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映画『男はつらいよ』の主題歌「男はつらいよ」。 星野哲郎作詞、山本直純作曲、そして歌は勿論車寅次郎こと渥美清。テレビ時代から流れていた曲ですが、「寅さん」シリーズの「代名詞」の1つと言っても過言ではないでしょう。 全48作を通じて流れていたと言っても、作品ごとに詞や演奏などで所々異なる部分があります。 先ず第1作(昭和44年)では、モノクロ映像の柴又の風景をバックに、20年ぶりの帰郷を前に故郷への思いを語る寅さんのナレーションの後、「♪俺がいたんじゃお嫁にゃ行けぬ わかっちゃいるんだ妹よ いつかお前の喜ぶような 偉い兄貴になりたくて 奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の 今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪」という、曲の1番が歌詞が使われています。 続く第2作『続・男はつらいよ』(昭和44年)では、「お嫁にゃ行けぬ」と言われていた妹・さくら(倍賞千恵子)が、それに反して(?)前作で結婚したこともあって、「♪どぶに落ちても根のある奴は いつかは蓮(はちす)の花と咲く 意地を張っても心の中じゃ 泣いているんだ兄さんは 目方で男が売れるなら こんな苦労も こんな苦労も掛けまいに 掛けまいに♪」という、2番の歌詞が使われました。 第3作『フーテンの寅』(昭和45年・森崎東監督)では、初めて1・2番が通して流れましたが、さくらが結婚しているにもかかわらず、1番の冒頭はなぜか「♪俺がいたんじゃお嫁にゃ行けぬ」のままでした。続く第4作『新・男はつらいよ』(昭和45年・小林俊一監督)では、「♪どうせおいらは底抜けバケツ わかっちゃいるんだ妹よ 入れたつもりがスポンのポンで 何もせぬよりまだ悪い それでも男の夢だけは 何で忘れて 何で忘れているものか いるものか♪」という歌詞が使われています。この歌詞が使われたのは後にも先にもこの第4作のみで、山田洋次監督作品ではないことも合わせて、この2作はシリーズ中でも異色だと言えます。 再び山田監督がメガホンを執った第5作『望郷篇』(昭和45年)から、1番の冒頭が「♪どうせおいらはやくざな兄貴」というお馴染みのものとなり、以後第48作『寅次郎紅の花』(平成7年)まで一貫して使われます。1・2番が通しで流れるようになったのは第9作『柴又慕情』(昭和47年)辺りからですが、各作品ごとに1番と2番との間に挟んだ間奏の時間に差があったり、2番の前半部分が演奏のみで、後半部分には1番の後半である「♪奮闘努力の甲斐もなく〜」が繰り返されるというバージョンもよく使われています。第17作『寅次郎夕焼け小焼け』(昭和51年)からは、新しい2番の歌詞として「♪当てもないのにあるような素振り それじゃあ行くぜと風の中 止めに来るかと後振り返りゃ 誰も来ないで汽車が来る 男の人生一人旅 泣くな嘆くな 泣くな嘆くな影法師 影法師♪」という詞が登場します。この詞のバージョンはシリーズ中でも数本使われたのみでしたが、自由と孤独の間で生きる寅さんの心情が表われているようで、個人的にはこちらの詞も印象に残っています。 「男はつらいよ」は昭和45年2月にレコード化され、映画が完結して約10年が経った現在でも親しまれていますが、この曲の魅力は、作曲者・山本直純による大らか且つ暖か味のある曲風と、甘さの中に哀愁を秘めた渥美清の歌声にあると思います。「大らかさ」と「暖かさ」は、劇中に流れる山本直純の音楽からも如実に伝わってくるし、作品の随所で聞かれる寅さんの歌からもどこかしみじみとした味わいが感じられます。映画『男はつらいよ』を語る上で、歌、そして音楽の功績も決して見逃せないでしょう。
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