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18世紀の「家族の肖像」と呼ばれる絵に囲まれながらも、孤独に生きる老教授のもとに、ある時突然降って湧いたように現れた若者たち。以来、未曾有の災難が次々と教授の身に降りかかる。 〈ストーリー〉 ローマの広壮なアパルトマンに二人の家政婦のみを置いて暮らす老教授のもとを二人の画商が訪れた。18世紀の『家族の肖像』の絵を蒐集している教授に一枚の絵を売りつけに来たのである。珍しい絵であったが、教授は断った。そこにはもう一人美しい中年婦人が教授に会いに来ていた。彼女は上階の空室を借りたいと言ってきた。教授が部屋は貸せないと言うと、見るだけでいいと、その婦人は言った。彼女の名はビアンカ・ブルモンティ。それから彼女の娘リエッタとその男友達のステーファノ、コンラッドという名の青年がどやどやと入ってきた。そうして、上の部屋をてんでに見て帰っていった。 その後教授は『家族の肖像』を購入することに決め画廊に電話すると、すでに売れてしまったという。ところが、リエッタがその絵を持って教授のもとを訪れた。一年だけ上の部屋を借りたいと言い、三ヶ月分の賃貸料の前払いとして教授に絵を差し出すのであった。まんまと契約させられてしまった教授であるが、ある日、家政婦のエルミニアがアイロンがけをしていると、天井が崩れてきて、家中が粉だらけになった。激怒した教授が上に行ってみると、上階のあらゆる壁が壊され、瓦礫となった中からピストルを突きつけてくる男があった。コンラッドである。いつの間にか彼が上階に住むことになっていたのであった。リエッタとステーファノも同居することになっている。また、教授は浴室の改修だけを許可したはずなのに、この男はフロア全体を大改造しようとしているのである。しかも、教授がそのことを言うと、相手は話が違うと喰ってかかり、ブルモンティ夫人に電話をさせてくれと言い出した。夫人と電話で大喧嘩をし、パリやロンドンの友人に次々と用もないのに電話をかけまくるコンラッド。教授が被害の状況を彼に見せると、彼は「夫人に賠償金をふっかけろよ、何倍も」と悪びれた様子もない。だが、驚いたことに彼は教授が買ったばかりのモーツァルトの演奏会用アリア《あなたに説明できたら》のレコードに目を留め、しばし音楽を語り、また、壁にかかっていたアーサー・デーヴィスの絵と同じテーマの肖像と風景の絵を友人が持っているから、写真を見せるなどと言って、繊細で教養ある一面をのぞかせる。教授は内心嬉しかった。コンラッドも「あなたと話せてよかった」と言い、人との交流を一切絶っていた教授の頑なな心も融け始めたかのようであった。 一方、呼び出された夫人のほうはすごい剣幕であった。「この部屋を誰に使わせるかは私の自由よ」コンラッドのことは「お金で囲っている愛人よ」とにべもなく言う。とうていまともに話が出来る相手でないことを教授は悟り、娘のリエッタと話し合おうとするが、彼女は優しく理解を示そうとするものの、あまりに話しがかみ合わない。「言語が違うようだ」と、とうとう教授は笑い出してしまった。コンラッドは行方をくらまし、ほどなく、約束の写真を持って教授のもとに帰ってきた。彼は美術史を学んだが、学生運動に深入りして追われる身になったというのである。教授は写真の絵にとても興味を持った。 ある夜、教授がベッドで本を読んでいると、壁の向こうから乱闘をしているような騒ぎが聞こえてきた。廊下に出て見ると、上階に続く階段のところに、コンラッドが血まみれになって倒れていた。教授は彼を背負って、書斎の奥にある隠し部屋のベッドに運び込んだ。そこは教授の母が戦時中に政治犯、パルチザンやユダヤ人や匿うために作ったという小部屋である。教授はコンラッドの傷の手当をし、エルミニアにも内緒で彼に食事や飲み物を運んでやった。別の夜には、上階から漏れてくるカンツォーネによって教授の静かな読書は乱された。様子を見にゆくと、コンラッドとリエッタとステーファノの三人がカンツォーネに合わせて全裸で踊りつつ、抱き合ったり、キスをしているのだった。リエッタはコンラッドともステーファノとも愛し合っている様子。コンラッドはブルモンティ夫人と別れることを決意し、ここを出てゆくことになっている。煙がもうもうと燻り、三人はマリファナの回し飲みさえしていた。リエッタが教授に言う。「あなただって、若い頃は楽しんだでしょ?」「学問をして、旅をして、戦争に行き結婚した。やがて破局。ふと気がついてまわりを見回したら、人との距離を感じた」と教授。リエッタは教授にキスしようとする。「コンラッドかステーファノのどちらかが私を妊娠させたら子供を産んで先生にあげる」教授は苦笑する。「老い先が短いから年かさの子がいい。私の知識を伝えたい」「じゃあ、コンラッドを養子にしたら?」その一方で、「コンラッドが殴られたのは、博打の借金で首が回らなくなったからよ」と言うリエッタ。 すっかりモダンに改装された上階にブルモンティ夫人とリエッタとステーファノがくつろいでいる。夫人はエルミニアを自分の召使のようにこき使っている。教授は三人に、コンラッドが国境で警察に止められたことを伝えた。麻薬の売買の嫌疑がかかっていて、警察は彼の前科を調べているとも言った。すると、リエッタが彼はベルリンの過激派で活動家であることも知っていると付け加えた。夫人も彼の後ろ暗い秘密を知っている様子だ。教授は驚いた。そんなクズと娘たちを平気で同居させていた夫人に呆れたのであった。 ある晩、教授が亡き母の面影にひたっていると、またも上階からカンツォーネが聞こえてきた。激高して、エルミニアに「音楽を止めさせろ」と怒鳴る教授。その時電話が鳴った。上階からで、リエッタの声だ。その電話で、音量を下げるようにと教授が頼むと、相手はすぐに承知したが、また電話をかけてきた。そうして、下まで駆け降りてくる。コンラッドが戻りパーティを開いているので、教授にも来てほしいというのである。教授は断ったものの、代わりに若者たちを晩餐に招待すると約束した。 和やかな打ち解けた雰囲気の晩餐。工場経営者の息子ステーファノは皮肉屋でもあった。教授の絵画のコレクションを眺め、彼は訪ねた。「父の工場ではストが続いて、父と兄が険悪で、父は押し黙って食卓についている。先生のように。でも、先生には工員もマルクス主義を気取る息子もいない。絵の人物だけ。静かな人間に取り囲まれている。問題も起こさない。彼らが好き?」「好きになったり嫌いになったり…」教授がひとしきり絵の家族との関わりを語ると、リエッタが「この家族は?」と聞いてきた。「君たちのこと?もう十分に喧嘩してきた」と教授は答え、「老人とは奇妙な動物だ。愚かで狭量で突然孤独が怖くなり、自分を守ろうとする。そんな衝動にかられて今夜君たちを招いた」と打ち明ける。リエッタはそれを変化の時であると言い、一緒に食卓を囲み、家族を作りましょうと教授に提案した。そうして、ママも一緒にね、と言ったちょうどその時ブルモンティ夫人が入ってきた。彼女は夫が突然マドリードに発つことになって、空港まで送ったところであるという。それから、皆で書斎に移ってコーヒーを飲むことになった。ところが、家族のように打ち解けた会話は次第に険悪な方向へと向かっていった。夫人とコンラッドの関係も決裂し、コンラッドが「あんたの夫が逃げたのは共産党員や閣僚の暗殺に失敗したからだ」と夫人に言うと、ステーファノがコンラッドが密告者であることを暴露する。二人は殴り合い、教授は仲裁に入った。「君たちは仲のよい友達ではなかったのか?」生まれながらのブルジョアジーであるステーファノたちと、底辺から這い上がり、金持ちの奥方のベッドに入り込んで初めて屋敷に上がりこんだというコンラッドは所詮思想がかみ合わない。「そうだ。いつも一緒だった。食い、語り、笑い、セックスする。お楽しみが終わればそれぞれの道を行く」とコンラッド。「そう、それぞれにふさわしい道を」と夫人が意味ありげな眼差しをコンラッドに向けた。「わかった。僕は出て行く」コンラッドは「家族」のもとを、夫人のもとを去った。夫人は「彼にいい服を着せて旅をしたわ。間違いでもいい。尽くしたかった。愛していた」とその時初めて神妙な顔をした。リエッタはステーファノを非難して泣き出した。「あなた、彼を傷つけたのよ。まるで使用人のようにあっさりとクビにしてひどすぎるわ」そうして、彼を見殺しにした教授をも非難した。すると、ステーファノが、「罪悪感に悩むことはない。これから彼を追いかけて許しを請えばいい」と言うのであった。 その後、教授のもとにコンラッドから手紙が届いた。「残念ですが、もう会うことはないでしょう。息子コンラッドより」ほどなく、上階から爆音が轟き、教授が慌てて行ってみると、ガス爆発が起こった後で、塵や煙がもうもうと舞う中、コンラッドが床に倒れて死んでいた。ショックのあまり教授は寝たきりになってしまった。コンラッドを救うことの出来なかったことへの自責の念からか、教授は一瞬嗚咽する。階上からは死期を知らせる足音が聞こえてくるようであった。 1974年イタリア/フランス合作映画/2時間1分 監督:ルキノ・ヴィスコンティ 原案:エンリコ・メディオーリ 脚本:スーゾ・チェッキ・ダミーコ、ルキノ・ヴィスコンティ、エンリコ・メディオーリ 音楽:フランコ・マンニーノ 美術:マリオ・ガルブリア キャスト:バート・ランカスター(教授)、シルヴァーナ・マンガーノ(ビアンカ・ブルモンティ)、ヘルムート・バーガー(コンラッド)、クラウディア・マルサーニ(リエッタ)、ステーファノ・パトリーツィ(ステーファノ)、エルヴィラ・コルテーゼ(エルミニア)、ドミニク・サンダ(教授の母親)ほか |

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