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イランの核開発問題をめぐり、国連安全保障理事会が国際社会の一致した要望として議長声明においてイランに核開発放棄を迫り、国際原子力機関のエルバラダイ事務局長がその説得を行うためにテヘラン入りしました。しかし、イランがその説得を拒否し、ウラン濃縮活動の規模拡大に突き進んでいる状態にあります。

4月末に予定されているエルバラダイ事務局長による議長声明の遵守状況に関する報告は、イランにとって厳しい内容となることは確実と見られています。事務局長報告が厳しい内容となった場合、次の安保理での審議は制裁発動の是非をめぐる論議が一層活発化するだろうと考えられています。(読売新聞電子版、4月14日)

コンドリーザ・ライス米国務長官はイランの挑発的な態度を受けて、制裁か武力行使に道を開く可能性を持つ決議案の採択など、強い行動を検討しなければならないとの考え方を示しました。(ロイター、4月14日)

しかしながら、3月の安保理での審議においては、米英仏が議長声明に制裁発動の可能性を盛り込むよう主張しましたが、これに露中が反対し、議長声明に3週間を要した経緯があります。安保理の審議において、国際社会の一致した行動として制裁発動の決議が行われるのかどうかは予断を許さないといえましょう。

ブッシュ政権は現時点では外交努力によってイランの核兵器開発を阻止することを公式に表明しています。しかし、事態が膠着したままに推移した場合、米国はどのような対応をするのでしょうか?

1968年にベトナム戦争でソンミ村虐殺事件を報道し、その記事でピューリッア賞を受賞し、最近ではイラク・アブグレイブ刑務所での米軍の虐待事件を報道したセイモア・ハーシュ記者は、米ニューヨーカー誌(電子版)において4月8日、米軍によるイラン空爆計画の策定が加速しており、B61−11のような 地中貫通(バンカーバスター)型戦術核兵器の使用も「選択肢」だと報じています。また、ワシントン・ポストもブッシュ政権がイランに対する軍事攻撃の各種選択肢の検討を行っていると報じています。

ブッシュ大統領はこれらの報道をめぐり、イランの核開発問題について、イランに核開発を止めさせるために武力は必ずしも必要ではない、外交に焦点を絞っていると指摘し、「記事は憶測に過ぎない」と否定したとのことです。(ロイター、4月11日)

しかしながら、4月18付けの、ロイターによると、ブッシュは、今週行う湖錦濤国家主席との会談の席でイランの核問題に関して話し合うが、外交努力が失敗すれば核による報復の可能性を否定することはできず、「すべての選択肢がテーブルの上にある」と述べたとのことです。核による攻撃の可能性は依然として残されているといえます。

 米空軍幕僚の幹部だったマッキナーネィ退役中将は、米国のネオコンや保守派の意見を代表している「ザ・ウィークリー・スタンダード」4月24日号で、軍事的選択肢について次のように述べています。

「イランの核施設に対する軍事的選択肢は実行可能である。核危機の外交的解決が可能であればそのほうが好ましい。しかし、信頼できる軍事的選択肢の存在とそれを実行するという意思がなければ、外交は成功しない。先週のマフムード・アフマディネジャド大統領によるウラン濃縮の発表は、イランが外交的圧力に容易に屈しないことを示すものだ。軍事的選択肢の存在が、世界のテロリストの主要な支援国家となっているイランに核兵器の製造を思いとどまるよう説得するための唯一の手段となるのかもしれない」

そして、サウジアラビア、ヨルダン、エジプト、アラブ首長国連邦、クエート、カタール、トルコ、イギリス、フランス及びドイツ等の有志連合の支援により、一定の期間内に真剣な外交を行うことによって、軍事的選択肢の有効性が高まると指摘しています。しかし、他国による有志連合への招待が受け入れられなかった場合は、米国は単独で行動すべきだと主張しています。

一方、イラン外務省は、先のセイモア・ハーシュによる軍事的選択肢検討という報道を受けて、「これは米国が仕掛けた心理戦」と非難し、イランは自国の核技術に対する自国の権利を堅持し、いかなるシナリオにも対処する用意がある。イランは脅しの言葉をおそれていないと述べたと報道されています。(ロイター、4月8日)

また、イラン革命防衛隊のサファビ司令官は、米国がイランを攻撃したら、イラク駐留米軍に反撃する考えを示唆したとのことです。(産経新聞、4月16日)

事態は双方一歩も譲らない状況となってきています。

この退役中将は、軍事的選択肢の行使に当たっては、圧倒的な武力によって、イランの核開発施設を破壊し、少なくとも5年間は使用不能にすること、イランの防空システムを破壊し、イランの指揮統制能力を壊滅させるとしています。そして、それは、政権転覆(レジーム・チェンジ)の好機となるとしています。

セイモア・ハーシュの記事にも、ブッシュが「将来選ばれる民主党や共和党のいずれの大統領も敢行する勇気を持っていない何かをしなければならず、イランを救うことが自分の後世に対する遺産となると信じ込んでいる」というくだりがありました。

現状においては、イラン戦争の泥沼から抜け切れない中で、ブッシュ政権に対する最近の支持率が38%と低下したことから、ブッシュ大統領はイランの核問題は外交的努力でという建前を追及しています。

しかし、国連安保理や国際原子力機関というチャネルを経由した努力が実らなかった場合(その可能性が高いように思われますが)、次は有志連合による経済制裁を追及してくることになるでしょう(実際に常任理事国とドイツとが開催する4月18日のモスクワでの会議で、米国は経済制裁案を提案する予定と報じられているが(ロイター、4月15日)、参加国で同意したという話は聞こえません)。

ブッシュ政権は軍事的選択肢の行使をその次の手段として着々と準備を進めていると見るべきでしょう。




 

国連安全保障理事会は3月29日、イランの核開発問題をめぐっての議長声明を全会一致で採択した。イランに対しウラン濃縮など核開発関連活動の停止を要求し、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長に対し、「30日」以内にIAEA理事会によって要求された措置についてのイランの遵守状況を報告することを求めるものだ。同議長声明からはいわゆる制裁措置に言及する文言がロシアと中国の抵抗で削減された。

これに対し、イランのザリフ国連大使は、イランは合法的な権利を放棄するつもりや核兵器を整備するつもりはなく、平和利用の権利を堅持するとしている。

ブッシュ政権と英国・フランスは公式には国連安保理と国際原子力機関の枠組みによる解決を追及することを公にしている。しかし、イランがウラン濃縮活動の停止と国際原子力機関による査察体制への協力という国際社会の要求に応じない可能性は高い。また、ロシアと中国の反対もあって、国連安保理における制裁決議が実現する可能性は低い。今後、ブッシュ政権がどのような対応をするかに注目が集まっている。

ブッシュ大統領は軍事的対応の可能性を否定してはいない。しかし、泥沼状態に陥っているイラクの現状を考慮するなら、軍事行動は実際的な解決策足り得ないとみるのが大勢だろう。

そのような状況で、1つの選択肢として検討されているのが「有志連合による経済制裁」案だ。もともとは国連の枠組みにおいて採用するとして考えられていたものと同じ経済的圧力を有志連合の国々で行使しようとするものである(ロサンゼルス・タイムズ4月7日付ウエッブ版のポール・リヒター、アリッサ・J・ルービンによる記事に基づく。以下の内容の多くは同記事に依拠している)。

制裁はイランの一般市民を罰することを避け、指導部に対象を絞るが、対象を拡大できるようにする。当初の措置として考えられているのは、有志連合に参加している国への渡航制限、海外個人資産の凍結及び国際的な融資の制限である。

イランは工業製品やガソリンを含む加工製品の多くを輸入に頼っているため、西側諸国はイランに対して強力な影響力を持っている。国際的制裁についての議論がすでに外国企業が投資を減らし、国際的な資金の貸し手に対するイランの信用力が低下している原因となっていると同案の立案者は指摘している。また、他の米国政府関係者は「イランの工業製品の50%以上はヨーロッパからの輸入であり、ワシントンはすでに中国、ロシア及び日本にイランに対する輸出を影響力を行使するために利用すべきだと要求している」と述べているとのことだ。

すでに、ブッシュ政権とその同盟諸国は米国のいわゆるテヘランに対する「防衛措置」と称するものを実行に移すために協力し合っている。ボルトン国連大使は、参加国が大量破壊兵器・ミサイル及びその関連物資の違法な取引を阻止するための各種の対策を行うとする、米国の「拡散に対する安全保障構想(PSI)」の適用を拡大する検討に入っていると指摘しているという。

では実際に、有志連合による経済制裁をどのように実施することができるのだろうか?すでに米国はイランに対する制裁を実施中であるため、新しい経済制裁はイギリス、フランス及びドイツのEU3を中心して行使されなければならないこととなる。しかし、この3国の間には温度差があるようだ。フランスが有志連合によるアプローチに最も乗り気である可能性が高く、英国はあまり熱心でなく、ドイツは参加しないだろう。また、ロシアはイランとの経済関係を危うくしてまで参加する可能性は低いと米国の高官は見ている。

さらに、インド、ブラジル、スリランカ及びエジプトは国際原子力機関の会合においてイランに反対する立場で投票をしたが、いずれの国も有志連合に参加する保障はないとワシントンは見ていると米国の高官は指摘したという。

ドイツのある高官は、ドイツはイランに対する数十億ドルの輸出の恩恵を得ており、それを犠牲にすることを米国が要求していると同提案を疑問視している。そして、同時にフランスはイランとの重要なガス取引を封印しようとしていると指摘したとのことだ。

他国が反イラン的行動を採ることを抑止するためにイランがエネルギー資源の供給者としての立場を利用していることに対して、米国がフラストレーションを持っていることを米国政府高官は認めていると伝えられている。

このように見てくると、有志連合による経済制裁措置の実施に移れるかどうか不明な点が多い。また、一方で、経済制裁措置の実効性に対する疑問も指摘されている。1953年に英国がペルシャ湾を封鎖したとき、イラン国民が強力な抵抗を行い、ある大臣がイギリスの要求を呑むことを提案したことが暴動につながったことがあることを想起し、ミドルイースト・エコノミック・アンド・ポリティカル・アナリシス社のディレクターであるマイヤー・ジャバダンファーは、次のように述べたという。「イラク国民は制裁に抵抗する可能性が高く、唯一の効果は現政府に対する支持を増すことになるだけだろう。・・・制裁はイラン政府に核開発プログラムをあきらめさせることはできない。制裁による圧力はイラン国民の性格に対して効き目はない」

現状において、イランの核兵器開発疑惑問題をめぐるブッシュ政権による打開策は決して容易ではないように思われる。特に、有志連合による制裁を追及するということになった場合、日本はまたもや無批判に米国の強硬路線に追随することになるのか?今後もこの問題について注視していきたい。
*同記事の英語版の入手を希望する方は筆者宛のコメント欄でお申し付けください。お送りします。

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米国タカ派の見解

前回はマイケル・クレア教授のこの問題に関する見解を紹介した。

今回は共和党に近い保守派として知られるヘリテージ財団のウエッブメモを紹介する。全文を翻訳したものをジェームス・フィリップ氏の許可を得ての掲載。

「核外交:イランにプレッシャーをかけ続けよ」

ジェームス・フィリップス、ブレット・シェーファー

ヘリテージ・ファウンデーション ウエッブメモNo1010、2006年3月8日

数年間に及んだ外交上の停滞、優柔不断そして希望的観測の末、国際原子力機関(IAEA)は、やっと今週イランの疑わしき核開発活動について国連の更なる行動を求めるために安全保障理事会に付託するかどうかについて投票することを決めた。イランはいつものように空約束と交渉の継続によって主要国を分断し、外交上の対立を遅らせようとしている。

イランの核交渉責任者のアル・ラリジャニは恫喝さえしている。
「安保理に付託された場合、その他の国々にも問題が生じるだろう。我々は我々の石油を武器として使いたくない。他国に被害を与えたくはない」と3月5日に述べている。
 
米国とその同盟諸国はこの策略を拒絶し、国際原子力機関による行動を頓挫させるためにイランが使おうとしている外交上の最終的な煙幕を拒否しなければならない。米国は国際原子力機関の迅速な国連安全保証理事会への付託を推進し、そこでイランの核不拡散条約違反と対決すべきだ。

現在のところ、テヘランは、イランにロシア内のウラン濃縮施設使用させるというロシアの提案をもてあそんでいるが、イラン国内でウラン濃縮を行う権利を要求することに固執している。イラン国内でのウラン濃縮はウランが核兵器開発に転用される可能性があるというリスクを増大させるものだ。そのような結末を断じて受け入れることはできない。

スローモーションの危機

現在の危機は2002年8月にナタンツでウラン濃縮プラント、アラクで重水製造プラントを発見したことをきっかけとしている。これら2つのプラントについてイランは何年も隠し、核不拡散条約義務違反であった。

国連安保理への付託を避けるため、イランは2003年10月にウラン濃縮活動を停止することに合意した。米国は2001年にアフガニスタン、2003年にイラクというイランの隣国の政権を転覆させた米国主導の軍事行動を成功させたが、イランがこれに影響されたことは疑いない。

イランは英仏独(EU3)との外交交渉において、危機を打開し、国際的制裁を回避するために戦術的譲歩を行った。しかし、イランは原子炉の核燃料と核兵器の核分裂性物質を製造することに利用できる完全な核燃料サイクルを整備するという明らかな目標から後退することはなかった。

2005年の夏のアハマディネジャド大統領に率いられたイランの新強硬派政権の発足によって、イランはより強硬な路線を採用した。ハタミ前大統領による外交的な譲歩を批判した新政権は、石油価格の上昇、ロシアと中国による外交的支援の強化、そして米国がイラクにおいて行き詰まり、もはや直接的な軍事的脅威とはなっていないことなどにより、イランの外交的立場が強化されたとどうやら結論付けたようだ。

2005年8月、イランはウラン濃縮前の準備段階の措置であるイエロー・ケーキ(ウラン鉱粗製物)の六フッ化ウランへの転換をイランのイスファーハンにある核施設で再開した。2006年1月10日、イランはその三つの核施設から国際原子力機関の封印を取り除き、ナタンツでウラン濃縮活動を再開したと宣言した。これはイランの核開発プログラムの部分的凍結を終了し、国際原子力機関の決議に違反し、EU3との外交対話を裏切ったことを明らかにした。

国際原子力機関はイランの活動を国連安保理に報告した2月4日の弱い決議で反応した。しかしながら、国際原子力機関の行動は、エルバラダイ国際原始力機関事務局長が3月6日に国際原子力機関理事会にイランの核活動に関する公式報告書を提出するまで遅れた。国際原子力機関は現在同報告書を検討し、今週末までに国連安保理に付託するかどうかの投票を行う。

しかし、これはまだイランに危機を和らげ、国際協調行動を回避するもう1つの機会を残している。イランは突然その方向を転換し、国際原子力機関による付託を回避する最後の試みの中でロシアの提案を取り込むことが可能だ。あるいは、ロシアと中国が国連安保理でイランのために仲を取り持つことを頼って、その挑発的な政策を堅持することも可能だ。

イランによる瀬戸際政策

 アハマディネジャド大統領はホメイニによる1979年革命の真の信奉者であり、対立を好む。「文明との対話」を提唱した前任のハタミ大統領とは異なり、アハマディネジャドは、イランがアメリカとイスラエルに敵対するイスラム世界を主導する、文明の衝突を提唱している。

 アハマディネジャドは、イランは核の野望を放棄すべきという要求を徹底的に拒否することを続けるだろう。すでにウランの「全面的な濃縮」を命令し、核不拡散条約の追加議定書の要求する抜き打ち査察に対するイランの協力を停止した。さらに、アハマディネジャドは核不拡散条約体制からの全面的離脱を行うと威嚇している。

 しかし、より冷静な考え方が今後優勢となる可能性もあろう。昨年夏の選挙でアハマディネジャドに敗北したラフサンジャニ元大統領は慎重さを呼びかけており、そのほかの人々を説得できるかもしれない。イランの最高指導者ハメネイ師はイランの外交政策の最終的な裁定者であり、容易に取り消し可能な外交的約束をもって、国際的な制裁を回避することを求める可能性もある。

 しかし、イランは国連安保理において賭けに出るつもりがあるように見える。テヘランは、いずれもイランの民生用核プログラムを支援し武器をイランに売却しているロシアと中国がイランと良好な関係を維持することに確定的な経済的戦略的利益を有していると計算している。過去において、ロシアと中国はイランの庇護者として行動した。そして、両国は安保理の中で効果的な制裁を遅らせる、内容を薄める又は阻止するためにその影響力と拒否権の効果を利用することができる。

国連を超えた行動

 ロシアと中国がイランをかばい続けるなら、国連安保理から期待できる最善のものは限定的な外交的制裁あるいは経済制裁による手ぬるい罰だろう。それゆえ、米国は英、仏、独、EU、日本及びその他の関係各国とともに協力して、国連の枠組みを超えた目標を絞った経済制裁を加えるための緊急プランを策定する必要があろう。

 米国はすでに単独で強力な制裁措置を実施しており、それをさらに強化することができる。たとえば、イラン産ピスタチオ、オリエンタルじゅうたんの輸入禁止だ。いずれもクリントン政権が失敗したイランとの外交的対話を始めようという努力のなかで制裁の適用除外となったものである。米国はまたイラン・リビア制裁法をより厳格に履行すべきであり、イランの石油産業に投資しているイラン国籍以外の企業に罰則を与えるものである。

 イランに対峙するに当たっての国連の弱腰にもかわらず、ブッシュ政権はイランを孤立させ、更なる制裁を加え、イランを封じ込める国際協力を強化するため、そして最後の手段としては軍事行動のための環境を整えるため、安保理での外交的立場を強めなければならない。

イランの核問題の平和的解決は?

                                      2006年3月13日

イランの核問題の国連安保理での討議を前に、イラン外務省のアセフィ報道官はイランのウラン濃縮をロシア国内で行うようにしてはというロシアの提案を「ロシア提案はもはや我々の検討すべき課題ではない。状況は変わった。我々は拒否権を持った常任理事国がどう決定するかを見守らなければならない」と述べた。これが国連安保理でこの問題を取り上げる前にあった妥協のための最後のチャンスをつぶした、としてロシア下院の国際問題委員会委員長の怒りを招いたと報じられている(ニューヨークタイムズ電子版3月12日)。

このイランの核問題は今後どのような展開となるかは予断を許さない。ここでは、最近読んだ米国内のこの問題に関する意見を紹介する。

まず、「血と油」(NHK出版、2004年)の著者マイケル・T・クレア教授の意見(Tompaine.com - Defusing The Iran Crisis、Michael T. Klare、March 03, 2006)を紹介する。

同教授は、米国とイラン双方の合意できる恒久的解決を行わなければ、武力による衝突の可能性がますます大きくなるだろうという立場だ。

冒頭に触れられているロシア国内でのイランのためのウラン濃縮の可能性がなくなり、イランがウラン濃縮活動を続けた場合、国連安保理がイランに制裁を科すことを決議するなら、イランは核不拡散条約NPT体制から離脱し、より大規模なウラン濃縮活動を始める可能性がある。これは、核武装したイランの出現を防ぐというブッシュ政権による公約を考慮すると、ワシントンの右翼的タカ派を軍事行動に訴えるという誘惑に抗しがたくさせるだろう、とクレア教授は指摘する。

イランに対する米国の一方的軍事攻撃は違法であり、賢明でなく、アフマディネジャド大統領の強硬路線に対するイラン国内の支持を高めることになり、イラクにおける宗派間の暴力的対立の激化やペルシャ湾の石油施設に対する攻撃などのイランによる手厳しい反撃を招きかねない。したがって、何らかの妥協点を見出すことが不可欠だ、とクレア教授は言う。

その解決策として、イランにとって「受け入れ可能な条件での恒久的かつ検証可能な形でのすべての軍事活動の停止」という解決策を考えることが可能だと、クレア教授は提案している。

具体的には、何らかの形態(ロシア国内あるいはナタンツにおいて厳しい制約条件の下で《筆者注:もし、ロシアの提案が冒頭に報道されたように、イランが拒否した場合は後者だけとなる》)でのイランによるウラン濃縮実験の継続を認め、同時に米国がイランを攻撃しないことを約束し、貿易での譲歩を行うことが必要。そうすることによって、核不拡散条約NPT体制の見直しや、中東地域の非核武装構想、最終的な核兵器廃絶へとつながるだろうと、クレア教授は主張する。

現在イスラム諸国に対する疑念と敵意がワシントンにおいてますます強まっていると思われ、ワシントン内にはイランの主張を弁護する形でこの危機を解決しようという政治的意欲が不足している。また、イランにおいては、アメリカによって強制されるいかなる解決策も「大悪魔」に対する屈辱的な敗北であるとして受け止められ、ほとんど支持を得ることができないだろう、と教授は指摘し、意見を異にしている両者の感情的、イデオロギー的対立を冷やす道を見出すことが平和的解決のために不可欠だとしている。

そのため、米国はイランを正当な交渉相手と認め、問題解決にプロフェッショナルな態度でアプローチすべきであり、「体制転覆(regime change)」に関する発言や武力行使の意向を見せることは控えるべきである。ワシントンはすでに北朝鮮にはそのようなアプローチで臨んでおり、イランにも同様な態度で臨むべきだ。同時に、イランの指導者は、国際社会の憤りを招いた反イスラエル・反ユダヤ的言動を止めるべきだというロシア及び中国をはじめとした国際社会の友人たちの意見を受け入れるべきだ。クレア教授はそう指摘している。

次回は、事態の進展にもよるが、いわゆる強硬派の見解を紹介しよう。

イラク撤退を迫るプレッシャーに直面する米国(続き)
2005年7月15日
エリック・マークアート
Erich Marquardt
The Power and Interest News Report (PINR)


(承前)

米国撤退の持つ意味

米国のイラクからの撤退は米国の国益に悪影響を及ぼすだろう。それはゲリラとの紛争に勝利することがワシントンにとって繰り返し困難であることを示す好個の例となるからである。ベトナムでの撤退からソマリアでの撤退まで、米国はそれぞれの国における武装勢力に対処し、勝利することに絶えず問題を抱えてきた。イラクから撤退することになれば、将来の武装勢力をさらに大胆にするだろう。

米軍の撤退はイラク内でのスンニ派クルド人、スン二派アラブ人そしてシーア派アラブ人の間の内戦に至る可能性がある。そのような混乱はその他の地域にも飛び火し、世界のエネルギー供給に脅威を与え、石油に依存しているすべての国々の経済に打撃を与えるだろう。

イラクからの撤退を行うに当たって、ワシントンは米国主導の同盟軍によって訓練されたイラク軍が武装勢力との闘いにおいて米軍に取って代わることができると主張するだろう。もちろん、連合軍によって訓練を受けたイラク軍が米軍の失敗した分野で成功することができ、同時に米国の国益に沿った結果を生み出すことができると信じることは困難である。このため、イラク軍が内戦を防ぐことができる、あるいは武力抵抗を弱体化させる大きな影響力を持つことができるということは期待できない。

それにもかかわらず、米軍のイラク撤退というこのシナリオのもとでは、米国主導の連合軍の残留部隊はおそらくイラク周辺のいくつかの軍事基地に駐屯することとなろう。この再配置の目的はイラクの治安部隊に対する兵站と軍事的支援を提供することにある。ベトナムに対する介入とは異なって、米軍は国家の組織的な軍隊を敵として対峙するわけではないので、この計画は実現可能だ。米軍は、国家の軍隊に代わってゲリラ勢力からの攻撃を撃退しなければならないが、それ自体は大きな脅威ではない。また、米軍の存在は、イラクの内政への干渉をしてはならないというイラクの隣国に対する警告としても役立つ。さらに、それによって、ワシントンは中東におけるその他の作戦の出発点としてイラクを利用することも可能となる。そのことは、そもそも介入の背後にあった理由のひとつであった。

もう一方で、イラクにさらに留まり続けることは、米国にとってより不利となるだろう。介入は米の軍事力の限界を露呈し、ワシントンは長引く武装勢力との戦いに従事するために必要な兵力を保有していないことを示した。イラク紛争はワシントンの兵員補充目標に打撃を与え、イラクに再配備するため、韓国などから軍隊を引上げさせることを余儀なくさせ、米兵にとって決して好ましくない長期駐在を強いた状態にしている。これらの問題が現在の世界の多極化に向う傾向を作り出している理由の一部となっている。中国、インド、ロシアそしてブラジルなどの地域大国が、北朝鮮、イランなどの国々とともに、ワシントンはあまりにもイラクに関わりすぎているため、彼等の地政学的動きを阻止できる状態にないと判断しているからだ。イラクにおける失敗と損失を切り捨てることによって、米国は地域大国により大きな影響を与える力強さと能力の一部を回復し始めることができる。

ブッシュ政権は、武力抵抗に耐える、あるいはイラクから撤退する、といういずれの行動も明らかに否定的意味合いを持っているため、困難な立場に立っている。とはいえ、イラクにおける作戦が現在のような状態のままに推移するなら、ワシントンは米軍を撤退させることを強いられることとなろう。米国は現在の規模の作戦を何年も続けるだけの軍隊の強さも政治的意思も持っていない。イラク介入後わずか2年で、米軍を撤退させろというアメリカ国民と連邦議会議員からの要求は強くなってきている。より重要なことは、ベトナムのときとは異なり、現在の米国は米軍の過度の展開を結果的に招くこととなった徴兵制度に頼っていないということだ。徴兵制度に依存した米軍の過度の展開によって、米国はベトナム戦争からその兵力の撤収を始めるまでに4年間の戦争を必要とした。イラクの場合、時間的枠組みはもっと短くなると考えるべきだ。


*The Power and Interest News Report (PINR)は、国際関係を背景とした国際的紛争に関する分析サービスを提供するためのオープンソースの情報を利用している独立的組織である。PINRは主題に対してそれに関わる権力と利害に基づくアプローチを行い、道徳的判断は読者に委ねている。

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