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『男はつらいよ』という映画は、主人公・車寅次郎の物語であると同時に、彼を見守る妹・さくらなど「とらや」の人々の物語でもあります。つまり、「寅さん一家」という1つの家族の歴史を描いた物語であるとも言えます。 それでは、この車家の人々の人間関係とはどのようなものなのか。今回はそれに触れてみたいと思います。 先ず、「とらや」を切り盛りする「おいちゃん」「おばちゃん」こと、車竜造・つね夫妻。竜造は、寅さんとさくらの父・車平造の弟で、「とらや」の6代目の主人にあたります。元々「とらや」は平造が継ぐはずだったのが、息子の寅さんが家出して間もなく亡くなったために、「跡取り息子の寅次郎が家を継ぐ気になるまで」と、竜造が店の主人を務めることになりました。つねとは見合い結婚で、この2人には子供がいません。だからこそ、幼くして両親と一番上の兄を亡くし、もう1人の兄である寅さんも家出して独りぼっちになってしまった姪のさくらを、我が子以上に大切に育ててきたのです。また、いつも自分たちにとって「悩みの種」である寅さんのことを、それでも常に案じている様子からも、寅さんを我が子のように思っている竜造とつねの気持ちが窺えます。 次に寅さんとさくら。この2人も兄妹でありながら血は繋がっていません。寅さんは、父・平造がかつて柴又で芸者をしていた菊という女に生ませた子で、さくらとは「異母兄妹」にあたります。先ほども書いた通り、この2人の上には秀才だったという兄がいたのですが、この兄も中学の時に死んでしまったそうです。寅さんの育ての親、つまりさくらの母は「子供には罪がない」ということで、分け隔てなく寅さんを可愛がりました。常に兄を思いやるさくらの優しさはこの母親譲りなのでしょう。また、山田洋次監督も、寅さんは育ての母親が愛情を持って接してくれたお蔭で、他人の痛みの分かる思いやりのある人間になったのではないかと語っています。因みに、さくらは戸籍上は「櫻」と書くそうです。 このさくらの夫となるのが、「とらや」の裏の印刷工場で働く諏訪博。大学教授の家に生まれ育った博は、父に反発し、高校を退学して家出。新宿で与太っていた所をタコ社長に拾われ、印刷の仕事を一から教え込まれて一人前の印刷工となります。後にさくらとの結婚式で両親と再会し、父と和解を果たしますが、実の兄や姉とは折り合いが悪いようで、シリーズでもその様子が何度か描かれています。結婚から1年後、さくらと博との間に生まれたのが長男・満男。顔が寅さんに似ていると言われた満男は、年を重ねるに連れて性格や生き方もこの伯父に段々似てきて、両親を心配させることになります。 このように、車家の人々の中でれっきとした血縁関係があるのはさくら・博夫婦と満男だけ。それぞれが血の繋がりが薄かったり、肉親の情に恵まれていないことが分かります。
しかし、時には大喧嘩をしながらも、お互いのことを思いやり、助け合って生きている車家の人々は、それを補って余りある力強い絆で結ばれており、だからこそ、やはり我々にとって「理想の家族」ではないかと思います。 |

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