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メディア教育 No.5

江戸川区立清新第一小学校にて 平成16年6月

みなさんこんにちは!
今日私はお台場のフジテレビからやってきました。鈴木まことといいます。普段フジテレビでは報道番組のディレクターをやっています。担当している番組は日曜朝7時30分から放送している「報道2001」という番組です。

今日は皆さんにテレビについてお話したいと思います。特に私は報道番組、ニュース番組を作っているので、ニュース番組についてお話します。

ではお話しに入る前に、まずはいくつか質問を皆さんにしたいと思います。
皆さんはだいたい毎日テレビを見ていますか?
皆さんの好きな番組って何かな?
では、皆はだいたい一日何時間くらいテレビを見ていますか?
(3時間くらいが一番多いみたいですね)
NHKの調査によると日本人は一日に平均三時間テレビを見ているそうです。ちなみにこれは一日のうち8分の1.ということは、日本人の平均寿命は80年くらいですから、一生のうちだいたい10年間、テレビを見ているという計算になるんですね。

このようにテレビというのは、皆が知らないうちに、家族や友達の誰よりも接している時間が長い相手となっています。

では、そんなに長くこれからも付き合わなくてはいけないテレビについて知っておくほうが何かと便利ではないかと思いませんか?

今日は皆とテレビとどう付き合ったらいいのか一緒に考えたいと思います。
まずはテレビにおいてニュース番組がどうやって作られていくのかお話をしたいと思います。
皆は普段ニュースを見ますか?

今どんなニュースに興味がありますか?

テレビのニュースの場合、ある事件が起こるとまずその現場に記者とカメラマンが向かいます。そこで記者はさまざまな取材、たとえば現場の警察官や目撃者、その関係者という人たちにどのような人物がどのようになぜ事件、事故を起こしたのかといった情報を集めます。
一方でカメラマンは現場の映像をカメラにおさめます。

そしてその情報と映像は本社に送られます。前は電話であったり、ファックスであったりしましたが、今ではだいたい携帯の端末パソコンからメールで送られます。
本社に持ち込まれると情報は、皆さんが作文を先生に添削されるように、デスクといわれる人によって文章化されて原稿となります。

ではここで質問です。ニュース番組のニュースってどのくらいの長さだかわかりますか?
ニュースはだいたい1分くらいなんです。ですから、原稿も映像も1分にしなくてはなりません。
この1分というのがポイントなんです。なぜなら現場に行ったカメラマンは事故なら2から30分くらいそこでいろいろな映像をとります。しかしテレビで流すニュースは1分。ということは30分のものを1分にカットしなければいけません。

つまり、テレビを見ている皆は僕らが作った30分の1の映像しか見ないということなんですね。

ではこれから二つの映像を見てもらいたいと思います。この二つは去年の4月に中東で起こったイラクとアメリカの戦争が、ほぼ終わりとなった日のイラクの首都バグダッドの映像です。
長い間繰り返し繰り返しテレビで流れていたので、覚えている人も多いと思います。

ではバグダッド陥落した4月9日の映像を見てください。

VTR バグダッド陥落
これを見てどう思いましたか?率直な感想を?

皆楽しそうですよね。
この映像を見ていると、イラク国民全体が喜んでいるような気になりますね。
では同じシーンを別の映像で見てみましょう。

VTR バグダッド陥落 ワイドサイズ
どうですか?印象が違いませんか?

答えはこうです。
先ほど僕はイラク国民全体が喜んでいるといいました。
しかし、実際この公園でこの銅像を倒した群衆は何人くらいいるでしょう?
実際この広場に集まったイラク人はたった100人ぐらいだったといわれています。
そして後でみた映像を見ると、広場の周りは閑散としていてほとんど人がいないんですよね。

つまりこういうことなんです。
皆がニュースを見ているとき、それは当然どこかで起こったものだと思いますよね。それはまちがいありません。だってもし事実出ないものをテレビがニュースで流したら、大変なことになりますから。
でもさっき見た映像二つを思い出してください。
あれは二つとも同じものをとった映像ですけれど、カメラの撮り方や編集の仕方で皆の印象がまったく変わりませんか?

でもテレビを見ている皆は、実際にイラクに行ってその現場を見てくれば本当はどうなっているのかわかるかもしれませんが、実際に見に行ける人はいませんよね。

そこで、最初に言った今日のテーマ覚えていますか?
僕は「テレビとどうお付き合いしたらいいのか?」と言いました。

その答えは、「テレビがすべてだと信じるな」ということです。つまりテレビが「これは本当にあったんだよ」といって流しているニュースは、うそではないんですけど、全部を伝えているわけではないんです。だから映像の編集の仕方しだいで、印象が変わったりするんです。
本当は「とても冷静な現場だった」のが「皆大喜びだった」という印象になったり。
ただうそではなくて、事実を伝えているということは間違いないというのがややこしいんですけど。

だから皆さんはこれからテレビを見るとき、これから中学生、高校生になるとニュース番組を見る機会も増えていくと思います。
そのときに思い出してほしいのは、「テレビは事実を伝えているんだけど、それは事実の一部」だということ。
テレビだけを見るのではなく、新聞やインターネットやいろいろなメディアを見て(でも時間がないので、少なくとも興味のあるニュースについては)自分で調べてみるということです。
これは忘れてはいけません。

「父兄へ」
今海外では「メディアリテラシー」という聞きなれない教育が行なわれています。ここでは、「テレビとどのように距離を置いて付き合うべきか」という教育がなされています。
僕は、日本人はテレビに対してとても純粋だと思っています。それが僕らのやりがいにもなるわけなんですが、一方で恣意的に事実を紹介するようなテレビマンがいるかもしれない。

ぜひこれは忘れないでほしいと思います
テレビとはうまく付き合っていきましょう。
では質問コーナーです。
・小学生からの質問は・・・

Q イラクでは報道の人は危なくないんですか?
Q トリビアに選ばれるのは時間はどのくらいかかりますか?
Q フジテレビのフジってどういう意味ですか?
Q フジテレビはいつできたんですか?
Q 瞬間視聴率ってどういう意味ですか?
Q フジテレビのマークはどういう意味があるんですか?
Q ニュースが一番早いのはどの放送局ですか?
などなど

学校・父兄からは
Q 「ノンフィクション」はどうやって取材先を見つけるんですか?
Q ゴールデンタイムでくだらない番組や行き過ぎた番組が多いのは困る
Q テレビ局に就職して何が楽しくて何が大変ですか?
Q 視聴率はどうやって誰が調べているんですか?

メディア教育 No.4

杉並区立和田中学校にて 04年3月

みなさんこんにちは
私鈴木といいます。今、フジテレビの日曜朝7時30分から放送している「報道2001」という番組でディレクターとして企画や演出を担当しています。

この中で「報道2001」という番組を見たことがある人?

皆さんはだいたい一日何時間くらいテレビを見ていますか?
では日本人は平均一日何時間テレビを見るか知っていますか?
実はだいたい一日平均三時間テレビを見ているそうです。ちなみにこれは一日のうち8分の1.
ということは、一生に直すとだいたい10年間、テレビを見ているという計算になるんですね。

このようにテレビというのは、皆さんが知らないうちに、家族や友達の誰よりも接している時間が長い相手となっています。

では、そんなに長くこれからも付き合わなくてはいけないテレビについて知っておくほうが何かと便利ではないかと思いませんか?

今日はみなさんとテレビって何をどう伝えるものなのか一緒に考えたいと思います。 特に私は報道に今関わっていますので、テレビにおいてニュース番組が何をどう伝えるものかお話をしたいと思います。
というのもニュースについて皆さんは、たぶん大変な誤解をしているんじゃないかと思うので。なぜなら、私も報道の仕事に携わる前は、同じ誤解を持っていましたから。

さて、これから皆さんにそうしたお話をするにあたって、テレビ報道の現場にいる人間として、今日はあえてこういう提案をしたいと思います。
それは「テレビ報道を信じるな」ということです。
私はこれからある実際にテレビにおいて起こったことを大体40分くらい話をします。で、その話の後、皆さんに「テレビ報道を今後どう見ていけばいいのか」、その考えを聞いていきたいと思います。

まずテレビの戦争報道について皆さんにお話します。
去年の3月にイラク戦争が起こったことは皆さんもご存知だと思います。
しかしイラクではその後もテロが頻発していて、昨年の暮れには日本人の外交官二人がその犠牲者となりました。
そして今年になって自衛隊が復興支援のために、イラクへ派遣されました。そういう意味では私たち日本人にとってもとても身近な問題だと思います

ではここで皆さんが今まで家庭で見ていたイラクからの映像。果たして信じることができるのか?検証してみます。

ちょうど一年前、3月20日に始まったイラク戦争はわずか1ヶ月たらずで、首都バグダッドが陥落しました。
そのときの映像は皆さんも記憶に新しいんじゃないかと思います。ちなみにどんな映像を覚えていますか?

ではバグダッド陥落した4月9日の映像を見てください。

VTR バグダッド陥落
これを見てどう思いましたか?率直な感想を?

フセイン大統領の銅像を倒して、歓喜するイラク国民の象徴的なシーンとしてその後もよくニュースに登場しています。
何度もこの映像を見ていると、イラク国民全体がバグダッド陥落とフセイン政権倒壊を喜んでいるような気になりますね。

ではフセイン大統領の像の崩壊を別の映像でみてください。これは全く同じシーンを別のカメラアングルと編集でつないだものです。
VTR バグダッド陥落 ワイドサイズ
どうですか?印象が違いませんか?

答えはこうです。
先ほど僕はイラク国民全体が喜んでいるといいました。
しかし、実際この公園でこの銅像を倒した群衆は何人くらいいるでしょう?
実際この広場に集まったイラク人はたった100人ぐらいだったといわれています。
そして後でみた映像を見ると、広場の周りは閑散としていてほとんど人がいないんですよね。

後で言われているのは、このシーンを演出したのはアメリカ軍だったのです。テレビカメラの前で群集を集め、銅像という権力の象徴が倒れるのを手助けする。
もちろんその映像が全世界に流れることをわかっていて、「勝利したアメリカ、しかもフセイン政権の倒壊をイラク国民が歓迎している」という象徴的なシーンを演出したわけです。
後で言いますが、ちなみにこれには実際にその映像を流した私たち日本のテレビ局もいちやく買っているわけです。

次にもうひとつ。この映像を見てください。

VTR フセインDNA鑑定
これ、先週フセイン大統領が捕まったときの映像です。
これも何度もニュースやワイドショーで流していますから、見てない人はいませんよね。
これはフセインを捕まえた直後、米軍が撮影した映像で、それを各国のテレビメディアが流したものです。
この映像を見てどう思いますか?

一説では、米軍はフセインをつかまえたとき、彼が最もみじめに見える演出をかなり念入りに考えていたと言われています。
本当のところはどうだかわかりませんが、「死亡して捕まえた場合」「生きて捕まえた場合」など細かいシュミレーションを、テレビメディアのプロデューサーがついてやっていたとも言われています。
もしそうだとしたらアメリカの意図は大成功だったといえますね。
誰がどう見ても「堕ちぶれた独裁者」というタイトルをつけられそうな映像ですから?

でもこのように戦争で各国が情報合戦をすることなど、当たり前なんですね。国際世論を味方につけるのも、戦争に勝つための戦略ですから。そういう意味では米国のやることは国際社会では常識かもしれません。
では、ここで考えたいと思います。
そもそもこういうことがわかっていながら、なぜ日本のテレビ局はそうした映像を繰り返し流すのか?
それを考えていくと、今テレビ報道が抱える大きな問題点が見えてきます。

まずひとつ考えられること。その映像しかないから。
いざ戦争になると、今日本独自の映像はほとんどないんです。なぜならアメリカのテレビ局や通信社と契約してその映像をもらえるから。そこまでリスクを負って映像取材にいかないんです。

もうひとつは番組制作のやりかたの問題があります。
僕は今担当している「報道2001」の前、ニュース番組のディレクターとしてニュースを制作していました。
テレビドラマでもよく紹介されますが、ニュースのディレクターというのはものすごい短時間の中で1,2分のニュースの編集をしなくてはいけない。
だいたい1分の映像を作るのに、現場でどのくらいカメラでとるかわかりますか?

だいたい事故なんかの場合、20分は映像をとります。
さらに今日放送される予定の皆さんの学校の取材では、200分、3時間強映像を取っているんですね。
ディレクターは短時間の中で、その中から1,2分の映像を取り出して編集しなくてはならない。
そういう時間との戦いの中でディレクターが何を考えるというと、まあ僕もそうだったんですけれど、できるだけ一目見てわかる象徴的な、説明の要らない映像のほうが使いやすいと思うんですよね。
さきほどのフセイン像の倒壊がまさにそうで、ある意味シンボリックになって、何度も何度も繰り返し同じ映像が流される。これでいいやと思うんです。

その一方で、流されない映像はまったく流されない。
フセイン像が倒壊した同じ日、実は「子供がアメリカのミサイルで死んで泣いている母親」とか「フセイン万歳を叫ぶ市民」といった映像もいっぱいあったんです。
しかし、「バグダッド陥落」というニュースの中では、そうした映像が流されない。なぜか?
同盟を結んだ国として、少なくともアメリカに負けられては困る!バグダッド陥落は喜ばしいことという意識(無意識)で、ニュースをつくってしまうからなんですよね。
こういったテレビ報道の物理的な限界と精神的な限界のために、視聴者は同じ映像を繰り返し何度も見ることになるんです。

ではいったんここで質問のある人?

さらにテレビ報道には困った問題があるんです。
鳥インフルエンザを知っている人?
先日京都で鳥インフルエンザを発症した鳥をそのまま届出せずに出荷した養鶏業者の会長の夫妻が自殺するという痛ましい事件がありました。
彼は確かに加害者だったわけですが、その時のテレビの報道の過熱振りというのはひどかったと思います。
まるで、日本の鳥インフルエンザの発症の原因のように報道され、会見では突き上げられ、まるで魔女裁判のようでした。

テレビは先ほどから言ってますように、情報を切り取ってどんどんわかりやすいものにしていく傾向があります。
善玉、悪玉をはっきりさせることで、ニュースをとてもわかりやすくしようとするんですね。
そのために今回のケースでも、もっと本質的な問題、つまりそもそもなぜ日本で鳥インフルエンザが発症し拡大しているのか?という議論が置き去りにされています。

ちなみにこの鳥インフルエンザ、実は香港やメキシコなどでは鳥ワクチンを予防接種することで発症していないんですね。
そのため養鶏業者は数年前からワクチン輸入を認めるよう役所に求めていたんですが、役所は解禁しなかった。
しかし昨年山口などで発症して、ワクチンを備蓄用として緊急輸入したんですね。

僕はこうしたワクチンの専門家ではないので、果たしてワクチンをうつべきか否かわかりません。
ただ、国民がみなその存在を知った上で、科学的根拠をもとに議論するべきじゃないかと思います。
しかし、こうした視点の報道をほとんどのテレビはやらない。
あの養鶏業者が悪いという報道ばかりとなっています。

先ほどから言っている様に、テレビは事実を伝えていないわけではない。
しかしそれはディレクターによって切り取られた事実なのです。
これは忘れてはいけません。

今海外では「メディアリテラシー」という聞きなれない教育が行なわれています。ここでは、「テレビとどのように距離を置いて付き合うべきか」という教育がなされています。
僕は、日本人はテレビに対してとても純粋だと思っています。それが僕らのやりがいにもなるわけなんですが、一方で恣意的に事実を紹介するようなテレビマンがいるかもしれない。

ぜひこれは忘れないでほしいと思います
では質疑応答を。

メディア教育 No.3

菅谷さんのメディアリテラシー授業を見てきた!

2月12日に、菅谷明子さんのメディア・リテラシーの授業を拝見してきました。
菅谷さんは現在、経済産業研究所の研究員、東京大学大学院のMELLプロジェクトのプロジェクトリーダーなどを勤めるかたわら、主に社会人に対してメディア教育を行われていらっしゃいます。
菅谷さんの著作「メディアリテラシー」で、「メディアリテラシー」という言葉を知った教育関係者も多いと思います(かく言う私もこの本で勉強しました)。

今回菅谷さんは渋谷区の長谷戸小学校のボランティアの方々の招聘で、小学校3,4年生を対象に、「楽しくメディアを知ろう」という授業を行いました。
授業形態は、子供たちが皆で楽しく参加できるワークショップ型のものでした。
私は残念ながら最後まで授業を見ることができなかったのですが、その内容と子供たちの反応にとても驚いた点がいくつかあったので、まずは報告します。

この授業はまず子供たちに「メディアって何?」という問いかけから始まりました。
私が驚いたのは子供たちからまず、電話(携帯)!という声があがったこと。そしてテレビ!という声がかなり後だったこと。
後で子供たちに携帯電話の保有率を確認すると7割ぐらいいたので、ある意味納得したのですが、「今を生きる子供たちにとって、情報収集の道具の主役はもはやテレビではなく携帯なのだ」ということを実感し、くらくらしてしまいました。

そして次はテレビ番組を視聴します。
テレビ番組の一部をビデオで視聴し、その番組が何カットで構成されているのかを数えてもらう。
また、自転車に乗っている男の人が、ルーズにすると実はバイクマシンに乗っていた!という映像を見せて、アップとルーズで見えるものと見えないものを考えてもらう。
子供たちはゲーム感覚で楽しんでいましたが、この二つは「映像とは何?」をとってもわかりやすく教える試みだと思います。
子供たちは、「普段映像メディアを通してみているものは、実は誰かが意図をもって編集していて、かくされているものがある」ということが肌に感じてわかるんですね。

そしてこうした学習の後に、数人のグループに分かれて、「うさぎとかめ」の物語を、用意されたたった9つ!のコマを順番に並べて作ってもらう。
ここでもひとつのストーリーを作るのに、いろいろなコマ並び(カット割)があるということがわかってきます。

残念ながら私はここで帰らなければならなかったのですが、このあとグループごとに、なぜそのような順番になったのか発表したり、なぜほとんどみんなが違うコマ並びになったのか考えたり、さらにそのコマに効果音をつけるとどうイメージが変わるのか見たりして、メディアとは何かを考えたそうです。
うーん、最後までいたかった・・・

この授業は大人も楽しんで出来ると思いますし、何よりも本質的なことがとてもわかりやすくかつ肌で感じることが出来ると思います。
今回授業を拝見してあらためて子供たちに「メディアリテラシー」を教えることの大切さを実感しました。
ちなみに次回お邪魔する際は、ぜひ自ら生徒となって授業を受けてみようと思っています。ホント楽しそうでした。

メディア教育 No.2

国際医療福祉大学講義 03年11月

皆さん、始めまして
鈴木と申します。どうぞ宜しくお願いします。
私、黒岩さんがキャスターを勤めているフジテレビの「報道2001」という番組のディレクターをやっています。
今日は医療関係に今後進路を進める皆さんに、テレビについてお話しするのですが、一見何の関係もないこの「医療とテレビ」。「病院とテレビ局」。
しかし私は、「この二つ、実は今同じような問題を抱えているのではないか?」と思っています。
そこで本題に入る前に、私事ですが、まずは「なぜ私がテレビの仕事を始めることになったのか」説明します。
その後、今テレビが抱えている問題について皆さんにお話をします。
そして30分ぐらい話した後、「今テレビが抱える問題」が医療の抱えている問題とどこが似ているのか?逆に皆さんに聞きたいと思います。

私はフジテレビに11年前に入社しました。
しかし、実はその前銀行に7年ほどいて、その銀行を辞めてフジテレビに転職しました。
「銀行からテレビ局に転職する」というのは当時でも、そして今でも珍しいねとよく言われます。
誰からも「なぜ転職したのか?」と聞かれますし、たぶん皆さんも今「なぜ?」と思っていられる方が多いと思います。

私は1985年に大学を卒業して銀行に入行しました。
学生だった頃私は「公」の仕事、人の役に立つ「おおやけ」の仕事をしたいと思っていました。
ちょうど医療の世界を今志している皆さんは、当時の私と同じような気持ちを持たれていると思います。
そして学生だった私の目には「銀行と言うものは、日本経済を支える縁の下の力持ち」と映っていました。
まさに自分にとって「人の役に立つ公の仕事」だったわけです。

私は銀行に入行後、為替の市場取引や企業への融資を担当していました。
ニューヨークにも五年ほどいました。911で無くなった貿易センタービルにオフィスがありました。
日本経済はバブル景気に沸き、ニューヨーク・マンハッタンのビルは目立ったものはあらかた日本の企業が買収していた時代でした。
海外では「ジャパンアズナンバーワン」と言う名の書物が出版されてベストセラーとなりましたが、その言葉を我々日本人は何の違和感も無く受け止めていました。

しかしそうした一方で、多くの問題が浮上してきました。
株価も土地の価格も天井知らずに上がる中、暴力団などアンダーグランドマネーによる「地上げ」や「株価操作」が横行するようになりました。
そしてそれに手を貸していたのが、金が余っていた銀行でした。
私は「銀行がバブル経済に手を染め、その背中を押している」状況に、入行した当初の銀行とは違うと感じ始めていました。

私が銀行をやめたのは1992年です。
ちょうどバブル経済が崩壊し、一気にそうした日本経済の抱えていた問題が浮上した年です。
その頃銀行はもはやおおやけのうつわ、公器としての存在ではなかったように思います。

私は、次の職場としてテレビ局への転職を考えました。
というのも、湾岸戦争当時私はアメリカにいたのですが、そこで見たCNNから流れる映像、そして記者たちの迫真のリポートにとても心を動かされていたからです。
「世界で起こっている事象をリアルタイムに人々に伝える」という、まさに人の役に立つ仕事に興奮を覚えていました。

さて、ここからがテレビの話です。
1992年私はフジテレビに入社しました。
報道を志望していましたが、結果は営業をやることになりました。
テレビの営業って何だろう?と思いました。
入社して「君に営業をやってもらう」と言われた瞬間、私は恥ずかしい話ですが初めて「テレビ局は私企業である」ことに気づいたのです。
公共の財産である電波を使い、公的な報道という仕事をしながら、私企業として経営を成り立てなければならない。それがテレビ局なのです。

ここで、話の始めに私がお話したことを思い出してください。
私は先ほど「医療とテレビ局は同じ問題を抱えているのでは?」といいました。
私の認識はこうです。
「テレビと医療、テレビ局と病院は、ともに公的な、まさしくおおやけの仕事をしながら、同時に企業経営のため私として動く存在である」。

この一見矛盾した論理が、今テレビ業界に大きなひずみを起こしています。
最近のニュースで皆さんご存知だと思いますが、「視聴率」を巡る問題です。
これから20分ほどですが、その問題がなぜ起こったのか?、皆さんにお話したいと思います。
ここには「公と私」のはざまで揺れるテレビ業界の姿が見え隠れします。
そしてこの問題は、皆さんがこれから進まれる医療の世界にも起こりうるものだと思います。

「テレビと視聴率問題」
今月日本テレビの番組プロデューサーが、視聴率を不正操作したことが発覚しました。
今「視聴率」という言葉を知らない方はほとんどいないと思います。
しかし、そもそも視聴率と言うのはどういうもので、誰がどうやってその数字を出しているのかご存知ですか?

皆さんの中で黒岩さんや私が携わっている番組、「報道2001」をご覧になったことがあるかた、どのくらいますか?
たとえば先週見たひとは手を挙げてください。
挙手
300人中10人くらいですか・・・
先週の放送で、視聴率は世帯で(これが一般的に言う視聴率ですが)6.6%、そのうち皆さんの世代の視聴率は男性が0.6%、女性が1.1%でした。
そういう意味ではここにいる皆さんは、平均よりよくみていただいてますね。

今言いましたように視聴率は、各家庭でどのくらい見ているのか?だけではなく、その中で男女どの世代がどのくらい見ているのか?しかも各分単位で誰がどの番組を見ているのか?までわかることになっています。

視聴率はテレビ局の経営の根っこです。飯の種といってもいいと思います。
なぜならテレビ局は視聴率が上がれば、売り上げが増えると言うビジネスモデルとなっているからです。
テレビ局は基本的に広告スポンサーに対して、CMを流すのにいくらというかたちで営業しています。スポンサーの立場から言えば、お金を払ってCMを流す以上、できるだけ多くの人に見てもらいたい。
そこでどのくらいの人がそのCMを見ているのか?、スポンサーがその指標とするのが視聴率です。

視聴率1%でどのくらいの人がテレビをみているかわかりますか?
挙手&質疑
全国の人口を1億1千万人とすると、その1%ですから110万人が見ている計算になります。
この数字あとでもう一度出てきますから、覚えておいてください。
関東にあるキー局では視聴率1%あたり40万人が見ているということになります。そして視聴率が上がる分だけテレビ局の売り上げも変わってくるのです。

このように視聴率というもの、テレビ局の経営の命運を握っているといってもいい数字ですが、では一体どのように調査されているのでしょうか?
ここにちょっと驚くようなお寒い現実があります。

視聴率を調べているのはビデオリサーチと言う会社一社です。
この会社が関東地区だと、アトランダムに選んだ600世帯に計測する機械をとりつけて、そこからデータを収集しています。
なぜたった600世帯なんでしょうか?
これで本当に視聴行動を性格に把握しているんでしょうか?
600という数字は統計学的に最も効率的なサンプル数だそうです。
うーん、学術的にそうと言われれば、そういうものかと思うしかないのですが・・・

さて、視聴率を不正操作した日本テレビのプロデューサー。
彼は主に4月や10月など番組改編期といわれる時期に放送される特別番組を担当していました。
毎週放送されるレギュラー番組と違い、言ってみれば「一発屋」ですからそのつどそのつどの視聴率が勝負で、たぶん相当なプレッシャーがあったと思われます。

手口は驚くほど簡単でした。
興信所を雇って、先ほど言った視聴率調査会社のビデオリサーチの前に張らせる。
そして各世帯に機械を取り付けに行くビデオリサーチの車を尾行させ、その家を特定する。
そしてアンケートと称して各家庭に自分の番組を見てもらうよう頼み、謝礼を渡す。

彼の取った行動は公の論理がありません。
テレビと言う公的な財産を使う免許事業でありながら、私企業の論理が一方で存在することのひずみがこのようなかたちで現れたのかもしれません。
「視聴率偏重主義がテレビをだめにしている」といわれて久しいのですが、その解決策は未だありません。

ここでいったん、皆さんの意見をききたいと思います。
私はテレビが抱えている問題、冒頭で医療でもあるのではないか?といいました。
私は「医療事故」「医療過誤」といった問題が、実はこの「視聴率」の問題と同じ根っこをもっているのではないか?と思います。
皆さんはどう思いますか?

質疑応答

メディア教育 No.1

みなさんこんにちは
私鈴木といいます。今、フジテレビの日曜朝7時30分から放送している「報道2001」という番組でディレクターとして企画や演出を担当しています。

この中で「報道2001」という番組を見たことがある人?
では毎日何らかのテレビ番組を見ている人?

テレビというのは皆さんの生活の中に、最も入り込んでいるメディアだと思います。
なぜ見るのかはさまざまな理由があると思うんですが、たとえば今日日本で何が起こったか?とかどの映画がおもしろいか?といった情報収集のためにテレビを見ている人もいるとおもいます。
また、娯楽としてバラエティ番組や音楽番組をみるというひとも多いと思います。

今日みなさんにお話しするのはそのうち情報としてのテレビ。つまり私がかかわっているニュース、報道についてお話をしたいと思います。

これから皆さんに「テレビ報道が戦争をどう伝えるのか」というお話をしたいと思います。がその前に、テレビ報道の現場にいる人間として、今日はあえてこういう提案をしたいと思います。
それは「テレビ報道を信じるな」ということです。
私はこれから大体30分くらい話をしますが、その話の後、皆さんに「テレビ報道を今後どう見ていけばいいのか」、その考えを聞いていきたいと思います。

今年の3月にイラク戦争が起こり、一度終結宣言が出ましたが、その後もイラク国内はテロが頻発していて、先日は日本人も初めてその犠牲者となりました。
先週には、戦争終了以来逃亡していたフセイン元大統領が捕まりましたが、まだテロはおさまりそうにありません。

では今皆さんが家庭で見ているイラクからの映像。果たして信じることができるんでしょうか?検証してみます。

3月20日に始まって21日目わずか1ヶ月たらずで、4月9日首都バグダッドは陥落しました。
ではバグダッド陥落した4月9日の映像を見てください。

VTR バグダッド陥落
これを見てどう思いましたか?率直な感想を?

フセイン大統領の銅像を倒して、歓喜するイラク国民の象徴的なシーンとしてその後もよくニュースに登場しています。
何度もこの映像を見ていると、イラク国民全体がバグダッド陥落とフセイン政権倒壊を喜んでいるような気になりますね。

ではフセイン大統領の像の崩壊を別の映像でみてください。これは全く同じシーンを別のカメラアングルと編集でつないだものです。
VTR バグダッド陥落 ワイドサイズ
どうですか?印象が違いませんか?

答えはこうです。
先ほど僕はイラク国民全体が喜んでいるといいました。
しかし、実際この公園でこの銅像を倒した群衆は何人くらいいるでしょう?
実際この広場に集まったイラク人はたった100人ぐらいだったといわれています。
そして後でみた映像を見ると、広場の周りは閑散としていてほとんど人がいないんですよね。

後で言われているのは、このシーンを演出したのはアメリカ軍だったのです。テレビカメラの前で群集を集め、銅像という権力の象徴が倒れるのを手助けする。
もちろんその映像が全世界に流れることをわかっていて、「勝利したアメリカ、しかもフセイン政権の倒壊をイラク国民が歓迎している」という象徴的なシーンを演出したわけです。
後で言いますが、ちなみにこれには実際にその映像を流した私たち日本のテレビ局もいちやく買っているわけです。

次にもうひとつ。この映像を見てください。

VTR フセインDNA鑑定
これ、先週フセイン大統領が捕まったときの映像です。
何度もニュースやワイドショーで流していますから、見てない人はいませんよね。
これはフセインを捕まえた直後、米軍が撮影した映像で、それを各国のテレビメディアが流したものです。
この映像を見てどう思いますか?

一説では、米軍はフセインをつかまえたとき、彼が最もみじめに見える演出をかなり念入りに考えていたと言われています。
本当のところはどうだかわかりませんが、「死亡して捕まえた場合」「生きて捕まえた場合」など細かいシュミレーションを、テレビメディアのプロデューサーがついてやっていたとも言われています。
もしそうだとしたらアメリカの意図は大成功だったといえますね。
誰がどう見ても「堕ちぶれた独裁者」というタイトルをつけられそうな映像ですから?

では、ここで考えたいと思います。
そもそもこういうことがわかっていながら、なぜ日本のテレビ局はそうした映像を繰り返し流すのか?
たぶん年末にかけて、各放送局が今年の10大ニュースという番組を流すと思います。そしてその中でさきほどのフセイン像倒壊のシーンやフセインのDNA鑑定シーンは必ず出てくるときますが、それはなぜか?

それを考えていくと、今テレビ報道が抱える大きな問題点が見えてきます。

まずひとつ考えられること。その映像しかないから。
今日本独自の映像はほとんどないんです。なぜならアメリカのテレビ局や通信社と契約してその映像をもらえるから。そこまでリスクを負って映像取材にいっていないんです。

もうひとつは番組制作のやりかたの問題があります。
僕は今担当している「報道2001」の前、ニュース番組のディレクターとしてニュースを制作していました。
テレビドラマでもよく紹介されますが、ニュースのディレクターというのはものすごい短時間の中で1,2分のニュースの編集をしなくてはいけない。
しかも取材して撮ってきた映像自体は、何十倍も量があるんですね。でぃれくたーは短時間の中で、その中から1,2分の映像を取り出して編集しなくてはならない。
そういう時間との戦いの中でディレクターが何を考えるというと、まあ僕もそうだったんですけれど、できるだけ一目見てわかる象徴的な、説明の要らない映像のほうが使いやすいと思うんですよね。
さきほどのフセイン像の倒壊がまさにそうで、ある意味シンボリックになって、何度も何度も繰り返し同じ映像が流される。これでいいやと思うんです。

その一方で、流されない映像はまったく流されない。
フセイン像が倒壊した同じ日、実は「子供がアメリカのミサイルで死んで泣いている母親」とか「フセイン万歳を叫ぶ市民」といった映像もいっぱいあったんです。
しかし、「バグダッド陥落」というニュースの中では、そうした映像が流されない。なぜか?それは戦争を支持した国としてバグダッド陥落は喜ばしいことという固定観念で、ニュースをつくってしまうからなんですよね。
これはテレビ報道の物理的な限界と精神的な限界のために、視聴者は同じ映像を繰り返し何度も見ることになるんです。

ではいったんここで質問のある人?

そして最後に、一つの事実を報道するのにも、各テレビ局によって事実の伝え方がまったくちがう場合があるというお話をしたいと思います。

今イラクに自衛隊を派遣することが決定し、世の中が大騒ぎになっています。知っている人?では派遣に賛成ですか?反対ですか?

たとえばテレビ朝日のニュースステーションではキャスターの久米宏さんが番組内ではっきり「イラクへの自衛隊派遣反対」を表明しています。

またTBSでは夜11時からやっている「ニュース23」という番組で(TBS報道の看板番組になりますが)、キャスターの筑紫哲也さんが久米さんと同じように自衛隊派遣へ疑義を投げかけています。
彼は番組内で「多事争論」というコーナーを持っていて、一つのテーマについて街の声をきく、街を歩く人のインタビューを取るということをやっていますが、圧倒的に派遣反対の声が紹介されています。

話が少しそれますが、よく街の声というものが紹介されます。
さきほど私は皆さんに反対か?賛成か?ききましたね。
あれを街角でやるのが、いわゆる町の声というんですが、
たとえば僕がそのコーナー担当のディレクターで、しかも自衛隊派遣反対だとします。
僕は街頭でいろいろなインタビューをとりますが、なぜか派遣賛成の人ばかりだとします。
でも僕としては反対の声をできるだけ紹介したい。
そうした場合、番組内では派遣反対の声ばかり紹介するということは可能なんです。編集で賛成の人の声をカットすればいいんですから。
こうした意図をもった編集というのは僕ら現場の人間が見ていると、なんとなくわかります。でも一般の視聴者にはまず判別不可能、みんな「やっぱり反対の声が多いんだ」となります。

さて話がそれたので戻しますが、TBSやテレビ朝日が自衛隊派遣反対の論調なのに比べて私のフジテレビや日テレ、NHKはどうなんでしょうか?

まずNHKですが、伝統的に事実を中立的に報道するという立場をとっています。報道のキャスターも極めて抑えたコメントに終始します。

またフジテレビや日テレはどちらかというとイメージと違って保守的な報道が多いといわれており、派遣についても「国際貢献のために派遣やむなし」といった論調が多いようです。

このようにテレビ局によって派遣に対する考え方が微妙に違い、それが報道の姿勢に現れてくる。
皆さんが報道は客観的だと思われていても、実際はキャスターやディレクターの考え方で伝え方が大きく変わるということです。つまり報道は事実を伝えていますが、同時に伝えていない事実もあるということです。

テレビ報道は事実を伝えていると思います。しかし、それはディレクターによって切り取られた事実なのです。
これは忘れてはいけません。

今海外では「メディアリテラシー」という聞きなれない教育が行なわれています。ここでは、「テレビの全部を信じるな」という教育がなされています。

僕は、日本人はテレビに対してとても純粋だと思っています。それが僕らのやりがいにもなるわけなんですが、一方で恣意的に事実を紹介するようなテレビマンがいるかもしれない。

ぜひこれは忘れないでほしいと思います
では質疑応答を。

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