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塩野七生の新刊。 特に、タイトルからいっても『ローマ人の物語』が完結した後の続編的な内容であることを期待してしまう。 帯のアオリは 「パクス・ロマーナ」が崩れるとはどういうことか
秩序亡き地中海を支配したのは「イスラムの海賊」だった 衝撃的な、『ローマ人の物語』のその後 DE MARI NOSTRO POST DELETAM ROMAM I : とうことで内容は 西ローマ帝国が崩壊した後の地中海世界での覇権の移り変わりと、宗教対立上の正戦、逆に国境に縛られない団体の話の3種類。 ローマ亡き後のそれぞれの話が今までの塩野氏が手がけてきた作品テーマに結びついている。 例えば、地中海世界での覇権の移り変わりは、ヴェネツィアに関する著作にそのまま続くような内容だ。 ローマ帝国という押さえがなくなった地中海世界の主役に躍り出たのはイスラム教徒の海賊だった。 それも特にサラセンの海賊(アラブ人ではない北アフリカ出身のイスラム教徒) 地中海沿岸の都市を襲ったり拉致し、または護衛のない商船を奪い、容易に物や奴隷を手に入れ収入を得ていた。 後にそれに対して商船には護衛を付けるようにするなったり、海賊の本拠地を叩くなど、国家的な対策を講ずるようになるが、宗教的な対立や貴重な生活手段という事もあって、なくなりはしなかった。 そして、とうとうイスラムに落ちるヨーロッパも出始める。 まずはイベリア半島であり、イタリアもシチリア島がイスラムに陥落した。 ローマの城壁までも海賊が出没するようになり、大聖堂も荒らされた。 イタリアもいつイスラム化してもおかしくないような状況だった。 それを食い止めたのは・・・。と言うような内容だ。 ところでこの項目ではヴェネツィアに触れることが非常に多い。 フン族から逃れるための建国にはじまり、トルコとの死闘、新航路発見による新興海運国との争いを乗り切ってナポレオンの侵略によって滅亡するまで、ヴェネツィアは「千年王国」であり「地中海の女王」だった。 その興隆期においても、海賊との戦いやイスラム諸国との付き合い方はヴェネツィア史なくしては語れない。そしてそれは塩野氏の『海の都の物語』やダンドロ三部作に詳しい。 また、宗教上の対立、つまり十字軍の話などは特徴的なローマ法王を描いた『神の代理人』に詳しいし、「ダンドロ三部作」や「歴史絵巻三部作」にも多く記載されている。 国境に縛られない団体は、救出修道会と救出騎士団の話。 イスラムの海賊に拉致されたキリスト教徒は奴隷として北アフリカ沿岸で使われていたのだが、それをお金で買い取って救出するために努力した団体である。 両方とも「ロードス島攻防記」もあわせて読んで欲しい内容だ。 衝撃的だったのは、宗教者は十字軍など勇ましいものには熱中するものの、異教徒に捕まった同胞の救出にはほとんど目を向けてなかったという事だ。 設立が1218年で1222年から救出行を開始した「救出騎士団」は、実に557年間にわたって活動をしてきた。 その間に、344回の救出行を実行している。 平均しても2年に1回以上。 最後が1779年。その10年後にフランス革命が起きる。 啓蒙主義の時代になっても救出されるべきキリスト教徒の奴隷はいたわけである。 そしてキリスト教徒の奴隷がなくなり解放されるのは、フランス「国民軍」による北アフリカ沿岸制圧・植民地化によってなのであった。 勿論それはイスラム諸国にとっては、欧州諸国による植民地化のはじまりであり、住民すべてが奴隷と化すようなものなのであるが。 軍事的なものであれパクス(平和)が、いかに必要であるか。。。 考えさせられる事象であろう。 【目次】
第1章 内海から境界の海へ(イスラムの台頭;サラセン人 ほか) 間奏曲 ある種の共生(「イスラムの寛容」;イスラム・シチリア ほか) 第2章 「聖戦」と「聖戦」の時代(海賊行つづく;イタリア、起つ ほか) 第3章 二つの、国境なき団体(「救出修道会」;「救出騎士団」) 巻末カラー「サラセンの塔」(リグーリア地方;トスカーナ地方 ほか) http://www.tokyovalley.com/yahoo_blog/article/article.php |
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