万年寝太郎徒然日記

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昭和48年から49年にかけて、全5作品が作られた深作欣二監督の『仁義なき戦い』。
その第1作(昭和48年1月13日公開)のオープニングタイトルは、東映お馴染みの「三角マーク」に続いて、昭和20年8月6日、広島に投下された原爆による忌まわしいキノコ雲のモノクロ写真をバックに、殴り書きのようなタイトル文字が表われるというものです。

          http://www.youtube.com/watch?v=nb8VXy4Takc

この第1作のオープニングタイトルにも象徴されているように、『仁義なき戦い』という映画では、戦争が投げかけた暗い影も重要な要素となっています。
『仁義なき戦い』の物語は、終戦から1年後の昭和21年、「戦争という大きな暴力こそ消え去ったが、秩序を失った国土には新しい暴力が渦巻き、人々がその無法に立ち向かうには、自らの力に頼る他はなかった」(オープニングナレーションより)頃の、広島県呉市から始まります。終戦後、復員兵である主人公・広能昌三(菅原文太)は、闇市で殺人事件を起こして服役。出所後、その度胸を見込んだ山守義雄(金子信雄)率いる山守組の子分となり、暴力の世界に身を投じることで自らの思いをぶつけようとするも、やがて20年以上に及ぶ「広島ヤクザ戦争」の渦中に飛び込むことになってしまいます。
ここで描かれているのは、戦争が終わって己の行き場を失った広能という男が、一つの大きな流れに流されるまま抜け出せず、もがき苦しむ姿であり、また舞台である呉という町が終戦までは海軍の一大拠点であり、それが戦後になると、今度は新しい「戦争」の舞台になるという点に、歴史の皮肉さを感じます。

第1作でも随所で見られた「戦争の影」が、物語の背景として更に色濃く描かれたと言えるのが、シリーズの中では「番外編」でありながら、「最高傑作」の呼び声も高い次作の『広島死闘篇』(昭和48年4月28日公開)。
この作品では、広島でのヤクザ抗争が激化する中、名うての「ヒットマン」として恐れられた山中正治(北大路欣也)という男が事実上の主人公として登場します。予科練志願の学徒だったが終戦で心のやり場を失ったこの男は、「国のために戦う」という思いを果たせなかった無念さを、「国」を「親分」や「組」に置き換えて晴らそうとしますが、結局利用された挙句、「国のために死ぬ」以上に無様な最期を遂げてしまいます。山中と恋仲になる組長の姪・靖子(梶芽衣子)は戦争未亡人で、その夫の遺影が映るシーンは、「国のために死んだ者」とそれが出来なかった山中との対照的な関係が象徴されているように思います。
シリーズ第4作まで手がけた脚本家の笠原和夫は、『広島死闘篇』の製作にあたり、自らと同世代で「戦争に行き遅れた青年」である山上光治という実在の人物に注目し、彼をモデルに山中正治というキャラクターを生み出します。一方、笠原とは3歳年下で昭和5年生まれの深作は、山中の宿敵となる武闘派ヤクザの大友勝利(千葉真一)に共鳴し、その捉え方の違いに「時代感覚のギャップ」を痛感したといいます。

『仁義なき戦い』では、『広島死闘篇』以降、原爆ドームが映って物語が終わるというスタイルが定着します。これは、以前から「ヤクザ映画には社会性が足りない」と考えていた撮影担当の吉田貞次カメラマンが、戦争の犠牲者とヤクザの犠牲者とを重ねる形で原爆ドームを撮ることを決めたそうです。
事実、広島の象徴であり、戦争の悲惨さの象徴でもある原爆ドームを映画の最後に出すことで、『仁義なき戦い』が何を訴えようとしているのかを表わすのに効果的な役割を果たしています。

『仁義なき戦い』と戦争との関係について書いてみましたが、ここまで書いて気付いたことは、国同士の戦争も、ヤクザ同士の争いも、「形」や「規模」は変わってもその実態には変わりはなく、また、巨大な力によって若者たちが操られ、その尊い命が犠牲になるという構図も全く同じであるということです。
シリーズ最終作となった『完結篇』(昭和49年6月29日公開)は、「人間の社会から弱肉強食の戦いが絶えるのは、果たしていつのことだろうか」というナレーションで締め括られ、全5作に渡った『仁義なき戦い』は幕を降ろします。
『仁義なき戦い』という映画は、単なるヤクザの争いを描いた作品に留まらず、戦争の悲惨さ、愚かさや平和の尊さを考えさせてくれる映画でもあると思います。

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