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イランの内部事情について
5月13日
イランの核開発問題をめぐっては、来週18日の6カ国局長級協議をめどに、イギリス、フランス及びドイツの3ヵ国がイランに対する提案内容の取りまとめに入っています。その内容は、イランが国連の要求を受け入れ、ウラン濃縮の停止を断念した場合の見返りとなるとのことです。厳しい内容のままでは、ロシア・中国による反対があるため、合意を得られる可能性はなく、どのような内容にするか苦労しているようです。
一方で、イラン側の態度は、ウラン濃縮は研究・開発レベルも含め、基本的権利であるので、その停止を求める提案は容認できないという立場です。(ロイター、5月12日)
まずは、国際社会が一致してイランに対する提案をまとめ切れるのか。次に提案がまとまったとしても、イランと国際社会との間でどのように歩み寄りを見せることができるのか?歩み寄りができず、アメリカがシビレを切らして、有志連合による制裁に走るのか?7月にモスクワで予定されているサミットで、ロシアが何らかの事態打開の提案をすることになるのか?そういった点が今後の焦点となるように思っています。
イランをめぐる問題では、論じるべき多数の論点がありますが、今回は、イラン側のこの一貫した強硬姿勢の背景にある考え方を理解する上で参考になる意見を紹介します。前回のブログでもIPSのガレット・ポーターがその見解を紹介していたブルッキングス研究所の客員フェローであり、ファイナンシャル・タイムズのテヘラン特派員のナジメー・ボゾルグメールとUSA TODAYの特派員バーバラ・スラビンの意見です。内容はブルッキングス研究所のホームページに紹介されたものです。
まず、ボゾグメールの意見です。
・ イランが核開発プログラムを放棄することに乗り気でないのは、米国がイラン国内の政権転覆政策を追求しているとイランが考えているからだ。イラン政府の見解では、アメリカのこの政策に対抗する最良の戦略はその核開発プログラムを継続することだということになる。
・ 核問題の交渉において膠着している理由は核開発問題だけにあるのではない。イランが核開発プログラムを追及しなかった場合でも、米国は、国際的危機を引き起こし、イランの政権転覆を要求するために人権無視、イラン国内での反対派や民主化の抑圧などの問題を指摘しただろう。イランの現政権が脅迫を受けていると感じている限り、イランは、表向きではナショナリスティックでイデオロギー的に見えるが、その本質においては防衛的な性格である核戦略を追及するだろう。
・ イラン政府が取っている戦略は、外部からの脅威に対する防衛だけでなく、民主主義と人権に対する西洋的価値観がイラン内部に浸透し、イラン国民の支持を得た場合に起こる可能性のある国内政治の不安に対する防衛にもなっている。イラン国民は非常に愛国的であるので、イランの指導者たちは核開発をめぐる対立をイラン国民が現政権の下に結集するために利用している。イランの経済的社会的状況は貧しいにもかかわらず、多くのイラン国民にとって、核開発プログラムは国家的威信の象徴である。
・ 1953年における米英情報部の活動によるモサデグ首相の失脚や1980年から1988年の間のイラン・イラク戦争における米国によるサダム・フセインの支持など、過去の記憶がイランとその国民を対象とした「国際的謀略」があるという国民の思いを強固にしていることを背景に、アフマディネジャド体制はプロパガンダを通じて効果的に国民のナショナリズムを操縦している。
・ イランの政治家は積極的に米国との激しい対立を求めたのではないが、アメリカのイラクへの関与とブッシュ大統領の国民による支持の低下により、米国はさらにイランに侵攻することには乗り気でないだろうとすべてのイラン人が確信しており、核をめぐる危機をさらにエスカレートすることが可能だ考えている。こうして、現政権の見解では、核をめぐる対立は西洋からの脅威に立ち向かう最良の戦略であり続ける。
次にスラビンの意見を紹介します。
・ 悪化しつつある経済的社気的条件にも関わらず、イラン国民が核開発計画に強力に賛成しているという、ボゾルグメールの意見に同感。
・ イラン国民は、インドやパキスタンに核のテクノロジーや兵器を所有することを許しておきながら、イランに対して核能力を開発することを阻止することは不公正だと感じている。したがって、イラン国民は、イランが核プログラムを開発する正当な権利を有していると信じている。
・ イラン政府はイランが弱い立場にあることを理解しているが、それでもイラク戦争、イラクにおけるシーア派に対する影響力の増加、ハマスによるパレスチナにおける権力掌握そしてヒズボラとの長期的な結びつきによって創り出されている「優位性」をうまく活用できると考えている。
・ イランの支配的エリート層は意見が分かれてはいるが、意思決定はアフマディネジャド大統領一人によるのではなく集団で行われている。
また、ボゾルグメールは、イラン内の改革派について、次のように述べています。
・ イランの多くの政治的党派は核開発プログラムの重要性については同意しているが、核開発プログラムをめぐる危機解決のためのアプローチに違いがある。現政権の指導者たちとは異なり、改革派は国連安保理への付託、経済制裁又はイランに対する軍攻撃は屈辱的な後退であると懸念している。
・ さらに、改革派は、米国による攻撃とその後のイランによる報復はイランとイランを取り巻く地域全体にとって予測を超える深刻な結果を引き起こすことを認めている。軍事攻撃はシーア派の改革主義を始動させ、スンニ派とシーア派との対立関係を煽り、イラン国内の世論を分裂に導く。最も重大なこととして、核をめぐる危機のエスカレーションが強硬派に対して反対勢力とイラン内の脆弱な民主的プロセスとを抑圧する言い訳を与える可能性があることを改革派は心配している。
ボゾルグメールは、米国はどのような行動をとるべきかとの質問に対し、「軍事攻撃はイラン内のまだ脆弱な民主主義のプロセスを弱体化させ、米国に対して共感を持っている国民にダメージを与えるので、避けるべきだ。イランの国民は米国の意図に懐疑心を持ち続けているため、軍事攻撃には予想できない方法で反応するだろう」と回答しています。
両名はアフマディネジャドが自らの対立を好む戦略の可能性に自信を持っているが、そのポピュリスト的国内政策は持続不可能であり、すでにそれは資本流出や投資の枯渇という形で、イラン経済に悪影響を与えていると見ています。そして、アフマディネジャドの政治的崩壊を待っている反対派が行動を起こしていないことの一部の理由が、この現政権の賢明でない戦略にあるとしています。
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