国際政治の視点

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アメリカに対抗する中国・ロシア・イラン三国同盟の形成(2)


ジェフライム・P・ガンジク
http://japanfocus.org

(1)からの続き

テヘランに近付く北京とモスクワ

2004年3月、中国の国営石油販売会社の珠海振戎公司(Zhuhai Zhenrong Corporation)がイランから液化天然ガス(LNG)を1億1千万トン輸入する25年間の契約に署名した。この後に、もう一つの中国国営石油会社シノぺックとイランとの間で2004年10月に締結されたもう一つのより大きな契約がある。この取引は約1000億ドルの規模で、中国がイランのヤダバラン油田から25年にわたりさらに2億5千万トンの液化天然ガスを輸入することを可能にするものだ。液化天然ガスに加え、ヤダバランのディールは同じ期間で中国に一日当たり15万バレルの原油を供給する。

この巨大な取引はまた、イランのエネルギー探査、発掘、生産および石油化学・天然ガスインフラに対する中国の大幅な投資を含んでいる。イランのエネルギーセクターに対する投資総額は25年間でさらに1000億ドルを超えるだろう。2004年末、中国はイランの最大の石油輸出国となった。石油と天然ガス供給契約以外に、中国の国営石油企業によって約束されているイランのエネルギーセクターに対する多額の投資は、米国のイラン・リビア制裁法に抵触している。同法はリビアまたはイランのいずれかに2千万ドル以上投資する外国企業に罰則を科すものである。

米国の法律の適用を逃れることは中国にとって何ら新しいものではない。北京もモスクワ同様、テヘランに1980年半ば以降、高性能ミサイルとミサイル技術を供給してきた。中国はイランに対して、「シルクワーム」のような地対艦ミサイルに加え、地対地巡航ミサイルを売却し、また、ロシアと一緒になって、イランの長距離弾道ミサイルの開発を支援してきた。これらの支援には射程距離約2000キロメートルのイランのシハブ-3およびシハブ-4ミサイル開発に対するものが含まれている。イランはまた射程距離約3000キロメートルのミサイルを開発しつつあるともいわれている。

2004年の末に、前米国務長官コリン・パウエルがイランは核弾頭を運ぶための長距離弾道ミサイルを採用するための作業をしていると主張した。中国も2004年にイランのために新タイプの数基の対艦誘導ミサイルを生産していると信じられていた。中国とロシアのミサイルおよびミサイル技術ならびにミサイル技術開発支援は2000年の米国の対イラン核兵器拡散防止法に抵触している。同法は、「イランが大量破壊兵器およびミサイル搬送システムを獲得しようとする努力に支援を提供する企業の国に対して制裁を課すこととする」と特に規定している。

 過去の数年間において多数の中国およびロシアの企業がミサイルとミサイル技術をイランに売却したことによる制裁を受けてきた。そのような売却は減少あるいはストップすることはなく、イランのミサイルの取得と開発のペースは加速されてきた。中国とロシア、中国とイランとの関係のように、ロシアのイランとの関係も過去18ヶ月の間にかなり進展した。イランに対するロシアの投資の増大と両国間の武器取引の増加に加え、ロシアはイランの創生期の核エネルギー産業に深く関わってきたのである。

激しい論争と繰り返す米国の介入の後、ロシアとイランは2月最終的に、ブシェールにあるイランの原子力発電所へのロシアの核燃料搬送のための方法を明らかにする取引に署名した。ブシェールに関するワシントンの主要な懸念は同発電所での使用済み核燃料の意図的な利用である。この使用済み核燃料は廃棄、再処理または核兵器に利用可能なプルトニウムの製造への使用が可能である。ワシントンに対しこれらの三つの可能性のいずれもが現実とならないことを保証するため、ブシェールからのすべての使用済み核燃料はロシアに返還されることをモスクワは約束したのであった。

それにもかかわらず、ワシントンはブシェールの稼動がテヘランが持っていると思われる核兵器プログラムを前進させることになると確信している。イランの核兵器プログラムの証拠は根拠が薄いが、米国はイランがロシアの支援を受けて核兵器を開発するための作業をしていると確信し続けている。

新たな地政学的同盟
エネルギー取引、投資および経済開発とともに、中国・イラン・ロシア同盟は共存を可能とする外交政策を育て上げてきた。中国、イランおよびロシアは台湾とチェチェンに関する外交政策に対する同一の姿勢を持っている。中国とイラン(イランは自国の地位を「イスラム共和国」と自ら宣言しているにもかかわらず)はプーチン政権のチェチェン独立派に対する戦争を完全に支持している。ロシアとイランは中国の一つの中国政策を支持している。台湾独立に対する中国政府の不寛容を明らかにすることを狙った最近の中国による「反国家分裂法」の制定は、ロシア政府とイラン政府によって支持された。

この同盟の最も注目すべき側面は、大きく非難されているイランの核エネルギープログラムに対する中国とロシアの支持である。プーチン政権は、イランの核エネルギープログラムを非難する、あるいはイランに対する経済制裁を適用するという国連安全保障理事会の決議をロシアは支持しないことを一貫して明らかにしてきた。2月、プーチンは、イランが核兵器を開発することを求めていないことを確信していると述べ、ブッシュ大統領との会談に先立って、イラン政府を支持するため、イランを訪問すると発表した。

中国政府もイランに対する国連行動に反対するモスクワに共鳴した。2004年10月に中国とイラン間の歴史的なガス石油取引を結んだ後、中国の外相李肇星Li Zhaoxingは、中国はイランの核エネルギープログラムに対する国連安全保障理事会の動きを支持しないと宣言した。中国とロシアは国連安全保障理事会において拒否権を持っているため、その両国が国連における対イランの動きに反対していることの意味は大きい。

ロシアと中国によるイランの核エネルギープログラムに対する支持は、中国-イラン-ロシア枢軸の背後にある主要な動機を明らかにする。米国による単独行動主義と地球規模の覇権を求める意図に対する対抗である。中国とロシアにとっては、このことはアジア、中央アジアおよび中東における米国の影響力を最小化することを意味している。イランの現政権にとっては、米国を寄せ付けずに置くことが生き残りの手段である。

2004年10月にプーチンが中国に国賓として訪問したときに発表された共同声明は、ブッシュ政権の単独行動主義的外交政策に対する中国とロシアの嫌悪感をはっきりと示していた。中国とロシアは「国際的紛争は国連の主導のもとで緊急に解決する必要があり、国際法の普遍的に認められた原則を基盤にして危機を解決すべきであると考えている。いかなる強制的行動も国連安全保障理事会の承認を得て行われなければならず、その監視のもとに実行されなければならない」と共同声明で指摘した。

この声明が発表された2週間後、そしてちょうど米国大統領選挙の前、米国の単独行動主義に反対する中国政府の姿勢が、中国の前外相であり中国において最も尊敬されている外交官といわれる銭基シンQian Qichenによって明らかにされた。国営新聞「人民日報」での論説記事で、銭基シンは米国政府の単独行動主義を批判した。「米国は中東、中央アジア、南東アジアおよび北東アジアに対する統制を強化した。この統制の強化は、米国政府の対テロキャンペーンが既に自衛の範囲を超えていることを立証した。米国のイラクでのケースは、イスラム世界とアラブ諸国に対し、この超大国が既に彼等をその野心的な民主化プログラムの対象とみなしていると確信させるものとなっている」と、銭基シンは述べている。

中国とロシアにとって、米国の「民主化プログラム」は、米国が世界で唯一の超大国としての優位性を確実なものとするために非友好的な政権を軍事的に処理するために偽装されたものでしかない。中国・イラン・ロシアによる三国同盟は、ワシントンの地球規模での野心に対する中国とロシアによる反撃であるとみなすことができる。この観点から、イランはブッシュ政権の外交政策の目標達成を妨害する上で不可欠となる。まさにこのことが中国とロシアがイランとの経済的および外交的関係を強化したことの正確な理由である。また、中国とロシアがますます洗練されつつある兵器をイランに供給していることの理由でもあるのだ。


ジェフライム・P・ガンジクはコンドルアドバイザー社の社長である。コンドルアドバイザー社は地球規模で個人および機関投資家に対するエマージング市場に対する投資リスク分析を提供している。
(Japan Focus からの翻訳文の転載許可取得済み)

アメリカに対抗する中国・ロシア・イラン三国同盟の形成


ジェフライム・P・ガンジク(Jephraim P Gundzik
http://japanfocus.org


ジョージ・W・ブッシュ政権による単独主義的外交政策の軍事的実践が世界の地政学的同盟関係に非常に大きな変化を引き起こしつつある。これらの変化の中で最も重要なものが中国、イラン及びロシアからなる新たな三国同盟の形成だ。

これまでの18ヶ月間におけるモスクワ・北京間の結びつきの強化は、実際にはあまり気付かれていない非常に重要な地政学的出来事である。温家宝中国首相が2004年9月にロシアを訪問、ウラジミール・プーチンロシア大統領が10月に中国を訪れた。10月の会談において、中国とロシアは「中ロ関係は比類なき良好な段階に達した」と宣言した。長期間の国境紛争を解決したことに加え、モスクワと北京は2005年に合同で軍事演習を行うことに合意した。これは1958年以降中国とロシアの間で持たれる初めての大規模な軍事演習となる。

合同軍事演習は北京とモスクワ間で急増している武器取引を補完するものである。中国はロシア製武器の最大の購入者である。2004年、中国は20億ドル以上のロシア製武器購入契約を締結したといわれている。この中には、軍艦、潜水艦、ミサイルシステムおよび飛行機がある。ロシア軍の責任者であるアナトリー・バシニンは、「わが国の防衛産業がこの国(中国)のために働いており、ロシア軍が持っていない武器と軍事備品の最新モデルを供給している」と述べた。ロシアの中国との関係は武器取引だけに限定されていない。過去5年間において、中ロ間の武器以外の商業取引は年率平均ほぼ20%の増加率で増加した。北京とモスクワは、二国間の武器以外の商業取引が2004年の200億ドルから2010年には600億ドルになることを目標としている。商業取引のうちで最も大きいものはロシアの中国に対するエネルギー輸出だ。

2005年の始め、モスクワは2006年までに電力の輸出を一時間当たり8億キロワット(KWH)と二倍以上に増加することに同意した。ロシアの電力独占企業であるユニファイド・エナジー・システムズの関係者はまた、ロシアの電力システムの開発と改良に対する中国の投資を働きかけている。2004年10月、中国石油天然ガス集団公司(CNPC)とロシアのガズプロムは、ロシアが中国に天然ガス供給を行うための最良の方法を研究することを目的とした一連の協定に署名をしている。同時に、ロシアは石油輸出に関する特別の協定に署名した。

ロシアの中国に対する石油輸出は2005年には1千万トンに達し、2006年には1千5百万トンに増加する予定となっている。これらの石油の輸送はすべて鉄道によって行われるだろう。しかしながら、この協定にはシベリアから中国北部への石油パイプラインの建設に関するある協議が影を落としている。ロシアは石油パイプラインの中国ヘの敷設についてほぼ10年間にわたり検討をしてきた。2002年、モスクワがシベリアのアンガルスクから中国北部にある大慶まで石油パイプラインを走らせるために20億ドルを投資すると約束したとき、このパイプライン建設計画はその実現に向かって一歩前進したように見えた。

しかし、2004年末、ロシア高官は中国までパイプラインを伸ばすよりも、新しい巨大パイプラインはロシアの太平洋港であるナホトカを最終地点とするだろうと発表した。日本がモスクワに対してこの構想を強力に売り込み、100億ドルを超えると見込まれているこのプロジェクトのコスト全体を融資することを申し出ている。資金調達が容易になることに加え、ナホトカパイプラインはすべてロシアの領土内のままであり、モスクワが石油の流れを完全に統制することを可能にする。

多くのアナリストは、このモスクワの決定は中国との関係に打撃を与えたと見ている。パイプラインは中国内を最終地点とせず、ロシアと中国の国境の内側40マイルを通過する。このパイプラインから中国への支線を設けることはさほど経費がかからず、これによる年間の石油産出に対する市場の多様化は8千万トンに達すると予測されている。換言するなら、東京がファイナンスを提供しようと躍起になっているときに、なぜモスクワと北京のいずれかが東部の石油パイプラインのファイナンスをする必要があるのかということだろう。

ロシアが中国との間のエネルギー関係を深めていることをさらに示唆しているものに、ロシアの石油大手ユコスの再国有化をめぐる状況がある。ユコスは中国に石油を輸出していた唯一のロシアの会社であった。ロシア政府は、2004年遅くにユコス社の主要な産油部門であるユガンスクネフテガスを差し押さえ、それを最高価格入札者に売却することにより、実質的に再国有化した。ユガンスクネフテガスはシベリアにあり、ロシアで第2位の産油会社である。

若干複雑な方法を使って、ロシア国有石油会社であるロスネフチは93億ドルでユガンスクネフテガスを買収した。2004年2月、ロシアの工業エネルギー相ビクトル・クリステンコは中国石油天然ガス集団公司にユガンスクネフテガスの20%の所有権の売却を提案した。2005年2月、ロシア財務相アレクセイ・クドリンは中国の銀行団がロスネフチによるユガンスクネフテガス買収の資金60億ドルを提供したことを明らかにした。この融資はロスネフチと中国石油天然ガス集団公司との間の長期的石油供給契約によって担保されている。

中国石油天然ガス集団公司がユガンスクネフテガスの一部を所有しているかどうかは不明だ。しかし、3月、ロシア政府は国営ガス企業ガスプロムとロスネフチの合併を承認した。この合併はユガンスクネフテガスを排除しており、ユガンスクネフテガスは別の国営企業として存続する。ユガンスクネフテガスは中国の同社に対する投資を実行するための独立組織として存続し続けることが可能となっている。

ユコスの再国有化への中国の関与はロシアの高度に保護された石油セクターに対する外国からの最も重要な参加を代表している。中国石油ガス天然ガス集団公司はまたロシアの国営ガス会社であるガスプロムとのいくつかのジョイントベンチャーにも関わっている。これらの中には、中国の巨額なエネルギー関連投資の対象であるイランにおける埋蔵エネルギー開発のためのベンチャーもある。
(続く)

ジェフライム・P・ガンジクはコンドルアドバイザー社の社長である。コンドルアドバイザー社は地球規模で個人および機関投資家に対するエマージング市場に対する投資リスク分析を提供している。
(Japan Focus からの翻訳文の転載許可取得済み)

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