すべてが白昼のめくるめく光に照らされている時間が好きか、あるいは、あらゆる醜悪なものも真夏の美さえも暗黒に沈めてしまう夜が好きかと問われれば、わたしは迷わず夜が好きだと答えるだろう。さらに言うならば、夜の中に浮かびあがってくる妙に美しい、柔らかい、夢想的な光景に。つまり、夜景が好きだと言うことだろうか。 写真や動画を撮ってみよう。とても性能の良いカメラで撮られたものは、どんな瑕疵も見逃さず、くっきりと、はっきりと、明々とすべてを映し出している。わたしはそういう写真は少しも面白いと思わない。それなら、霧の中の風景のほうがよほど好きである。周囲が霧の海に沈み、そこから美しい、形のよい、目に楽しい光景ばかりが、ひっそりと、我を張らず、敬虔に、優しく、淡い色彩で浮かび上がる。わたしは楽しい光景に酔っている心地になる。 |

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