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イラン核開発問題

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イランの内部事情

イランの内部事情について

                                           5月13日

イランの核開発問題をめぐっては、来週18日の6カ国局長級協議をめどに、イギリス、フランス及びドイツの3ヵ国がイランに対する提案内容の取りまとめに入っています。その内容は、イランが国連の要求を受け入れ、ウラン濃縮の停止を断念した場合の見返りとなるとのことです。厳しい内容のままでは、ロシア・中国による反対があるため、合意を得られる可能性はなく、どのような内容にするか苦労しているようです。

一方で、イラン側の態度は、ウラン濃縮は研究・開発レベルも含め、基本的権利であるので、その停止を求める提案は容認できないという立場です。(ロイター、5月12日)

まずは、国際社会が一致してイランに対する提案をまとめ切れるのか。次に提案がまとまったとしても、イランと国際社会との間でどのように歩み寄りを見せることができるのか?歩み寄りができず、アメリカがシビレを切らして、有志連合による制裁に走るのか?7月にモスクワで予定されているサミットで、ロシアが何らかの事態打開の提案をすることになるのか?そういった点が今後の焦点となるように思っています。

イランをめぐる問題では、論じるべき多数の論点がありますが、今回は、イラン側のこの一貫した強硬姿勢の背景にある考え方を理解する上で参考になる意見を紹介します。前回のブログでもIPSのガレット・ポーターがその見解を紹介していたブルッキングス研究所の客員フェローであり、ファイナンシャル・タイムズのテヘラン特派員のナジメー・ボゾルグメールとUSA TODAYの特派員バーバラ・スラビンの意見です。内容はブルッキングス研究所のホームページに紹介されたものです。

まず、ボゾグメールの意見です。

・ イランが核開発プログラムを放棄することに乗り気でないのは、米国がイラン国内の政権転覆政策を追求しているとイランが考えているからだ。イラン政府の見解では、アメリカのこの政策に対抗する最良の戦略はその核開発プログラムを継続することだということになる。

・ 核問題の交渉において膠着している理由は核開発問題だけにあるのではない。イランが核開発プログラムを追及しなかった場合でも、米国は、国際的危機を引き起こし、イランの政権転覆を要求するために人権無視、イラン国内での反対派や民主化の抑圧などの問題を指摘しただろう。イランの現政権が脅迫を受けていると感じている限り、イランは、表向きではナショナリスティックでイデオロギー的に見えるが、その本質においては防衛的な性格である核戦略を追及するだろう。

・ イラン政府が取っている戦略は、外部からの脅威に対する防衛だけでなく、民主主義と人権に対する西洋的価値観がイラン内部に浸透し、イラン国民の支持を得た場合に起こる可能性のある国内政治の不安に対する防衛にもなっている。イラン国民は非常に愛国的であるので、イランの指導者たちは核開発をめぐる対立をイラン国民が現政権の下に結集するために利用している。イランの経済的社会的状況は貧しいにもかかわらず、多くのイラン国民にとって、核開発プログラムは国家的威信の象徴である。

・ 1953年における米英情報部の活動によるモサデグ首相の失脚や1980年から1988年の間のイラン・イラク戦争における米国によるサダム・フセインの支持など、過去の記憶がイランとその国民を対象とした「国際的謀略」があるという国民の思いを強固にしていることを背景に、アフマディネジャド体制はプロパガンダを通じて効果的に国民のナショナリズムを操縦している。

・ イランの政治家は積極的に米国との激しい対立を求めたのではないが、アメリカのイラクへの関与とブッシュ大統領の国民による支持の低下により、米国はさらにイランに侵攻することには乗り気でないだろうとすべてのイラン人が確信しており、核をめぐる危機をさらにエスカレートすることが可能だ考えている。こうして、現政権の見解では、核をめぐる対立は西洋からの脅威に立ち向かう最良の戦略であり続ける。

次にスラビンの意見を紹介します。

・ 悪化しつつある経済的社気的条件にも関わらず、イラン国民が核開発計画に強力に賛成しているという、ボゾルグメールの意見に同感。

・ イラン国民は、インドやパキスタンに核のテクノロジーや兵器を所有することを許しておきながら、イランに対して核能力を開発することを阻止することは不公正だと感じている。したがって、イラン国民は、イランが核プログラムを開発する正当な権利を有していると信じている。

・ イラン政府はイランが弱い立場にあることを理解しているが、それでもイラク戦争、イラクにおけるシーア派に対する影響力の増加、ハマスによるパレスチナにおける権力掌握そしてヒズボラとの長期的な結びつきによって創り出されている「優位性」をうまく活用できると考えている。

・ イランの支配的エリート層は意見が分かれてはいるが、意思決定はアフマディネジャド大統領一人によるのではなく集団で行われている。

また、ボゾルグメールは、イラン内の改革派について、次のように述べています。

・ イランの多くの政治的党派は核開発プログラムの重要性については同意しているが、核開発プログラムをめぐる危機解決のためのアプローチに違いがある。現政権の指導者たちとは異なり、改革派は国連安保理への付託、経済制裁又はイランに対する軍攻撃は屈辱的な後退であると懸念している。

・ さらに、改革派は、米国による攻撃とその後のイランによる報復はイランとイランを取り巻く地域全体にとって予測を超える深刻な結果を引き起こすことを認めている。軍事攻撃はシーア派の改革主義を始動させ、スンニ派とシーア派との対立関係を煽り、イラン国内の世論を分裂に導く。最も重大なこととして、核をめぐる危機のエスカレーションが強硬派に対して反対勢力とイラン内の脆弱な民主的プロセスとを抑圧する言い訳を与える可能性があることを改革派は心配している。

ボゾルグメールは、米国はどのような行動をとるべきかとの質問に対し、「軍事攻撃はイラン内のまだ脆弱な民主主義のプロセスを弱体化させ、米国に対して共感を持っている国民にダメージを与えるので、避けるべきだ。イランの国民は米国の意図に懐疑心を持ち続けているため、軍事攻撃には予想できない方法で反応するだろう」と回答しています。

両名はアフマディネジャドが自らの対立を好む戦略の可能性に自信を持っているが、そのポピュリスト的国内政策は持続不可能であり、すでにそれは資本流出や投資の枯渇という形で、イラン経済に悪影響を与えていると見ています。そして、アフマディネジャドの政治的崩壊を待っている反対派が行動を起こしていないことの一部の理由が、この現政権の賢明でない戦略にあるとしています。

5月3日

5月2日の共同通信のニュースによれば、国連安全保障理事会常任理事国の英国とフランスは1日までに、経済制裁を可能にする国連憲章7章に基づき、イランの核開発を「国際平和と安全に対する脅威」と明記、核兵器開発につながりかねないウラン濃縮活動の停止を求める初の安保理決議案の原案をロシアと中国に提示したとのことです。安保理が3月に採択した議長声明と異なり、安保理決議は法的拘束力を伴うため、イランが決議に応じない場合は制裁措置の検討に入ることになると見られています。

しかし、この国連憲章第7章に基づく制裁措置を発動するためには、安保理は第39条の規定により、イランの核開発活動を原因とした「平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在」を決定する必要があります。制裁に反対しているロシアと中国がこれに反対するという事態になるだろうと考えられるため、これが実現する可能性は低いように思われます。

そうなると、次の手段は国連の枠組みを超えた、いわゆる「有志連合」による制裁措置の発動ということになります。4月30日のニューヨークタイムズによれば、ブッシュ政権は、安保理が行動を起こせない場合、(イラク戦争のときと同様に)有志国の連合を結集し、制裁を科すということを始めて公けにしたとのことです。

これまでのイランの強硬な姿勢からして、イランの現政権がそのような圧力に屈して国際社会の要求している核活動の停止に応じることはないように思われます。そうなると次のステップは、これまでもこのブログで紹介してきた米国による軍事的選択肢の行使という事態となるのでしょうか? 米国は一直線にそのような軍事路線に突き進むのでしょうか?

前回のブログで紹介しましたように、あのブレジンスキー氏は、北朝鮮との六カ国協議をモデルとした対話路線を提案しています。また、連邦議会上院外交委員会委員長のリチャード・ルーガーや民主党長老議員のリチャード・バイデンも米国のイランとの直接討議を呼びかけています(5月2日付、IPSのガレット・ポーターによる記事)。

また、本日の日経新聞も、パパ・ブッシュとクリントン両政権で国務省の要職を務めたD・ロス米元中東大使もイギリス、フランス及びドイツとイランとの交渉に米国も参加すべきだと主張しており、交渉が決裂した場合に「本格的な政治的、経済的制裁を発動することで事前にイギリス、フランス及びドイツと合意し、イランに圧力をかけることが望ましい」と提案していることを報じています。

以下では、米国との直接対話を望んでいるイランの状況に関してのガレット・ポーターによる報告について紹介します。

ポーターによれば、イランは、2005年終わりごろから、米国との間で核開発プログラムとそれ以外の2国間の諸問題についての直接交渉を望んでいるというシグナルをワシントンに送っていたとことです。そして、先週、アフマディネジャド大統領は「イランは世界すべての国との対話の用意があるが、いかなる交渉にもそれぞれ固有の条件がある」と述べ、米国の名前を挙げつつ、「それらの条件にかなうなら、われわれ交渉をするだろう」と、初めてワシントンとの協議に応じる可能性を示唆したとのことです。

しかし、実は、アフマディネジャド大統領の上記発言よりも前に、すでにイラン政府は米国との直接交渉を公に示唆していたとのことです。たとえば、3月6日には、イラン外務省報道官ハミド・レザ・アセフィは「われわれの主張は、アメリカがその脅しをやめ、前提条件を課すことによって交渉のプロセスに影響を与えようとはしない前向きな態度を生み出せるなら、交渉に対する障害はない」と述べた、とポーターは伝えています。

イランは広範な安全保障問題に関して米国と直接協議をする用意があるということを伝えたいというこれらの新しいシグナルは、イラン政府高官による最近数ヶ月間の静かな外交努力を背景にして、テヘランでこれらの高官に会った外交官や要人を通じて発信されているとのことです。

また、先週水曜日のインターナショナル・ヘラルド・トリビューンに掲載されたアメリカ、ドイツ、オランダ、ポーランド、フランス及びルクセンブルグの元外相による声明は、「同グループのヨーロッパ5カ国メンバーはすべて、これまでの数ヶ月間に、影響力を持ったイラン政府高官に会い、イラン側には米国と安全保障問題について広範な議論を行いたいという強い関心があることを認めた」と述べていると、ポーターは指摘しています。

さらに、米国政府に対して、安全保障問題に関する直接対話への関心を持たせようとする現在のイランの努力はこれが初めてではなく、すでに2003年5月、テヘラン駐在のスイス大使ティム・グルディマンを通じて、イランは米国による安全保障に対する保証と経済制裁の停止措置と引き換えに、核問題、ヒズボラ及びその他の反イスラエル活動グループに対するイランの支持問題など関する米国の懸念に対応するという提案を行っているとのことです。

「元国家情報担当官(イラン担当)のポール・ピラーによれば、交渉による解決を目指す路線は最高指導者であるハメネイ師と国家安全保障最高会議の支持を得ているといわれており、公式外交ルートあるいは非公式ルートでのイランの努力が先行して行われてきた」と、ポーターは述べています。

ブッシュ政権は2003年のイランの提案を無視し、最近数ヶ月間においても、イランとの直接交渉を公式に拒絶してきた。しかし、3.5%の濃度のウラン濃縮を実現したとのイランの発表が問題解決のための交渉による解決をいっそう緊急な課題としている、とポーターは指摘しています。

オフレコでのインタビューのために過去数年間にイランのトップ指導者たちと接触する機会を持ったイラン人ジャーナリストのナジメー・ボゾルグメール(現在はブルッキングス研究所フェローでもある)は、以下のように述べているとのことです。
「ウラン濃縮は非常に有利な交渉材料となった。イラン政府は米国との交渉においてイランに有利な立場を作り出すだろうという理由で事実を先行させている。イラン政府はウラン濃縮問題での譲歩と引き換えに米国による(これまでの)制裁の撤回、安全保障及び核燃料供給保証措置を勝ち取りたいと考えているのだ」

また、ジャーナリストのプラフル・ビドワイは先週、イラン政府高官やその他の専門家が核問題と安全保障問題及びイラン・米国関係の正常化に関する妥協案についてかなり広範な合意が(イラン国内には)あると告げたと、IPSに報じたとのことです。


このように見てくると、軍事的選択肢の行使という強行策に訴える前に、対話による問題解決を探る努力こそが本当の外交努力といえるのではないかと考えますが、皆さんはどうお考えでしょうか?

イランの核開発問題に関連し、ブッシュ大統領は「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」として、外交的努力と並んで、軍事的選択肢を排除していないことを明らかにしています。一方で、イランのアフマディネジャド大統領は、4月18日、軍事パレードで「イラン軍はどのような侵略者の手も切断する。そして侵略者に後悔させる」と述べています。双方ともに譲らず、舌戦が続いています。

ブッシュ政権は結局圧力を全面に出してイランの譲歩による核開発計画の停止を追及していますが、事態は好転していないように思われます。4月28日には、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長が、イラン核問題に関する報告書を国連安保理とIAEA理事会に提出する予定ですが、その内容はイランにとって厳しいものとなることが予想されています。

英国のパリー国連大使は、30日以内のウラン濃縮活動停止を求めた3月末の国連安全保障理議長声明にイランが従わなければ、英国とフランスが5月2日にも、濃縮停止を義務付ける決議案を安保理各国に提示するとの見通しを示したと報道されています。(4月26日、共同)

そのような状況の中、カーター政権において国家安全保障担当大統領補佐官を務め、「ひ弱な花・日本」、「孤独な帝国アメリカ 世界の支配者か?リーダーか?」など多数の著書で著名なZ・ブレジンスキーが、「イランを攻撃するな」というタイトルで4月26日のインターナショナル・ヘラルド・トリビューン」に寄稿しています。

今回は、その内容を紹介します。

ブレジンスキーは、イランがウラン濃縮を行ったと発表したことがイラク戦争を主張した勢力によるイランに対する先制攻撃を性急に求める声を大きくさせたとしています。そして、もう一度米国に対するテロ攻撃があった場合には、軍事行動に賛成する米国民のヒステリックな反応を起こさせるために、イランにその責任があるという主張がすぐに出てくるだろう、と述べています。

ブレジンスキーがイランに対する先制攻撃に反対する理由は以下の4つです。
 
第一に、イランが核兵器を所有するに至るまでには少なくとももう数年かかるという状況なので、脅威は切迫していない。切迫した脅威のない場合の攻撃は一方的な戦争行為となるからだ、としています。

連邦議会による公式の宣言なしに攻撃が実施されるなら、憲法違反となり、大統領は弾劾を受けることになる。さらに、国連安保理の制裁決議なしに、単独であるいはイスラエルとともに攻撃を行うなら、両国は国際的無法行為の加害者であるということになる、としています。

第二に、攻撃に対するイランの反撃によって、イラクとアフガニスタンで現在直面している米国の困難はさらに悪化し、レバノンのヒズボラによる新たな暴力が引き起こされ、米国はほぼ確実に同地域での暴力の泥沼から10年あるいはそれ以上抜け出すことができなくなるからだ、としています。そして、イランは7000万人の人口があり、イランとの衝突はイラクでの現在の不幸な事態よりも比較にならない悲惨な事態を招くだろう、と述べています。

第三に、石油価格が上昇し、世界経済に深刻な影響を与え、アメリカがその責任を非難されることとなるからだ、としています。市場の一部はアメリカとイランの衝突を予想し、石油価格はすでに1バレル当たり70ドル以上に急騰していることを指摘しています。

第四に、アメリカはこれまで以上にテロのターゲットとなる可能性があり、世界の多くがアメリカのイスラエルに対する支持そのものがテロ増加の主たる原因となっていると結論付けるだろう、としています。その結果、アメリカはますます孤立し、脆弱となる一方で、イスラエルとその近隣諸国との間の最終的和解の見通しがますます遠のくことになる、と指摘しています。

そして、イランに対する攻撃は政治的愚行であり、世界情勢の大変動を引き起こすきっかけとなり、アメリカがますます広範な敵意の対象となり、アメリカの世界における優位性が迅速な終わり迎えることになる可能性があるとしています。

ブレジンスキーは、現在のブッシュ政権のこの問題に対する取り組み方法を以下のように批判しています。
 
始めに、最近ブッシュ政権が特に執拗に繰り返している「軍事的選択肢はテーブルの上にある」という発言が、そのような選択肢を必要としなくすることのできる一種の交渉それ自体の妨げになっている。そして、その脅威がイラン国民のナショナリズムとシーア派原理主義とを結びつけいる。また、米国は意図的にイランの強硬姿勢を助長さえしているのではないかという疑念を国際的に強めているとしています。そして、その疑念は一部正しいのではないか、と指摘しています。

次に、イランに対するスタンスと北朝鮮に対するスタンスの違いについて触れ、米国がイランと直接交渉のテーブルに着かず、代理人を通してのみ交渉していることを批判しています。

 第三に、ブッシュ政権は民主化という名目でイランの現政権を不安定化させる資金を配分しており、イラン内部を分断するために非イラン人の少数民族を誘導することを目的とした特殊部隊をイラン国内に投入していることが報じられているとしています。そして、ブッシュ政権内部の交渉による解決を望まない連中の存在に言及しています。

ブレジンスキーはイランが最終的に核兵器を入手することがその地域での緊張を高めることとなり、イスラエルの不安も増加させることとなることから、イランの核兵器入手は阻止されるべきであるという考えです。

ブレジンスキーは、米国の取るべき適切な政策として、米国が北朝鮮との6カ国協議をモデルにすべきであり、現在の英仏独露中による交渉の場に直接参加することと同時にイランとの直接交渉にも関与すべきだとしています。また、イランの核開発プログラムと地域安全保障問題の満足すべき解決策が得られた場合の署名国ともなるべきだとしています。

そして、今の米国の選択肢は、米国の長期的国家利益に深刻な打撃を与える向こう見ずな冒険をするのか、イランが生産的となる真正な機会を与えて真剣に交渉を行うかどうかのいずれかだとして、ブッシュ政権の圧力一辺倒の姿勢を批判しています。 

イランの核開発問題をめぐり、国連安全保障理事会が国際社会の一致した要望として議長声明においてイランに核開発放棄を迫り、国際原子力機関のエルバラダイ事務局長がその説得を行うためにテヘラン入りしました。しかし、イランがその説得を拒否し、ウラン濃縮活動の規模拡大に突き進んでいる状態にあります。

4月末に予定されているエルバラダイ事務局長による議長声明の遵守状況に関する報告は、イランにとって厳しい内容となることは確実と見られています。事務局長報告が厳しい内容となった場合、次の安保理での審議は制裁発動の是非をめぐる論議が一層活発化するだろうと考えられています。(読売新聞電子版、4月14日)

コンドリーザ・ライス米国務長官はイランの挑発的な態度を受けて、制裁か武力行使に道を開く可能性を持つ決議案の採択など、強い行動を検討しなければならないとの考え方を示しました。(ロイター、4月14日)

しかしながら、3月の安保理での審議においては、米英仏が議長声明に制裁発動の可能性を盛り込むよう主張しましたが、これに露中が反対し、議長声明に3週間を要した経緯があります。安保理の審議において、国際社会の一致した行動として制裁発動の決議が行われるのかどうかは予断を許さないといえましょう。

ブッシュ政権は現時点では外交努力によってイランの核兵器開発を阻止することを公式に表明しています。しかし、事態が膠着したままに推移した場合、米国はどのような対応をするのでしょうか?

1968年にベトナム戦争でソンミ村虐殺事件を報道し、その記事でピューリッア賞を受賞し、最近ではイラク・アブグレイブ刑務所での米軍の虐待事件を報道したセイモア・ハーシュ記者は、米ニューヨーカー誌(電子版)において4月8日、米軍によるイラン空爆計画の策定が加速しており、B61−11のような 地中貫通(バンカーバスター)型戦術核兵器の使用も「選択肢」だと報じています。また、ワシントン・ポストもブッシュ政権がイランに対する軍事攻撃の各種選択肢の検討を行っていると報じています。

ブッシュ大統領はこれらの報道をめぐり、イランの核開発問題について、イランに核開発を止めさせるために武力は必ずしも必要ではない、外交に焦点を絞っていると指摘し、「記事は憶測に過ぎない」と否定したとのことです。(ロイター、4月11日)

しかしながら、4月18付けの、ロイターによると、ブッシュは、今週行う湖錦濤国家主席との会談の席でイランの核問題に関して話し合うが、外交努力が失敗すれば核による報復の可能性を否定することはできず、「すべての選択肢がテーブルの上にある」と述べたとのことです。核による攻撃の可能性は依然として残されているといえます。

 米空軍幕僚の幹部だったマッキナーネィ退役中将は、米国のネオコンや保守派の意見を代表している「ザ・ウィークリー・スタンダード」4月24日号で、軍事的選択肢について次のように述べています。

「イランの核施設に対する軍事的選択肢は実行可能である。核危機の外交的解決が可能であればそのほうが好ましい。しかし、信頼できる軍事的選択肢の存在とそれを実行するという意思がなければ、外交は成功しない。先週のマフムード・アフマディネジャド大統領によるウラン濃縮の発表は、イランが外交的圧力に容易に屈しないことを示すものだ。軍事的選択肢の存在が、世界のテロリストの主要な支援国家となっているイランに核兵器の製造を思いとどまるよう説得するための唯一の手段となるのかもしれない」

そして、サウジアラビア、ヨルダン、エジプト、アラブ首長国連邦、クエート、カタール、トルコ、イギリス、フランス及びドイツ等の有志連合の支援により、一定の期間内に真剣な外交を行うことによって、軍事的選択肢の有効性が高まると指摘しています。しかし、他国による有志連合への招待が受け入れられなかった場合は、米国は単独で行動すべきだと主張しています。

一方、イラン外務省は、先のセイモア・ハーシュによる軍事的選択肢検討という報道を受けて、「これは米国が仕掛けた心理戦」と非難し、イランは自国の核技術に対する自国の権利を堅持し、いかなるシナリオにも対処する用意がある。イランは脅しの言葉をおそれていないと述べたと報道されています。(ロイター、4月8日)

また、イラン革命防衛隊のサファビ司令官は、米国がイランを攻撃したら、イラク駐留米軍に反撃する考えを示唆したとのことです。(産経新聞、4月16日)

事態は双方一歩も譲らない状況となってきています。

この退役中将は、軍事的選択肢の行使に当たっては、圧倒的な武力によって、イランの核開発施設を破壊し、少なくとも5年間は使用不能にすること、イランの防空システムを破壊し、イランの指揮統制能力を壊滅させるとしています。そして、それは、政権転覆(レジーム・チェンジ)の好機となるとしています。

セイモア・ハーシュの記事にも、ブッシュが「将来選ばれる民主党や共和党のいずれの大統領も敢行する勇気を持っていない何かをしなければならず、イランを救うことが自分の後世に対する遺産となると信じ込んでいる」というくだりがありました。

現状においては、イラン戦争の泥沼から抜け切れない中で、ブッシュ政権に対する最近の支持率が38%と低下したことから、ブッシュ大統領はイランの核問題は外交的努力でという建前を追及しています。

しかし、国連安保理や国際原子力機関というチャネルを経由した努力が実らなかった場合(その可能性が高いように思われますが)、次は有志連合による経済制裁を追及してくることになるでしょう(実際に常任理事国とドイツとが開催する4月18日のモスクワでの会議で、米国は経済制裁案を提案する予定と報じられているが(ロイター、4月15日)、参加国で同意したという話は聞こえません)。

ブッシュ政権は軍事的選択肢の行使をその次の手段として着々と準備を進めていると見るべきでしょう。




 

国連安全保障理事会は3月29日、イランの核開発問題をめぐっての議長声明を全会一致で採択した。イランに対しウラン濃縮など核開発関連活動の停止を要求し、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長に対し、「30日」以内にIAEA理事会によって要求された措置についてのイランの遵守状況を報告することを求めるものだ。同議長声明からはいわゆる制裁措置に言及する文言がロシアと中国の抵抗で削減された。

これに対し、イランのザリフ国連大使は、イランは合法的な権利を放棄するつもりや核兵器を整備するつもりはなく、平和利用の権利を堅持するとしている。

ブッシュ政権と英国・フランスは公式には国連安保理と国際原子力機関の枠組みによる解決を追及することを公にしている。しかし、イランがウラン濃縮活動の停止と国際原子力機関による査察体制への協力という国際社会の要求に応じない可能性は高い。また、ロシアと中国の反対もあって、国連安保理における制裁決議が実現する可能性は低い。今後、ブッシュ政権がどのような対応をするかに注目が集まっている。

ブッシュ大統領は軍事的対応の可能性を否定してはいない。しかし、泥沼状態に陥っているイラクの現状を考慮するなら、軍事行動は実際的な解決策足り得ないとみるのが大勢だろう。

そのような状況で、1つの選択肢として検討されているのが「有志連合による経済制裁」案だ。もともとは国連の枠組みにおいて採用するとして考えられていたものと同じ経済的圧力を有志連合の国々で行使しようとするものである(ロサンゼルス・タイムズ4月7日付ウエッブ版のポール・リヒター、アリッサ・J・ルービンによる記事に基づく。以下の内容の多くは同記事に依拠している)。

制裁はイランの一般市民を罰することを避け、指導部に対象を絞るが、対象を拡大できるようにする。当初の措置として考えられているのは、有志連合に参加している国への渡航制限、海外個人資産の凍結及び国際的な融資の制限である。

イランは工業製品やガソリンを含む加工製品の多くを輸入に頼っているため、西側諸国はイランに対して強力な影響力を持っている。国際的制裁についての議論がすでに外国企業が投資を減らし、国際的な資金の貸し手に対するイランの信用力が低下している原因となっていると同案の立案者は指摘している。また、他の米国政府関係者は「イランの工業製品の50%以上はヨーロッパからの輸入であり、ワシントンはすでに中国、ロシア及び日本にイランに対する輸出を影響力を行使するために利用すべきだと要求している」と述べているとのことだ。

すでに、ブッシュ政権とその同盟諸国は米国のいわゆるテヘランに対する「防衛措置」と称するものを実行に移すために協力し合っている。ボルトン国連大使は、参加国が大量破壊兵器・ミサイル及びその関連物資の違法な取引を阻止するための各種の対策を行うとする、米国の「拡散に対する安全保障構想(PSI)」の適用を拡大する検討に入っていると指摘しているという。

では実際に、有志連合による経済制裁をどのように実施することができるのだろうか?すでに米国はイランに対する制裁を実施中であるため、新しい経済制裁はイギリス、フランス及びドイツのEU3を中心して行使されなければならないこととなる。しかし、この3国の間には温度差があるようだ。フランスが有志連合によるアプローチに最も乗り気である可能性が高く、英国はあまり熱心でなく、ドイツは参加しないだろう。また、ロシアはイランとの経済関係を危うくしてまで参加する可能性は低いと米国の高官は見ている。

さらに、インド、ブラジル、スリランカ及びエジプトは国際原子力機関の会合においてイランに反対する立場で投票をしたが、いずれの国も有志連合に参加する保障はないとワシントンは見ていると米国の高官は指摘したという。

ドイツのある高官は、ドイツはイランに対する数十億ドルの輸出の恩恵を得ており、それを犠牲にすることを米国が要求していると同提案を疑問視している。そして、同時にフランスはイランとの重要なガス取引を封印しようとしていると指摘したとのことだ。

他国が反イラン的行動を採ることを抑止するためにイランがエネルギー資源の供給者としての立場を利用していることに対して、米国がフラストレーションを持っていることを米国政府高官は認めていると伝えられている。

このように見てくると、有志連合による経済制裁措置の実施に移れるかどうか不明な点が多い。また、一方で、経済制裁措置の実効性に対する疑問も指摘されている。1953年に英国がペルシャ湾を封鎖したとき、イラン国民が強力な抵抗を行い、ある大臣がイギリスの要求を呑むことを提案したことが暴動につながったことがあることを想起し、ミドルイースト・エコノミック・アンド・ポリティカル・アナリシス社のディレクターであるマイヤー・ジャバダンファーは、次のように述べたという。「イラク国民は制裁に抵抗する可能性が高く、唯一の効果は現政府に対する支持を増すことになるだけだろう。・・・制裁はイラン政府に核開発プログラムをあきらめさせることはできない。制裁による圧力はイラン国民の性格に対して効き目はない」

現状において、イランの核兵器開発疑惑問題をめぐるブッシュ政権による打開策は決して容易ではないように思われる。特に、有志連合による制裁を追及するということになった場合、日本はまたもや無批判に米国の強硬路線に追随することになるのか?今後もこの問題について注視していきたい。
*同記事の英語版の入手を希望する方は筆者宛のコメント欄でお申し付けください。お送りします。

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