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去る5月16日、俳優の田村高廣氏が亡くなりました。 往年の大スター・阪東妻三郎の長男であり、また田村正和・亮の兄としても知られ、数々の映画・テレビドラマ・舞台で活躍しました。 享年77歳ということでしたが、いつまでも若々しい印象が強く、先月まで映画の撮影に臨んでいたということで、そのあまりにも突然の訃報に驚いた方は多かったことでしょう。 昭和28年、父の急逝を受けてサラリーマンから俳優へ転じて以来、約半世紀にわたって俳優としてのキャリアを積み重ねてきた田村さんは、時代劇でも多くの作品で印象的な演技を残しています。 特に池波正太郎作品には欠かせない存在で、『鬼平犯科帳』では、丹波哲郎版(昭和50年)と萬屋錦之介版(昭和55年〜57年)の第3シリーズ(昭和57年)で、長谷川平蔵の親友・岸井左馬之助役で出演。錦之介版では第2シリーズ(昭和56年)で、これも平蔵の幼馴染で「托鉢坊主」として生計を立てている井関録之助役でゲスト出演。また、中村吉右衛門版(平成元年〜平成10年)では、第2シリーズ(平成2年〜3年)で、大盗賊・雨乞い庄右衛門役でゲスト出演。自分を裏切った子分たちを皆殺しにするラストシーンが印象に残っています。尚、前記の錦之介版でも、岸井左馬之助役で同じエピソードに出演しています。『仕掛人・藤枝梅安』シリーズ(昭和57年〜58年)では、表の仕事は楊子作りの職人、裏では吹き矢を武器とする仕掛人・彦次郎を演じ、梅安役の小林桂樹氏とも息の合った演技を披露していました。 この他、天知茂主演の『雲霧仁左衛門』(昭和54年)では、雲霧一味のライバルである火付盗賊改方長官・安部式部役、江戸の暗黒街を描いた『闇の狩人』(平成6年)では、殺し屋の元締・五名の清右衛門役をそれぞれ演じた他、原作者の池波氏の遺言によって、『剣客商売』の主人公・秋山小兵衛役に指名されていたそうですが、これは「幻」に終わってしまいました。 「必殺」シリーズでは、『必殺仕掛人』(昭和47年〜48年)で、第21話「地獄花」(脚本・安倍徹郎、監督・三隅研次)と第30話「仕掛けに来た死んだ男」(脚本・早坂暁、監督・大熊邦也)の2編で、浪人・神谷兵十郎役でゲスト出演。中村主水(藤田まこと)初登場作である『必殺仕置人』(昭和48年)に続くシリーズ第3作『助け人走る』(昭和48年〜49年)で、浪人・中山文十郎役で主役を演じました。中村主水がシリーズのメインキャラクターとして定着する以前の作品である本作は、山村聰氏演じる元締・清兵衛、中谷一郎氏演じる辻平内とのコンビと相まって、後の作品にはない独特の「渋さ」に満ちた作品でした。この作品では、第12話「同心大疑惑」(脚本・安倍徹郎、監督・三隅研次)で中村主水が登場。文十郎と主水が一騎打ちを繰り広げるシーンが見られました。 この他、「必殺」シリーズの亜流作品でありながら、独特の雰囲気を持っていた『影同心』(昭和50年)では、南町奉行・鳥居甲斐守役で準レギュラー出演。山口崇・渡瀬恒彦・金子信雄の主人公3人に「殺し」の指示を与える役どころでした。平岩弓枝原作の『御宿かわせみ』(昭和55年〜56年、57年〜58年)では、主人公・神林東吾(小野寺昭)の兄で南町奉行所吟味方与力・神林通之進役、「ナショナル劇場」の『南町奉行事件帖・怒れ!求馬』(平成9年〜10年、11年〜12年)では、南町奉行・根岸肥前守役をそれぞれ演じました。 また、『子連れ狼』の小池一夫(原作)・小島剛夕(画)の『乾いて候』(昭和59年)では将軍吉宗を演じ、主人公・腕下主丞(かいなげ・もんど)の田村正和、大岡越前守の田村亮と「三兄弟揃い踏み」の作品となりました。 田村さんは、大石内蔵助と吉良上野介を両方演じた経験も持っており、これは芸域の幅広さと俳優としてのキャリアの長さの両方を証明したものであると言えます。 ここまで書いてきた通り、時代劇においても将軍から町人まで演じた役柄が幅広く、また京都出身でありながら伝法で歯切れの良い江戸弁も絶妙でした。悪役を演じる時でも人間としての「深さ」が感じられ、ある意味においては偉大なる父や2人の弟を凌ぐ名優であったと思います。 謹んで、御冥福をお祈り致します。
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