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今年の大河ドラマ『功名が辻』は、歴史小説の大家であった故・司馬遼太郎氏の同名小説が原作です。
今年で没後10年を迎えた司馬氏の作品をはじめ、歴史上の人物や出来事をテーマにしている大河ドラマは、多くの歴史小説家の作品が原作として採用されています。
司馬氏は、歴代の大河ドラマで最も多く作品が採用されている作家でもあります。最初に採用された作品は昭和43年の『竜馬がゆく』。以後、『国盗り物語』(昭和48年)、『花神』(昭和52年)、『翔ぶが如く』(平成2年)、『徳川慶喜』(平成10年)、それに今年の『功名が辻』と、計6本が原作となっています。幕末・明治ものが圧倒的に多く、『竜馬がゆく』は土佐、『花神』は長州、『翔ぶが如く』は薩摩が舞台で、『徳川慶喜』は幕府側の視点で幕末が描かれていました。戦国ものである『国盗り物語』では、『功名が辻』のエピソードもドラマの中に取り入れられていました。
次に多いのが吉川英治氏。『太閤記』(昭和40年)、『新・平家物語』(昭和47年)、『太平記』(平成3年)、それに『武蔵』(平成15年)の4本が採用されています。『太閤記』は「大型時代劇」としてスタートした大河ドラマに「歴史ドラマ」としての要素を取り入れ、さらに主演した緒形拳などを一躍スターダムに押し上げた「記念碑」的作品です。『新・平家物語』は、大河ドラマ10作目という節目の作品で、主演の仲代達矢をはじめとする豪華配役が話題となりました。『太平記』は、大河ドラマ史上初めて南北朝時代を描いた作品として注目を集めました。これに続くのが山岡荘八氏の3本で、柳生但馬守宗矩を主人公に、大河ドラマのために執筆された『春の坂道』(昭和46年)、氏のライフワーク的作品である『徳川家康』(昭和58年)、そして平均視聴率歴代1位の座をいまだに維持している『独眼竜政宗』(昭和62年)の3本が採用されています。
海音寺潮五郎・永井路子の両氏は2作品が原作として採用されています。海音寺氏の作品は、上杉謙信が主人公の『天と地と』(昭和44年)と、平将門と藤原純友が主人公の『風と雲と虹と』(昭和51年)の2作。前者は大河ドラマのカラー放送第1作、後者は大河ドラマ史上最古の時代が舞台の作品と、いずれも「記録」に残る作品です。一方、永井氏の作品は『草燃える』(昭和54年)と『毛利元就』(平成9年)の2作で、前者は源頼朝・北条政子夫妻を主人公に、源平合戦期から鎌倉幕府成立後までの激動期を描いたもので、台詞の中に現代語が次々と登場したことで当時話題となりました。後者は、戦国時代の中国の覇者・毛利元就が主人公でしたが、彼を取り巻く女性たちが色濃く描写されていたことでも印象に残る作品です。
この他では、大河第1作である『花の生涯』(昭和38年)と『元禄繚乱』(平成11年)の舟橋聖一、『赤穂浪士』(昭和39年)と『三姉妹』(昭和42年)の大佛(おさらぎ)次郎、『樅ノ木は残った』(昭和45年)の山本周五郎、『勝海舟』(昭和49年)の子母澤寛、『元禄太平記』(昭和50年)の南條範夫、『黄金の日日』(昭和53年)の城山三郎、『武田信玄』(昭和63年)の新田次郎、『峠の群像』(昭和57年)と『秀吉』(平成8年)の堺屋太一など、純然たる歴史小説家ではない作家の作品も多く採用されています。異色の存在としては、『赤穂浪士』の脚本を手掛けた村上元三氏で、『源義経』(昭和41年)では、自ら執筆した小説を脚本しています。
また最近では、『獅子の時代』(昭和55年)の山田太一、『おんな太閤記』(昭和56年)などの橋田壽賀子、『八代将軍吉宗』(平成7年)などのジェームス三木、それに一昨年の『新選組!』の三谷幸喜など、脚本家によるオリジナル作品が多く見られます。
来年の大河ドラマは『風林火山』。大河では初めての起用という井上靖氏が原作です。こうして見ると、歴史小説家に限らず、様々な作家の作品が大河ドラマに採用されているのが分かります。平成20年以降の大河ドラマについては未定ですが、果たしてどの作家のどんな作品が取り上げられるのか興味深い所です。
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