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地方自治と税制の関係は?「ホームタウン・ドナー制度」の取り組み
これからの地方自治のあり方について、革新的な試みを行っている長野県の自治体を取材してきました。
いま地方は、不況による税収減と国からの補助金・交付税交付金の削減により、行政のあり方について見直しを迫られています。
そうした中、田中康夫知事を擁する長野県では、先日お伝えした「原産地呼称管理制度」や「信州県」など、他の自治体にないさまざまな「自律」への取り組みを行っています。
その中でも注目するのは、田中県知事が片道3時間半の通勤時間をものともせずに住んでいる、長野県泰阜村(やすおかむら)の取り組みです。
この村は市町村合併の風が吹く中、2千人あまりの村の自律を守るため、近隣の市町村と合併しないことを決めました。
そして村独自で行政コストを切り詰める一方で、浮いた分は「日本一の福祉」実現のため、在宅介護サービスや介護保険の補助金へ回しています。
いま多くの自治体が「身の丈」以上の借金をし、しかも先送りしている中、松島村長は、「限られた予算の中で、最終的に何を守らなければいけないのか?泰阜村ではそれが福祉だ」とおっしゃいます。
さらに松島村長はアイデアマンで、税収だけでない新しいお金の流れをつくろうと、「住民参加型ふるさと思いやり基金」という「カンパ」を、日本中から募集する計画をしています。
具体的には村の政策メニュー、たとえば「日本一の福祉・健康まちづくり」とか「森林整備・環境保全」などを示して、他の地区で暮らす村の出身者だけでなく、政策に共感する他の地区の住民から一口五千円程度の寄付を受け付けるというものです。
この制度が実現し全国に広がれば、私たちは「自分を育ててくれた」とか「今後住みたい」、「環境を大切にしている」といった理由で、所得の一部を自分の意思で、居住地以外の地方に納めることができます。
つまり税金によらない、個人から地方への新しいお金の流れができるのです。
実はこの「地方自治体に対する寄付」という新たな試み、「住民税」に対して大きな問題提起をしています。
私たちは通常自分の住んでいる地域の自治体に住民税を支払い、行政サービスを受けています。
しかし私たちの生活はいま、単身赴任などによって住民税を払っている地と暮らしている地が異なるケースが増えています。
つまり、住民税というもの自体が本来の役割を果たさなくなってきているともいえます。
さらにいえば、私たちはどんなに自治体の行政サービスに不満があっても、住民税を払い続けなくてはなりません。
民間であれば、サービスが気に入らなければ代価を払わなかったり、まけさせたりできるのですが、役所に対してはそうしたことは一切できません。
こうした仕組みがいま、行政と住民、さらに言えば日本の国に閉塞感を与えている中、今回の試みは、それを打破する可能性を含んでいると思います。
泰阜村の試みを「ホームタウン・ドナー制度」として提案している慶応大学の跡田教授は、この仕組みには大きな意義があると述べています。
この妙味は、「三位一体の改革」を加速させる点にある。
個人が自治体に寄付をすると、その分国への税支払いが減る。
結果として自治体の財源は潤い、国の歳入は減る。
つまり税源以上と同じ効果になる。
そして自前で集めた寄付を財源とすることで、自治体が国の補助金や規制に縛られず、自由な発想で事業を立案できるようになる。
しかし一方で、その事業は、多数が認めるいいものでないと寄付が集まらない。
ここでいう多数とは、永田町や霞ヶ関ではなく、住民を中心にしたすべての募金者である。
ここで大切なのは、私たち国民は税金以外の手段によって、行政サービスを選択することができるようになるということです。
今後こうした考え方が根付いてこれば、行政と住民の間に今までになかった緊張感が生まれてきます。
そもそも「お役所気質」という言葉は、「公僕」としての意識の欠如から生まれてきたのです。
今回の発想が村長という行政の長から生まれたということを、霞ヶ関や各地方自治体は真摯に受け止めるべきではないでしょうか?
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