担当者は述べたとのことです。また、他のヨーロッパの担当者も、直接対話が実現することをヨーロッパは熱望しているが、当面は何も起こらないだろうといっているとのことです。

こうしてみると、ブッシュ政権は本当にイランの核問題の外交的解決を欲しているのだろうかという疑問が生まれてきます。時間が経過し、手詰まりとなって直接交渉に乗り出すということになればよいのですが、圧力一辺倒というブッシュ政権の真の意図がイランの核問題の解決にではなく、ネオコンの主張するように政権転覆にあるとすれば、なぜブッシュ政権が直接交渉に関心をもっていないのかということは容易に納得できてしまうのですが、果たして、真相はどうなのでしょうか?

 インター・プレス・サービスIPSのガレット・ポーター*は、「イランの核は真の争点ではない」と題する記事を5月12日のアジア・タイムズに掲載しています。

5月3日付の当ブログ「イランとの直接対話の可能性」でも触れましたように、イラン指導部は2003年に、イラクのフセインを追放した後のブッシュ政権がイランを攻撃すると確信し、アメリカとの間にある諸懸案(核開発問題、ヒズボラその他の反イスラエル武装集団に対する支持問題及びイスラエルの存続問題)をめぐってブッシュ政権に交渉を申し入れています。

イランはその申し入れにおいて、それらの問題に対して具体的かつ大幅な譲歩を提案しました。しかし、ブッシュ大統領は、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官のアドバイスを受け、提案に応じることを拒否しています。ポーターは、したがって、核兵器の問題は米国にとっての主たる懸念の原因ではなく、イスラム共和国の正統性を否定することのほうがブッシュ政権内の優先度の高い関心事だったのだろうと指摘しています。

ポーターは、ブッシュ政権がイランの核問題をこれほどまでに危機的な状況にまで推進している真の狙いを考えるに当たって、ネオコンのシンクタンク・タンクであるアメリカン・エンタープライズ・インスティチュートのトム・ドネリーに注目する必要があるとし指摘しています。

ドネリーは、ブッシュが大統領選挙当選後にチェイニーとラムズフェルドのために「アメリカ防衛の再構築"Rebuilding America's Defenses"」という論文の執筆に、ブッシュ政権において後に要職を得ているステファン・カンボン(国防総省情報次官補、ルイス・リビー(チェイニー副大統領首席補佐官、現在起訴されている)、ポール・ウオルフォウイッツ(国防副長官、現在世界銀行総裁)らとともに参加した人物です。

ポーターによれば、昨年12月に出版した「核武装の準備が整ったイランに対処する“Getting Ready for a Nuclear-Ready Iran”」という自著において、イランが核大国になることに対して異議を申したてる真の目的は、イランの核大国化がブッシュ政権の「中東変革プロジェクト」とドネリーが呼ぶ中東における米国のより壮大な大望の実現を妨げることとなるからだと、ドネリーは明らかにしているとのことです。

ドネリーは、イランが核兵器を使用するあるいはテロリストグループに引き渡すからという理由で「核保有国イラン」が問題なのではなく、「核保有国イラン」が米国の大中東戦略に対する障害となるから問題なのだといっていると、ポーターは指摘しています。

そして、ドネリーは、ブッシュ政権の視点にとって重要なことは、イランイスラム共和国を打ち倒すことが中東における権力ヒエラルキーを米国にとってさらに有利なように再秩序化する機会を提供していることだと主張しているとのことです。

一方、ポーターは、2003年時のアメリカによる対話の拒否は、米国との問題は、イランの政策にあるのではなく、イランの力にあるのだろうという疑念をイラン国民の間に広めたという専門家の指摘を引用し、イラン側のその結論は奇しくもブッシュ政権の目的についてのドネリーの分析と類似していると述べています。

イラン人が本当に望んでいるものは、核兵器ではなく、ペルシャ湾岸地域の権力ヒエラルキーにおけるイランの正当な地位の認知であり、イランの同地域での地位に関する要望は米国との広範な外交的合意によってのみ達成することができるだろう。また、中東における米国の優位性を一層拡大するというブッシュ政権の主張は力による脅し、あるいは脅しに失敗した場合の戦争によってのみ達成できる代物でしかないのでしかないのだろう。イランの外交政策専門家であるジョン・ホプキンス大学のトウリタ・パーシーやブルッキングス研究所のナジメ・ボゾルグメールなどの発言を引用しつつ、ポーターはそう指摘しています。

以上のようなことを踏まえると、一層強くなる直接対話への要望があっても、ライス国務長官は自らのイニシャチブを発揮して、そのような動きを主導することはできないだろうと思われます。ライス国務長官は、本来的に現実主義者といわれ、ネオコンではないとはいわれています。しかし、先に紹介したニューヨークタイムズの記事が報じたように、ブッシュ政権内では、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官の意見に最終的に影響されている可能性があります。そして、その背景にはドネリーのようなネオコンによる「中東変革プロジェクト」すなわちイランイスラム共和国打倒という目標がある。それがこの問題におけるアメリカのかたくな強硬姿勢の原因ではないのだろうか。それが思い違いであってくれればよいと思いますが・・・・

アメリカがイランとの直接対話を避ける理由                      5月17日

英仏独のいわゆるEU3は、イランに対し、イランがウラン濃縮活動を停止することと見返りに軽水炉の建設を支援するという提案を行う方針を固め、金曜日の国連安全保障理事会の常任理事国と独による6カ国会合で協議することになったようです。
 
 EU3は軽水炉技術の提供の提案を2005年にも行っていますが、イランは当時これを断わりました。今回は、アメリカが同案を支持しているため、EU3内容には自信があるとのことですが、イランがこれを受け入れることについては懐疑的であるとのことです。むしろ、ロシアと中国に対して、西側はイランの民生用核エネルギーを開発する権利を奪おうとはしていないということを示す狙いがあるようです。イランがもしこの提案を拒否した場合には、イランは核開発を平和利用目的だけで行っているのではないということの確認となるという立場のようです。

 現実には、ヨーロッパ製の原子炉は現在建設中の10億ドルのロシア製プラントよりもはるかに高価であり、イランが拒否するため、実際には建設されることはないだろうと、あるEU外交官は語ったと、ロイターは伝えています。

 アメリカの国連大使ボルトンは、「原子炉に関するアイデアにはノーコメントだが、提案には“あめ”だけでなく“むち”も含めるべきだ」という立場。その結果かどうか不明ですが、EU3は“むち”として、イラン政府高官の旅行禁止、外交関係の打ち切り、貿易制限及びイラン企業・政府職員の海外資産の凍結などの制裁措置も考慮中とのことです。

しかし、ロシアと中国は、イランに制裁を科す決議には反対することとなることは明らかであり、金曜日の六カ国協議がどのような成果を生み出せるのか、大いに気になるところです。

ところで、イランのアフマディネジャド大統領がブッシュ大統領に18頁に及ぶ書簡を送り、米国とイランの直接対話への一歩となるかという期待感が一時ありましたが、結局、ブッシュ政権はこれを無視しました。

デビッド・フラムが、「アフマディネジャドを無視しろ」というタイトルの論説をカナダの“ナショナル・ポスト”に掲載しており、アメリカが直接交渉をすべきでないという理由を書いています。(デビット・フラムはブッシュ大統領のスピーチライターを務め、一般教書演説にあの“悪の枢軸”という言葉を使ったことで有名なネオコンの一人)

フラムは、なぜ直接交渉ではないのか?そう設問し、以下の6点をその理由だとしています。

・ 米国がイランとの直接交渉からまだ知らないことを新たに知ることとなるものは何もない。2003年10月から英・仏・独の3国がイランと直接交渉を行っている。米国はいわゆるEU3がアメリカに代わって発言していることを繰り返し公に認めている。EU3はイランのすべての要求を米国に伝えてきている。世界がイランの核開発プログラムをめぐる危機に向かっているとしても、それはイランの要望についての情報に不足しているからではない。

・ イランの交渉には誠意がない。先ごろ、あるEU3の上級レベルの交渉者と話をする機会があった。彼によると、激しい交渉の後、翌朝の再開に備えて間違いのないよう、彼はイラン側の相手方に議事録に署名するよう求めた。イラン人は署名をしたが、その翌朝、そのイラン人は議事録に間違いがあり、署名は偽物だと非難したとのことだ。

・ イラン人にとって、交渉の主目的は時間稼ぎにある。彼らは、ブッシュの後継者がクリントン時代のイスラム教指導者に対する同調的な政策に戻るだろうということを信じ、ブッシュ政権が任期切れとなることを望んでいる。もし、米国がEU3と交代するなら、交渉をゼロからはじめなければならず、イランはリスクなしで3年間の核開発を行ったこととなってしまうというリスクがある。

・ 直接交渉に応じることはイランのプロパガンダを勝利させることとなる。イランとの交渉において、もし米国がEU3と交代した場合、イラン対世界という対立はイラン対米国という対立に転じ、イランは自らを米国といういじめっ子の犠牲になっているとイスラム世界(実際には各地の急進的な反アメリカ勢力)に訴えかけるだろう。

・ 特に、現在、米国はイランと直接対話すべきだという声を多く聞くことの理由は、まさにEU3とイランとの協議が失敗したからに他ならないということを念頭に置くべき。イランは核兵器開発の前進を再開している(一時中止していたと仮定してではあるが)。現在は、イランとイランがその地域と世界に与えている脅威とに注目をすべきである。米国を関心の対象にすることは、実際にはイランが原因となっている脅威からアメリカは強硬すぎるなどという主張に話をそらすこととなり、アメリカに批判的な人々は、真の悪人からアメリカに非難を向けることを次に考えるだろう。

そして、デビッド・フラムは、次のように結んでいます。「現在のイラン政府は核兵器を欲しがっている。決してその考えを変えるよう誘導することはできない。現在世界に突きつけられている質問は、イランは武力抜きの何らかの手段でその行動を強制できるだろうか?ということだ。ひとつだけそれをはっきりさせる方法がある。それは対話によってではない」

ブッシュ大統領のスピーチライターを務めたフラムが現在、ブッシュ政権のイラン政策を100%代弁しているかどうかは必ずしも断定できません。しかし、フラムは現在、ディック・チェイニーをブッシュ政権の副大統領として送り込んだ“アメリカン・エンタープライズ・インスティチュート(AEI)の研究員であり、ブッシュ政権のインサイダー情報を入手できる立場にあると考えられます。フラムの意見はある程度ブッシュ政権の意見を反映したものとすると、以上に述べられた理由を皆さんはどのようにお考えでしょうか?ブッシュ政権によるイランとの直接対話の拒否の理由は納得のいくものなのでしょうか?

イランの内部事情

イランの内部事情について

                                           5月13日

イランの核開発問題をめぐっては、来週18日の6カ国局長級協議をめどに、イギリス、フランス及びドイツの3ヵ国がイランに対する提案内容の取りまとめに入っています。その内容は、イランが国連の要求を受け入れ、ウラン濃縮の停止を断念した場合の見返りとなるとのことです。厳しい内容のままでは、ロシア・中国による反対があるため、合意を得られる可能性はなく、どのような内容にするか苦労しているようです。

一方で、イラン側の態度は、ウラン濃縮は研究・開発レベルも含め、基本的権利であるので、その停止を求める提案は容認できないという立場です。(ロイター、5月12日)

まずは、国際社会が一致してイランに対する提案をまとめ切れるのか。次に提案がまとまったとしても、イランと国際社会との間でどのように歩み寄りを見せることができるのか?歩み寄りができず、アメリカがシビレを切らして、有志連合による制裁に走るのか?7月にモスクワで予定されているサミットで、ロシアが何らかの事態打開の提案をすることになるのか?そういった点が今後の焦点となるように思っています。

イランをめぐる問題では、論じるべき多数の論点がありますが、今回は、イラン側のこの一貫した強硬姿勢の背景にある考え方を理解する上で参考になる意見を紹介します。前回のブログでもIPSのガレット・ポーターがその見解を紹介していたブルッキングス研究所の客員フェローであり、ファイナンシャル・タイムズのテヘラン特派員のナジメー・ボゾルグメールとUSA TODAYの特派員バーバラ・スラビンの意見です。内容はブルッキングス研究所のホームページに紹介されたものです。

まず、ボゾグメールの意見です。

・ イランが核開発プログラムを放棄することに乗り気でないのは、米国がイラン国内の政権転覆政策を追求しているとイランが考えているからだ。イラン政府の見解では、アメリカのこの政策に対抗する最良の戦略はその核開発プログラムを継続することだということになる。

・ 核問題の交渉において膠着している理由は核開発問題だけにあるのではない。イランが核開発プログラムを追及しなかった場合でも、米国は、国際的危機を引き起こし、イランの政権転覆を要求するために人権無視、イラン国内での反対派や民主化の抑圧などの問題を指摘しただろう。イランの現政権が脅迫を受けていると感じている限り、イランは、表向きではナショナリスティックでイデオロギー的に見えるが、その本質においては防衛的な性格である核戦略を追及するだろう。

・ イラン政府が取っている戦略は、外部からの脅威に対する防衛だけでなく、民主主義と人権に対する西洋的価値観がイラン内部に浸透し、イラン国民の支持を得た場合に起こる可能性のある国内政治の不安に対する防衛にもなっている。イラン国民は非常に愛国的であるので、イランの指導者たちは核開発をめぐる対立をイラン国民が現政権の下に結集するために利用している。イランの経済的社会的状況は貧しいにもかかわらず、多くのイラン国民にとって、核開発プログラムは国家的威信の象徴である。

・ 1953年における米英情報部の活動によるモサデグ首相の失脚や1980年から1988年の間のイラン・イラク戦争における米国によるサダム・フセインの支持など、過去の記憶がイランとその国民を対象とした「国際的謀略」があるという国民の思いを強固にしていることを背景に、アフマディネジャド体制はプロパガンダを通じて効果的に国民のナショナリズムを操縦している。

・ イランの政治家は積極的に米国との激しい対立を求めたのではないが、アメリカのイラクへの関与とブッシュ大統領の国民による支持の低下により、米国はさらにイランに侵攻することには乗り気でないだろうとすべてのイラン人が確信しており、核をめぐる危機をさらにエスカレートすることが可能だ考えている。こうして、現政権の見解では、核をめぐる対立は西洋からの脅威に立ち向かう最良の戦略であり続ける。

次にスラビンの意見を紹介します。

・ 悪化しつつある経済的社気的条件にも関わらず、イラン国民が核開発計画に強力に賛成しているという、ボゾルグメールの意見に同感。

・ イラン国民は、インドやパキスタンに核のテクノロジーや兵器を所有することを許しておきながら、イランに対して核能力を開発することを阻止することは不公正だと感じている。したがって、イラン国民は、イランが核プログラムを開発する正当な権利を有していると信じている。

・ イラン政府はイランが弱い立場にあることを理解しているが、それでもイラク戦争、イラクにおけるシーア派に対する影響力の増加、ハマスによるパレスチナにおける権力掌握そしてヒズボラとの長期的な結びつきによって創り出されている「優位性」をうまく活用できると考えている。

・ イランの支配的エリート層は意見が分かれてはいるが、意思決定はアフマディネジャド大統領一人によるのではなく集団で行われている。

また、ボゾルグメールは、イラン内の改革派について、次のように述べています。

・ イランの多くの政治的党派は核開発プログラムの重要性については同意しているが、核開発プログラムをめぐる危機解決のためのアプローチに違いがある。現政権の指導者たちとは異なり、改革派は国連安保理への付託、経済制裁又はイランに対する軍攻撃は屈辱的な後退であると懸念している。

・ さらに、改革派は、米国による攻撃とその後のイランによる報復はイランとイランを取り巻く地域全体にとって予測を超える深刻な結果を引き起こすことを認めている。軍事攻撃はシーア派の改革主義を始動させ、スンニ派とシーア派との対立関係を煽り、イラン国内の世論を分裂に導く。最も重大なこととして、核をめぐる危機のエスカレーションが強硬派に対して反対勢力とイラン内の脆弱な民主的プロセスとを抑圧する言い訳を与える可能性があることを改革派は心配している。

ボゾルグメールは、米国はどのような行動をとるべきかとの質問に対し、「軍事攻撃はイラン内のまだ脆弱な民主主義のプロセスを弱体化させ、米国に対して共感を持っている国民にダメージを与えるので、避けるべきだ。イランの国民は米国の意図に懐疑心を持ち続けているため、軍事攻撃には予想できない方法で反応するだろう」と回答しています。

両名はアフマディネジャドが自らの対立を好む戦略の可能性に自信を持っているが、そのポピュリスト的国内政策は持続不可能であり、すでにそれは資本流出や投資の枯渇という形で、イラン経済に悪影響を与えていると見ています。そして、アフマディネジャドの政治的崩壊を待っている反対派が行動を起こしていないことの一部の理由が、この現政権の賢明でない戦略にあるとしています。

5月3日

5月2日の共同通信のニュースによれば、国連安全保障理事会常任理事国の英国とフランスは1日までに、経済制裁を可能にする国連憲章7章に基づき、イランの核開発を「国際平和と安全に対する脅威」と明記、核兵器開発につながりかねないウラン濃縮活動の停止を求める初の安保理決議案の原案をロシアと中国に提示したとのことです。安保理が3月に採択した議長声明と異なり、安保理決議は法的拘束力を伴うため、イランが決議に応じない場合は制裁措置の検討に入ることになると見られています。

しかし、この国連憲章第7章に基づく制裁措置を発動するためには、安保理は第39条の規定により、イランの核開発活動を原因とした「平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在」を決定する必要があります。制裁に反対しているロシアと中国がこれに反対するという事態になるだろうと考えられるため、これが実現する可能性は低いように思われます。

そうなると、次の手段は国連の枠組みを超えた、いわゆる「有志連合」による制裁措置の発動ということになります。4月30日のニューヨークタイムズによれば、ブッシュ政権は、安保理が行動を起こせない場合、(イラク戦争のときと同様に)有志国の連合を結集し、制裁を科すということを始めて公けにしたとのことです。

これまでのイランの強硬な姿勢からして、イランの現政権がそのような圧力に屈して国際社会の要求している核活動の停止に応じることはないように思われます。そうなると次のステップは、これまでもこのブログで紹介してきた米国による軍事的選択肢の行使という事態となるのでしょうか? 米国は一直線にそのような軍事路線に突き進むのでしょうか?

前回のブログで紹介しましたように、あのブレジンスキー氏は、北朝鮮との六カ国協議をモデルとした対話路線を提案しています。また、連邦議会上院外交委員会委員長のリチャード・ルーガーや民主党長老議員のリチャード・バイデンも米国のイランとの直接討議を呼びかけています(5月2日付、IPSのガレット・ポーターによる記事)。

また、本日の日経新聞も、パパ・ブッシュとクリントン両政権で国務省の要職を務めたD・ロス米元中東大使もイギリス、フランス及びドイツとイランとの交渉に米国も参加すべきだと主張しており、交渉が決裂した場合に「本格的な政治的、経済的制裁を発動することで事前にイギリス、フランス及びドイツと合意し、イランに圧力をかけることが望ましい」と提案していることを報じています。

以下では、米国との直接対話を望んでいるイランの状況に関してのガレット・ポーターによる報告について紹介します。

ポーターによれば、イランは、2005年終わりごろから、米国との間で核開発プログラムとそれ以外の2国間の諸問題についての直接交渉を望んでいるというシグナルをワシントンに送っていたとことです。そして、先週、アフマディネジャド大統領は「イランは世界すべての国との対話の用意があるが、いかなる交渉にもそれぞれ固有の条件がある」と述べ、米国の名前を挙げつつ、「それらの条件にかなうなら、われわれ交渉をするだろう」と、初めてワシントンとの協議に応じる可能性を示唆したとのことです。

しかし、実は、アフマディネジャド大統領の上記発言よりも前に、すでにイラン政府は米国との直接交渉を公に示唆していたとのことです。たとえば、3月6日には、イラン外務省報道官ハミド・レザ・アセフィは「われわれの主張は、アメリカがその脅しをやめ、前提条件を課すことによって交渉のプロセスに影響を与えようとはしない前向きな態度を生み出せるなら、交渉に対する障害はない」と述べた、とポーターは伝えています。

イランは広範な安全保障問題に関して米国と直接協議をする用意があるということを伝えたいというこれらの新しいシグナルは、イラン政府高官による最近数ヶ月間の静かな外交努力を背景にして、テヘランでこれらの高官に会った外交官や要人を通じて発信されているとのことです。

また、先週水曜日のインターナショナル・ヘラルド・トリビューンに掲載されたアメリカ、ドイツ、オランダ、ポーランド、フランス及びルクセンブルグの元外相による声明は、「同グループのヨーロッパ5カ国メンバーはすべて、これまでの数ヶ月間に、影響力を持ったイラン政府高官に会い、イラン側には米国と安全保障問題について広範な議論を行いたいという強い関心があることを認めた」と述べていると、ポーターは指摘しています。

さらに、米国政府に対して、安全保障問題に関する直接対話への関心を持たせようとする現在のイランの努力はこれが初めてではなく、すでに2003年5月、テヘラン駐在のスイス大使ティム・グルディマンを通じて、イランは米国による安全保障に対する保証と経済制裁の停止措置と引き換えに、核問題、ヒズボラ及びその他の反イスラエル活動グループに対するイランの支持問題など関する米国の懸念に対応するという提案を行っているとのことです。

「元国家情報担当官(イラン担当)のポール・ピラーによれば、交渉による解決を目指す路線は最高指導者であるハメネイ師と国家安全保障最高会議の支持を得ているといわれており、公式外交ルートあるいは非公式ルートでのイランの努力が先行して行われてきた」と、ポーターは述べています。

ブッシュ政権は2003年のイランの提案を無視し、最近数ヶ月間においても、イランとの直接交渉を公式に拒絶してきた。しかし、3.5%の濃度のウラン濃縮を実現したとのイランの発表が問題解決のための交渉による解決をいっそう緊急な課題としている、とポーターは指摘しています。

オフレコでのインタビューのために過去数年間にイランのトップ指導者たちと接触する機会を持ったイラン人ジャーナリストのナジメー・ボゾルグメール(現在はブルッキングス研究所フェローでもある)は、以下のように述べているとのことです。
「ウラン濃縮は非常に有利な交渉材料となった。イラン政府は米国との交渉においてイランに有利な立場を作り出すだろうという理由で事実を先行させている。イラン政府はウラン濃縮問題での譲歩と引き換えに米国による(これまでの)制裁の撤回、安全保障及び核燃料供給保証措置を勝ち取りたいと考えているのだ」

また、ジャーナリストのプラフル・ビドワイは先週、イラン政府高官やその他の専門家が核問題と安全保障問題及びイラン・米国関係の正常化に関する妥協案についてかなり広範な合意が(イラン国内には)あると告げたと、IPSに報じたとのことです。


このように見てくると、軍事的選択肢の行使という強行策に訴える前に、対話による問題解決を探る努力こそが本当の外交努力といえるのではないかと考えますが、皆さんはどうお考えでしょうか?

イランの核開発問題に関連し、ブッシュ大統領は「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」として、外交的努力と並んで、軍事的選択肢を排除していないことを明らかにしています。一方で、イランのアフマディネジャド大統領は、4月18日、軍事パレードで「イラン軍はどのような侵略者の手も切断する。そして侵略者に後悔させる」と述べています。双方ともに譲らず、舌戦が続いています。

ブッシュ政権は結局圧力を全面に出してイランの譲歩による核開発計画の停止を追及していますが、事態は好転していないように思われます。4月28日には、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長が、イラン核問題に関する報告書を国連安保理とIAEA理事会に提出する予定ですが、その内容はイランにとって厳しいものとなることが予想されています。

英国のパリー国連大使は、30日以内のウラン濃縮活動停止を求めた3月末の国連安全保障理議長声明にイランが従わなければ、英国とフランスが5月2日にも、濃縮停止を義務付ける決議案を安保理各国に提示するとの見通しを示したと報道されています。(4月26日、共同)

そのような状況の中、カーター政権において国家安全保障担当大統領補佐官を務め、「ひ弱な花・日本」、「孤独な帝国アメリカ 世界の支配者か?リーダーか?」など多数の著書で著名なZ・ブレジンスキーが、「イランを攻撃するな」というタイトルで4月26日のインターナショナル・ヘラルド・トリビューン」に寄稿しています。

今回は、その内容を紹介します。

ブレジンスキーは、イランがウラン濃縮を行ったと発表したことがイラク戦争を主張した勢力によるイランに対する先制攻撃を性急に求める声を大きくさせたとしています。そして、もう一度米国に対するテロ攻撃があった場合には、軍事行動に賛成する米国民のヒステリックな反応を起こさせるために、イランにその責任があるという主張がすぐに出てくるだろう、と述べています。

ブレジンスキーがイランに対する先制攻撃に反対する理由は以下の4つです。
 
第一に、イランが核兵器を所有するに至るまでには少なくとももう数年かかるという状況なので、脅威は切迫していない。切迫した脅威のない場合の攻撃は一方的な戦争行為となるからだ、としています。

連邦議会による公式の宣言なしに攻撃が実施されるなら、憲法違反となり、大統領は弾劾を受けることになる。さらに、国連安保理の制裁決議なしに、単独であるいはイスラエルとともに攻撃を行うなら、両国は国際的無法行為の加害者であるということになる、としています。

第二に、攻撃に対するイランの反撃によって、イラクとアフガニスタンで現在直面している米国の困難はさらに悪化し、レバノンのヒズボラによる新たな暴力が引き起こされ、米国はほぼ確実に同地域での暴力の泥沼から10年あるいはそれ以上抜け出すことができなくなるからだ、としています。そして、イランは7000万人の人口があり、イランとの衝突はイラクでの現在の不幸な事態よりも比較にならない悲惨な事態を招くだろう、と述べています。

第三に、石油価格が上昇し、世界経済に深刻な影響を与え、アメリカがその責任を非難されることとなるからだ、としています。市場の一部はアメリカとイランの衝突を予想し、石油価格はすでに1バレル当たり70ドル以上に急騰していることを指摘しています。

第四に、アメリカはこれまで以上にテロのターゲットとなる可能性があり、世界の多くがアメリカのイスラエルに対する支持そのものがテロ増加の主たる原因となっていると結論付けるだろう、としています。その結果、アメリカはますます孤立し、脆弱となる一方で、イスラエルとその近隣諸国との間の最終的和解の見通しがますます遠のくことになる、と指摘しています。

そして、イランに対する攻撃は政治的愚行であり、世界情勢の大変動を引き起こすきっかけとなり、アメリカがますます広範な敵意の対象となり、アメリカの世界における優位性が迅速な終わり迎えることになる可能性があるとしています。

ブレジンスキーは、現在のブッシュ政権のこの問題に対する取り組み方法を以下のように批判しています。
 
始めに、最近ブッシュ政権が特に執拗に繰り返している「軍事的選択肢はテーブルの上にある」という発言が、そのような選択肢を必要としなくすることのできる一種の交渉それ自体の妨げになっている。そして、その脅威がイラン国民のナショナリズムとシーア派原理主義とを結びつけいる。また、米国は意図的にイランの強硬姿勢を助長さえしているのではないかという疑念を国際的に強めているとしています。そして、その疑念は一部正しいのではないか、と指摘しています。

次に、イランに対するスタンスと北朝鮮に対するスタンスの違いについて触れ、米国がイランと直接交渉のテーブルに着かず、代理人を通してのみ交渉していることを批判しています。

 第三に、ブッシュ政権は民主化という名目でイランの現政権を不安定化させる資金を配分しており、イラン内部を分断するために非イラン人の少数民族を誘導することを目的とした特殊部隊をイラン国内に投入していることが報じられているとしています。そして、ブッシュ政権内部の交渉による解決を望まない連中の存在に言及しています。

ブレジンスキーはイランが最終的に核兵器を入手することがその地域での緊張を高めることとなり、イスラエルの不安も増加させることとなることから、イランの核兵器入手は阻止されるべきであるという考えです。

ブレジンスキーは、米国の取るべき適切な政策として、米国が北朝鮮との6カ国協議をモデルにすべきであり、現在の英仏独露中による交渉の場に直接参加することと同時にイランとの直接交渉にも関与すべきだとしています。また、イランの核開発プログラムと地域安全保障問題の満足すべき解決策が得られた場合の署名国ともなるべきだとしています。

そして、今の米国の選択肢は、米国の長期的国家利益に深刻な打撃を与える向こう見ずな冒険をするのか、イランが生産的となる真正な機会を与えて真剣に交渉を行うかどうかのいずれかだとして、ブッシュ政権の圧力一辺倒の姿勢を批判しています。 

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