退屈なウタウタイ

《二度とない人生だから》 オペラ歌手・オテラ歌手(僧侶)花月真のblog(^o^)

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トスカ、いよいよ!

オペラ≪トスカ≫ハイライトの公演が、この週末土曜日と迫ってきました。
主役全員が、死んでしまうこの悲惨なオペラ!・・・あああ、売り文句が酷すぎるか?!

ぜひお越しください。

5月29日午後2時開演。
野田阪神、遊音堂です。
チケットは3500円(ファンクラブ3000円)です。

オペラへのいざない
初心者のためのオペラ鑑賞≪トスカ≫

オペラ歌手  花月 真

 
この講座では、オペラを観る前に知っておくとチョット得しそうなお話を、現役オペラ歌手が豊富な出演経験をもとに、楽しく分かりやすくお伝えしたいと思います。
 
オペラ≪トスカ≫の成立した背景
トスカという歌姫は、魅力的で、美しく、わがままで、嫉妬深い・・・オペラ界の沢尻エリカ様?!
名歌手マリア・カラスはトスカを演じる時は、すべて自前の衣装や宝石を身につけて(ナイフまで)自前のものを使い、役に自分の人生を投影しました。
ソプラノ歌手が命をかける、素晴らしい役なのです。つまり、憧れの女性像なのかもしれません。
 
このオペラはプッチーニ(1858[安政5]年〜1924[大正13]年)中期の作品です。初演は1900(明治33)年114日、ローマのコスタンツィ劇場で行われました。

安政元年(1854年)にはペリーが江戸湾に再来。 33日(3 31日)に日米和親条約(神奈川条約)が締結されました。安政5年には、大老井伊直弼によって安政の大獄が開始されました。また、大正3年には第一次世界大戦が勃発しました。明治37年(1904 年)には日露戦争が勃発しました。

 
「トスカ」の台本はルイージ・イッリカがまず台本の土台を作り、その後にジュゼッペ・ジャコーザという詩人が韻文を書いています。プッチーニとこの二人による台本の組み合わせは、「マノン・レスコー」「ラ・ボエーム」「トスカ」で3作目となっています。3作ヒットを続けたことで、プッチーニが1901年に亡くなるヴェルディの後継者としての地位を確立させたとも言えます。
 
3人の主役
<フローリア・トスカ>
歌に生き、恋に生きたために、命を落とした悲劇の歌姫。
ローマの最高権力者であるナポリ王妃マリア・カロリーナ(かのフランス王妃マリー・アントワネットの姉)の前で独唱を披露するほどの大歌手。
 
原作の「ラ・トスカ」では、彼女は貧しい育ちで、牧童であった。その後、厳格な修道院に預けられ、極めて敬虔なカトリック信者となりました。修道院で飛びぬけて歌がうまかったので、歌手となったとの設定です。
トスカの信仰深さは、そのまま彼女の性格に反映されて、頑なに実直な女性像となっています。また恋人(カヴァラドッシ)に対する愛情は非常に深く、頑なに実直を通り越して、異常なまでの嫉妬深さに繋がっています。
オペラの中では、トスカは後にその愛情と強い嫉妬心をスカルピア男爵の策略に利用され、徹底的に人生を翻弄される事になります。
トスカの生き様は、二幕のトスカのアリア「歌に生き、恋に生き」の歌詞でよく分かります。
   
歌に生き、恋に生き、
決して他の人に悪いことなんかしませんでした
  多くのかわいそうな人たちに会い
  そのたびにそっと内緒で助けてあげてきました
  いつも心から神を信じて祭壇に祈りを捧げ
  いつも心から信仰して祭壇に花を捧げてきました

 それなのに神様、この苦しみの時にどうして、

どうして私にこんな仕打ちをなさるのですか
  聖母様のマントに宝石を捧げ
  私の歌を星に、天に捧げ
  天はその歌に優しく微笑んで下さったではないですか
  それなのにこの苦しみの時にどうして、どうして神様、ああ
  どうして私にこんな仕打ちをなさるのですか
 
絶体絶命の窮地に、トスカは強大な権力者に逆らい、強い信仰心をも激情で捨て去り、権力者を刺殺するに至るのです。
トスカは、一旦すべてに勝利を収めたと信じます。
しかし、やがて権力に振り回されて謀略に巻き込まれただけであることを悟り、すべてを失った絶望のうちに身を投げて、自ら悲劇の幕を下ろすこととなります。
 
<マリオ・カヴァラドッシ>
自由と博愛に殉じる、直情径行の青年画家。
サン・タンドレア・デッラ・ヴァッレ教会で聖人画を描く画家で、トスカの恋人。
 
カヴァラドッシは熱心なヴォルテール主義(共和主義。自由と博愛を理想とする。独裁社会や特権階級を否定する)思想者で、恋人のトスカとは対照的に、信仰心は希薄な青年と言えます。一幕では、カヴァラドッシは教会で聖人画を描いている振りをして、実は教会に来ている美女の肖像画を描いているのがばれて、トスカに焼きもちを焼かれてしまうシーンがあるのです。
カヴァラドッシは共和主義者であるために、スカルピア男爵を筆頭とするローマ警察機構に厳しくマークされています。
この彼の直情的な共和主義思想と、思想を弾圧する権力に対する抵抗から、カヴァラドッシは脱獄して逃走中の友人アンジェロッティをかくまいます。結果的にそれが仇となり、権力者に蹂躙されて、銃殺される事になります。
一本気で自虐的とも言える程強烈な革命精神を持つ半面、絶望の淵でトスカとの愛の思い出に感極まるシーンのアリア「星は光ぬ」では彼の人物像が浮き彫りにされます。
カヴァラドッシは最後には、空砲と偽った銃に撃たれ、絶命します。
 
星は光ぬ、
そして大地も香しかった
果樹園の戸がきしみ 砂地の上に軽い足音がして彼女がやってきた
甘い香りをただよわせ 私の腕の中に崩れ落ちるように入ってきた
ああ、甘い口づけ やさしい愛撫
はやる心を抑えている私の前で 着物を脱いでその美しい姿を現わしたのだ
私の愛の夢はもはや永遠に消えてしまった
時は去ってしまった 私は絶望の中で死んでゆく
今ほど私は自分の命をいとおしいと思ったことはない
 
<スカルピア男爵>
ローマのすべては、彼の前で恐怖し、怯え震える。
ローマ警察機構のトップ。国家権力に反逆する共和主義者を徹底的に弾圧し、拷問し、死刑にした。ローマの影の支配者。権力者で、悪人で、歪曲したサディスト(加虐趣味者)。
 
スカルピアは、残虐行為を権力行使や仕事として行っているだけでなく、色事や賄賂と並ぶ、趣味の快楽としているのです。
残虐行為と同じぐらい色事が好きで、特に自分に対して憎しみを抱く女を絶望させ、屈服させるのが最大の楽しみの、悪魔のような権力者。女性の憎しみが大きければ大きいほど、スカルピアの喜びは大きくなるのです。歪みきった邪悪な性格は、第2幕の冒頭の独白にこうあります。
 
無理やりに女を征服する方が、うわべだけの甘い言葉で納得させるよりも、
ずっと味がある。
欲しいのだ!
欲しい女は必ず手に入れる。
しゃぶりつくしたら、ポイと捨てる…
そして次の獲物を狙う。
神は色々と味の違う女を創造した。
ワインにもいろいろある…
神の創造したいろいろな味を、味わうのだ。
 
まさに、絶望の涙をすすり、憎悪する魂を喰らい、悲痛の叫び声を快楽とする、最悪の悪役の中の悪役。しかも、大金持ちの貴族で、頭脳明晰の出世頭で、美男子という役どころです。
トスカやカヴァラドッシといった主役たちを、役の上でも食ってしまう大活躍。スカルピアの仕掛けた狡猾な罠は、彼がトスカに刺殺されたあとにも呪いのように効果を発揮し、やがてトスカとカヴァラドッシを死に追いやります。
このオペラは、トスカの投身自殺で終わりますが、最期のトスカの言葉は、「スカルピア!神の前で!」です。「カヴァラドッシ、天国で逢いましょう」ではないのです。
死んでなお、神の前でも祟る悪魔スカルピアが、実はこのオペラの影の主役なのです。
 

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