名作映画の感想

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父ありき

      父ありき    ( 1942年 日本 )

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  妻を亡くし、男手ひとつで息子を育てあげた中学教師の父親。
生徒を事故死させた責任をとって辞職した父親は、息子を寄宿舎にあずけ、
仕事のため東京へと、離れ離れに暮らすことに。 時は流れ流れ、
息子は成長し、父親と同じ教師となる。 それでも、休暇ごとに父は息子を訪ね
息子は父を訪ね、二人だけの時間を大切にするのです。 
なんでもない日常のひとこま、会話がたんたんっと静かに積み重ねられてゆく。
このゆった〜りとしたリズムが、どうにもかったるくって途中で眠ってしまいました。
それでも、1回目より2回目。 じっくり鑑賞すればするほど、滋味がしみだしてくる。
めまぐるしく忙しない世の中で、とろとろ〜っとまどろんでしまうくらいのリズムが
だんだんっと心地良くなってくるんです。

見るからに実直そうで勤勉な父親、その背中を尊敬をもって追いかける息子。
笠智衆さんが、どこまでも自然に演じていて素晴らしいです。
けっして、巧い役者さんではないと思うんですけど、ほのぼのとした味わいがある。
そこに笠さんがいるだけで、ほっとするような柔らかな空気感があるんですね。
息子は、佐野周二さん。 古めの二枚目という感じですが、誠実そうで良いです。

今ではめったにお眼にかかれない、ああ、美しき父子物語。 
最後まで、清く正しく美しい理想の日本がここにあります。 

一人息子

       一人息子    ( 1936年 日本 ) 

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   小津監督、初のトーキー映画。 これまではサイレントだったんですねぇ。
映像が、とても静かで静止しつつゆっくりと動いているよう。ゆった〜り。
目をこらして耳をすませて、じっくりじっくり2度鑑賞しました。
噛めば噛むほどというか、じんわりっと良さが沁みてきました。


信州の山奥。 製糸工場の女工をして女手ひとつで息子を育てる母。
ある日、小学校の担任教師が訪ねてくる。 優秀な息子を中学にやる決心を
よくぞしてくれましたっと.激励にきたのだ。 母親は、寝耳に水。 
そんな余裕があろうはずもなく、なんで嘘をついたんだと息子を叱りつけるも、
息子の強い気持ちに負けて進学させる決心をする。
「かあやんは、お前のためだったらどんな苦労だってするよ。」
「うん、がんばる。 勉強してえらくなるよ。」 ひっしと涙で抱き合う母と子。
おおっ、ここが最初の泣かせの山場ですっ。 じゅわ〜んっと湿度高めです。


息子の学費を工面するため、家や畑を売りひたすら身を粉にして働きつづけた母。
ひとえに、息子の立身出世のため。 12年後に、上京したずねてみると、
息子は、しがない夜学の代用教員をして、貧乏長屋暮らし。
しかも、母親には内緒で所帯をもち赤ん坊まで生まれていたのだ。
それでも、息子は精一杯、同僚から借金までして母親を歓待する。
なんとか喜んでもらおうとあちこちに連れ出す。息子の妻も、いやな顔ひとつせず
楚々として優しい。 自分の着物を売ってお金をつくり、お母さんのためになにか
してあげてと言うのだ。 母親も、いろんな思いを呑み込んで笑顔でいる。
そう、みんながみんなお互いを思いやって美しい。
だけど息子が 「母さん、がっかりしたでしょう。 でも、しょうがないんですよ。」
…とまるで、人生をあきらめたような弱音を吐いたとき、母親が失望をぬぐい捨て、
「お前のその性根がだめなんだ。」 と、涙ながらに叱りつけるのだ。
ここ、ずきゅーんっと胸に響いた。 ああこれぞ、母の愛だもの。


母親が、またまった飯田蝶子さんっ! この人、ほんと〜に巧いっ。
『長屋紳士録』の11年前の映画なのに、ずいぶんっと苦労がにじみ出て、
どこからどうみてもお婆ちゃんっ。 この老けっぷりが、すごい。
もう一人小学校の担任教師は、笠智衆さん。 すでにお爺ちゃんのにおいがする。
ぼ〜っとしててセリフがびっくりするくらい棒読み。 これが持ち味なのかな。


古い時代の物語ではあるけれど、ままならぬ人生の悲哀がここにある。
う〜むっ、小津監督作品、深いですねぇ。 さてさて、次ゆきます。

長屋紳士録

      長屋紳士録   ( 1947年 日本 )

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  じんじんっと寒さが骨身に沁みる今日この頃。12月にもなると、とたん気忙しい。
仕事もそうだしプライベートでもなんだかやり残したことが多すぎて、無駄に
じたばたしてしまう。 こういう時はじっくりと、古き良き日本映画に浸りましょっ。
黒澤映画は、ちょっと疲れてきましたのでひと休み…。 もう一人の巨匠、
小津安二郎の世界を堪能しようと思います。 世界に名だたる名監督ですけれど、
ちゃんと鑑賞したのは『東京物語』のみ。 それもずいぶん前のこと。
ちょうど書店で廉価DVDセットを見つけました。 いざっ、小津ワールドへ。


いやはや〜っ、素晴らしかったです。 映像のすみずみまで、素晴らしかったぁ。
まず、この映画が戦後たった2年後につくられたという事実っ。
ぷすぷすっといまだ燃えカスがくすぶっているような、すすけた風景のなか、
ぽつりぽつりとバラックが建ち始め復興の兆しがみえる東京下町。
長屋に肩寄せ合って暮らしている人々の、質素だけれど堅実でたくましい生活ぶりが、一人一人の境遇は詳しく語られないけれど手に取るように伝わってくる。
肉親を亡くし多くのものを失ったからこその連帯と、突き抜けたような明るさ。 


長屋の住人、人の好さげな若い占い師が、親とはぐれたという少年を連れてくる。
ほっとけないとか言いながら自分で世話する気はなく、隣のおたねに押し付ける。
この占い師を、若き日の笠置衆さんが好演。ひょうひょうとしてて、とても良い。
おたねさんは、見るからに下町のオバちゃん。 いやいや引き受けるも、
大寝しょんべんをされて、おかんむり。 「めっ」だの、「しっ」だのと、まるで
犬の子を追い払うように邪険にする。親を探しにゆくも見つからず置いてくることも
かなわず世話するうちに、だんだんっと情がうつってゆくのだった…。

このおたねオバちゃんが、素晴らしいっ。 飯田蝶子さんという女優さん。
下町のどこにでもいるオバちゃんなんだけど、巧いっ。 
ちゃきちゃきとした語り口が絶妙に良いし、情の深さが伝わってくる。
捨て子の少年の、しらみったかりの薄汚れた愛想のかけらもない風貌も、良い。
ちっとも可愛くないからこそ、だんだんっと愛しくもなってくる。
エピソードのひとつひとつが秀逸で、ほのぼのと笑えるシーンもある。
長屋の寄り合いの席で、笠置衆さんが歌う『のぞきからくりの唄』は、必見っ。
みんなで茶碗を箸でチンチン打ち鳴らし、軽妙なリズムと合いの手が楽しい。
日本人は、こうして和を尊び心ひとつに苦難を乗り越えてきたのだな〜と思える。
ともすれば、お涙ちょうだいでじめじめしてしまうテーマなのに、、からりんっと
乾いてる。さらさら〜っとしてて、すごく心地良い。 土足で無遠慮にずかずかと
踏み込んでこない、大人のたしなみを感じました。
人情喜劇とひとくくりにできない、実に味わい深い名作でっす。

七人の侍

       七人の侍   ( 1954年 日本 )

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 ひや〜っ、とうとうとうとう。 日本が世界に誇る傑作映画を鑑賞しましたぁ。
私の部屋の小さなテレビ画面でも、どっかんっと胸にくさびが打ち込まれるごとく、
熱い血潮がわんわんっとめぐる興奮と、じ〜んと胸深く揺さぶる感動でしたが、
願わくばいつか大スクリーンで、この世界に頭からどっぷり漬かりたいです。

戦国時代。 野武士の略奪に困窮していた農民たちがおらが村を守るために、
七人の侍を雇い、一致団結して闘いに挑む__。


なにがすごいって、207分の長尺をまったく飽きさせないこと。
どんなささいなシシーンでも、細やかな神経が行き届いていて眼を離せない。
わかりやすいストーリー運びと、的確な場面展開、心にぐいんと響くセリフの数々、
そしてなによりも、七人の侍たちそれぞれがたまらなく魅力的なのだ。
リーダーの勘兵衛。 いるだけで重心がとれ安定するような、大きな存在感。
頭脳明晰な戦略家ながら、つねに和を大切にする温厚な人徳者。 
名優、志村喬さんが、ここでも素晴らしい仕事をしています。 
この勘兵衛さんの人間的魅力に惹かれ、一人また一人と侍が揃うわけです。
温厚な五郎兵衛、実直な七郎次、ひょうひょうとしたムードメーカーの平八、
めちゃめちゃ強い剣豪の一匹狼、久蔵。 桃太郎みたいな若侍、勝四郎。
味のある俳優さんたちばかり、どこにでもいるおっちゃんみたいのもいて良い。
そして、ここで一人、突出した異質な個性でぴかぴかりんに輝いているのが、
ニセ侍の菊千代。 イキがって侍ぶってるけれど、隠しようもない農民出身の男。
野ザルのように自由奔放で豪快。 若き三船さんが、エネルギッシュに丸ごと
菊千代になって、暴れまくっています。 七人のなかに菊千代がいることによって、
この物語は、広がりと深みを増しているのだなぁ。 侍への憧れとともに、
農民たちの苦渋を身をもって知っているからこその、熱がみなぎっている。
そして、農民たちだって侍に負けないくらいに個性豊か。なかでも、左卜全さん。
とぼけたしわくちゃの泣き笑い顔っ。ぜったい外せない役者さんだなぁ。

やはり見所は、クライマックスのどしゃ降り雨のなかでの野武士との激闘でしょう。
騎馬の野武士と竹やりの農民たちとの、決死の肉弾戦。 泥を跳ね上げ、
びしょしょのどろどろ〜の、んもう、すさまじい迫力でっす。
今のCGを駆使したハイスピードの映像が、ちゃんちゃら嘘臭くって笑える。 
これぞ、ほんもののアクションでしょう。 脱帽でっす。

どれほど虐げられ辛酸をなめたとしても、ひたすら耐えに耐えつづけ、
大地に深く根をはり大地とともに生きる農民たちこそが、強くたくましいのだと。
農耕民族のわが日本人だからこそ、描けた世界のように感じます。
この映画は、日本人必須、ぜひ学校の必修科目にしてはどうかなぁ。
楽しみつつ、いろんなことをじっくり学べると思うんだけど。

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羅生門

    羅生門    ( 1950年 日本 )

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  ヴェネツィア映画祭グランプリ受賞作。 眼をぱっちり見開いて、いざっ。

朽ちかけた巨大な羅生門に、ごぉごぉ〜っとうなるような勢いで打ち付ける雨。
このファーストシーンだけで、なにやらすごいもんが始まる予感。
そこにいるは、二人の男。 僧侶と木こり。 魂をぬかれたような茫然自失で、
木こりがつぶやく。 「…わからん、さっぱりわからん…」 
木こりは三日前、山の奥で一体の男の死体を見つけたのだ。
捕えられた盗賊と、男の妻と、男の霊と、三者三様、言い分がまるで違うのは、
どうしたことか。 何故に男は死んだのか。 __真実は、藪の中__



う〜む、なにがすごいって。 これが黒澤マジックなのでしょうか。
味気ないモノクロ映像から、まばゆいばかりの光が放出されているのだ。
木こりがずんずんっと山の奥へ奥へ歩いてゆく。 ただそれだけのシーンなのに、
さんさんっと照りつける陽光、きらきらと輝く木漏れ日、匂い立つ緑。
白と黒の、ただそれだけしかないのに、幾多の色彩があふれているだ。
そして木こりがずんずんずんっと、さらにさらにうっそうとした山に分け入ってゆくと、
そこはもう、人知の及ばない、深い深い迷宮の世界__。


盗賊の三船さんが、とびきり魅力的だ。 隆々とした肉体と飛び散る汗、
野蛮な猛獣のようでいて、ちらりっと知性や心の弱さが垣間見える。
女をものにしようと襲いかかるかも、野獣にはなりきれない。
女の方が、よっぽど怖い。 平安時代絵巻からそのまま抜け出てきたような
美しくも妖艶。 つるりっとした能面ながら、艶めかしくもくるくると表情を変える。
目の前で妻を奪われた男は、洞穴のように暗く沈鬱な目をしていて。
この京マチ子さん、森雅之さんも、適役。
幾通りにも解釈できるけれど、けっして難解ではない。 
人の心は謎だ。 エゴと欲と見栄と猜疑と怖れと恥と…嘘偽りすら真実になる。
この摩訶不思議なものを抱えて生きてくのだなぁ〜なんて。
88分とコンパクトにまとめられた中に、膨大な謎が詰め込まれてました。

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