万年寝太郎徒然日記

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吉右衛門と「鬼平」

池波正太郎原作、中村吉右衛門主演『鬼平犯科帳』。
平成元年7月のスタート以来、平成13年で連続時代劇としては一旦終了した後、平成17年からは年1回のペースでスペシャル版が放送され、その根強い人気は依然衰えを見せません。
長谷川平蔵を演じる主演の吉右衛門をはじめとするレギュラー陣やゲスト俳優の充実、池波作品の魅力の1つである食べ物描写の徹底などのクオリティーの高さや、時代劇に興味を持たない層からも支持を得たことなどで、平成のテレビ時代劇の「金字塔」を打ち立てたと言っても過言ではないでしょう。

さて、中村吉右衛門と「鬼平」とは、彼が鬼平を演じる以前から深い繋がりがあります。
先ず、テレビで最初に鬼平を演じたのは、吉右衛門の実父である先代松本幸四郎(白鸚)。原作第1作目である「浅草・御厩河岸」が『オール読物』昭和43年1月号(文藝春秋)に掲載されて2年足らずの昭和44年10月から翌45年12月までの第1シリーズ、昭和46年10月から翌47年3月までの第2シリーズで、通算91本にわたって演じました。原作者がイメージを重ね合わせて執筆し、映像化に際しても推薦しただけあってまさにはまり役で、貫禄も十分でした。
実はこのうちの第2シリーズには、平蔵の息子・長谷川辰蔵役で、第10話「隠居金七百両」(脚本・安倍徹郎、監督・小野田嘉幹)と第15話の「下段の剣」(脚本・安倍徹郎、監督・田中徳三)の2編に若かりし日の吉右衛門が出演しているのです。

「隠居金七百両」は、剣術の修業に励む傍ら道楽にも余念がない辰蔵が、茶店の娘・お順(ひし美ゆり子、当時は菱見百合子)に一目惚れし、彼女のいる茶店に通いつめるところから物語が始まります。茶店の亭主でお順の父・次郎助(加藤嘉)は実は盗賊で、その頭が残した「隠居金」を預かったことから手下同士の醜い争いに巻き込まれて行きます。辰蔵の働きもあって事件は解決しますが、父を殺されたお順は江戸を去り、最後は父との稽古で、辰蔵は完膚なきまでに叩きのめされてしまいます。
「下段の剣」は、辰蔵が道場で知り合った「下段の剣」の使い手・松岡重兵衛(高松英郎)との関わりに、父・平蔵と松岡との過去の因縁が絡むという物語。何としても「下段の剣」を会得しようとする辰蔵に「あの男には関わるな」と釘を刺す平蔵。松岡は盗賊の用心棒で、放蕩無頼の日々を送っていた若き日の平蔵が盗賊仲間に入った時、それを諌めたのが松岡でした。旧知の老盗賊と組んで最後の「おつとめ」に挑む松岡でしたが、仲間の裏切りに遭い、火盗改めの捕方と共に現場へ駆けつけた辰蔵に看取られて息を引き取ります。この作品も最後に平蔵と辰蔵が稽古する場面が登場しますが、下段の構えを見せた父に辰蔵が打ち込むというものでした。

幸四郎の後、丹波哲郎、萬屋錦之介によって鬼平が演じられ、それから吉右衛門主演による「鬼平」の企画が持ち上がります。幸四郎の鬼平ははまり役でしたが、原作者である池波正太郎にとって一つ心残りだったのは、放送当時既に幸四郎は還暦を控えており、原作の鬼平よりもはるかに高齢だったことでした。池波さんにとっても念願だった吉右衛門の「鬼平」が、5年の歳月を費やして漸く実現したのが平成元年のこと。吉右衛門版『鬼平犯科帳』の第1回を見終わった池波さんは、著書「銀座日記」の中で、「実に立派な鬼平」と讃え、放送終了直後に電話をかけた吉右衛門に「原作者として満足したこと」を伝えたと書いています。池波さんは翌平成2年5月3日に世を去りますが、念願だった吉右衛門の「鬼平」を見届けた上、死後人気シリーズとして定着したことにさぞ満足したことだろうと思います。

テレビに留まらず、舞台・映画でも演じたことで長谷川平蔵=中村吉右衛門のイメージを確立し、一般にも『鬼平犯科帳』という作品自体の存在が定着させた点でも、吉右衛門版『鬼平』の功績は大きいと思います。父・先代幸四郎の鬼平も超えたとも言われる吉右衛門版は、これまでの『鬼平』シリーズの集大成となったと言って良いでしょう。

閉じる コメント(4)

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「はまり役」というのは少ないながらもありますが、役者自身をイメージしてキャラクターを膨らませてくれたというのは、冥利に尽きますね。それに答えて余りある吉右衛門の演技をこの春も楽しめた喜びを実感しています。

2007/4/17(火) 午前 10:16 小日向散策

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思えば、吉右衛門の「鬼平」も20年近く続いているんですよね。自分が作り上げた長谷川平蔵というキャラクターのイメージを、吉右衛門がより膨らませて不動のものにしてくれたことを、天国の池波さんも喜んでいることと思います。

2007/4/17(火) 午後 9:41 [ mannennetaro2005 ]

長谷川平蔵の年齢設定が45歳ですから吉右衛門さんの当時のお歳とは、ぴったり合った訳ですね。
小野田嘉幹監督は三ツ矢歌子さんのご主人ですね。一度だけ監督に付いた事があります。

2007/11/23(金) 午後 6:28 さすらいのカチンコマン

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さすらいさんは、映像関係のお仕事に携わっていらっしゃったんですね。
吉右衛門さんが、初めて長谷川平蔵を演じたのが丁度45歳の時で、その意味でも自然に鬼平役へ入り込めることが出来たのではないかと思います。

2007/11/24(土) 午後 10:44 [ mannennetaro2005 ]


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