偉大なるマルグリット ( 2015年 フランス ) 予告映像から、“伝説の音痴”と呼ばれた実在の歌姫をめぐる、ドタバタ
ハートフルコメディーを想像していたのに… ぜんぜん違った。
1920年のフランス。 貴族の邸宅では、サロン音楽会が華やかに催されていた。
最後に登場するは、主賓であり主役のマルグリット男爵夫人。
自信たっぷり朗々と歌い上げるも、耳をふさぎたくなるほどの絶望的なる音痴。
誰もが、笑いをお腹のなかに隠してブラボーブラボーと拍手喝采。
金づるの夫人をいい気持ちにさせて、もっとお金を出させようという魂胆なのだ。
悪巧みの新聞記者にのせられて、リサイタルを開く夢をかなえようと、
怪しいオペラ歌手を雇い、猛特訓の日々が始まるのだった__。
マルグリットの歌声は、調子っぱずれでヘタクソではあるのだけれど、
心のこもった真摯さがびんびんっと響いてきて、味わい深いほど。
私は、ちっとも音痴なんて思えなかった。 彼女の一生懸命さが痛々しいくらい。
ぎゃくに、周りのなんと悪意にみちて残酷なことったら。
マルグリットは、ほんとは全部わかってたんじゃないのかなぁ。
だって、音楽を愛するたしかな耳の持ち主であるのなら、どんなに自己陶酔して
いようとも、自分の鼓膜をとおして音をキャッチできるものではないかしら。
周りの反応をぜんぶわかって、道化を演じているのだとしたらとてつもなく悲しい。
そう思わせるほどに、マルグリットの目は、寂しさに沈んでいるのだ。
夫は、妻の奇行をもてあまし見てみぬふりで、不倫に走る。
夫を振り向かせたいと、夫の心に届けとさらに歌に磨きをかけるのだけれど。
どんどん歌の情熱ににとりつかれたようになって、夢の世界へ突入してしまう。
たったひとり、黒人の執事が、マルグリットの夢を支えつづけて、
この、目玉がぐりんっと大きな強面の執事の存在が大きい。
ただ、この映画は、どこまでも辛らつな悪意に満ちている。
あのラストは、ちょっと残酷すぎる。 夢を見させてあげたままで良かったのに。
大きな目玉のオブジェがごろりんっと回転しだして、映画が幕を開けたように、
黒人執事の、大きなごろりんっとした目玉のアップで終わる。 ブラックだ。
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