奇想の庭(復活そして昇天)

19世紀末から20世紀前半のロシア文化を駆け巡り、拾い集め、組み立てて、発見する・・・・・・

フランス/ベルギー映画の部屋

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ジャン・コクトーの同名の小説が原作である。コクトーはこの映画で脚色と台詞、ナレーターを担当している。独特の詩的な言葉が全編にちりばめられ、最も洗練された舞台のような映像とともに観る者を不思議な夢想世界へといざなう。ヨハン・セバスチャン・バッハ作曲の《四台のチェンバロのための協奏曲BWV1065》が随所に非常に効果的に使われている(チェンバロの部分はこの映画の中ではピアノに編曲されていた)。衣裳はクリスチャン・ディオール。

〈ストーリー〉
雪の放課後、中学生のガキ大将たちはたちまち雪合戦に熱中した。ポールは必死でダルジュロスを探している。その時、雪玉が胸にあたって、ポールは血を吐いて気絶した。雪玉の中には石が入っていたのである。それを投げたのはダルジュロスだ。彼は美少年であるが、大変な問題児である。ポールの親友ジェラールが彼を家まで送っていった。ポールはエレベーターのない古いアパルトマンに病気の母、美しい姉エリザベトと三人で暮らしていた。

ポールとエリザベトは誰も入り込むことの出来ない二人だけの世界に生きていた。顔を合わせれば口をきわめて罵り合う二人であったが、奇妙な品々の溢れかえった一室で共に生活し、眠り、一切の秘密を持たなかった。古めかしい箪笥の引き出しの中には共通の不可解な宝物が詰まっていた。本来の用途を離れて象徴的な意味を持った品々。英国製の鍵、薬の容器、アルミニウムの指輪…それらは子供の気持ちを解せぬ者にはガラクタ同然であった。姉弟はしばしば一緒に夢想の世界に沈んでいった。ベッドに並んで仰向けになってある種の呪文を唱える。たとえば、こんな風に。「破壊の神殿があるの。50人の高僧のうち、4人が聖域に入れるのよ…」それから、恍惚状態に入るのだった。それを二人だけの隠語で「行ってしまう」と言っていた。「二人で行きましょう」と言えば、それで十分だった。

医者が往診に来た。ポールは胸が弱いからと静養をすすめ、また、姉弟の悲惨な暮らしぶりを見て取ると、看護婦を二人差し向けて、家事もやらせようと言う。奇跡であった。医者は姉弟を愛している。ジェラールが見舞いに来て、ダルジュロスが放校処分になったことを伝えた。ポールは衝撃を受けた。壁に貼ってあった写真を持って来させた。それは、学校の祭の芝居で、ダルジュロスが主役の女性アタリーに扮した時の写真であった。ポールにとっては宝物だ。彼はダルジュロスを慕っていたのである。

ポールは夢遊病になった。それから母が死んだ。医者はポールの顔色がひどく悪いので、海に行くことをすすめ、ジェラールの叔父に自ら電話して、ポールをバカンスに誘うようにと頼むのであった。列車の旅に姉弟は興奮した。ホテルでは一緒にシャワーを浴びてバスタブを溢れさせ、レストランでは示し合わせて小さな女の子を泣かせたり、店へ入れば度胸だめしに万引きをする姉弟であった。ジェラールにも無理やり万引きをさせた。

バカンスから戻り、ジェラールは次第に姉弟の部屋に入り浸った。姉弟はそれぞれのベッドで、ジェラールは床に寝床をつくって三人が一部屋で過ごした。相変わらず激しく口論する姉弟と、必死で仲裁を試みるジェラール。エリザベトは家を出て働くと言い出した。ポールは、せいぜい娼婦がお似合いさ、と罵ったが、彼女はジェラールの叔父さんの知り合いの店でモデルの仕事をすることになった。店ではアガートという名の先輩モデルが彼女に親切にしてくれて、モデルの歩き方などを教えてくれる。エリザベトもアガートも孤児なのだ。仕事帰りにエリザベトはアガートを家に招いた。

アガートの顔を見るなり、ポールは強い衝撃を受けた。アガートもまた、引き出しの宝物の中に入っていたダルジュロスの写真を見るなり驚いた。「私の写真?そっくり。どう見ても私よ」その時エリザベトは気がついた。壁じゅうにポールが貼ったボクサー、探偵、アメリカのスターたちは孤児のアガートやダルジュロスと似ていた。結局アガートもこの家で暮らすことになった。けれども、ポールはアガートに辛く当たり、絶えずいらいらするようになった。エリザベトが「行く」ことを誘っても「僕はもう神殿にも夢の国にも行けない」と苛立ちを募らせるばかりだった。

そんな折、ジェラールの叔父の知り合いの富裕なユダヤ人ミカエルがエリザベトを見初め、結婚を申し込んできた。彼はパリの街なかに18部屋もある屋敷を所有している。その上、優しかった。「ポールの生活費は面倒みるよ」などと言ってくれる。ところが、結婚式の後、ミカエルは一人で車に乗って別荘へと発ち、4日後には戻ってくることになっていたものの、事故死してしまった。エリザベトには莫大な遺産がはいった。ポールもアガートもジェラールも今や彼女のものとなった屋敷の住人になった。18部屋もあるのに、4人は一つの部屋でよく過ごした。ポールは相変わらずアガートに当り散らし、エリザベトとも大喧嘩をすると、毛布だけを持って部屋を出た。彼はホールに向かった。毛布を引きずりながら、だだっ広い、どこにもつながっていない不思議なホールへと夢遊病者の足取りで歩いていった。アガートが彼を支配していた。だが、彼女を愛し、身をゆだねる代わりに彼はムキになって暴れ、悪魔的な宿命に戦いを挑む。ホールで彼は屏風を見つけた。彼は屏風を立て、城壁をめぐらせて中国風の村を作った。古い絨毯を敷き、毛布にくるまって眠った。古い家の家具が次々とこの「新居」に運び込まれた。ランプ、古い布、ベッド、椅子、ビン、宝物の箪笥、ひげをつけた石膏像。ほかの三人もこの魅惑的な風景を無視できず、ポールを追って移住した。けれども、エリザベトが「ここなら行けるわ」と言うと、ポールは「行くには年を取りすぎた」と悲しげに答えた。

とうとうポールはアガートに手紙を書いた。愛の告白である。「君が愛してくれないと僕は死ぬ。返事をくれ。僕は苦しい。ホールで待っている」と彼はしたため、渡す勇気がないので、郵送した。ところが、アガートの名を書くべきところに自分の名前を書いてしまった。一方アガートも恋の病にかかっていた。食事にも来ないのでエリザベトが様子を見にゆくと、アガートは泣きながら言うのだった。「愛しているの、あの人を。でも嫌われているの。初めから好きだった。からかわれたり、罵られたり、でも彼がいれば幸せだった。でも彼は避けている。もう耐えられない」そうして、その相手がジェラールではなく、ポールであると聞いた時、エリザベトは驚愕した。まさに晴天の霹靂だった。次の瞬間、彼女の心の奥底に潜んでいた悪魔が動き出した。彼女はポールに話してあげる、と優しく言うと、今度はポールのところに行った。ポールは手紙のことを気にしていた。アガートは手紙を箪笥の上に置きっぱなしにして眠っていた、とエリザベトは言った。本当は受け取っていないことを知りながら。それから、アガートが愛しているのはポールではなくジェラールであると嘘をついた。ジェラールの叔父さんが金持ちだから、ブルジョワ家庭を築いて二人は幸せになれるとも付け加えた。次にエリザベトはジェラールのところへ行って、「アガートがあなたを愛し、申し込みを待っているわ」と彼に話した。ジェラールは意外そうであったが、エリザベトは彼にアガートとの結婚を熱心に勧めた。それから、エリザベトは再びアガートを訪れた。「ポールは恋の出来ない男よ。誰も愛せないの。利己主義で自分も相手も破壊する男よ」と断言し、「ジェラールは愛情深いし、将来を保証してくれるわ」と、アガートがジェラールと結ばれるようあらゆる策をめぐらせるのだった。ポールはふたたび夢遊病の発作に襲われるようになった。

アガートとジェラールは結婚した。ある時、旅行の帰りに久しぶりにエリザベトとポールのもとを訪れた。二人はマルセイユでダルジュロスと会ったという。彼はインドシナの方へ車の販売をしており、「今でも雪玉(ポールのこと)のやつと付き合っているか?」とジェラールは聞かれた。彼はまた各国の毒薬を集めていて、「雪玉が欲しがっている毒薬を今ぼくが集めている」と語ったという。そうして、彼の贈り物だ、とジェラールがポールに差し出した包みの中には「ペストとゼラニウムの強烈なにおいを放った」毒薬が入っていた。毒矢に塗るものであるという。アガートは怖がって、捨てるように願ったが、エリザベトはそれを鉄の箱に入れて宝物の引き出しに大切にしまった。

雪の日曜日、エリザベトはまどろみ、夢を見た。ポールが死ぬ夢であった。彼女は青い小道を歩いていた。小道はホールの絨毯に続いていた。見慣れないガウンを着て丘を登っていた。屏風の後ろを通ったが中国風の部屋はなかった。玉突き台にポールが寝ていた。奇妙な姿勢をして、「別れのベルをお聞き」と言った。ベルの音がして、エリザベトは夢から覚めて跳ね起きた。すると、アガートが来ていた。ポールから毒を飲むという手紙をもらったというのである。慌てて屏風に囲まれたポールの寝室に駆けつけたが手遅れであった。ポールはベッドに瀕死の状態で横たわり、日曜日なので医者を呼ぶこともできない。エリザベトがコーヒーを沸かしに席を外した隙に、ポールはアガートにすべての真実をぶちまけた。アガートは呆然とした。今やエリザベトの仕掛けた罠や嘘がすべて明るみに出た。エリザベトが戻ってきて、ポールに飲ませようとしたコーヒーを、アガートは「飲んじゃダメ」とはねのけた。ポールも最後の力を振り絞ってエリザベトを罵った。「汚らわしい悪魔め!」
「ポールを失いたくなかった。アガートに奪われるのが許せなかった」とエリザベト。引き出しの一つからピストルを取り出して、すでに、すっかり常軌を逸し、憑かれたように喋り続ける。「我慢できない人生を清算するのよ。私を追放する人生ドラマはイヤ」アガートは悲鳴を上げる。だが、エリザベトはポールを最後の催眠に導こうとしていた。彼を惹きつけ、黄泉の世界へと誘うのだった。ポールは死んだ。アガートはエリザベトと二人きりになった。「助けて!」と必死で叫ぶアガート。銃声がした。屏風が倒れた。その屏風に重なるように倒れたのは自らを撃ったエリザベトにほかならなかった。


1950年フランス映画/100分

監督・製作・脚色:ジャン=ピエール・メルヴィル
原作・脚色・台詞・ナレーター:ジャン・コクトー
衣裳:クリスチャン・ディオール
音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ

キャスト:ニコール・ステファーヌ(エリザベト)、エデュアール・デルミット(ポール)、ルネー・コジマ(ダルジュロス、アガートの二役)、ジャック・ベルナール(ジェラール)、メルビル・マルタン(ミカエル)

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上流の満ち足りた生活に身を置き、聖人のような夫に愛されながらも、午後の2時から5時までを娼婦として身体を売って過ごすセヴリーヌ。スペインの巨匠ルイス・ブニュエルが、カトリーヌ・ドヌーブを起用してフランスで撮った第一作。倒錯した性の世界に塗れても決して気品を失うことのないヒロインをドヌーブは見事に演じきった。センセーションを巻き起こしたジョセフ・ケッセルの同名の小説が原作。イヴ・サンローランによるドヌーヴの衣裳も素晴らしい。

〈ストーリー〉
セヴリーヌの奇妙な夢から映画は始まる。彼女は夫と睦まじく馬車に並んで座っている。「不感症さえ治れば君は完璧だよ」と夫が言う。「どうせ治らないわ」とセヴリーヌが投遣りに答える。すると、夫は突然馬車を停めさせ、二人の御者と共に、セヴリーヌを馬車から引きずり降ろし、森に連れてゆく。猿ぐつわをかませて、縄で手首を縛り、そのまま木に吊るすと、御者たちに彼女を鞭打つよう命じた。しばらく打たせてから、やめるよう命じ、好きにしろ、と御者たちに言う。一人がセヴリーヌに抱きつき、彼女の身体をむさぼり始めたところで目が覚めた。

翌日セヴリーヌと夫のピエールはスキー場に出かけた。ピエールの友人のユッソンとその恋人も来ている。セヴリーヌはユッソンが嫌いであった。

パリに戻り、ユッソンの恋人とショッピングをして、一緒にタクシーで帰った時に、二人の共通の知人アンリエッタが身体を売っているという話を彼女から聞かされる。タクシーの運転手からも娼館がいまだに営業していると聞かされ、セヴリーヌは変な気持ちになった。高級アパルトマンの自宅に戻ると、ユッソンから花が届いていた。それを処分しようとして、彼女は花瓶を割ってしまう。化粧室では、香水瓶も割ってしまう。夜、思い切って、夫に娼館に行ったことがあるかと尋ねた。忙しがって、答えたがらない夫であったが、欲望の処理に過ぎないというひどく即物的な答えが返ってきた。

テニスクラブでセヴリーヌはアンリエッタとすれ違った。ユッソンもその場に居合わせ、なにくわぬ顔をして二重生活をしているアンリエッタの話題に続いて、オペラ座の裏にある娼館「アナイスの館」の住所をわざわざセヴリーヌに教えるのであった。それから、今度ご主人には内緒で二人きりでゆっくり会いたいなどという。

セヴリーヌは「アナイスの館」の前の通りをうろうろしていた。なかなか入ってゆく決心がつかない。公園のベンチにぼんやりと座っていたりした後に、ようやく、「アナイスの館」の扉を潜った。セヴリーヌを迎え入れたのは美人でいかにも遣り手な感じのマダム・アナイスである。美しくて清楚なセヴリーヌを大歓迎して、「お金のためだと割り切ってね」と言う。午後の2時から5時までしか働けないというセヴリーヌの条件も受け入れ、利益は半々で、費用はアナイスが持つという。初出勤の日に「昼顔」という名をもらった。マチルドとシャルロットという名の二人の娼婦も来ていた。その日は上客のアドルフが来ており、結局、セヴリーヌの最初の客になった。始めはひどく抵抗して逃げ出し、アドルフを怒らせる彼女であったが、強引にねじ伏せられるしかなかった。

その夜、また、奇妙な夢を見た。セヴリーヌは獰猛そうな黒牛の群れが走り回る平原にいた。純白の古代風の衣裳をまとい、骨組みだけの小屋に縄で両手を縛りつけられている。ユッソンと夫がいる。ユッソンが「今何時だ?」と尋ねると、ピエールが「2時から5時の間だ」と答える。すると、ユッソンはバケツの中にタールのように真っ黒い泥をつめてゆき、今度はそれをシャベルですくっては、次々にセヴリーヌに投げつける。「この淫売女!こいつを食らえ!売女、尻軽女、クソ女!」などと罵りながら。セヴリーヌの衣裳も顔もみるみる泥まみれになってゆく。ところが、彼女の顔はどこか恍惚としているのであった。

それからセヴリーヌはアナイスに何の連絡もせぬまま一週間も欠勤してしまった。辞めさせられるところであったが、どうしても働きたい、というセヴリーヌの熱意にアナイスも折れた。この日は「教授」が来るという。世界的に有名な産婦人科医である。セヴリーヌが一室で待っていると、すっかり召使の姿になりきった「教授」が入ってきて、「何かご不満でしょうか」と恭しく彼女に頭を下げた。相手ができない彼女はたちまちシャルロットと交代させられてしまった。アナイスは彼女を小部屋に呼んで、巧みに細工された壁の穴から中の様子を覗かせた。すると「教授」はその社会的地位の陰にマゾヒストの本性を隠しており、床に這いつくばって、鞭打たれ、罵られ、女にヒールで顔をめちゃめちゃに踏みつけてもらってようやく初めて性的興奮を覚えるのだった。今度は得体の知れぬ東洋人の客が来た。不思議な小箱を持っていて、それを見るやマチルドはきっぱりと拒絶した。箱の中には何か動物が入っているらしい。唸り声がかすかに聞こえてくる。それを使ってかつて味わったことのない快楽を知って恍惚としているセヴリーヌ。

ある日の午後、セヴリーヌが公園の優雅なカフェに座っていると、馬車が停まり、中から上品な黒衣の紳士が現れ、まっすぐに彼女の席を目指してやってくる。「お金は好きかね?」「ええ」彼はパリ郊外の屋敷に暮らす公爵で、宗教的な儀式をやるから、屋敷に来てほしい、謝礼ははずむと彼女に言う。公爵は死をこよなく愛しており、セヴリーヌは全裸になって、黒のオーガンディーの長いベールだけをまとって公爵の用意した豪華な棺の中に横たわった。公爵は死者に扮した彼女に、愛する娘よ、と呼びかけ、百合の花を捧げ、ひとしきり哀悼の言葉をかけ涙を流してから、ひどく興奮して棺の載った台の下に潜っていった。その夜、セヴリーヌは夫に甘えた。「一緒に寝る?」二人はずっと別々に寝ていたのであった。日ごとにあなたへの愛が深まるとも彼女は言った。

「アナイスの館」に、娼婦たちも嫌うヤクザのイポリットが短気な相棒マルセルを連れてやってきた。「いやな客だわ」「儲けるとバカ遊び。ない時はタダ遊び」虫をつぶすように平気で人を殺す凶悪なチンピラのマルセルがセヴリーヌにすっかりいかれてしまった。通いつめるが、彼女がパリを一週間も離れていると、猛り来るってベルトで彼女を打つ。「顔はやめて!今度ぶったら二度と会わないわ!」と気高く制すセヴリーヌ。だが、マルセルは異常な独占欲に突き動かされ、夜も会いたいとつきまとう。

ユッソンが「アナイスの館」にやってきた。セヴリーヌはひどく感情を害し、ここにいると知って来たのね、と問い詰めるが、ユッソンは偶然だという。セヴリーヌは夫には内緒で、と懇願した。「ピエールは聖人だな」とユッソン。そこで、彼女は、「どうか私を理解して。悪い事だと知りながら止められないの。いつかきっと罰を受けるわ。私の性(さが)なのよ」と告白するのであった。ところが、さあ、抱いて、と彼女が言うとユッソンは「僕が惹かれたのは貞淑な君だ。だがすっかり変わって失望したよ。興味が失せた」と金だけ置いて帰ってしまった。

セヴリーヌは夫のピエールとユッソンが決闘している夢を見た。彼女は深紅のワンピースを着てやはり木に縛りつけられているのであった。二人は同時に銃を発砲したが、撃たれて血を流したのはセヴリーヌであった。

セヴリーヌは「アナイスの館」を辞める決心をした。「マルセルの件ね?」と、アナイスも面倒を恐れて、ひどく残念ではあるものの「昼顔」の願いを聞き入れた。ところが、帰宅する彼女をイポリットが尾行していた。ほどなく、マルセルがセヴリーヌのアパルトマンにやってきて、「俺との情事をぶちまけてやる」と言う。セヴリーヌは必死で彼を説得して、キスをしてやり、いったんは帰ってもらうことに成功した。マルセルは装飾的なピアノの上に飾ってあったピエールの写真を憎憎しげに裏返しに伏せてから立ち去った。

イポリットは車の中でマルセルを待っていたが、マルセルは彼に銃を突きつけ追い出した。その車の中でじっと待ち伏せしているマルセル。やがてセヴリーヌは下の通りから三発の銃声が響くのを耳にした。慌ててバルコニーに出て見ると、ちょうど一台の車が走り去ったところである。アパルトマンのエントランス前には血を流してうつ伏せに倒れている夫の姿があった。車で逃げ去ったマルセルは警官に追われ、射ち合った末に殺された。

ピエールは一命を取りとめたものの全身麻痺で車椅子生活を送っている。喋ることも出来ず、ほとんど見えなくなってしまった目を黒眼鏡で覆っている。セヴリーヌはその夫に新聞を読んで聞かせたり、薬を飲ませたりと、かつてないほどの献身ぶりである。事故以来、変な夢も見なくなった。ユッソンが見舞いに来た。彼は、「ピエールは全身麻痺で、君が献身的に世話をしている。彼は負い目を感じている。だから君のことを話す。初めは苦しんでも楽になれる」と言って、ピエールにすべてを話してから帰っていった。セヴリーヌはピエールの目から涙が流れていることに気がついた。

その時、にわかに馬車の音が聞こえてきた。すると、突然、夫が黒眼鏡を外し、車椅子から立ち上がって、「一緒に飲もう」と快活に言う。「二月には休暇が取れる。山に行こう」とも。二人はひしと抱き合った。セヴリーヌがバルコニーに出ると、落ち葉の絨毯に覆われた並木道を二人の御者が馬車をからからと走らせている。しかし、客席には誰も乗っていない。これもまた夢… 彼女は安住の地を見出したような表情をしている。これが彼女の性(さが)なのか…

1967年フランス映画/100分

監督:ルイス・ブニュエル
原作:ジョゼフ・ケッセル
脚本:ルイス・ブニュエル、ジャン・クロード・カリエール
衣裳:イヴ・サンローラン
キャスト:カトリーヌ・ドヌーヴ(セヴリーヌ)、ジャン・ソレル(ピエール)、ミシェル・ピコリ(ユッソン)、ジュヌヴィエーヴ・パージュ(マダム・アナイス)、ピエール・クレマンティ(マルセル)

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後期バロックの絢爛たる時代を背景に『カストラート』を撮ったジェラール・コルビオ監督が、ベルギーが世界に誇るオペラ歌手ホセ・ファン・ダムを起用して20世紀初頭を舞台に制作した監督第一作の音楽映画である。
      
〈ストーリー〉
天才と謳われるバリトン歌手のジョアキム・ダレイラックの演奏会は熱狂に包まれ、拍手喝采は鳴り止むことを知らなかった。アンコールにヴェルディの《リゴレット》から〈悪魔め、鬼め〉を歌い終わると、ジョアキムは突然の引退を表明する。「これが、最後の公演です。二度と歌いません」

それから、彼はただ一人の女弟子をとった。18歳のソフィである。そうして、彼女の歌の指導に全身全霊を傾けた。新聞には「生徒一人のために学校を設立」と書き立てられた。ジョアキムの歌の伴奏者であって、人生の伴侶であるエステルは、夫がソフィに恋することを予感して不安になった。

そんな折、ジョアキムは街で、一人の青年が、なかなかの美声でオッフェンバックの《ホフマン物語》の一節を披露しながら巧みにスリを働いているのに出くわした。掏られた相手に気づかれ、大勢に追われることになった青年を馬車の中に匿って、そのまま、郊外の城のような屋敷に連れ帰ってしまった。青年の名はジャン。ハンサムであるが、いかにも卑しい風体である。そんな人種を屋敷に招き入れたことに驚き呆れるエステルに、ジョアキムは皮肉っぽく、「美人の生徒が一人、となじったろ。これでお望み通りだ。醜いのが来た」と言った。「銀器を持って逃げるわ」とエステル。

ジョアキムの弟子は二人になった。厳しい先生である。真夜中にジャンをたたき起こすと、拷問のように音階を歌わせる。持久力を養うために、湖で泳がせる。ジョアキムはボートを漕ぎ、疲れきったジャンがボートの端につかまると、その頭を湖水に沈めて、息を止める練習をさせるというスパルタぶり。一方、ソフィには、「音楽に心奪われ、身をまかせるのだ」と教え込む。そんなジョアキムにソフィは密かに恋慕の情を懐いていた。その気持ちを察しながらもジャンはソフィに惚れていた。

ジャンが反抗的で、なかなか思い通りに上達しないことに腹を立てたジョアキムはソフィを散歩に誘った。緑の小径に馬車を走らせ、いつしか二人は身を寄せ合うようにして一緒にモーツァルトの《ドン・ジョヴァンニ》からの〈お手をどうぞ〉を歌っている。まるで恋人同士のよう。けれども、ジョアキムはあくまでも先生としてしか接しようとしなかった。にわか雨が激しく降り出した。馬車に幌をかぶせるために二人は路に降り立った。雨に打たれるソフィを見て、ジョアキムは思わず、「君は美しい」と言ってしまう。ソフィの情熱に火がついた。「モーツァルトは子供の頃、演奏をせがまれると、こう言わせたわ。”愛してる”。愛してると言って」と彼に近づき唇を求めた。ジョアキムは苦しげにソフィの唇から逃れると、「いけないよ。じき旅立つんだ。君か私がじきに去る」「いつも歌のことばかりね。不幸な時に歌は歌えない。私は不幸せよ!」とソフィは土砂降りの草原を走り去った。

ソフィの叔父であり、ジョアキムの友人であるフランソワが見事な自動車でやってきた。歌の勉強をしたがっていたソフィをジョアキムに紹介したのも実はこの叔父であった。彼は、「蓄音機」なる新しい発明品を携えてきた。そうして、ジョアキムに強く録音を勧めるのだった。「君の声を残したい人もいるんだよ」また、彼はソフィとジャンにそれぞれ宛てられた歌のコンクールの招待状をも預かってきていた。
「スコッティ公の催す歌のコンクールが5月1日と2日、公爵の城で行われます。ぜひ御師と参加なさるようお願い申し上げます」
音楽関係者が皆集る、新人の登竜門である。スコッティ公爵は大金持ちのパトロンで大の音楽好き。ジョアキムだけが一人、ひどく浮かない顔をしていた。それというのも、スコッティ公はかつてジョアキムに挑み、歌の決闘をして咽喉をつぶしてしまったという忘れられない過去がある。ジョアキムにとっては敵である。

ソフィとジャンはコンクールに出場することになった。ジョアキムも一緒の馬車に乗り込み、三人で公爵の城に向かった。ところが、公爵邸に着いてもジョアキムは馬車を降りずにそのまま引き返してしまった。その時たまたま留守をしていたスコッティ公は、ジョアキムが弟子を置いて帰ってしまったと聞くと、怒りを隠せぬ様子であった。その足でジャンにあてがわれた豪華な一室を訪れる。公爵が去ると、ジャンはさっそく発声練習を始めた。ドアに耳をあて、それに聞き入り意味深な微笑を浮かべる公爵。

スコッティ公には三年間も面倒を見ているアルカスという愛弟子がいた。無論、コンクールには出場する。今度は公爵はアルカスの練習室を訪れた。彼はアルカスとジャンの声がそっくりであることに気がついて、ある計略を思いついたのだった。その夜はひどい雷雨であった。ジャンの部屋を突然ソフィが訪れた。コンクールの前日である。彼女は怖いのである。ジャンとて落ち着いていられるはずもなかった。今や二人の心は一つ。身も心も一つになるのにさほど時間はかからなかった。

翌朝、ソフィとジャンが練習室に行くと、アルカスが先に練習をしていて、少しで終わるからちょっと待ってほしいという。快く譲ったジャンであったが、アルカスがヴェルディの《椿姫》からの乾杯の歌〈友よ、さあ飲み明かそう〉を歌い始めるや、ソフィも彼も顔色を変えた。二人はまったく同じ声だ。そこへ公爵が我が意を得たりといった調子で、「特別な人間はいない。一人も」と止めを刺す。立ち去るジャンをソフィもただちに追ってゆく。意地悪く微笑みあう公爵とアルカス。「完璧だったな。お前の圧勝だ。あの青年も気の毒に。彼は戻るまい」

ジャンの背後から「罠だわ。帰りましょう」と必死で哀願するソフィ。だが、ジャンは気骨のある青年だ。「あれは、奴が恐れている証拠だ。俺の方が上と見ている。お前は歌え」「あなたは?」「アルカスの奴、切り刻んでやる。考えがある。お前は歌え。でないと困る」

一方、一晩中馬車を走らせて帰宅したジョアキムは、お茶を飲んでくつろいでいた。その時、彼の手からカップがソーサーごと床に落ちた。椅子に座ったまま、その身体はガクッと崩れる。

コンクール会場には盛装した紳士淑女が溢れている。誰もが天才歌手ジョアキム・ダレイラックの二人の弟子を聴きたくて、今か今かと待ちわびている。
オーケストラが前奏を弾き始める。ヴェルディの《椿姫》からの〈花から花へ〉である。ソフィの素晴らしい歌に誰もが恍惚とする。そこへ、突如、「愛、愛は鼓動」とジャンの声が加わって、世にも華麗に高揚する二重唱が展開され、場内には熱狂が渦巻いた。公爵とアルカスの屈辱的な表情。「罠にかかったのはどっちだ?」とアルカス。それでも公爵は表面上は落ち着き払って、品の良い冷酷な笑みを湛えながら表明する。
「声がそっくりなのにお気づきでしょう。ダレイラックのお弟子さんとアルカスの声です。しかし、まったく同じ声はあり得ません。特に歌となると。どちらが上か ─」
場内からは、「公爵、ぜひ二人の対決を」という声が上がる。透かさず、「決闘かね。おもしろい」と公爵。老評論家が「仮面をつけては? 公正に判断できる」と提案する。

ジャンは受けて立った。彼もアルカスもまったく同じ白い仮面に帽子を被り、全身を覆い隠す白い衣をまとって登場した。ソフィの目にも公爵の目にもどちらがジャンで、どちらがアルカスなのか見当もつかない。二人はベッリーニの《多くの哀しみに》を交互に歌った。歌声でも二人を区別することは出来なかった。突然、一人が声を引きつらせた。そうして何度も声を出そうと試みたが、無駄であった。彼はその場を立ち去った。ソフィも公爵も不安げに残った一人を見つめている。勝者が仮面を取る。割れるような喝采とどよめきが会場を満たした。

そこにいたのはジャンであった。ソフィの心からの笑顔がまぶしい。

だが、その笑顔はたちまち新たな不安のために曇った。叔父のフランソワが来ていた。ひどく重苦しい、悲しみに沈んだ表情をして。彼はジョアキムの死を知らせに来たのであった。

1988年ベルギー映画

監督:ジェラール・コルビオ

脚本:ジェラール・コルビオ、アンドレ・コルビオ、パトリック・イラトニ他

キャスト:ホセ・ファン・ダム(ジョアキム・ダレイラック)、アンヌ・ルーセル(ソフィ)、
フィリップ・ヴォルテール(ジャン)、シルヴィー・フェネック(エステル)、パトリック・ボーショー(スコッティ公爵)

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エドガー・アラン・ポーの原作を三人の監督がそれぞれの個性を最大限に発揮し、時代や舞台や登場人物も新たに創作して完成させた3話から成る秀作怪奇オムニバス。
1967年フランス/イタリア合作

第1話「黒馬の哭く館」
貴族でもまれな莫大な財産を相続したフレデリックは気紛れで思いのままの人生を享楽し、客たちを幼少時代を過ごした城に招いては乱交に耽ったり、残酷な倒錯的行為を楽しんだり。誰一人、彼女を批判する者はいなかったが、ただ独り、分家のウィルヘルム・ベルリフィジング男爵は彼女に興味も示さず、公然と批判した。ある時、フレデリックは森で誰かが仕掛けた罠に足を挟まれたところを、ウィルヘルムに助けてもらう。憎むべき相手であるのに、彼女はそれから彼の眼差しを忘れることが出来なくなった。わざわざ彼の許を訪れるが、馬にしか興味を示さぬ彼は彼女を相手にしてくれない。激怒した彼女は復讐を目論んだ。ウィルヘルムが命よりも大切にしている馬たちのいる厩舎に放火させたのだった。その後、彼が馬たちを救おうとして焼死したことを知ったフレデリックは激しい衝撃を受けた。

ある時、獰猛な、狂ったような黒い馬がフレデリックの館にふらりとやってきた。誰一人手なずけることの出来ない荒馬であったが、フレデリックはやすやすと馬に跨った。そうして海に向かった。毎日を馬とだけ過ごすようになった。亡き男の幻想が見え、苦しむこともあった。ある日、馬は炎の燃え盛る平原に向かって走った。彼女は恍惚として馬を走らせる。フレデリックはウィリアムと共に、火の中で死んでゆくのであった。

監督/脚本:ロジェ・ヴァディム
原作:エドガー・アラン・ポー「メッツェンゲルシュタイン」
キャスト:ジェーン・フォンダ、ピーター・フォンダ

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第2話「影を殺した男」
ウィリアム・ウィルソンは少年時代から残酷で、手のつけられない不良である。ある時、自分と同姓同名の転校生がやってきて、彼を批判するので殺そうとして放校になった。その後好奇心から医学の勉強をするものの、残虐性に輪がかかったに過ぎない。町で見つけた若い女を解剖台に縛りつけ、メスで弄んでいるところへ、ウィリアム・ウィルソンと名乗る仮面の男がやってきて、残酷な遊びを中止させるが、結局女はメスに腹を突かれて死んでしまう。それから軍隊に入ったが、そこでも放蕩の限りを尽くすのだった。祭りの夜、ふらりと入った賭博場で黒髪の美女に嘲弄の言葉を投げかけられて挑発された。ウィルソンは美女にポーカーの勝負を挑み、見事に勝ち抜いた。相手が金が払えないと分かると、容赦なく鞭打ちを食らわせるのであった。そこへ、またあの仮面の男が現れ、彼のイカサマの手口をすべて暴いてしまう。イカサマは軍人の恥であり、彼は軍隊からも追放される。ウィルソンは仮面の男を追っていった。影のごとく出現し、同じ名を名乗り、自分の悪事をことごとく暴いて妨害するこの男は一体何者なのだろう?この憎き相手に決闘を挑んだ。とうとう相手の胸に剣を突き刺し、正体を見ようとすると、瀕死の男は言うのであった。
「なぜ私を殺した?お前は存在しなくなる。私が死ねばお前も死ぬ」
死んだ男の仮面を取ると、そこには自分とまったく同じ顔があった。ウィリアム・ウィルソンは教会に飛び込んだ。救いを求め、懺悔をするために。だが、次の瞬間彼は教会の塔まで狂ったように昇ってゆき、身を投げる。その死体を見ると、塔から落ちて死んだはずの彼の胸には、なぜか剣も刺さっていた。

監督/脚本:ルイ・マル
原作:エドガー・アラン・ポー「ウィリアム・ウィルソン」
キャスト:アラン・ドロン、ブリジット・バルドー

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第3話「悪魔の首飾り」

この話は時代を19世紀から現代に移している。主人公のトビー・ダミットは麻薬とアルコールに溺れた狂気の映画スター。映画出演のためにイギリスからイタリアにやってきた。黄昏時にローマの空港に降り立った時から、記者たちの焚くカメラのフラッシュが容赦なく彼を襲う。トビーは光が大嫌いだった。心は常に暗闇を求め、そこに白い鞠を持った少女の幻影を見てうっとりする。

トビーはイタリアのテレビ番組に出演し、数々のインタビューを受け、シェークスピア劇のさわりを演じ、フェラーリをプレゼントされる。

トビーは女の肢体を撫でるようにフェラーリのハンドルに触れ、その感触に恍惚とする。闇夜にエンジン音を高らかに響かせ、静まりかえった町を猛スピードでフェラーリを走らせる。タイヤを軋ませ、狂ったようにジグザグ運転をし、悦に入って、憑かれたように笑っている。彼はローマに向かうはずだった。だが、気がつくと同じ町を堂堂巡りしていたに過ぎなかった。あるいは袋小路に迷いこみ、抜け出そうとしているうちに、陸橋にさしかかった。工事中で道は塞がれていたが、彼は強引に突破した。あらゆる障害物にぶつかって、半ば壊れかかった車を停止させる。その時、暗闇に吸い込まれてゆくようなその道の向こうに鞠を持った蒼白い少女の姿が見えた。少女はトビーを招いているようであった。トビーは陶然とした眼差しをし、意を決したように再びフェラーリを走らせた。闇の彼方で途中から完全に崩れ落ちている陸橋の、その裂け目に向かって。

監督/脚本:フェデリコ・フェリーニ
原作:エドガー・アラン・ポー「悪魔に首を賭ける勿れ」
キャスト:テレンス・スタンプほか

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驚くべき豪華キャストが歌って踊っての127分、極めてブロードウェイ的であるけれど、ミッシェル・ルグランの音楽にも登場人物の性格にも極上のフレンチ・テイストが溢れ出るミュージカル映画の傑作である。

大西洋に面した軍港の町ロシュフォールに祭の季節がやってきた。雲ひとつない晴れ渡った大空のもと、一点の陰りもない白い街並みに、色鮮やかに塗られた窓の日覆いが眩い。

旅芸人のエチエンヌとビルの一座は祭のために数々の出し物を用意してこの町にやってきた。舞台作りに余念のない彼らの頭上から音楽が聞こえてくる。ソランジュの弾くピアノに合わせて小さなバレリーナたちがデルフィーヌに指導されつつ踊りの練習をしているのだ。ソランジュとデルフィーヌは美しい双子の姉妹である。二人とも新たな恋を予感しており、やがてはパリに行って、一流の音楽家、バレリーナになることを夢見ている。姉妹の母イヴォンヌは広場のカフェのマダムである。カフェには水兵のマクサンスが来ていた。彼は絵に描いた理想の女性を求めて世界中を周っているがまだ巡り合ったことがないというロマンチックな夢想家である。エチエンヌとビルもすっかりイヴォンヌと顔なじみになっている。イヴォンヌは秘めたる恋を二人に語る。その恋の相手シモン・ダムは実はこの町で楽譜店を開いていたが、イヴォンヌはそのことを知らなかった。もちろんシモン・ダムのほうもカフェのマダムの存在など夢にも知らず、ひょんなことから別れ別れになってしまったこの恋人に今も焦がれるばかりである。その彼の店をかつて同じ音楽学校で学び、今ではすっかり有名な作曲家になったアンディが訪れた。アンディは通りで偶然出会ったソランジュに恋していた。ソランジュは自作の美しいコンチェルトの楽譜を落としたまま走り去り、アンディはそれを拾って持っていた。ソランジュも彼の面影が忘れられない。一方、水兵マクサンスの描いた絵の女性はデルフィーヌにそっくりである。デルフィーヌは画廊でその絵を見て驚き、誰が描いたのか知らないのに胸をときまかせてしまうのだった。しかし、二人は不思議な運命に弄ばれ、ほとんど数秒の差で常にすれ違ってしまうのだ。二人は決して出会うことが出来ないのだろうか?実は全編を貫いているのが、これらのすれ違いの妙なのである。まるで神の手が動かすチェスの駒のごとく、誰もが運命の相手が近くにいるのに、巧妙に引き離されたり、互いに気づくことのない背中合わせの状況に置かれている。そこが見る者をはらはら、わくわくさせて、物語への興味を誘う。

さて、ラスト近く、明るい陽射しの中、巡り合った恋人たちが、そうして町中の人々が老いも若きも愛のダンスを踊っている様子は圧巻である。ロシュフォールの町は映画の中ではさながら善人ばかりの理想郷なのだ。バラバラ殺人なんていう犯罪も起こったけれど、からっと乾いた青空のもとでは、暗い影など残らない。ユートピアからはほど遠い現実を忘れさせてくれる、幸せな映画の一つであるかも知れない。

監督/脚本/作詞:ジャック・ドゥミ

音楽/作曲:ミッシェル・ルグラン

キャスト:カトリーヌ・ドヌーヴ、フランソワーズ・ドルレアック、ジーン・ケリー、ジョージ・チャキリス、ダニエル・ダリュー

1967年フランス映画

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