奇想の庭(復活そして昇天)

19世紀末から20世紀前半のロシア文化を駆け巡り、拾い集め、組み立てて、発見する・・・・・・

20世紀ソ連の詩を訳してみる。

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ロシア革命後、アフマートワの無二の親友であった、女優であり、歌手であり、踊り手であり、人形作家、陶芸作家のオリガ・スデイキナもまた、他の多くのロシア人同様、祖国を捨ててパリへ亡命してしまいました。それから21年後、そのオリガの死を知るとすぐにアフマートワは一篇の詩を書きあげました。詩人の脳裡には万感こもごも到ったことでしょう。訳していて、思わず号泣してしまった一篇です。

第2の献辞


あなたなの、分からず屋のプシケさん、

黒白の扇を靡かせながら、

私のほうに身をかがめ

ひそかに語りたいのね

すでに忘却の河を越えたことを

違う春を呼吸していることを。

言わなくてもいいわ、自ら聞いているから、

あたたかな大粒の雨が屋根を打つ

キヅタの叢生に囁きを聞く。

小さな何者かが生きようとしている、

緑色になって、羽毛を逆立て、

明日には新しい外套にきらめこうと。

私は眠る──

私を独り見下ろして立っている、

人が春と呼ぶものが、

おまえを孤独と呼ぼう

私は眠る──

われらの青春が立ち現れる、

その傍らを杯が過ぎてゆく、

うつつのおまえに

お望みならば、それを思い出にさしあげましょう

粘土のなかの清らかな炎のように、

あるいは墓地のマツユキソウを摘み取るように。


1945年5月25日
噴水邸

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時は第一次世界大戦の頃。多くのロシア人が前線で勇敢に戦っているなか、飲めや歌えの遊興にうつつを抜かしているブルジョアジーなる人種がいた。芸術家たちの牙城、ペテルブルグにある芸術カフェ『野良犬』でも、ブルジョアジーは戦争を忘れ、酒と女のことばかりを考えていた。

そこへ、詩人の中でも一番ハンサムで長身で、素晴らしいバスの声を持ったウラジーミル・マヤコフスキーがモスクワからやってきて、詩を朗読することになった。彼はプロレタリアートの立場にある詩人であり、未来派である。帝政時代のブルジョアジーと相いれるわけもない。

だから、彼は朗読した。最も魅惑的なバスの声で、最も皮肉のこもった詩を。大戦で殊勲を立てている英雄もいるし、重傷を負った中尉や負傷兵もいるというのに、能無しのきみらときたら、と。

   《きみらに》

  飲めや歌えの放蕩三昧、
  バス・ルームと暖房つきのパウダー・ルームをお持ちのきみら!
  新聞で聖ゲオルギイ受勲者の記事を読んでも、
  きみらは恥ずかしく感じないのか?!

  知っているのか、能なしのきみらのほとんどが、
  どうやって最高に酔えるか思いめぐらせている間にも、
  たった今、陸軍中尉のペトロフが
  爆弾で両足をもぎ取られていたとしたら?…。

  カツレツで唇をべたべたに汚し、
  淫らにセヴェリャーニンの詩を口ずさむきみらの姿を
  もしも致命傷を負ったペトロフ中尉や、
  負傷兵がいきなり見たら、きみらはどうする?

  女と料理に夢中のきみらの
  都合の良いよう、ぼくは命を捧げるべきなのか?!
  それなら酒場にいるほうがずっとマシさ…ぼくは娼婦たちに
  パイン水をおごってやるさ!

 ホールは騒然となった。マヤコフスキーの美声に卒倒するはずだった女たちは甲高い声で泣いたり、叫んだり、バタバタと席を外し、紳士たちは憤慨し、激怒し、怒鳴り出す。観客席から舞台に向かってごうごうと非難や脅しや罵声が飛び交い、一方、舞台の上のマヤコフスキーは平然と受け流し、さらなる皮肉で応酬する。
 とうとう仲裁しようとする人物が現れた。一人の公爵と作家の一人と、『野良犬』の支配人であり帝室劇場の俳優であるボリス・プローニンである。プローニンは収まりをつけるために、『野良犬』で十日間連続の「マヤコフスキーの夕べ」を催すことを提案する。結局、三者三様の説得が功を奏し、怒れる獅子も、常軌を逸した振舞いによって馬脚を露わした「きみら」 ── 狐も狼も熊もセイウチも次第に静まりつつあった。

ソ連から亡命したアレクサンドル・ヴェルチンスキーはヨーロッパの華やかな都市や上海、シンガポールを転々として、各地のロシア人移民社会でシャンソンを歌い続けます。だから、彼の詩にはエキゾチックなイメージがよく出てきます。今回の詩はシンガポールが舞台です。


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       「木蓮」タンゴ


バナナ・レモン色のシンガポールは嵐のなか、
大洋が歌い、叫んでいる時には
遠くの船団の鳥たちは
目も眩まんばかりの群青色のなかへと追いやられる、

バナナ・レモン色のシンガポールは嵐のなか、
あなたの心が安らかでいる時には
あなたは濃い青色に眉をひそめ
独り懐かしんでいる・・・

そうして、うっとりと思いだしている
ぼくの異国の空を、
ぼくの言葉を、愛撫を、ぼくを、
あなたは泣いているね、イヴェット、
ぼくらの歌が歌われてしまったことを。
火の愛がなければ心は暖められない、
鸚鵡の甘い、喘ぐような声、
野生の木蓮の花のよう、
あなたは泣いているね、イヴェット、
ぼくらの歌が終わってしまったことを、
それは
夏
どこかへ
夢のなかへと運び去られていったのさ!

バナナの月のシンガポールは嵐のなか、
風がバナナの樹をたわめる時、
あなたは夜じゅう黄色い肌のなかで夢想する
猿たちの叫びを聞きながら。

バナナ・レモン色のシンガポールは嵐のなか、
ブレスレットと指環の連なり、
熱帯の瑠璃色の木蓮、
あなたはぼくを愛しているんだね。

1931年
ベッサラビアにて

ロシア語の原文はこちら

Танго «Магнолия»


В бананово-лимонном Сингапуре, в бури, 
Когда поет и плачет океан 
И гонит в ослепительной лазури 
Птиц дальний караван,

В бананово-лимонном Сингапуре, в бури, 
Когда у Вас на сердце тишина, 
Вы, брови темно-синие нахмурив, 
Тоскуете одна...

И, нежно вспоминая
Иное небо мая,
Слова мои, и ласки, и меня,
Вы плачете, Иветта,
Что наша песня спета,
А сердце не согрето без любви огня.
И, сладко замирая от криков попугая,
Как дикая магнолия в цвету,
Вы плачете, Иветта,
Что песня недопета,
Что это
Лето
Где-то
Унеслось в мечту!

В банановом и лунном Сингапуре, в бури, 
Когда под ветром ломится банан, 
Вы грезите всю ночь на желтой шкуре 
Под вопли обезьян.

В бананово-лимонном Сингапуре, в бури, 
Запястьями и кольцами звеня, 
Магнолия тропической лазури, 
Вы любите меня.


1931 
Бессарабия

ロシア初のシャンソン歌手であり、シンガーソングライターの第一号であったアレクサンドル・ヴェルチンスキーのタンゴの名曲。道化師の悲哀が歌われており、CDで聴いてみると、その歌い方が、どういう偶然か、プラシド・ドミンゴが歌ったレオンカヴァッロの《道化師》を彷彿させるような恐るべき歌唱力でした。ここでは、ロシア語の詩からの翻訳での詩の紹介をしたいと思います。


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  黄色い天使

宵のレストランにて、
パリの見世物小屋にて、
安っぽい電飾の楽園にて、
夜じゅう熱狂して、苦悶して
腕を折る
そうして、観客に何か悲しげに歌いかける。

ジャズバンドが鳴り響く。弦が鳴らされる、
獰猛な猿たちが
口から歯をむき出す。
私はといえば、身を歪め、飲んだくれて、
大海原にやつらを呼ぶ
そうして盛んにシャンパン色のなかに浴びせてやるのさ

朝が近づいてきた時、私は眠ったような並木道でうわ言を言う、
子どもたちでさえ驚いて、私から逃げ去ってゆく。
私は疲れ切った老クラウン、ボール紙の剣を振り回す、
私の王冠の輝きは白昼の大蝋燭に消え去った。

ジャズバンドが鳴っている。下手くそに弦を鳴らしている、
猿どもが踊っている
狂ったような激しさでクリスマスを祝っている。
私は背中を丸め、酔いつぶれて
ピアノに突っ伏して眠りこけた
この野蛮な狂騒と祝宴の傍らで。

やぐらの上では舞曲が奏でられ、
楽団員は去ってゆく、
クリスマスツリーは燃え尽きた。
給仕が蝋燭を消している、
ずっと前から話し声も静まり、
私はまったく顔をあげることも出来なかった。

その時、燃え尽きたツリーから黄色い天使が静かに跳びだしてきて言った。
「哀れな芸人さん、あんた疲れたろ、病気になったのか。
小屋ん中で夜じゅうタンゴを歌っているってね。
ぼくらの汚れなき天では、みな仰天しているよ」

私は手で顔を覆いながら歯に衣を着せぬ言葉に耳を傾けた、
痛みと恥の涙を燕尾服で拭いながら。
碧空の高みでは神の蝋燭が燃え尽きて
悲しみに満ちた黄色い天使は静かに跡形もなく消えていった。

1934年
パリ

ロシア語の原文はこちら

Желтый Ангел

В вечерних ресторанах,
В парижских балаганах,
В дешевом электрическом раю,
Всю ночь ломаю руки
От ярости и муки
И людям что-то жалобно пою.

Звенят, гудят джаз-банды,
И злые обезьяны
Мне скалят искалеченные рты.
А я, кривой и пьяный,
Зову их в океаны
И сыплю им в шампанское цветы.

А когда наступит утро, я бреду бульваром сонным,
Где в испуге даже дети убегают от меня.
Я усталый, старый клоун, я машу мечом картонным,
И лучах моей короны умирает светоч дня.

Звенят, гудят джаз-банды,
Танцуют обезьяны
И бешено встречают Рождество.
А я, кривой и пьяный,
Заснул у фортепьяно
Под этот дикий гул и торжество.

На башне бьют куранты,
Уходят музыканты,
И елка догорела до конца.
Лакеи тушат свечи,
Давно замолкли речи,
И я уж не могу поднять лица.

И тогда с потухшей елки тихо спрыгнул желтый Ангел
И сказал: «Маэстро бедный, Вы устали, Вы больны.
Говорят, что Вы в притонах по ночам поете танго.
Даже в нашем добром небе были все удивлены».

И, закрыв лицо руками, я внимал жестокой речи,
Утирая фраком слезы, слезы боли и стыда.
А высоко в синем небе догорали божьи свечи
И печальный желтый Ангел тихо таял без следа.

1934
Париж
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エピローグ 2

またも追善の時が近づいた。
あなたたち皆を私は見て、聞いて、感じている。

窓口までかろうじて連れられていった女を、
生みの大地を踏みしめることのない女を、

愛らしい頭を揺さぶって言った女を、
「わが家にいるように、ここにやってきます」。

あなたたち皆の名を挙げたい、
だが名簿は奪われた、尋ねることも出来ない。

彼女たちのために私は広大な幕を織った
洩れ聞いた、その乏しい言葉から。

彼女たちをいつでもどこでも思いだす、
新たな苦難にあっても彼女たちを忘れはしない、

もしも私の苦しみぬいた口が封じられるなら、
一億の民がそれを通して叫ぶだろう、

その時には彼女たちが私を追悼しますように
私の追善の日の前日に。

いつの日か、この国に
私のために銅像を建てようと思うのなら、

式典を催すことには同意しましょう、
だが、条件つきでのみ ── それを建てるには

私が生まれた海の近くではなく。
海とは最後の絆も絶たれたのだ、

癒やされることのない影が私を探す、
秘められた切り株のある皇帝の庭園のなかでもなく、

そう、私が300時間佇み
私のためには閂が開けられることのなかったここに*。

だから至福の死のなかで私は恐れるのだ
黒いマルーシ**のとどろく音を忘れることを、

扉がどれほど恐ろしい音をたてていたか、
傷ついた野獣のようにわめいていた老婆を忘れることを。

そうして、動かぬ青銅の瞼から、
溶けてゆく雪が涙のように流れ続けるように、

牢獄の鳩が遠くで、くっくっと鳴くように、
ネヴァ川を静かに舟が渡ってゆくように。

1940年3月
噴水邸

*アフマートワの銅像は彼女の希望通り2006年にネヴァ川の河岸通りに、牢獄を見守るように建てられた。

**黒いマルーシは囚人護送用の有蓋トラックのことです。アンジェイ・ワイダの映画『カティンの森』を見た人は、最後の場面でポーランド将校たちがその車で護送されているのを見ていると思います。 
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ロシア語の原文はこちら

            II

Опять поминальный приблизился час.
Я вижу, я слышу, я чувствую вас:

И ту, что едва до окна довели,
И ту, что родимой не топчет земли,

И ту, что красивой тряхнув головой,
Сказала: "Сюда прихожу, как домой".

Хотелось бы всех поименно назвать,
Да отняли список, и негде узнать.

Для них соткала я широкий покров
Из бедных, у них же подслушанных слов.

О них вспоминаю всегда и везде,
О них не забуду и в новой беде,

И если зажмут мой измученный рот,
Которым кричит стомильонный народ,

Пусть так же они поминают меня
В канун моего поминального дня.

А если когда-нибудь в этой стране
Воздвигнуть задумают памятник мне,

Согласье на это даю торжество,
Но только с условьем - не ставить его

Ни около моря, где я родилась:
Последняя с морем разорвана связь,

Ни в царском саду у заветного пня,
Где тень безутешная ищет меня,


А здесь, где стояла я триста часов
И где для меня не открыли засов.

Затем, что и в смерти блаженной боюсь
Забыть громыхание черных марусь,

Забыть, как постылая хлопала дверь
И выла старуха, как раненый зверь.

И пусть с неподвижных и бронзовых век
Как слезы, струится подтаявший снег,

И голубь тюремный пусть гулит вдали,
И тихо идут по Неве корабли.

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