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世にも奇妙な物語、さっそく書いてみました。 それでは、どうぞ。 xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx 世にも奇妙な物語 「第一話」 今日、とある知り合いのつてでテレビのシリーズを書くことになった。 小説家とはいえ、たまにはこんな仕事もある。 出版社以外の業界と触れ合う機会でもあるし、ひょっとしたら出演者と会ったりできるかもしれない。 僕は布団の上に座り、壁にもたれて枕をクッション代わりに背中にあてがった。 小説を書くのが仕事だが、机に向かって書いたことは一度も無い。 昼間なら大抵、運動不足解消と情報収集をかねて、街中を歩きながら見つけたカフェや喫茶店で書く。 雨の日はソファーの上で。 そして夜は布団の上。 これは小学生の頃、宿題を布団や畳の上で寝ころがってやっていたのに端を発している。 喫茶店で書くのはたまに台所のカウンターの上で、難しい問題を家族に質問しながら やっていたことの名残だ。 そんなわけで僕は壁にもたれたまま体育座りをして、原稿用紙と下敷き代わりの雑誌を バランスをとりながら膝にのせた格好で書き始めた。 周りの人間にはよく笑われるが、僕にとってはこうやって書くほうが椅子に座って机に向かうより、 何十倍もやりやすいのだ。 「第三話」 僕はまず、タイトルを書いた。 プロデューサーは一回電話で話したことがあるだけだというのに、二回目実際に会った時には 僕をちゃん付けで呼んだ。 世にも奇妙な物語というオムニバスの第三話を書いて欲しい、ということだったが 僕はちゃん付けされることに気を取られて、あまり詳しい説明は聞いていなかった。 でもまあいいや、奇妙な話を書けばいいのだから。 奇妙、か。 怖いでも恐ろしいでもない感覚だ。 奇妙なことって今までに体験したこと、あるかな。 顔を上げて背中を壁にもたれた時だった。にゃー という声がした。 家では白い猫を一匹買っている。 どこかに入り込んで出られなくなったのかな。そう思っているとまた、にゃー と聞こえた。 声は近かったけれど小さい、何かにさえぎられているような感じだ。 声の方向からすると後ろのほう・・・、でも後ろは壁だし。 それにここは角部屋なので壁の向こうは外だ。外にいるとは思えないくらい近いんだけどな。 にゃー という三度目の声に思わず体を起こしてみると、猫は枕の上にいた。 僕の背中と枕の間でぺしゃんこになって、真っ白な猫なのでまるでネコ型の はんぺんみたいになっていた。 はんぺんの猫はそれでも弱々しい声で、にゃー と鳴いてむずむず動いていた。 僕はびっくりして同時に猫のことを心配した。 どうしよう、猫つぶしちゃたよ。お湯につけたら膨らんで元に戻るかなぁ、 ああでも、猫は水が嫌いだし・・・ そんなことを考えていたらふと、猫バスにしたらどうだろう、というアイディアが浮かんだ。 丁度つぶれて長方形になってるし、猫バスならこれからも上手いこと生きてゆけるんじゃないだろうか。 次の瞬間、僕は猫バスの中にいた。 でも猫は潰れてはんぺんみたいになっているので、車両の幅が極端に狭い。 これじゃあ座席の間を歩くことができないじゃないか。 それにこんなんじゃ強い風が吹いたらバスが倒れちゃうよ。 僕ははっと我に返った。 ちょっとまて。何やってるんだ僕は。これ、夢じゃないか。 そう思った瞬間、猫バスは丁度いい感じに広くなって普通のバスくらいの幅になった。 僕は今、夢を見てるんだ。 辺りを見回すと、乗客は他にもいるようだった。いるのは分かるのだけれど、姿は分からない。 いる、という感覚のようなものがあるだけだ。 いや、形もなんとなく分かるんだけれど、視界の端っこで捕らえたイメージ程度にしか分からない。 座席や通路もあるというのは分かるのだけれど、集中してどんな形かを確かめようとすると、 形は陽炎のように消え去り、捉えることができなくなる。 しかし、ちょっと気を楽にしてぼんやりするとまた、確かに座席や通路という感覚がかえってくるのだ。 僕がぼんやりと集中の間でバランスを取っていると、乗客の一人が声をかけてきた。 勿論その声も、耳から聞こえる音として捉えようとすると、さざなみかラジオの雑音のように 全ての音が入り混じってしまう。 聞こうとするから聞こえんのだ。 乗客がそう言ったのが分かった。 僕は聞くのをやめてみた。考えることも止める事にした。 「猫バスは君の猫かね。」 「ええそうです、さっき背中でつぶしちゃったんです。」 会話のようなものが始まった。 「どこへ行くちゃったん、ちゃったんだねもし。」 乗客はねちっこい感じだった。 「分かりません。」 「分からないちゃったん、とは困ったちゃったんませんぞな、はて。」 僕がうざったいなと思ったところでアナウンスが入り、猫バスが止まった。 車内アナウンスは家の猫の にゃー という声だったが、バス停の名が「第二話」ということが分かった。 あたりは真っ暗で、猫バスのライトは青白かった。 そういえば家の猫は青い目をしていた。でもこれじゃバスのライトというより、バーのネオンみたいだ。 猫バスのライトが、ぱちぱちとついたり消えたりした。 僕が降りずに座っていると、乗客が乗り込んで来た。 バスは猛スピードで発車した。 乗客は不思議な形態をしていた。 今まで周りにいた乗客が、なんとなく人間の雰囲気を持っていたのに対して、 彼らは明らかに体のようなものを持っていなかった。 そこにあるのは光というか、意識というか、そういう、モヤモヤしたかたまりだった。 僕はコミュニケーションをとることにした。 「どこへ行くんですか。」 モヤモヤが僕に意識をむけたのが分かった。 「お前はどっち側だ」 モヤモヤが僕に返した返事の中で、はっきりと分かったのはこれだけだった。 だがモヤモヤは僕に、もっと沢山の情報を直接、僕の意識の中に注ぎ込んだのだった。 その情報というのは、たくさんの文章を全部切り刻んで、混ぜ合わせたようなものだった。 それは一塊になったジグゾーパズルのピースのようだったが、僕がその1ピースを 捕まえようとすると、全てのピースはまるで小動物のように一斉に逃げ回り、収集がつかなくなった。 それでも僕は必死で集中して、逃げ惑うピースを繋ぎあわせようと試みた。 まるでヒントのないクロスワードパズルを、動き回る文字でやってるみたいな気分だった。 以下がようよう理解できる文章に組み立てなおせた、モヤモヤからやってきた情報の一部だ。 *お前は夢を見ているのか?それとも起きているのか? *そのどちらかにいる限り、お前はどこにも行かない。 *そのハザマにいようと試みる限り、お前は夢と現実の間を揺れ動くだけで、 ハザマには時折触れることしかできない。 *ハザマにいるためには、いようと思わないことだ。 *ハザマにいると決めてしまうことだ 。 *そしてハザマにいることは、どこにも行かないということだ。 *なぜなら、どこかに行くと決めたときにはもう、そこにいるのだから。 モヤモヤの情報が僕の意識と混じりあい、僕は自分が意識そのものになったと感じた。 情報を通して僕はモヤモヤに流れ込み、モヤモヤは僕の一部になった。 そしてそれは僕がモヤモヤの一部になったようでもあった。 アナウンスが流れた。 にゃー はっとして顔を上げると、猫が原稿用紙の上に座って僕を見上げていた。 どうやら眠ってしまったらしい。 僕は猫を撫でてぺしゃんこじゃないのを確かめると、ほっとした。 時計を見ると、まだ11時だ。コーヒーでも飲んで気を取り直そうと思い、立ち上がった。 ふと、押しつぶされた枕に目が留まった。 枕カバーの模様と、枕の大きさがちょっといつもと違うような気がしたのだ。 そういえば布団だって、なんとなく角ばりすぎてるしいつもより厚い気がする。 なんというか、部屋全体が白々しいような、合成した写真のような、変な印象を感じるが、 多分これは本当に目が覚めたという証拠だと思うことにした。 台所のカウンターでコーヒーを入れて椅子に座ると、原稿用紙に向かった。 そこには題名だけが「第一話」と書かれていた。 確かに、僕の字で。 【完】 (感想) いやなんか、奇妙と不思議の違いが自分でも分かってないな、と思いました。。 ほかの誰かにも読ませたい。そう思った人はクリック♪ |
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このたびは、参加ありがとうございます。。。
滑稽で不思議な話でした。
まだまだ募集しておりますんでドンドン書いてくださいね。
2008/8/10(日) 午後 1:28