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イラン核開発問題

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米国タカ派の見解

前回はマイケル・クレア教授のこの問題に関する見解を紹介した。

今回は共和党に近い保守派として知られるヘリテージ財団のウエッブメモを紹介する。全文を翻訳したものをジェームス・フィリップ氏の許可を得ての掲載。

「核外交:イランにプレッシャーをかけ続けよ」

ジェームス・フィリップス、ブレット・シェーファー

ヘリテージ・ファウンデーション ウエッブメモNo1010、2006年3月8日

数年間に及んだ外交上の停滞、優柔不断そして希望的観測の末、国際原子力機関(IAEA)は、やっと今週イランの疑わしき核開発活動について国連の更なる行動を求めるために安全保障理事会に付託するかどうかについて投票することを決めた。イランはいつものように空約束と交渉の継続によって主要国を分断し、外交上の対立を遅らせようとしている。

イランの核交渉責任者のアル・ラリジャニは恫喝さえしている。
「安保理に付託された場合、その他の国々にも問題が生じるだろう。我々は我々の石油を武器として使いたくない。他国に被害を与えたくはない」と3月5日に述べている。
 
米国とその同盟諸国はこの策略を拒絶し、国際原子力機関による行動を頓挫させるためにイランが使おうとしている外交上の最終的な煙幕を拒否しなければならない。米国は国際原子力機関の迅速な国連安全保証理事会への付託を推進し、そこでイランの核不拡散条約違反と対決すべきだ。

現在のところ、テヘランは、イランにロシア内のウラン濃縮施設使用させるというロシアの提案をもてあそんでいるが、イラン国内でウラン濃縮を行う権利を要求することに固執している。イラン国内でのウラン濃縮はウランが核兵器開発に転用される可能性があるというリスクを増大させるものだ。そのような結末を断じて受け入れることはできない。

スローモーションの危機

現在の危機は2002年8月にナタンツでウラン濃縮プラント、アラクで重水製造プラントを発見したことをきっかけとしている。これら2つのプラントについてイランは何年も隠し、核不拡散条約義務違反であった。

国連安保理への付託を避けるため、イランは2003年10月にウラン濃縮活動を停止することに合意した。米国は2001年にアフガニスタン、2003年にイラクというイランの隣国の政権を転覆させた米国主導の軍事行動を成功させたが、イランがこれに影響されたことは疑いない。

イランは英仏独(EU3)との外交交渉において、危機を打開し、国際的制裁を回避するために戦術的譲歩を行った。しかし、イランは原子炉の核燃料と核兵器の核分裂性物質を製造することに利用できる完全な核燃料サイクルを整備するという明らかな目標から後退することはなかった。

2005年の夏のアハマディネジャド大統領に率いられたイランの新強硬派政権の発足によって、イランはより強硬な路線を採用した。ハタミ前大統領による外交的な譲歩を批判した新政権は、石油価格の上昇、ロシアと中国による外交的支援の強化、そして米国がイラクにおいて行き詰まり、もはや直接的な軍事的脅威とはなっていないことなどにより、イランの外交的立場が強化されたとどうやら結論付けたようだ。

2005年8月、イランはウラン濃縮前の準備段階の措置であるイエロー・ケーキ(ウラン鉱粗製物)の六フッ化ウランへの転換をイランのイスファーハンにある核施設で再開した。2006年1月10日、イランはその三つの核施設から国際原子力機関の封印を取り除き、ナタンツでウラン濃縮活動を再開したと宣言した。これはイランの核開発プログラムの部分的凍結を終了し、国際原子力機関の決議に違反し、EU3との外交対話を裏切ったことを明らかにした。

国際原子力機関はイランの活動を国連安保理に報告した2月4日の弱い決議で反応した。しかしながら、国際原子力機関の行動は、エルバラダイ国際原始力機関事務局長が3月6日に国際原子力機関理事会にイランの核活動に関する公式報告書を提出するまで遅れた。国際原子力機関は現在同報告書を検討し、今週末までに国連安保理に付託するかどうかの投票を行う。

しかし、これはまだイランに危機を和らげ、国際協調行動を回避するもう1つの機会を残している。イランは突然その方向を転換し、国際原子力機関による付託を回避する最後の試みの中でロシアの提案を取り込むことが可能だ。あるいは、ロシアと中国が国連安保理でイランのために仲を取り持つことを頼って、その挑発的な政策を堅持することも可能だ。

イランによる瀬戸際政策

 アハマディネジャド大統領はホメイニによる1979年革命の真の信奉者であり、対立を好む。「文明との対話」を提唱した前任のハタミ大統領とは異なり、アハマディネジャドは、イランがアメリカとイスラエルに敵対するイスラム世界を主導する、文明の衝突を提唱している。

 アハマディネジャドは、イランは核の野望を放棄すべきという要求を徹底的に拒否することを続けるだろう。すでにウランの「全面的な濃縮」を命令し、核不拡散条約の追加議定書の要求する抜き打ち査察に対するイランの協力を停止した。さらに、アハマディネジャドは核不拡散条約体制からの全面的離脱を行うと威嚇している。

 しかし、より冷静な考え方が今後優勢となる可能性もあろう。昨年夏の選挙でアハマディネジャドに敗北したラフサンジャニ元大統領は慎重さを呼びかけており、そのほかの人々を説得できるかもしれない。イランの最高指導者ハメネイ師はイランの外交政策の最終的な裁定者であり、容易に取り消し可能な外交的約束をもって、国際的な制裁を回避することを求める可能性もある。

 しかし、イランは国連安保理において賭けに出るつもりがあるように見える。テヘランは、いずれもイランの民生用核プログラムを支援し武器をイランに売却しているロシアと中国がイランと良好な関係を維持することに確定的な経済的戦略的利益を有していると計算している。過去において、ロシアと中国はイランの庇護者として行動した。そして、両国は安保理の中で効果的な制裁を遅らせる、内容を薄める又は阻止するためにその影響力と拒否権の効果を利用することができる。

国連を超えた行動

 ロシアと中国がイランをかばい続けるなら、国連安保理から期待できる最善のものは限定的な外交的制裁あるいは経済制裁による手ぬるい罰だろう。それゆえ、米国は英、仏、独、EU、日本及びその他の関係各国とともに協力して、国連の枠組みを超えた目標を絞った経済制裁を加えるための緊急プランを策定する必要があろう。

 米国はすでに単独で強力な制裁措置を実施しており、それをさらに強化することができる。たとえば、イラン産ピスタチオ、オリエンタルじゅうたんの輸入禁止だ。いずれもクリントン政権が失敗したイランとの外交的対話を始めようという努力のなかで制裁の適用除外となったものである。米国はまたイラン・リビア制裁法をより厳格に履行すべきであり、イランの石油産業に投資しているイラン国籍以外の企業に罰則を与えるものである。

 イランに対峙するに当たっての国連の弱腰にもかわらず、ブッシュ政権はイランを孤立させ、更なる制裁を加え、イランを封じ込める国際協力を強化するため、そして最後の手段としては軍事行動のための環境を整えるため、安保理での外交的立場を強めなければならない。

イランの核問題の平和的解決は?

                                      2006年3月13日

イランの核問題の国連安保理での討議を前に、イラン外務省のアセフィ報道官はイランのウラン濃縮をロシア国内で行うようにしてはというロシアの提案を「ロシア提案はもはや我々の検討すべき課題ではない。状況は変わった。我々は拒否権を持った常任理事国がどう決定するかを見守らなければならない」と述べた。これが国連安保理でこの問題を取り上げる前にあった妥協のための最後のチャンスをつぶした、としてロシア下院の国際問題委員会委員長の怒りを招いたと報じられている(ニューヨークタイムズ電子版3月12日)。

このイランの核問題は今後どのような展開となるかは予断を許さない。ここでは、最近読んだ米国内のこの問題に関する意見を紹介する。

まず、「血と油」(NHK出版、2004年)の著者マイケル・T・クレア教授の意見(Tompaine.com - Defusing The Iran Crisis、Michael T. Klare、March 03, 2006)を紹介する。

同教授は、米国とイラン双方の合意できる恒久的解決を行わなければ、武力による衝突の可能性がますます大きくなるだろうという立場だ。

冒頭に触れられているロシア国内でのイランのためのウラン濃縮の可能性がなくなり、イランがウラン濃縮活動を続けた場合、国連安保理がイランに制裁を科すことを決議するなら、イランは核不拡散条約NPT体制から離脱し、より大規模なウラン濃縮活動を始める可能性がある。これは、核武装したイランの出現を防ぐというブッシュ政権による公約を考慮すると、ワシントンの右翼的タカ派を軍事行動に訴えるという誘惑に抗しがたくさせるだろう、とクレア教授は指摘する。

イランに対する米国の一方的軍事攻撃は違法であり、賢明でなく、アフマディネジャド大統領の強硬路線に対するイラン国内の支持を高めることになり、イラクにおける宗派間の暴力的対立の激化やペルシャ湾の石油施設に対する攻撃などのイランによる手厳しい反撃を招きかねない。したがって、何らかの妥協点を見出すことが不可欠だ、とクレア教授は言う。

その解決策として、イランにとって「受け入れ可能な条件での恒久的かつ検証可能な形でのすべての軍事活動の停止」という解決策を考えることが可能だと、クレア教授は提案している。

具体的には、何らかの形態(ロシア国内あるいはナタンツにおいて厳しい制約条件の下で《筆者注:もし、ロシアの提案が冒頭に報道されたように、イランが拒否した場合は後者だけとなる》)でのイランによるウラン濃縮実験の継続を認め、同時に米国がイランを攻撃しないことを約束し、貿易での譲歩を行うことが必要。そうすることによって、核不拡散条約NPT体制の見直しや、中東地域の非核武装構想、最終的な核兵器廃絶へとつながるだろうと、クレア教授は主張する。

現在イスラム諸国に対する疑念と敵意がワシントンにおいてますます強まっていると思われ、ワシントン内にはイランの主張を弁護する形でこの危機を解決しようという政治的意欲が不足している。また、イランにおいては、アメリカによって強制されるいかなる解決策も「大悪魔」に対する屈辱的な敗北であるとして受け止められ、ほとんど支持を得ることができないだろう、と教授は指摘し、意見を異にしている両者の感情的、イデオロギー的対立を冷やす道を見出すことが平和的解決のために不可欠だとしている。

そのため、米国はイランを正当な交渉相手と認め、問題解決にプロフェッショナルな態度でアプローチすべきであり、「体制転覆(regime change)」に関する発言や武力行使の意向を見せることは控えるべきである。ワシントンはすでに北朝鮮にはそのようなアプローチで臨んでおり、イランにも同様な態度で臨むべきだ。同時に、イランの指導者は、国際社会の憤りを招いた反イスラエル・反ユダヤ的言動を止めるべきだというロシア及び中国をはじめとした国際社会の友人たちの意見を受け入れるべきだ。クレア教授はそう指摘している。

次回は、事態の進展にもよるが、いわゆる強硬派の見解を紹介しよう。

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