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イランの核問題の平和的解決は?
2006年3月13日
イランの核問題の国連安保理での討議を前に、イラン外務省のアセフィ報道官はイランのウラン濃縮をロシア国内で行うようにしてはというロシアの提案を「ロシア提案はもはや我々の検討すべき課題ではない。状況は変わった。我々は拒否権を持った常任理事国がどう決定するかを見守らなければならない」と述べた。これが国連安保理でこの問題を取り上げる前にあった妥協のための最後のチャンスをつぶした、としてロシア下院の国際問題委員会委員長の怒りを招いたと報じられている(ニューヨークタイムズ電子版3月12日)。
このイランの核問題は今後どのような展開となるかは予断を許さない。ここでは、最近読んだ米国内のこの問題に関する意見を紹介する。
まず、「血と油」(NHK出版、2004年)の著者マイケル・T・クレア教授の意見(Tompaine.com - Defusing The Iran Crisis、Michael T. Klare、March 03, 2006)を紹介する。
同教授は、米国とイラン双方の合意できる恒久的解決を行わなければ、武力による衝突の可能性がますます大きくなるだろうという立場だ。
冒頭に触れられているロシア国内でのイランのためのウラン濃縮の可能性がなくなり、イランがウラン濃縮活動を続けた場合、国連安保理がイランに制裁を科すことを決議するなら、イランは核不拡散条約NPT体制から離脱し、より大規模なウラン濃縮活動を始める可能性がある。これは、核武装したイランの出現を防ぐというブッシュ政権による公約を考慮すると、ワシントンの右翼的タカ派を軍事行動に訴えるという誘惑に抗しがたくさせるだろう、とクレア教授は指摘する。
イランに対する米国の一方的軍事攻撃は違法であり、賢明でなく、アフマディネジャド大統領の強硬路線に対するイラン国内の支持を高めることになり、イラクにおける宗派間の暴力的対立の激化やペルシャ湾の石油施設に対する攻撃などのイランによる手厳しい反撃を招きかねない。したがって、何らかの妥協点を見出すことが不可欠だ、とクレア教授は言う。
その解決策として、イランにとって「受け入れ可能な条件での恒久的かつ検証可能な形でのすべての軍事活動の停止」という解決策を考えることが可能だと、クレア教授は提案している。
具体的には、何らかの形態(ロシア国内あるいはナタンツにおいて厳しい制約条件の下で《筆者注:もし、ロシアの提案が冒頭に報道されたように、イランが拒否した場合は後者だけとなる》)でのイランによるウラン濃縮実験の継続を認め、同時に米国がイランを攻撃しないことを約束し、貿易での譲歩を行うことが必要。そうすることによって、核不拡散条約NPT体制の見直しや、中東地域の非核武装構想、最終的な核兵器廃絶へとつながるだろうと、クレア教授は主張する。
現在イスラム諸国に対する疑念と敵意がワシントンにおいてますます強まっていると思われ、ワシントン内にはイランの主張を弁護する形でこの危機を解決しようという政治的意欲が不足している。また、イランにおいては、アメリカによって強制されるいかなる解決策も「大悪魔」に対する屈辱的な敗北であるとして受け止められ、ほとんど支持を得ることができないだろう、と教授は指摘し、意見を異にしている両者の感情的、イデオロギー的対立を冷やす道を見出すことが平和的解決のために不可欠だとしている。
そのため、米国はイランを正当な交渉相手と認め、問題解決にプロフェッショナルな態度でアプローチすべきであり、「体制転覆(regime change)」に関する発言や武力行使の意向を見せることは控えるべきである。ワシントンはすでに北朝鮮にはそのようなアプローチで臨んでおり、イランにも同様な態度で臨むべきだ。同時に、イランの指導者は、国際社会の憤りを招いた反イスラエル・反ユダヤ的言動を止めるべきだというロシア及び中国をはじめとした国際社会の友人たちの意見を受け入れるべきだ。クレア教授はそう指摘している。
次回は、事態の進展にもよるが、いわゆる強硬派の見解を紹介しよう。
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