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・・・戦争の新たな火種としてのエネルギー問題(1)から続き
問題を抱えた供給
石油産業が必要とされる追加的な量を生産できるという自信がわれわれにあるなら、増加する中国とインドの重要に応えることは大きな問題ではないだろう。実際、米エネルギー省は、そうなるだろうとわれわれが信じることを望んでおり、将来の石油と天然ガスの供給は世界の予想される需要を十分満たすことができるだろうという。しかしながら、多くの専門家はこの見解に疑問を呈している。世界の石油と天然ガスの供給は決してそのような高水準には到達しないだろうと彼等は主張する。この主張のほうが正しいだろう。なぜなら、世界の既存の炭化水素資源の多くは既に使い果たされ、これまでの埋蔵資源の枯渇を埋め合わせるのに十分な新たな埋蔵資源が最近においては発見されていないからだ。
石油のケースを考えてみよう。米エネルギー省は、2025年の世界全体の1日当たり石油産出量は1億20.6百万バレルすなわち現在より44百万バレル多い水準に達し、1日当たり需要量の1億21百万バレルにわずかに不足するだけとなると予測している。しかし、そうなるためには、主要な石油会社はまず大量の新たな埋蔵資源を発見し、現在の油田からの産出量以上の大幅な増産をしなければならない。ところが、新たな大規模油田は過去40年間ほとんど発見されておらず、この10年間ではカスピ海のカシャガン油田だけである。同時に、北米、ロシアそして中東の多くの古い油田の一日当たり産油量は大きく減少してきている。その結果、現在、多くの地質学者は、世界の石油産業は産油量を1億20百万バレルの水準まで引き上げる能力はなく、その水準よりもかなり低いものになるだろうと確信している。
世界の石油産出量が現在から2025年までの間に頭打ちとなるという予測は、米エネルギー省の予測よりもかなり悲観的であるが、非常に論議を呼ぶものである。ここは対立している評価を詳細に検討する場ではない。しかし、この問題を理解するため、世界の最も大きな産油国であり、将来における増産の可能性が最もあるサウジアラビアのケースを検討してみよう。米エネルギー省によれば、サウジの石油産出量は2001年から2025年の間に1日当たり10.2百万バレルから22.5百万バレルへと、2倍以上の増産となる。もし、サウジが実際にそれだけの増産をすることができるなら、世界の総供給量はこの期間の終わりにおいて予想されている需要を満足させることができるということに一定の自信を持つことが可能だろう。しかしながら、サウジにはその数字に近いものを産出できる能力はないことを示唆する声が増えている。2004年に論議を呼んだニューヨークタイムズの記事で、アナリストのジェフ・ガースは「米国とサウジの石油企業の経営者および政府高官はサウジの産油能力がおそらく現在の水準近くで頭打ちとなり、世界のエネルギー供給の大幅なギャップが生じる可能性があると述べている」と報告した。
ガースの主張に反応し、サウジ当局者は、サウジは予想される世界の必要量を十分に満たすことのできるよう産出量を増加させる能力を十分持っていると主張した。サウジのナイミ石油相は2004年2月に「世界の一層の需要の増加が生じた場合、サウジはそれに対応することができる。われわれは1日当たり産出量12百万バレルおよび15百万バレルの可能性を検討したが、これらはいずれも実現可能だ」と断言した。
この声明はガースの報告に衝撃を受けた人々に一定の安心感を与えた。しかし、ナイミ石油相は一日当たり産出量12百万から15百万バレルという単なる「シナリオ」について述べただけであって、決して絶対的な保証ではなく、その増産の規模も米エネルギー省が予想している22.5百万バレルにはかなり不足しているということに留意すべきである。また、エネルギー問題に関する多くのアナリストは、サウジにおける一日当たり産油量を一定の期間10百万バレル以上で維持することはその油田に回復不可能なダメージを与え、長期的な産油能力の低下を招く結果となることを示唆している。サウジの石油企業のある幹部が指摘したように、1日当たり産油量を12百万バレルにしようという試みによって、「10年以内に大きな問題が生じることとなろう」
サウジ以外の供給国、あるいはいくつかの供給国を組み合わせても、サウジの持続可能な1日当たり産油量の10‐12百万バレルと米エネルギー省がサウジの産油量として見込んでいる22.5百万バレルの差を埋めることのできる可能性が低いため、サウジの将来の石油産出量がどうなるかはこの問題にとって極めて重要である。サウジ以外の大きな供給国であるイラン、イラク、クエート、ナイジェリア、ロシアおよびベネズエラは、サウジによって供給される分では足りない分を埋め合わせることができないことはもちろん、現在の供給を維持することさえ困難となると予想されている。これが事実とすれば、世界の石油産業が将来の世界の石油需要を満たすことができるという可能性は非常に低くなり、長期的石油不足、石油価格の高騰および経済的困難が執拗に長引くことをわれわれは予想しなければならない。
まさにこの予想があることから、多くの国々の指導者達は天然ガス資源の獲得にますます大きな重点を置きつつある。天然ガスは工業化の過程において石油よりも遅い段階で開発されたため、その主たる供給源はいまだ完全に利用し尽くされてはおらず、イランや東シナ海にあるような新たな天然ガス田は全面的な開発を待っている状態にある。石油のように、天然ガスもその世界的生産量が頭打ちとなるときがあろうが、これは石油がピークを迎えてから数十年後と思われる。そのため、石油の生産が減少するに従い、天然ガスは石油生産の減少の一部を埋めることが予想される。しかし、膨大な量の石油すべてに取って代わることのできるほどに十分な量の天然ガスは世界に存在していない。このことが、多くの政府が現在、他国よって権益を独占されてしまう前に主要な天然ガス資源を支配しようとしていることの理由である。
(続く)
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