ソ連で独特の詩的映像作品を撮り続けたタルコフスキー監督が初めてイタリアで撮った映画です。
この映画、とにかく映像が美しい。ドラマのようにストーリーが展開してゆくわけでもない。現実と回想が絶えず交錯している。教会や聖堂の廃墟、美しい聖母、鳩、ルネサンスの絵画から抜け出たように美しいイタリア語通訳のエウジェニア、朝霧にかすむ風景、水、古びたレースの向こうでちらちらする木漏れ日と雨、小川の流れこむ廃墟の病院、小川の中には大理石像が沈んでいる。そうして幻想的な雰囲気のホテルの一室、モノクロで撮られた人通りのない石畳の路地、路地に置いてある鏡のついた箪笥。鏡に映る顔。故郷のロシアの山地の風景、故郷に残してきた妻の気配、光を浴びて、美しく透けた色ガラスの壜にシャワーのように降りかかる雨。詩集が燃え、広場の湯の抜かれた温泉を、蝋燭を手にした詩人が何とかその炎を消さないで反対側まで渡ろうとしている。ローマの広場の騎馬像の上で頭から石油をかぶって自ら火をつける狂人、水たまりに映るサン・ガルガノ大聖堂の影…
こういう風景や詩や幻想が好きであれば、この映画の虜になること請け合いです。
今年の5月に亡くなった名優オレーグ・ヤンコフスキーの淡々とした演技も素晴らしかった。狂人役のスウェーデンの俳優エルランド・ヨーセフソンの演技も神がかっていました。
1983年イタリア映画
監督:アンドレイ・タルコフスキー
脚本:アンドレイ・タルコフスキー/トニー・グエッラ
キャスト:オレーグ・ヤンコフスキー、エルランド・ヨーセフソン、ドミツィアナ・ジョルダーノ
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