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8月21日号
イスラエルとヒズボラとの間の紛争が勃発して以降、国際社会はこの紛争による被害の増大を食い止め停戦をどのように確保するかをめぐる動きに関心を寄せてきました。そのため、この紛争勃発以前に注目されていたイランの核開発問題をめぐる国際社会(国連安安全保障理事会常任理事国とドイツ=P5プラス1)とイランとの対立問題に対する関心は一時低下していたように思われます。
P5プラス1によるウラン濃縮活動等に対する包括的見返り案に対するイランからの回答がP5プラス1が設定した回答期限までに行われなかったことから、P5プラス1は国連安保理での決議第1696号を成立させ、8月31日までのウラン濃縮関連活動の凍結を求めました。一方で、イランは包括的見返り案に対する回答に検討の時間が必要として、回答は8月22日までは行われないだろうという立場を明確にしていました。その8月22日が迫ってきており、イラン側はこれまでの予定通りその前後に回答を行うこと予定しています(イラン学生通信8月20日)。
以下では、イラン学生通信(8月20日日曜日)で報じられたイラン外務省アセフィ報道官のこの問題に関する発言について紹介します。
この問題に対する基本的な立場
・安保理決議1696号の履行を核問題をめぐる協議の前提条件とすることには根拠がない。
・ イランイスラム共和国は、交渉の前提条件を設定することは両サイドが解決に至るための雰囲気を緊張させるものとなると信じている。なぜ、双方が自由な雰囲気のなかで交渉することができるということを彼らは信じないのか疑問だ。
・ 安保理決議は法的な有効性に欠けている。したがって、イランにとっては受け入れられないものだ。現在も有効であり他国も受け入れている条約(NPT条約)上の論点となっている問題点について5人や6人が決めつけるようなやり方は問題だ。
P5プラス1による包括的見返り案に対する反応
・ 彼らが方向を変えた。彼らは交渉を継続させることではなく、国連安保理に本件を付託し、前向きな雰囲気を変えた。
・ イランは包括的見返り案に対する回答を8月22日まで準備すると言ってきた。
・ イランイスラム共和国は核開発問題は交渉を通して解決できると信じている。包括的見返り案はなおあいまいな点や回答を要する問題点を含んでいる。
・ イランは提案に対する研究を終了し、回答をさらに2日ないし3日以内に行うだろう。われわれは彼らに最初から「8月22日」はすべてが終わる最終日ではないと言ってきた。
・ イランの核開発をめぐる一件は決して複雑なものではなく、本件は国連安保理に付託されるべきではなかった。話し合いで解決できることを力で解決しようとすべきではない。
今後の対応について
・ 彼らがどのような決定を行うかを待って対応する。彼らの対応に応じて行動する。
・ イランはIAEAの査察官に対してなんの障害となったことはない。査察が一度IAEAの義務の枠内から外れたときがあったので、査察官の交替を求めたことがあったが、それは国際原子力機関から受け入れられている。イランはIAEAに対する協力を今後も継続するつもりだ。イランのすべての核活動はIAEAの監視の下にある。
制裁の可能性について
・ 彼らが論理と英知を尊重するなら、制裁の可能性は大きな問題ではない。しかし、問題を複雑にし、制裁問題が提起されるなら、疑いもなく彼らが失うものは大きい。
・ イランイスラム共和国は1979年のイスラム革命以降ずっと非公式な制裁の下にあったのであり、制裁による帰結に対応することができる。もし彼らがイランに制裁を加えるなら、彼らが打撃を受けることとなろう。
・ しかし、われわれは彼らに対して悲観的ではない。彼らがすべての問題を見直して、自分たちに打撃となるようなことをするとは考えていない。イランは大きな潜在的力を有しており、他国がイランに対する協力を惜しむなら、(イランよりも)大きな打撃を受け続けることとなろう。
・ イランイスラム共和国は多くの分野で他国を必要としないという記録的な立場に到達した。イランは国益をベースに意思決定を行い、核エネルギーを平和的に利用する権利を他国からの圧力や脅しによって放棄することはない。
8月22日以降、イランからの回答が行われることは確実のようですが、基本的立場として、ウラン濃縮活動等の凍結を8月31日までに行うことにはならないようであり、P5プラス1がこれにどう対応するかが大きな焦点になると思われます。8月22日以降に予定されている回答の中身を評価し、協議を再開し、交渉による解決を目指すのか、あるいはあくまで安保理決議の設定した8月31日までに凍結を行うことを求め、それが行われなかった場合には、次の制裁措置を決定する安保理決議を求める行動に移るのか、という2つの方向が考えられます。
ブッシュ大統領は今回のイスラエルとヒズボラとの戦いをイランと米国との代理戦争として位置づけ、即時停戦を求める国際社会による仲介要請を無視し、ヒズボラの戦力を叩くための時間稼ぎのためにイスラエルのレバノン攻撃続行させました。このような背景を考えると、アメリカは再び、「イラン憎し」と言う観点から制裁路線を突っ走ることとなるのでしょうか。それとも現実主義者が要求する対話路線をたどることとなるのでしょうか?
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