国際政治の視点

国際政治に関するレポートの翻訳と意見の紹介です

資源問題

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全1ページ

[1]

イラク撤退を迫るプレッシャーに直面する米国(続き)
2005年7月15日
エリック・マークアート
Erich Marquardt
The Power and Interest News Report (PINR)


(承前)

米国撤退の持つ意味

米国のイラクからの撤退は米国の国益に悪影響を及ぼすだろう。それはゲリラとの紛争に勝利することがワシントンにとって繰り返し困難であることを示す好個の例となるからである。ベトナムでの撤退からソマリアでの撤退まで、米国はそれぞれの国における武装勢力に対処し、勝利することに絶えず問題を抱えてきた。イラクから撤退することになれば、将来の武装勢力をさらに大胆にするだろう。

米軍の撤退はイラク内でのスンニ派クルド人、スン二派アラブ人そしてシーア派アラブ人の間の内戦に至る可能性がある。そのような混乱はその他の地域にも飛び火し、世界のエネルギー供給に脅威を与え、石油に依存しているすべての国々の経済に打撃を与えるだろう。

イラクからの撤退を行うに当たって、ワシントンは米国主導の同盟軍によって訓練されたイラク軍が武装勢力との闘いにおいて米軍に取って代わることができると主張するだろう。もちろん、連合軍によって訓練を受けたイラク軍が米軍の失敗した分野で成功することができ、同時に米国の国益に沿った結果を生み出すことができると信じることは困難である。このため、イラク軍が内戦を防ぐことができる、あるいは武力抵抗を弱体化させる大きな影響力を持つことができるということは期待できない。

それにもかかわらず、米軍のイラク撤退というこのシナリオのもとでは、米国主導の連合軍の残留部隊はおそらくイラク周辺のいくつかの軍事基地に駐屯することとなろう。この再配置の目的はイラクの治安部隊に対する兵站と軍事的支援を提供することにある。ベトナムに対する介入とは異なって、米軍は国家の組織的な軍隊を敵として対峙するわけではないので、この計画は実現可能だ。米軍は、国家の軍隊に代わってゲリラ勢力からの攻撃を撃退しなければならないが、それ自体は大きな脅威ではない。また、米軍の存在は、イラクの内政への干渉をしてはならないというイラクの隣国に対する警告としても役立つ。さらに、それによって、ワシントンは中東におけるその他の作戦の出発点としてイラクを利用することも可能となる。そのことは、そもそも介入の背後にあった理由のひとつであった。

もう一方で、イラクにさらに留まり続けることは、米国にとってより不利となるだろう。介入は米の軍事力の限界を露呈し、ワシントンは長引く武装勢力との戦いに従事するために必要な兵力を保有していないことを示した。イラク紛争はワシントンの兵員補充目標に打撃を与え、イラクに再配備するため、韓国などから軍隊を引上げさせることを余儀なくさせ、米兵にとって決して好ましくない長期駐在を強いた状態にしている。これらの問題が現在の世界の多極化に向う傾向を作り出している理由の一部となっている。中国、インド、ロシアそしてブラジルなどの地域大国が、北朝鮮、イランなどの国々とともに、ワシントンはあまりにもイラクに関わりすぎているため、彼等の地政学的動きを阻止できる状態にないと判断しているからだ。イラクにおける失敗と損失を切り捨てることによって、米国は地域大国により大きな影響を与える力強さと能力の一部を回復し始めることができる。

ブッシュ政権は、武力抵抗に耐える、あるいはイラクから撤退する、といういずれの行動も明らかに否定的意味合いを持っているため、困難な立場に立っている。とはいえ、イラクにおける作戦が現在のような状態のままに推移するなら、ワシントンは米軍を撤退させることを強いられることとなろう。米国は現在の規模の作戦を何年も続けるだけの軍隊の強さも政治的意思も持っていない。イラク介入後わずか2年で、米軍を撤退させろというアメリカ国民と連邦議会議員からの要求は強くなってきている。より重要なことは、ベトナムのときとは異なり、現在の米国は米軍の過度の展開を結果的に招くこととなった徴兵制度に頼っていないということだ。徴兵制度に依存した米軍の過度の展開によって、米国はベトナム戦争からその兵力の撤収を始めるまでに4年間の戦争を必要とした。イラクの場合、時間的枠組みはもっと短くなると考えるべきだ。


*The Power and Interest News Report (PINR)は、国際関係を背景とした国際的紛争に関する分析サービスを提供するためのオープンソースの情報を利用している独立的組織である。PINRは主題に対してそれに関わる権力と利害に基づくアプローチを行い、道徳的判断は読者に委ねている。

開く トラックバック(3)

アメリカに対抗する中国・ロシア・イラン三国同盟の形成(2)


ジェフライム・P・ガンジク
http://japanfocus.org

(1)からの続き

テヘランに近付く北京とモスクワ

2004年3月、中国の国営石油販売会社の珠海振戎公司(Zhuhai Zhenrong Corporation)がイランから液化天然ガス(LNG)を1億1千万トン輸入する25年間の契約に署名した。この後に、もう一つの中国国営石油会社シノぺックとイランとの間で2004年10月に締結されたもう一つのより大きな契約がある。この取引は約1000億ドルの規模で、中国がイランのヤダバラン油田から25年にわたりさらに2億5千万トンの液化天然ガスを輸入することを可能にするものだ。液化天然ガスに加え、ヤダバランのディールは同じ期間で中国に一日当たり15万バレルの原油を供給する。

この巨大な取引はまた、イランのエネルギー探査、発掘、生産および石油化学・天然ガスインフラに対する中国の大幅な投資を含んでいる。イランのエネルギーセクターに対する投資総額は25年間でさらに1000億ドルを超えるだろう。2004年末、中国はイランの最大の石油輸出国となった。石油と天然ガス供給契約以外に、中国の国営石油企業によって約束されているイランのエネルギーセクターに対する多額の投資は、米国のイラン・リビア制裁法に抵触している。同法はリビアまたはイランのいずれかに2千万ドル以上投資する外国企業に罰則を科すものである。

米国の法律の適用を逃れることは中国にとって何ら新しいものではない。北京もモスクワ同様、テヘランに1980年半ば以降、高性能ミサイルとミサイル技術を供給してきた。中国はイランに対して、「シルクワーム」のような地対艦ミサイルに加え、地対地巡航ミサイルを売却し、また、ロシアと一緒になって、イランの長距離弾道ミサイルの開発を支援してきた。これらの支援には射程距離約2000キロメートルのイランのシハブ-3およびシハブ-4ミサイル開発に対するものが含まれている。イランはまた射程距離約3000キロメートルのミサイルを開発しつつあるともいわれている。

2004年の末に、前米国務長官コリン・パウエルがイランは核弾頭を運ぶための長距離弾道ミサイルを採用するための作業をしていると主張した。中国も2004年にイランのために新タイプの数基の対艦誘導ミサイルを生産していると信じられていた。中国とロシアのミサイルおよびミサイル技術ならびにミサイル技術開発支援は2000年の米国の対イラン核兵器拡散防止法に抵触している。同法は、「イランが大量破壊兵器およびミサイル搬送システムを獲得しようとする努力に支援を提供する企業の国に対して制裁を課すこととする」と特に規定している。

 過去の数年間において多数の中国およびロシアの企業がミサイルとミサイル技術をイランに売却したことによる制裁を受けてきた。そのような売却は減少あるいはストップすることはなく、イランのミサイルの取得と開発のペースは加速されてきた。中国とロシア、中国とイランとの関係のように、ロシアのイランとの関係も過去18ヶ月の間にかなり進展した。イランに対するロシアの投資の増大と両国間の武器取引の増加に加え、ロシアはイランの創生期の核エネルギー産業に深く関わってきたのである。

激しい論争と繰り返す米国の介入の後、ロシアとイランは2月最終的に、ブシェールにあるイランの原子力発電所へのロシアの核燃料搬送のための方法を明らかにする取引に署名した。ブシェールに関するワシントンの主要な懸念は同発電所での使用済み核燃料の意図的な利用である。この使用済み核燃料は廃棄、再処理または核兵器に利用可能なプルトニウムの製造への使用が可能である。ワシントンに対しこれらの三つの可能性のいずれもが現実とならないことを保証するため、ブシェールからのすべての使用済み核燃料はロシアに返還されることをモスクワは約束したのであった。

それにもかかわらず、ワシントンはブシェールの稼動がテヘランが持っていると思われる核兵器プログラムを前進させることになると確信している。イランの核兵器プログラムの証拠は根拠が薄いが、米国はイランがロシアの支援を受けて核兵器を開発するための作業をしていると確信し続けている。

新たな地政学的同盟
エネルギー取引、投資および経済開発とともに、中国・イラン・ロシア同盟は共存を可能とする外交政策を育て上げてきた。中国、イランおよびロシアは台湾とチェチェンに関する外交政策に対する同一の姿勢を持っている。中国とイラン(イランは自国の地位を「イスラム共和国」と自ら宣言しているにもかかわらず)はプーチン政権のチェチェン独立派に対する戦争を完全に支持している。ロシアとイランは中国の一つの中国政策を支持している。台湾独立に対する中国政府の不寛容を明らかにすることを狙った最近の中国による「反国家分裂法」の制定は、ロシア政府とイラン政府によって支持された。

この同盟の最も注目すべき側面は、大きく非難されているイランの核エネルギープログラムに対する中国とロシアの支持である。プーチン政権は、イランの核エネルギープログラムを非難する、あるいはイランに対する経済制裁を適用するという国連安全保障理事会の決議をロシアは支持しないことを一貫して明らかにしてきた。2月、プーチンは、イランが核兵器を開発することを求めていないことを確信していると述べ、ブッシュ大統領との会談に先立って、イラン政府を支持するため、イランを訪問すると発表した。

中国政府もイランに対する国連行動に反対するモスクワに共鳴した。2004年10月に中国とイラン間の歴史的なガス石油取引を結んだ後、中国の外相李肇星Li Zhaoxingは、中国はイランの核エネルギープログラムに対する国連安全保障理事会の動きを支持しないと宣言した。中国とロシアは国連安全保障理事会において拒否権を持っているため、その両国が国連における対イランの動きに反対していることの意味は大きい。

ロシアと中国によるイランの核エネルギープログラムに対する支持は、中国-イラン-ロシア枢軸の背後にある主要な動機を明らかにする。米国による単独行動主義と地球規模の覇権を求める意図に対する対抗である。中国とロシアにとっては、このことはアジア、中央アジアおよび中東における米国の影響力を最小化することを意味している。イランの現政権にとっては、米国を寄せ付けずに置くことが生き残りの手段である。

2004年10月にプーチンが中国に国賓として訪問したときに発表された共同声明は、ブッシュ政権の単独行動主義的外交政策に対する中国とロシアの嫌悪感をはっきりと示していた。中国とロシアは「国際的紛争は国連の主導のもとで緊急に解決する必要があり、国際法の普遍的に認められた原則を基盤にして危機を解決すべきであると考えている。いかなる強制的行動も国連安全保障理事会の承認を得て行われなければならず、その監視のもとに実行されなければならない」と共同声明で指摘した。

この声明が発表された2週間後、そしてちょうど米国大統領選挙の前、米国の単独行動主義に反対する中国政府の姿勢が、中国の前外相であり中国において最も尊敬されている外交官といわれる銭基シンQian Qichenによって明らかにされた。国営新聞「人民日報」での論説記事で、銭基シンは米国政府の単独行動主義を批判した。「米国は中東、中央アジア、南東アジアおよび北東アジアに対する統制を強化した。この統制の強化は、米国政府の対テロキャンペーンが既に自衛の範囲を超えていることを立証した。米国のイラクでのケースは、イスラム世界とアラブ諸国に対し、この超大国が既に彼等をその野心的な民主化プログラムの対象とみなしていると確信させるものとなっている」と、銭基シンは述べている。

中国とロシアにとって、米国の「民主化プログラム」は、米国が世界で唯一の超大国としての優位性を確実なものとするために非友好的な政権を軍事的に処理するために偽装されたものでしかない。中国・イラン・ロシアによる三国同盟は、ワシントンの地球規模での野心に対する中国とロシアによる反撃であるとみなすことができる。この観点から、イランはブッシュ政権の外交政策の目標達成を妨害する上で不可欠となる。まさにこのことが中国とロシアがイランとの経済的および外交的関係を強化したことの正確な理由である。また、中国とロシアがますます洗練されつつある兵器をイランに供給していることの理由でもあるのだ。


ジェフライム・P・ガンジクはコンドルアドバイザー社の社長である。コンドルアドバイザー社は地球規模で個人および機関投資家に対するエマージング市場に対する投資リスク分析を提供している。
(Japan Focus からの翻訳文の転載許可取得済み)

アメリカに対抗する中国・ロシア・イラン三国同盟の形成


ジェフライム・P・ガンジク(Jephraim P Gundzik
http://japanfocus.org


ジョージ・W・ブッシュ政権による単独主義的外交政策の軍事的実践が世界の地政学的同盟関係に非常に大きな変化を引き起こしつつある。これらの変化の中で最も重要なものが中国、イラン及びロシアからなる新たな三国同盟の形成だ。

これまでの18ヶ月間におけるモスクワ・北京間の結びつきの強化は、実際にはあまり気付かれていない非常に重要な地政学的出来事である。温家宝中国首相が2004年9月にロシアを訪問、ウラジミール・プーチンロシア大統領が10月に中国を訪れた。10月の会談において、中国とロシアは「中ロ関係は比類なき良好な段階に達した」と宣言した。長期間の国境紛争を解決したことに加え、モスクワと北京は2005年に合同で軍事演習を行うことに合意した。これは1958年以降中国とロシアの間で持たれる初めての大規模な軍事演習となる。

合同軍事演習は北京とモスクワ間で急増している武器取引を補完するものである。中国はロシア製武器の最大の購入者である。2004年、中国は20億ドル以上のロシア製武器購入契約を締結したといわれている。この中には、軍艦、潜水艦、ミサイルシステムおよび飛行機がある。ロシア軍の責任者であるアナトリー・バシニンは、「わが国の防衛産業がこの国(中国)のために働いており、ロシア軍が持っていない武器と軍事備品の最新モデルを供給している」と述べた。ロシアの中国との関係は武器取引だけに限定されていない。過去5年間において、中ロ間の武器以外の商業取引は年率平均ほぼ20%の増加率で増加した。北京とモスクワは、二国間の武器以外の商業取引が2004年の200億ドルから2010年には600億ドルになることを目標としている。商業取引のうちで最も大きいものはロシアの中国に対するエネルギー輸出だ。

2005年の始め、モスクワは2006年までに電力の輸出を一時間当たり8億キロワット(KWH)と二倍以上に増加することに同意した。ロシアの電力独占企業であるユニファイド・エナジー・システムズの関係者はまた、ロシアの電力システムの開発と改良に対する中国の投資を働きかけている。2004年10月、中国石油天然ガス集団公司(CNPC)とロシアのガズプロムは、ロシアが中国に天然ガス供給を行うための最良の方法を研究することを目的とした一連の協定に署名をしている。同時に、ロシアは石油輸出に関する特別の協定に署名した。

ロシアの中国に対する石油輸出は2005年には1千万トンに達し、2006年には1千5百万トンに増加する予定となっている。これらの石油の輸送はすべて鉄道によって行われるだろう。しかしながら、この協定にはシベリアから中国北部への石油パイプラインの建設に関するある協議が影を落としている。ロシアは石油パイプラインの中国ヘの敷設についてほぼ10年間にわたり検討をしてきた。2002年、モスクワがシベリアのアンガルスクから中国北部にある大慶まで石油パイプラインを走らせるために20億ドルを投資すると約束したとき、このパイプライン建設計画はその実現に向かって一歩前進したように見えた。

しかし、2004年末、ロシア高官は中国までパイプラインを伸ばすよりも、新しい巨大パイプラインはロシアの太平洋港であるナホトカを最終地点とするだろうと発表した。日本がモスクワに対してこの構想を強力に売り込み、100億ドルを超えると見込まれているこのプロジェクトのコスト全体を融資することを申し出ている。資金調達が容易になることに加え、ナホトカパイプラインはすべてロシアの領土内のままであり、モスクワが石油の流れを完全に統制することを可能にする。

多くのアナリストは、このモスクワの決定は中国との関係に打撃を与えたと見ている。パイプラインは中国内を最終地点とせず、ロシアと中国の国境の内側40マイルを通過する。このパイプラインから中国への支線を設けることはさほど経費がかからず、これによる年間の石油産出に対する市場の多様化は8千万トンに達すると予測されている。換言するなら、東京がファイナンスを提供しようと躍起になっているときに、なぜモスクワと北京のいずれかが東部の石油パイプラインのファイナンスをする必要があるのかということだろう。

ロシアが中国との間のエネルギー関係を深めていることをさらに示唆しているものに、ロシアの石油大手ユコスの再国有化をめぐる状況がある。ユコスは中国に石油を輸出していた唯一のロシアの会社であった。ロシア政府は、2004年遅くにユコス社の主要な産油部門であるユガンスクネフテガスを差し押さえ、それを最高価格入札者に売却することにより、実質的に再国有化した。ユガンスクネフテガスはシベリアにあり、ロシアで第2位の産油会社である。

若干複雑な方法を使って、ロシア国有石油会社であるロスネフチは93億ドルでユガンスクネフテガスを買収した。2004年2月、ロシアの工業エネルギー相ビクトル・クリステンコは中国石油天然ガス集団公司にユガンスクネフテガスの20%の所有権の売却を提案した。2005年2月、ロシア財務相アレクセイ・クドリンは中国の銀行団がロスネフチによるユガンスクネフテガス買収の資金60億ドルを提供したことを明らかにした。この融資はロスネフチと中国石油天然ガス集団公司との間の長期的石油供給契約によって担保されている。

中国石油天然ガス集団公司がユガンスクネフテガスの一部を所有しているかどうかは不明だ。しかし、3月、ロシア政府は国営ガス企業ガスプロムとロスネフチの合併を承認した。この合併はユガンスクネフテガスを排除しており、ユガンスクネフテガスは別の国営企業として存続する。ユガンスクネフテガスは中国の同社に対する投資を実行するための独立組織として存続し続けることが可能となっている。

ユコスの再国有化への中国の関与はロシアの高度に保護された石油セクターに対する外国からの最も重要な参加を代表している。中国石油ガス天然ガス集団公司はまたロシアの国営ガス会社であるガスプロムとのいくつかのジョイントベンチャーにも関わっている。これらの中には、中国の巨額なエネルギー関連投資の対象であるイランにおける埋蔵エネルギー開発のためのベンチャーもある。
(続く)

ジェフライム・P・ガンジクはコンドルアドバイザー社の社長である。コンドルアドバイザー社は地球規模で個人および機関投資家に対するエマージング市場に対する投資リスク分析を提供している。
(Japan Focus からの翻訳文の転載許可取得済み)

・・・戦争の新たな火種としてのエネルギー問題(1)から続き

問題を抱えた供給

石油産業が必要とされる追加的な量を生産できるという自信がわれわれにあるなら、増加する中国とインドの重要に応えることは大きな問題ではないだろう。実際、米エネルギー省は、そうなるだろうとわれわれが信じることを望んでおり、将来の石油と天然ガスの供給は世界の予想される需要を十分満たすことができるだろうという。しかしながら、多くの専門家はこの見解に疑問を呈している。世界の石油と天然ガスの供給は決してそのような高水準には到達しないだろうと彼等は主張する。この主張のほうが正しいだろう。なぜなら、世界の既存の炭化水素資源の多くは既に使い果たされ、これまでの埋蔵資源の枯渇を埋め合わせるのに十分な新たな埋蔵資源が最近においては発見されていないからだ。

 石油のケースを考えてみよう。米エネルギー省は、2025年の世界全体の1日当たり石油産出量は1億20.6百万バレルすなわち現在より44百万バレル多い水準に達し、1日当たり需要量の1億21百万バレルにわずかに不足するだけとなると予測している。しかし、そうなるためには、主要な石油会社はまず大量の新たな埋蔵資源を発見し、現在の油田からの産出量以上の大幅な増産をしなければならない。ところが、新たな大規模油田は過去40年間ほとんど発見されておらず、この10年間ではカスピ海のカシャガン油田だけである。同時に、北米、ロシアそして中東の多くの古い油田の一日当たり産油量は大きく減少してきている。その結果、現在、多くの地質学者は、世界の石油産業は産油量を1億20百万バレルの水準まで引き上げる能力はなく、その水準よりもかなり低いものになるだろうと確信している。

 世界の石油産出量が現在から2025年までの間に頭打ちとなるという予測は、米エネルギー省の予測よりもかなり悲観的であるが、非常に論議を呼ぶものである。ここは対立している評価を詳細に検討する場ではない。しかし、この問題を理解するため、世界の最も大きな産油国であり、将来における増産の可能性が最もあるサウジアラビアのケースを検討してみよう。米エネルギー省によれば、サウジの石油産出量は2001年から2025年の間に1日当たり10.2百万バレルから22.5百万バレルへと、2倍以上の増産となる。もし、サウジが実際にそれだけの増産をすることができるなら、世界の総供給量はこの期間の終わりにおいて予想されている需要を満足させることができるということに一定の自信を持つことが可能だろう。しかしながら、サウジにはその数字に近いものを産出できる能力はないことを示唆する声が増えている。2004年に論議を呼んだニューヨークタイムズの記事で、アナリストのジェフ・ガースは「米国とサウジの石油企業の経営者および政府高官はサウジの産油能力がおそらく現在の水準近くで頭打ちとなり、世界のエネルギー供給の大幅なギャップが生じる可能性があると述べている」と報告した。
 
 ガースの主張に反応し、サウジ当局者は、サウジは予想される世界の必要量を十分に満たすことのできるよう産出量を増加させる能力を十分持っていると主張した。サウジのナイミ石油相は2004年2月に「世界の一層の需要の増加が生じた場合、サウジはそれに対応することができる。われわれは1日当たり産出量12百万バレルおよび15百万バレルの可能性を検討したが、これらはいずれも実現可能だ」と断言した。

 この声明はガースの報告に衝撃を受けた人々に一定の安心感を与えた。しかし、ナイミ石油相は一日当たり産出量12百万から15百万バレルという単なる「シナリオ」について述べただけであって、決して絶対的な保証ではなく、その増産の規模も米エネルギー省が予想している22.5百万バレルにはかなり不足しているということに留意すべきである。また、エネルギー問題に関する多くのアナリストは、サウジにおける一日当たり産油量を一定の期間10百万バレル以上で維持することはその油田に回復不可能なダメージを与え、長期的な産油能力の低下を招く結果となることを示唆している。サウジの石油企業のある幹部が指摘したように、1日当たり産油量を12百万バレルにしようという試みによって、「10年以内に大きな問題が生じることとなろう」

 サウジ以外の供給国、あるいはいくつかの供給国を組み合わせても、サウジの持続可能な1日当たり産油量の10‐12百万バレルと米エネルギー省がサウジの産油量として見込んでいる22.5百万バレルの差を埋めることのできる可能性が低いため、サウジの将来の石油産出量がどうなるかはこの問題にとって極めて重要である。サウジ以外の大きな供給国であるイラン、イラク、クエート、ナイジェリア、ロシアおよびベネズエラは、サウジによって供給される分では足りない分を埋め合わせることができないことはもちろん、現在の供給を維持することさえ困難となると予想されている。これが事実とすれば、世界の石油産業が将来の世界の石油需要を満たすことができるという可能性は非常に低くなり、長期的石油不足、石油価格の高騰および経済的困難が執拗に長引くことをわれわれは予想しなければならない。

 まさにこの予想があることから、多くの国々の指導者達は天然ガス資源の獲得にますます大きな重点を置きつつある。天然ガスは工業化の過程において石油よりも遅い段階で開発されたため、その主たる供給源はいまだ完全に利用し尽くされてはおらず、イランや東シナ海にあるような新たな天然ガス田は全面的な開発を待っている状態にある。石油のように、天然ガスもその世界的生産量が頭打ちとなるときがあろうが、これは石油がピークを迎えてから数十年後と思われる。そのため、石油の生産が減少するに従い、天然ガスは石油生産の減少の一部を埋めることが予想される。しかし、膨大な量の石油すべてに取って代わることのできるほどに十分な量の天然ガスは世界に存在していない。このことが、多くの政府が現在、他国よって権益を独占されてしまう前に主要な天然ガス資源を支配しようとしていることの理由である。
(続く)

戦争の新たな火種としてのエネルギー問題
2005年5月18日
アジア・タイムズ
マイケル・T・クレア1

エネルギーに対する地球規模での闘いが激しくなりつつある中、ワシントン、ニューデリー、カラカス、モスクワそして北京において、各国の政治指導者と企業経営者が石油および天然ガス資源に対する支配権獲得の努力を強化させている。未開発の石油および天然ガス資源を求める競争がこれほど激しくなったことはない。また、海外にある主要なエネルギー資源に対する支配権を得ようという競争において、これほどまでに多額の資金がつぎ込まれ、外交・軍事上の努力が傾注されたことはなかった。一国のこれらの分野での成功あるいは失敗がこれまで以上に新聞で大きく取りあげられ、個別の取引においてライバルとなっている国が不当な利益を得ていると思われるときに国民の声が大きくなるという事態になってきている。多くの国々の政府当局者に対する、いかなるコストを払っても自国のニーズを満たさなければならないというプレッシャーが強まる中で、エネルギーに対する闘いは今後ますます激化する一方である。

この闘いは一つの避けることのできない大きな事実によって推進されている。すなわち、エネルギーの地球規模での供給が、急増している需要特に米国およびアジアの発展途上国の需要を満足させることができるペースで増加していないということである。米エネルギー省によれば、全世界のエネルギー消費量は21世紀の第1四半期中において、年間推計量404クアデデリオンBTU(英式熱量単位)から623クアデデリオンBTUへと50%以上増加する。特に、石油と天然ガスに対する需要は大きく増加する。

世界の石油消費量は、2025年までに、157クアデデリオンBTUから245クアデデリオンBTUへと57%増加すると見込まれており、天然ガス消費量は93クアデデリオンBTUから157クアデデリオンBTUへと63%の増加が見込まれている。しかしながら、政治的、経済的、地質学的理由のいずれの理由によるにせよ、世界のエネルギー企業が今後の20年間でそれだけの量の石油と天然ガスを供給することができるかどうかについてはますます疑わしくなってきているようだ。世界中で石油価格が高騰し、深刻な不足が見込まれている中、すべての主要なエネルギー消費国は、入手可能なエネルギー供給に対して自国の相対的なシェアを最大限にするよう、増大するプレッシャーにさらされている。これらのプレッシャーは石油と天然ガスを求める競争の土俵の上にそれぞれの国々を押し出すこととなろう。

熱狂的な追求
貴重な資源をめぐる主要大国間のゼロサム競争は、過去においてはしばしば戦争に結び付いた。石油と天然ガスをめぐる今後の競争のケースにもそれが当てはまるかどうかは不確かだ。しかし、供給を最大にしようというプレッシャーはすでに多くの国における外交政策の決定に影響を及ぼしつつあり、新たな国際的緊張を引き起こしつつある。例えば、最近の次の事態について考えてみよう。

東シナ海において論争の対象となっている海域で天然ガスの生産に着手するという日本の決定は、これまでの30年間で最悪の形で噴出した4月16日の中国における大掛かりな反日抗議を激化させる一因となった。両国の指導者は和解のために改めて努力することを約束し合い、その危機を沈静化しようとしたが、いずれの側も沖合の領土についての権利を譲ることはなかった。それ以外の問題、特に、日本が第二次世界大戦中にその軍隊によって引き起された残虐行為に対する遺憾の念の表明を渋っていることやその残虐行為を糊塗しているといわれる教科書を新たに発行すること等も中国国民の不満を増加させる原因であった。しかし、東シナ海から天然ガスを採掘しようとする日本政府の一方的な行動はさらにそのような動きを加速させた。紛争の種となる可能性のある問題とは、中国の中央海岸地帯と日本の琉球列島の間にある論争の対象となっている海域内での広大な地下天然ガス田の所有権をめぐる問題のことだ。中国と日本の間での領海をめぐる境界線は確立されていないため、いずれの側も対立点となっている「自国領土」内での相手方による天然ガスの採掘を容認しようとしていない。かくして、4月13日、中国が自国領土と主張する海域での日本企業による試掘を許可すると日本政府が発表したとき、中国政府はこれまでにかつてない愛国主義的な熱気が反日運動となって週末一杯にかけて展開することを認めることに何のためらいも見せなかった。

米国務長官としての最初のインド訪問中、コンドリーザ・ライスは、イランからのパイプラインによる天然ガスの輸入がテヘランにある強硬な聖職者による政権を孤立させる米国の努力を阻害する可能性があると主張し、これを撤回するようインド政府に迫った。「われわれは、イランとインド間の天然ガスパイプラインによる協力に関する懸念をインド政府に伝えた」と、ニューデリーでインド政府のナトワル・シン外相との会談後の3月16日に彼女は語った。しかし、インド政府は、追加的なエネルギー供給に対するインドの願望はイランの現体制に対するワシントンのイデオロギー上の反対論に勝るということを明らかにした。「提案されているパイプラインによる天然ガスの輸入はインドの急増しつつあるエネルギー需要に応えるために必要であり、われわれはイランとの間に何の問題も抱えていない」と、シン外相は記者に語った。

ニューデリーでの会談の1ヵ月後、ライスはモスクワに飛び、ロシアのエネルギー産業をアメリカ企業による投資増大に向けて開放するようウラジミール・プーチン大統領にプレッシャーをかけた。巨大民間エネルギー企業ユーコスのロシア政府による弾圧は、ロシアのエネルギー開発プロジェクトに対する外国による投資に関して提案されている制限案とともに、ロシアの膨大な石油資源の開発に対する米国企業の協力をしり込みさせることとなるだろうと指摘し、ライスは一層積極的な姿勢をとるようプーチンに求めた。「ロシアができることは、短期的そして長期的に石油供給を増加させることとなるセクターを開発するという観点でロシアのエネルギーセクターの政策を採用することである」と、ライスは申し入れた。しかしながら、プーチンは米ロ関係の一層の強化というライスの要望を受け入れつつも、ロシアのエネルギー企業に対する国家統制を強化し、その権限をモスクワの地政学的目標を達成するために用いるという自らの計画を後退させる気持ちはないことを明らかにした。

4月25日、ジョージ・W・ブッシュ大統領はサウジアラビアのアブドラ皇太子にクロフォードにあるブッシュの牧場で会い、アメリカのガソリン価格を引き下げるためにサウジの石油生産を増産するよう強く要請した。「合理的な価格を確保することは非常に重要だということを皇太子は理解している。高い石油価格は市場に打撃を与えるが、皇太子はこれも理解している」と、会談前にブッシュは述べた。ブッシュとアブドラ皇太子はイスラエル・パレスチナ紛争と続いているテロの脅威についても意見を交換したが、クロフォードでの会談の中心議題となったのは石油需要の問題だった。

エネルギー問題が伝統的な安全保障問題よりも重要となったことを明らかにしつつ、国務長官コンドリーザ・ライスと国家安全保障大統領補佐官のステファン・ハドレーの二人は、同会談に関するそれぞれのコメントの中で、世界の石油生産を増加させることの重要性を強調した。「中国、インドおよびその他これらに続く国々が今後需要を増加させることは明白であり、需要と供給には懸念があるので、これらの問題に取り組まなければならない」と、ライスは自分の考えを述べた。

これまで述べてきたような事態の進展やブッシュ・アブドラ会談に関するライスのコメントは現在のエネルギー資源をめぐる状況の本質を捉えている。すなわち、世界中で需要が増加している。しかし、供給は世界的な規模での需要を十分に満足させるほど増加してはいない。利用可能なすべてのエネルギー供給の支配権を得るための世界的な闘いはより激化し、制御が難しいものとなってきている。エネルギー需給の動向が今後数年間で変化する可能性は低い。エネルギー供給の支配権をめぐる闘いのみがますます顕著となるだけだ。

飽くことのない需要

あらゆる経済はエネルギーを必要とする。エネルギーは食料を生産し、物を製造し、機械や設備を動かし、原材料や完成品を運び、熱や光を供給する。ある社会にとって利用可能なエネルギーが多ければ多いほど、成長の持続する可能性が高まる。エネルギーの供給が少なくなると経済は徐々に減速し、影響を受けた国民がその被害を受ける。

 第二次世界大戦後、世界の経済成長は主として炭化水素すなわち石油と天然ガスの豊富な供給によって促進された。1950年以降、世界全体の石油消費量は1日当たりおよそ10百万バレルから80百万バレルまで8倍に増加した。天然ガス消費量はもっと小さな規模から始まったが、石油よりもさらに急増をしている。炭化水素は現在では世界の総エネルギー需要の約62%、すなわち総供給量404クアデリリオンBTUのうちの約250クアデリリオンBTUを満たしている。炭化水素は今日においても重要であるが、将来においてはさらに重要になることは確実である。米エネルギー省の分析によると、2025年おける石油および天然ガスの世界のエネルギーに占めるシェアは65%をとなり、現在よりも大きいものとなる。そして、他に代替可能なエネルギー源がないため、世界経済の健全さを保てるかどうかは、われわれがこれらの炭化水素をさらに多く産出する能力を持つことができるかどうかに依存している。

 石油と天然ガスの将来の利用可能性が世界経済の重要なもう一つの側面にも影響を与えるだろう。東アジア、南アジアそしてラテンアメリカのダイナミックなニューエコノミーによって古い先進工業国に対して突きつけられる挑戦である。現在、先進工業国は世界全体のエネルギーのほぼ3分の2を利用している。これらの国々は、多くが成熟した効率的な経済を持っているため、エネルギーに対するこれらの国々の需要は2001年から2025年の間に、比較的順当で対応することが可能な水準である35%の増加となると予想されている。しかし、世界の発展途上国の需要は急増しつつある。2025年までに、発展途上国は世界のエネルギー消費量の半分を消費することが予想されている。先進工業国の需要とこれらの発展途上国の追加的に増加する需要を合わせると、世界の需要の純増加は同じ期間で54%を超えるものとなり、これに応えることは世界のエネルギー産業にとって非常に困難な課題である。

 特に、炭化水素供給をめぐる競争は激化するだろう。米エネルギー省によると、2001年から2025年の間に発展途上国の石油消費量は96%増加するが、一方で天然ガスの消費量は103%増加する。中国とインドの増加率はより大きい。中国の石油消費量はこの期間に156%増加し、インドは152%増加すると見込まれている。これらの国々や、韓国、ブラジルなどその他の発展途上国が自国経済の成長に必要な石油と天然ガスをめぐる闘いは、当然にエネルギーを求めて競い合っている既先進工業国に対する闘いともなる。ライスが示唆したように、中国、インドおよびその他これらに続く国々があり、需要と供給には懸念がある。(続く)


原著者マイケル・T・クレア教授からの翻訳許可取得済み(翻訳者M/N)

全1ページ

[1]


[PR]お得情報

CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事