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イラク撤退を迫るプレッシャーに直面する米国
2005年7月15日
エリック・マークアート
Erich Marquardt
The Power and Interest News Report (PINR)
http://www.pinr.com/

ワシントンはイラクにおける武装勢力に勝利するための戦いを継続している。しかし、イラク介入に対するアメリカ国民からの支持は減少しつつあり、イラクからの米軍の撤退を開始せよというプレッシャーが強くなっている。イラクに対する介入は、1973年にベトナムからの米軍撤退を招いた失敗と同じ失敗をしている。どちらの場合も、現地住民による武力抵抗を押さえることに長期間失敗することによって、アメリカの軍隊と資源に受け入れ難いダメージをもたらした。ベトナムにおいては、勝利の展望もなく戦争が長引くにしたがって、米軍の撤退を要求する国民の声が次第に大きくなり、最終的に撤退に至り、ベトナムに対するアメリカの影響力を恒久的に失った。

イラクのケースでも、介入に対するアメリカ国民の支持が低下しつつあり、連邦議会における撤退の要求も大きくなりつつある。ワシントンがイラクの武装勢力に対して形勢を逆転することはかなり可能性の低いシナリオではあるが、そのようなことが生じない限り、ワシントンはこの紛争への関わりを限定的なものにすることを余儀なくされるだろう。

武力抵抗への道

米国がサダム・フセイン政権を転覆させた直後のイラクにおける武力抵抗は初期段階であった。ゲリラが米軍に対する最初の攻撃を行った後、米国の当局者は、武力抵抗が将来に向って大きくなり始めていることを公然と見くびっていた。米国のイラク侵略の約3ヵ月後の2003年7月1日、当時のイラクにおける米国政府の行政官であったポール・ブレマーは「攻撃は、新しいイラクに適応することを拒否し、ますます絶望的となりつつある数人の個人によって行われている」と述べている。

その後数ヶ月経て、武力抵抗はさらに過熱し、米軍の被害者数は増加した。武力抵抗活動が始まってから約2年が過ぎたが、その規模と内容は激しさを増した。武力抵抗は、日常的に米軍とその同盟軍、イラク軍および民間人を犠牲にしており、そのすべてが頻繁に起きる爆弾攻撃、走行中の車の中からの銃撃等の犠牲者となっている。イラク内務省によってニューヨーク・タイムズに最近提供された機密情報は、2004年8月から2005年5月の間に、武装勢力が1ヶ月に800名の民間人を殺したことを明らかにしている。恐るべき数だ。この情報源は、2004年8月以前の民間人の死者数を明らかにしていない。2年間の米軍の占領期間中、米兵は1,750名が殺されただけだが、犠牲者の数はアメリカ国民が予想した以上の数となっており、確実なペースで増加し続けている。

2003年末、米中央軍司令官であるジョン・アビザイド将軍は「イラクには、われわれを追い出すことのできる軍事的脅威はないということをアメリカ国民に強調しておきたい。われわれは、対処すべき困難な地域に世界最高の装備を備え、最も訓練された軍隊を送り込んでいる。これらの軍隊は自信を持っており、有能であり自分達が何をしているかをよく承知している」と断言した。

アビザイドの述べたことは正しいが、彼の述べたことは米国がイラクにおける作戦に成功するかどうかとは常に無関係である。武装勢力は米軍を打ち負かすことはできないことを十分承知しており、米軍を打ち負かすことは決して彼等の目的でない。これらの武装勢力の目的は、占領軍に直面している多くのゲリラの目的も同様だが、米軍の撤退を余儀なくさせる上で必要な長期間の不安定な状態を十分に作り出すことなのだ。

同じ戦略はベトナムの武装勢力に成功をもたらしている。南ベトナムのゲリラと北ベトナム軍の合同での攻撃はアメリカの世論に影響を与え、ワシントンは軍隊を撤退させている。1980年代におけるソ連のアフガニスタンに対する介入も、アフガニスタンのゲリラがゲリラ活動を長期化させることによって、ロシア軍を撤退させ、武装勢力の側に同様の勝利をもたらす結果となった。そして、チェチェンにおいても、ゲリラがロシア軍に対してこれと同様の戦いを未だに続けている。

米国陸軍大学における軍事戦略の研究教授であるマックス・マンワーニング博士は、2005年1月、「米国がイラクにおける武力抵抗を打ち負かす可能性は低い」とPINRに述べた。第二次大戦後の武力抵抗に関する彼の研究は、西側の大国が軍事行動を激化させればさせるほど、その政府は武力抵抗に敗北する可能性が高くなることを示しており、また、介入を行っている大国が、悪化する状況に対応するためにその兵力を増加させれば、それだけ状況は悪化するということを示している、とマンワーニングは述べている。そして、土着の武装勢力を打ち負かそうという占領軍が一貫して敗北を続けてきたことを明らかにした。

現在、米国のイラク侵略から2年以上が経過し、米国民には疲弊した兆候が見え始めている。米軍の被害者数は確実に増加し、武装勢力に打ち勝つことに成功するいかなる兆しも見えず、全体の作戦を原因とする経済的負担が重荷となっている。そのため、ますます多くの連邦議会議員がブッシュ政権に軍隊の撤退を開始するようプレッシャーをかけている。ブッシュ政権が国内政策の実行に問題を抱えていることもその外交政策に対する継続的な支持を得る努力を阻害している状況だ。

イラクに留まる決意を失いつつある米国

2003年末に、アビザイドは正しくも「敵の目標は米軍を打ち負かすことではない。アメリカ合衆国の意思をくじくことであり、われわれを退去させることだ」と述べた。2003年7月始め、民主党上院議員で上院軍事委員会の委員であるカール・レビンは「米軍はイラクを何年間か占領するであろう。それゆえ、アメリカ国民はその路線を堅持するための辛抱が必要だ」と述べた。しかし、2003年7月9日にPINRが主張したように、そのような誓いにもかかわらず、イラクの武装勢力は、民主主義国、特に米国や英国のように繁栄した社会と対決するときに、母国の国民の決意を弱めるには、戦死者の数を増やすことが最良の手段であるということを十分に意識している。

アメリカ国民の決意は弱められた。2003年半ばに行われたギャロップの世論調査おいては、76%の米国民が「イラク戦争は行うだけの価値がある」と答えた。2005年6月の現在、同じギャロップによる調査では、わずか42%のアメリカ人が「イラク戦争にその価値がある」と考えているだけである。同じ世論調査は、アメリカ人の59%が「イラクからの米軍の一部あるいは全面撤退」を支持している。また、6月16日に発表されたCBSニュース/ニューヨーク・タイムズの世論調査では、51%のアメリカ人が「ワシントンは最初からイラクに手をつけるべきでなかった」と考えていることを示した。もちろん、アメリカ国民が完全な撤退を要求しているというにはまだ程遠い状態にある。実際、7月14日に発表されたウォールストリート・ジャーナルによる世論調査は、「イラクが自らを統治することができるまでイラクに一定の軍隊を駐在させ、経済的支援を継続することは重要である」と57%のアメリカ人が考えていることを示した。しかしながら、いずれにしても、イラク介入に対するアメリカ国民の全体的な支持がかなり低下してきたことは明白だ。

共和党と民主党からそれぞれ2名ずつの4名の連邦議会議員が2006年10月以降のイラクからの米軍の撤退を要求する決議を連邦議会に上程した。6月16日、41名の民主党下院議員議員が「イラクからの撤退」のためのグループを結成した。ブッシュ政権を常に支持してきた保守派の共和党下院議員ウオルター・ジョーンズ・ジュニアは「1,700名の死亡者と12,000名の負傷者が生まれ、2000億ドルの費用を使った後、われわれは現在これらについて論争し、議論すべきだと信じている。われわれは現在どこに立っており、これからどこに向おうとしているのかということについて新らたな視点から検討を加えるべきだ」と述べた。

イラクに対する介入の主要な提唱者であったネオコン志向の団体であるアメリカン・エンタープライゼズ・インスティチューション(AEI)の軍事アナリストのトーマス・ドネリーは「ウオルター・ジョーンズのような共和党の一般の下院議員がこのような問題をホワイトハウスに質問するときは、政治的計算の変化を反映しており、そのことは大統領や戦争にとって好ましいものではない」と最近新聞記者に告げている。

現地での作戦が何らかのはっきりした結論に向かって動いているように見えないときには介入が一層強化されることとなり、これらの反応や声明はそのような介入に対する論争の初期のステージであることを反映している。ブッシュ政権はこのような傾向が強くなることを懸念しており、それが6月28日に大統領が米国の約束を強固なものにすることを求めて特にアメリカ国民に呼びかけを行ったことの理由だ。

とはいえ、ブッシュ政権が公式に発言していることがひそかに計画しているものとは大きく異なることはあり得る。最近漏洩され、国際的なメディアにおいて頻繁に引用されている英国の秘密文書によれば、ブッシュ政権は2006年に米軍を撤退させる計画を検討中である。

英国防相ジョン・リードから英国首相トニー・ブレア宛てに書かれたメモは「米軍には大幅な兵員削減要求がある。現在作成されている計画は、2006年初めまでに、18州のうち14州をイラク人による統治に任せることを想定している。これによって、連合軍の兵力を176,000名から66,000名に削減することが可能となる。しかしながら、兵力数について比較的に大胆な削減を好む米国防総省・中央軍司令部と、より慎重なアプローチをしている多国籍軍との間には見解の相違がある」とのことを明らかにしている。

この見解の違いの多くは米軍の構成に由来する。すべて志願兵から構成されている米軍は長期間に及ぶ大規模な作戦を行うには適していない。米軍の任務を処理するために、ワシントンは陸軍の予備役と州兵に大きく依存してきた。すべての新たに補充される兵員は自分達がイラクにおける任務に就かなければならないということを知っており、多くの補充要員はこれを受け入れたくない。このことが米軍の新兵補充能力に影響を与えている。例えば、州兵は2003年と2004年の兵員補充目標を達成できなかった。そして、現在、連続して9ヶ月間その目標を達成できない状態が続いている。州兵は現在イラクの米兵の3分の1以上を占めている。予備役と現役兵力も2005年の兵員補充目標を満たしていない。これらの一連の問題は、ワシントンのイラクに対する現在の兵員派遣約束を長期的には持続不可能なものにしている。

さらに、米軍はイラクに集中しており、その展開は過度になっている。これによって、ワシントンが世界のその他の地域で新たな作戦を始める機会を減少させている。このことは、米国の国益と相反する戦略を追求する国々にとっては、米国による軍事的対応という見通しにあまり懸念を持つ必要のない状況を作り出していることになる。

(続く)

北朝鮮の核問題と東アジアにおけるパワーバランスの行方

2005年5月12日
エリック・マークアート
Erich Marquardt
パワーアンドインタレストニュースレポート
Power and Interest News Report
http://www.pinr.com

北朝鮮とイランの両国はいずれも米国の国益と直接に対立することとなる一連の行動を取り続けている。北朝鮮は、核兵器を保有しており、米国からの何らかの譲歩を得られない限り核兵器の生産を続けるつもりであることを宣言した。また、イランは、核燃料サイクル統制の意向をはっきりと表明し、それによって、核兵器を秘密裏に開発することを計画しているのではないかという世界の懸念を高めた。

イラクに対する介入で手がいっぱいとなっている米国は、自国の国益に関わるこれらの2の脅威への対応という難しい問題に直面している。ブッシュ政権は自らにマイナスになる思われうる事態が一層エスカレートすることを押さえようとしている。そのような状況の中で、北朝鮮とイランがその目的を達成できるかどうかは不明である。イランの現在の状況がどう展開するかをさらによく見極めるには今後の事態の展開を待つ必要があるが、北朝鮮に関する状況は明らかだ。

賭けにでた北朝鮮

北朝鮮は実戦的な核兵器を開発したと主張している。米中央情報局(CIA)は北朝鮮が1基か2基の核兵器を所有していると信じており、国際原子力機関(IAEA)事務局長モハメド・エルバラダイはその数は6基にのぼるとみている。

5月1日、平壌は日本海に向けて短距離ミサイルを発射することによって、周辺地域の目標に核弾頭を到達させる能力があることを実証した。北朝鮮が米国西岸にまで核弾頭を到達させることができるということもあり得る。

このミサイルテストを背景に、北朝鮮がもう一歩踏み込み、地下核実験を行うのではという懸念がある。平壌が、咸鏡北道(ハンギョンプクド)の吉州(キルジュ)にある地下実験場とみられるところで実験観察用スタンドを建設し、現場から土を除去している映像をアメリカの偵察衛星は記録している。北朝鮮は、朝鮮戦争記念日の6月25日あるいはその前後でこの地下実験を実施する可能性がある。

押さえられた緊張

瀬戸際外交政策を採っているにも関わらず、北朝鮮外務省スポークスマンは5月8日、「朝鮮半島を非核化するために、交渉による解決策を追求するというわれわれの意思は変わらない」と述べた。この声明は平壌が核兵器の実験を行うつもりがあるのかどうかに触れてはいないが、一方で、平壌が核兵器の脅威を米国との交渉の材料としてどのように利用してきたかをうかがわせるものとなっている。平壌は、現在の方針を変えるには、ブッシュ政権が北朝鮮を主権国家として認めることが必要であり、核問題について直接協議を持つことに同意すべきだと主張している。

5月9日、ワシントンはこれに反応し、事態の一層の深刻化を押さえるための措置を採った。米国務長官コンドリーザ・ライスは、「米国はもちろん北朝鮮を主権国家と認めている」とCNNで述べた。そして、米国務省のスポークスマンであるトム・ケーシーは、「米国と北朝鮮は3回の6カ国協議のそれぞれのラウンド期間中に直接協議を実施しており、もし北朝鮮が六カ国協議に復帰するなら、米国は確実にその前例に従うだろう」と説明した。

ワシントンの譲歩は、ワシントンが核武装してしまった北朝鮮と交渉する事態になることを望んでいないということを反映している。北朝鮮が核武装するという事態は、イラクでの引き続く武装勢力の抵抗によって米国の軍隊が過度に展開しているまさにそのときに、米国が軍事力の均衡の変化に対応することを強いることになるからだ。(「再建または後退:アメリカの戦略的ジレンマ」参照)

北京による平壌の説得を仕掛けるワシントン

中国は北朝鮮の資源の多く、特に食料とエネルギーの供給源となっている。このことから、米国は中国が北朝鮮に圧力を行使することを求め続けてきた。そして、中国は、朝鮮半島を非核化することに本気でコミットしていることを公式に宣言している。

それにもかかわらず、北朝鮮政権の崩壊が中国に難民の流入をもたらし、北朝鮮の再建のために中国の貴重な資源を使わせることになることから、中国は北朝鮮政府の崩壊という事態になることにより大きな懸念を抱いている。したがって、中国は、米国に行動を起こさせることになるような核兵器の実験を北朝鮮に行わせず、一方で同時に北朝鮮に核兵器保有の脅威を有効にしておくことを許すという政策を追及しているように思われる。北朝鮮の核兵器プログラムに関するあいまいさが存在している限り、北朝鮮の潜在的核兵器能力に対する懸念から、外国が北朝鮮に対し軍事行動を仕掛ける可能性が小さくなるだろうと考えられるからだ。

例えば、エネルギーと食料の供給を停止することによって平壌に圧力をかけるようワシントンから要求されたとき、中国外交部の劉建超(リウ・チェンチャオ)報道官は5月10日、「通常の貿易の流れは核問題と関連付けるべきでない。われわれは高圧的姿勢で問題を解決しようとすることに反対だ」と述べて要求を拒否した。劉報道官はまた、この問題を国連安全保障理事会において取り上げることについて、「この問題に取り組む正しいチャンネルは国連安全保障理事会ではなくて、6カ国協議だとわれわれは考えている」と述べ、警告した。また、「6カ国協議に参加していない国は6カ国協議の継続にとって好ましくないことを言うべきでなく、すべきでもない」とも劉報道官は述べている。(「北朝鮮に対するプレッシャをかける米国による努力」参照)

予想できること

北朝鮮にとって最も安全な外交的行動は不承不承ながらも六カ国協議に復帰することだろう。そうすることによって、北朝鮮はその隣国や米国の譲歩と引き換えにゆっくりとその武器プログラムに関する交渉を継続することができるからである。実際のところ、これこそが北朝鮮の戦略だという可能性もある。例えば、北朝鮮は過去にアメリカの偵察衛星を混乱させる手の込んだ演習を行ったことがあり、吉州(キルジュ)での最近の出来事もその最も新しい企みにすぎないかもしれないのだ。

また、北朝鮮との対立は中央アジアと中東で続いている紛争のため、米国にとって最も不適切なタイミングで生じていることから、ワシントンはそれが一層エスカレートすることを望んでいない。中国もまた、北朝鮮の核施設への空爆をする等の措置を採らざるを得ない状態まで北朝鮮が米国を刺激する事態を望んではいない。

とはいえ、核実験をすることによって自国が核大国であると宣言するため、平壌がさらに一歩踏み出すということはあり得る。自国の核兵器整備はパキスタンとインドの例に従っているだけだと北朝鮮が正当化する可能性がある。両国の場合、国際社会は当初否定的な反応を見せたが、時間をかけて不承不承核宣言を受け入れた。もし北朝鮮が、米国による攻撃を招くことなく核兵器を開発することができるなら、北朝鮮は東アジアにおける力を飛躍的に増大させ、同地域におけるパワーバランス(力の均衡)を大きく変えるという結果を招くだろう。

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日本のナショナリズムの代価
2005年4月13日
エリック・マークアート
Erich Marquardt
パワーアンドインタレストニュースレポート
Power and Interest News Report
http://www.pinr.com,

週末にかけて中国で広がった反日デモは、日本においてナショナリズムが強まりつつあるあるということをあらためて明らかにしている。抗議運動は、日本の文部科学省が20世紀の歴史の初期に起こった戦争での日本の残虐行為を糊塗した教科書を公に承認したことを受けて発生した。推計1万名から2万名の中国人が北京の日本大使館に向って抗議のデモ行進をし、大使館施設に投石をした。さらに、4月10日には推計2万名のデモ隊が広東州南部の二つの都市で行進し、深川にある日本のスーパーを攻撃した。

この抗議行動は中国と日本が1972年に国交回復を正常化して以降最大の反日デモと考えられる。また、コソボ紛争中の1999年に米国がベルグラードにある中国大使館を破壊したとき以降の中国国内における最大の抗議行動でもある。週末にかけて、同じ問題をめぐって、韓国においても規模は小さいが同様の抗議行動が広がった。中国と韓国の両国は20世紀前半に日本の領土拡張政策の犠牲となった経験のある国だ。

日本の文部科学省による決定は、日本の隣国の感情を刺激した一連の日本政府による国家主義的行動に続くものである。例えば、日本は中国と台湾との間で尖閣諸島(釣魚台諸島)を巡る紛争に関与している。また、日本は日本において「竹島」と呼ばれ、韓国が領有する主張する「独島」という韓国の呼ぶ小島を日本の領土と主張している。日本の戦死者を奉じている一方で、特に14名のA級戦犯を含む1000名を超える戦犯を合祀している靖国神社を小泉純一郎首相をはじめとする日本の指導者達は参拝し続けている。日本の軍隊はその潜在的力を強化しつつあり、軍を強化し、その兵力を遠方のイラクにまで展開している。さらに、日本は中国本土による侵略から台湾を防衛するためにアメリカに協力するという宣言に明らか見てとれるように、日本政府はこれまで以上に自己主張の強い外交政策を宣言している。

日本のナショナリズム

強まりつつある日本のナショナリズムは、より独立した外交政策を展開し、軍事力を増大させたいという日本の願望から生じている。日本の指導的政治家の多くは日本が強力な日本国へと復帰することを夢見ている。それらの政治家にとって、日本国民の間にナショナリズムを強化することはより強力な軍隊に対する支持を増大させるために必要なシナリオとなる。

20世紀前半の東南アジア全土を通じての日本の暴力的な領土拡大に対する反省に立って、これまで、このような水準のナショナリズムは自制されてきた。しかし、最近日本の社会は変化した。第二次世界大戦前とその期間中の日本の行動についての記憶は薄らぎつつある。一方、中国は飛躍的にその力を増大させつつある。そして、アメリカはイラク戦争の問題に直面していることから、中国との紛争が勃発した際に、アメリカが日本の防衛に完全に関わる確実性は減少している。

このようにアメリカに依存しきれないということが、日本の多数の指導的政治家が日本の軍事強化にむけた社会的条件を作り出すため、日本のナショナリズムを一層刺激しているということの背景にある。日本政府は、現在韓国によって領有され占拠されている竹島や、日本によって占拠されているが中国と台湾が競ってこれに異論を唱えている尖閣諸島などの一連の諸島に関する主張を強めている。さらに、日本はその歴史教科書に第二次世界大戦時代の軍国主義的過去について盛り込むことを求める国際的なプレッシャーに抵抗している。例えば、最近承認された教科書の一つにおいて、日本の文部科学省は、日本軍のための売春婦と性的奴隷とされた10万名から20万名の「慰安婦」の強制収容、強制労働を無視し、1937年に起こった中国南京での民間人および戦争捕虜の虐殺という日本軍の行為の詳細について触れない歴史教科書の使用を許可した。

問題の教科書を書いた組織である「新しい歴史教科書をつくる会」は「日本における歴史教育の非常に深刻な状況」に深く憂慮するという国家主義的な学者達から構成されている。同会の副会長である藤岡信勝は、「日本は現在われわれの子ども達を根拠のない、戦時の、敵性プロパガンダを用いて教育している。子ども達が自分達の先祖はとんでもない極悪非道な人達であったと思わされているということが容易に想像できるだろう。実際には、日本人による戦争犯罪が他国民によって犯された戦争犯罪よりもひどいものであったということ証明する証拠はない」と説明している。

藤岡は、「慰安婦」問題を論じて、「売春それ自体は悲劇的なことだった。しかしながら、女性達が日本軍によってそれを強制されたということを示す証拠はない。もしそうであったなら、誇り高い韓国人は、その結果がどうなるかを省みることもなく、怒りを持ってすべての日本人を殺すために立ち上がっただろうとわたしは思っている」と述べている。

日本の歴史にその隣国の国民が非常に敏感であるという背景を考慮するなら、日本政府がこのような発言を支持することは、おのずと20世紀始めの日本の拡大による被害を受けたこれらの国々の反日的ナショナリズムを刺激することになる。それが今日実際に起こっている反日デモにつながっているのだ。日本政府は先に述べたような情報を日本の歴史教科書に盛り込むべきであるとする中国と韓国の要求は、日本の政治指導者によって単なる反日的な意見だとして片付けられつつある。そのような中国と韓国の要求を無視することは日本人のナショナリズムを刺激し、国民を日本の再武装と国家主義的な外交政策に向けて追いやることになる。藤岡が主張するように、日本の子ども達に自虐心を植え付けることに反対するという彼等の意見をますます多くの人々が共有するようになってきている。

中国政府は自国民を満足に養うことに失敗していること隠蔽するための材料として反日的意見を利用していると日本の指導的政治家は主張している。日本の政府与党である自由民主党服幹事長の安倍晋三はこのことについて、「日本はその怒りを発散させるためのはけ口となっている。(中国における)反日教育があるために、これらのデモに火をつけるのは簡単であり、インターネットがあるので多数の人を集めやすい」と述べた。このような発言が、日本のナショナリズムを推進している者達により一層権力を与えるべきだということを日本国民の一部に確信させることになる。

さらに、抗議の後に、日本政府は中国政府にデモに関する謝罪を要求した。中国政府はアジア地域において大国となるという野心を後押ししつつある自国民のナショナリズムに注意を払っており、日本に対する謝罪を拒否した。その際、中国外務省の秦剛報道副局長は、「中国に対する侵略の歴史のような中国人民の感情に関わる大きな問題に対して、日本政府は、真剣かつ適切に対処しなければならない。日本政府は、反対のことをするのではなく、相互信頼を高め、中日関係の総合的利益を守るための一層の努力をすべきだ」と発言している。

日本政府は日本の国益を危うくしている

日本の行動は韓国および中国両国との関係に傷をつけた。日中間にはつねにナショナリズムに基づく緊張が存在している。一方、日本と韓国とは双方とも米国の軍事的な傘の下にいたことから、日韓関係はこれまで安定していた。ソ連との長い冷戦時代、中国が共産主義勢力であり、北朝鮮からの侵攻に対して米国が韓国側に立って戦っていた時代には、日韓両国は米国によって支援され、保護されていた。日本政府は韓国政府との緊密な関係を維持することが重要である。韓国を孤立化させることは、日本が韓国政府を一層中国政府よりに追いやることになる。このような事態は中国政府が歓迎することではあるが、日本政府はそのような動きを助長すべきではない。(拙稿「日本と韓国の強力な関係を維持することの重要性」を参照されたい。)


韓国の盧武鉉大統領は3月23日に、「韓国政府は、日本の侵略と殖民地支配主義の歴史を正当化し、アジア地域での覇権を復活させようという試みに断固たる対処をする以外にもはや選択肢はない。両国間での各種の交流を減らし、経済問題を引き起こす原因となりうる強固な外交戦になる可能性がある。しかし、多くを心配することはない。われわれは、真に必要なときには、困難に耐えることができる」と警告している。

実際、韓国政府は日本が国連安全保障理事会の常任理事国入りの努力に反対すると述べている。常任理事国となろうとする日本の動きは、アジア地域での力を増大させたいという日本の願望の一部である。日本は、国連内では米国とオーストラリアによって支持されているが、韓国の国連大使金三勲は、「過去に対する反省を欠いているために、その隣国の信頼を得ていない国が世界の指導者としての役割を果たすには多くの困難がある」と述べている。

中国は日本が常任理事国入りに反対する韓国の動きに加わった。4月12日、中国の温家宝首相は、日本の常任理事国入りに関連し、「歴史を尊重し、責任を果たし、アジアと世界の人民の信頼を勝ち取る国だけが、国際社会の中でより大きな役割を果たすことができる」と述べている。

日本は現在、東アジアにおけるバランスオブパワーを維持するために日本を利用している米国とオーストラリアの戦略的支持を得ているが、これらの両国は地理的に遠い国だ。そのため、日本は、冷戦時代に西側であった歴史があり、東アジアにおける経済大国でもある最も近い隣国である韓国との戦略的同盟関係という連合を築き上げることが重要である。それゆえ、韓国との関係を悪化させることは、同地域において日本をさらに孤立させることになり、日本の国益に悪影響を及ぼすこととなろう。

結論

日本のナショナリズムは東アジアにおけるバランスオブパワーが変化していることを日本が認識したことから生じた反応である。中国が経済大国として成長し続けていることが日本にその外交戦略を再考させることの原因となっている。日本は現在、中国との良好な貿易関係を有しており、両国間の貿易は2004年に17%増加した。それにかわらず、中国が現在採っている路線は東アジアにおける最強の国としての日本の役割を押しのけようとするものであり、中国は東アジアにおける日本の力と影響力に対する脅威となっていると日本のナショナリズムは認識しているのだ。

このような脅威に対抗するため、日本政府はその軍事力を増強する一方で中国の封じ込めを支持することも間接的に宣言している。それは、中国による台湾侵攻に際する米国の防衛に日本も協力するという日本の声明によって証明されている。東アジア地域における力を維持しようと望むなら、米国との関係は非常に重要である。しかし、同時に、日本は、列島の西側沿岸全体が中国によって牛耳られたブロックに面したままで、東アジアの末端で孤立しているというような状況にならないよう、他のアジアの国々とも協調することが必要だ。

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