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今年の春に、中国河北省の唐山に行く機会を得た。唐山と言えば、1976年にマグニチュード7.8の大地震が発生し、公式発表だけでも24万人を超える犠牲者が出たところだ。中国では、江西省の景徳鎮とならび焼物の町として有名である。
現在、唐山では南の沖合いに、世界最大の工事現場と言われる曹妃甸大工業区の建設に着手している。中国有数の鉄鋼メーカーの首都鋼鉄も、北京の環境保護の目的から曹妃甸工業区に移転し、この10月には火入れを行なう予定だったが、どうなったことやらとんとその情報が入ってこない。北京オリンピック後の鋼材需要が減っていることもあるからなあ…。
その曹妃甸を視察したときに、運良く(?)中国共産党中央組織部長の李源潮の視察団と出くわした。中央の要人が視察に来る情報を得ていたので、なるべくぶつからないように細心の注意を払って移動していたのだが…。彼の視察直前の建設途中にある原油埠頭では、彼を歓迎する大弾幕、視察者用のヘルメットが並べられ、後は到着を待つだけとなっていた。そんな中、まず黒塗りの乗用車が乗り込んできて、中から強面のおじさんたちが回りいた人たち(そこで働いている労働者なんだろう)を、何と言っていたかは聞き取れなかったが、どなりながら排除していた。車のナンバープレートからすると武装警察だ。その後、公安車両に守られて、3台のスモークガラスを貼ったマイクロバスが現れた。その中の1台に李源潮が乗っているという。
表向きでは、中国最大の課題として挙げられる格差社会の是正。中国共産党が結党、さらには中国人民共和国設立以来、ずっと標榜してきた共産主義イデオロギーでは、プロレタリアート(労働者階級)独裁による平等社会の実現がその究極の目的とされている。改革開放政策によって、自由主義社会の考え方やシステムが導入され、中国にも急速に資産者階級が出現している。格差社会はますます広がるばかりだ。
こうした曹妃甸での出来事を目の当たりにして、格差社会を率先して実行しているのは共産党そのものではないかと思う。「是正、是正」と口には出すが、実際にやっていることは、特権階級の上に胡坐をかいた権威を見せつけること。こう考えると、格差社会がなくなって一番困るのは政権担当者であるのだから、抜本的な対策などとるはずもない。
視察先の物々しい警戒がテロなどからの身の安全のための措置だと言うのなら、テロ組織に狙われるようなことをしているからであり、真に国のため、人民のために動いている人であれば、そんな心配もないはずだ。武装警察ではなく、人民に守られてこそ、真の国家指導者と言えるのではないだろうか。
中国の格差社会を是正するには、まず共産党幹部という特権をなくすことが先決だ。国家指導者自らが、一般の人民との格差を率先して取り払うこと。もちろん、このことは中国ばかりではない。日本においても政治家や官僚の特権や既得権益を一番最初になくす必要があることは言うまでもない。
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