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せかいの色 104

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「 はいはい、すんませんねぇ 」

無遠慮なノックにドアを開けると、そこには管理人が立っていた。

私達は空きが出来てすぐに引っ越したため、部屋の改装はなされていない。
壁紙は所々汚れていたが、そんなこと、ファン・ホセもあたしも言われるまで気付きさえしなかった。

「 出来たら去年の源泉徴収票とか、もらえると有り難いんだけどね 」

三ヶ月以上同じところで続けて働いたことの無いファン・ホセに、
そんなものが発行されるわけが無い。

あたしは、自分は彼の恋人だが、仕事先の人に問い合わせるような面倒までは見れない。
出来るのは、契約書を説明してサインをする手伝いをするだけだ。
と言って、まだサインがされていない契約書を受け取り、何とか追い返した。

今まで自分が経験してきた引越しに比べて、ずいぶんいい加減な手続きと交渉ですんだのに驚いた。

不動産屋を通していないこのアパートの住人は、ほとんどがペルー人のようだった。

借主が日本語を理解しないことなど、ここではどうやら当たり前だと分かって以来、
あたしは管理人が何かを言ってくる度に、妙にきちんとした分割方法での保証金の
支払いを管理人の目の前でファン・ホセに約束させたり、次回の支払日を何度も
こちらの方から確認をしたりすることで、意味の無い安心感を与えては、最終的に
更に支払いを遅らせることに成功していた。

全く、無責任に徹するとこんなことをして平気になるのかと、自分でもあきれた。
そして、それがまかり通るという現実には、もっとあきれた。

この部屋に越してきて二週間が経つが、あたしたちはまだ、一円の金も支払っていなかった。
そして今月末の支払いも、半額しか払えないということで既に了解を取っていた。

あたしは口うるさい割には、気の弱い管理人に内心ほっとしていた。

管理人は夫婦ですぐ近くの建物に住んでいる。
六十代くらいの奥さんが、ほぼ毎日のように家にやってきて、ほぼ毎回同じようなことを
言って帰っていった。

不動産屋を通していないから、もっとやり取りに慣れているのかと思っていたが、
彼女は自分が要求した事柄がほとんど満たされていない事には気付いておらず、
やり取りを反復すること自体に、安心感と満足を得ているように見えた。

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