英語・ドイツ語翻訳者に転職したドイツ語好きの化学者のメモ

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翻訳をするときは、辞書で調べることは当たり前のことである。
最近は、紙の辞書よりもオンライン版を使うようになり、対訳で表示するサイトで比較しながら、文脈に合う訳語を探せるようにもなっている。

辞書が大型化して収録単語数や用例が増えても、特に多義語の場合は、翻訳対象に合わせた訳語の選択で迷うこともある。
単に文脈というよりも、専門用語の場合は、その分野によって訳語が異なることにも注意しなければならない。
また、一般的な辞書に載っていない場合、専門辞書を探したり、オンライン検索で調査することも必要だ。
ただ、翻訳者が何も疑問に思わずに、辞書の訳語、特に最初に出ている訳語を使って満足しているときは、誤訳のリスクが高まる。

今月経験したドイツ語和訳のチェックでは、その翻訳者は専門の知識が足りず、一般的な辞書の訳語だけで和訳していることが明らかであった。
更に、名詞の格変化を理解していないのか、誤訳が目立った。

他の案件も作業中のため、20%くらいチェックしたところで、一度翻訳者に返して見直してもらおうと、翻訳会社の担当者に連絡した。
すると、この翻訳者はヨーロッパ在住のようで、日本時間の午前中には連絡ができないという。
その翻訳者が起床してメールを見る頃には、すでに締め切り時間となってしまうのだ。

ということで、誤訳を私が全部修正することになり、予定の倍の時間がかかってしまった。
以前から書いているように、ドイツ語も含めて、英語以外の翻訳者は足りない。

ヨーロッパ在住なのに、残念なのは、Richtlinie を 「指令」 ではなく 「基準」 としていたことだ。

原文が Normen und Richtlinien で、和訳を 「規格と基準」 にしていた。

すべての人がEUの法体系を知っているわけではないだろうが、機械系の翻訳をしているのならば、「EU指令」について聞いたことがあるのではないか。

その項目のところには、Niederspannungsrichtlinie 2006/95/EG などが列挙されているので、
Richtlinie は EU-Richtlinie のことだと気づいてほしかった。

一般的な辞書では、例えば、小学館独和大辞典第二版では、「方針,〔指導〕要綱,基準,原則」 とある。
他の辞書を見ても、「指令」 という訳語は出ていなかった。

では、より専門的な辞書、例えば、成文堂独和法律用語辞典第2版を見てみよう。
① {untechnisch} 基準,ガイドライン ② {→ EU-rechtlich:} [EU]指令

この辞典でも 「基準」 が載っているが、非技術分野で使う場合なので、今回の翻訳対象の機械系では、②の 「指令」 を選択することになる。

ところで、この辞典では、EU-Richtlinie のところに印刷ミスがあった。
和訳が 「EU指針」 となっている。
ローマ字表記の読みが iyuu shirei なので、「EU指令」と印刷するはずだったのだろう。

ただし、この辞典を持っていたとしても、「基準」でかまわないと思い込んで、何も疑問を持たなければ調べることもない。
分野ごとに訳語が変わるかもしれないという、健全な心配性であれば、念のためオンライン検索も含めて調べただろう。

しかし、文法的解釈の間違いの他に、訳抜けもあったので、そのような配慮は期待できないだろう。
なんだか、機械翻訳のポストエディットと変わらない修正作業量のように思えた。
機械翻訳の導入を冷ややかに見ている人もいるようだが、人間が翻訳しても、見当はずれのこともあるのだ。

AIが発達しても、生き残れるような翻訳者になりたいものだ。

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