酪農家のブログ

趣味は研ぎ。砥石や包丁(庖丁)の評価を記事にしています。もちろん牛の話もあります

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砥石とpH

天然はなぜ「長切れする」「カエリが出無い」「切れ味向上」「熱が出る」と言われるのか
いろいろ考えて、
先日、天然砥石と人造砥石との特性の記事で、砥汁にあるものを混ぜて研いだところ、天然砥石と同じようなブレード面の状態を作る事が出来ました

実はコレなんですが、pHが1の酸性溶液を使用して砥いだんです
この微粒子状の模様は、「研ぎ痕も残らないほどの酸化作用」で形成されているようです



じゃあ、天然砥石、人造砥石はpHいくつなの?ってことで実際に調べてみました
砥汁は耐水ペーパーを使用して砥面を擦って出しました
耐水ペーパーは中性です

天然砥石(新大上)pH6(酸性)
イメージ 1


天然砥石(大突)pH5.3(酸性)
イメージ 2



黒幕 pH8〜9(塩基性) 番手によって異なる
イメージ 3
イメージ 4


極妙 pH7(中性)砥面が硬くて砥汁がほとんど濁らないため中性
イメージ 5



ここまでみると、
「おー、推測通り天然は人造と違ってpHが低いため、包丁の鉄がイオン化(Fe2+,Fe3+)して、
これが、水酸化鉄[Fe(OH)2]となり、更に大気中の酸素と反応して、酸化鉄(FeO.Fe2O3;通称黒錆)
を形成し、この酸化鉄がブレードを覆い酸化被膜を形成している」
と考えられますよね

そして、黒錆と鉄のモース硬度は、
鉄→4〜5
黒錆→6
であるため、ブレードの硬度が増すことによって、
耐久性が上がり「長切れ」「切れ味向上」を生むのではと考えられますよね

そして、この時の酸化反応熱が著しい場合、
「天然で研ぐと熱くなる」現象が発生すると考えられますよね

さらに、
非常に小さいて薄いカエリはこの腐食(酸化)作用により、ブレードよりも早く酸化され
かってに刃線から剥がれていくのでは?と考えられますよね


これで、すべて丸く収まってめでたしめでたしと、思っていたのですが、
↑の仮説を覆す事実が出てきてしまいました



それは、
対馬黒名倉の存在です




僕は天然砥石を使用するときは必ず対馬黒名倉で、
砥汁を出してから研ぐのですが、
実は対馬黒名倉は塩基性なんです・・・・

対馬黒名倉 pH11以上(高い塩基性)
イメージ 6


そして、大突(あるいは新大上)+対馬黒名倉の合成砥汁のpHは8〜9(塩基性)
イメージ 7
イメージ 8

あれ〜?だけど過去の記事で上記の組み合わせで研いだ塩基性研磨痕は、間違いなくpH1の酸性水溶液で研いだ研磨痕と同じでした


じゃあ、塩基水溶液でも粒子状研磨痕になるのか試してみました
塩基性の代名詞である、水酸化ナトリウム水溶液(pH10)で研いでみました
イメージ 9
まったく霞みません
100倍見ても粒子模様はありませんでした


じゃあなぜ塩基性の対馬黒名倉では、粒子状研磨痕になるのか?

「そういえば、対馬黒名倉は海産物で有る為、塩分による腐食では?」
と思い名倉を直接舌で舐めてみたところ、さすがに塩辛くはありませんでしたww
それはそのはず、対馬黒名倉は何年もかけて塩抜きされているからで、
塩分の大部分は抜けてしまっているからでしょう

しかし、塩抜きされているとはいえ、
塩分が100%抜けているとは思えません

塩分が僅かでも残っていた場合、塩分から出る塩化物イオン(Cl-)が腐食に影響を与えている可能性が有ります

対馬黒名倉を使用して砥いだ場合、
包丁の鉄と塩分が反応し塩化鉄(FeCl)を形成し、
これが水と反応して、水酸化鉄[Fe(OH)3]を形成している可能性が有ります



では、対馬黒名倉に塩化物が存在し塩化物イオン(Cl-)が存在するか検証してみました
対馬黒名倉の砥汁(塩化物水溶液と推測)に水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を混ぜ合わせて、混合液を乾燥後の粉末↓
イメージ 10
この粉末を匂ってみたところ

「プール臭ぇ」
プール特有の塩素の匂いがプンプンしました

どうやら、水酸化ナトリウムのナトリウムイオン(Na+)と塩化物イオン(Cl-)と大気中の酸素(O)が結合し「次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)」が生成されたようです
つまり対馬黒名倉には、塩抜きしても別の塩化物が含まれており、
この塩化物に水を与えることで塩化物イオン化して、鉄イオンと結合し塩化鉄を生成している可能性が高いです

ちなみに、対馬黒名倉の砥汁は「泥臭い」匂いです
水酸化ナトリウムは「すっぱい」匂いがします

そして、塩化物イオンは鉄と強い反応を示すので、
僅か10分程度の研ぎ時間で、切刃の研磨痕をも簡単に消し去るほどの強く早い変化(粒子状模様、孔食、腐食)をもたらしたと考えられます


さてここまで解ると、塩化物イオンを大量に含む対馬黒名倉は塩水で包丁を研ぐようなもので、
包丁にとって有害ではないのか?と疑問が出てきます
塩化鉄から酸化鉄(FeO.Fe2O3)へ変化することによる「長切れ等の有利な効果」以上に、
酸化被膜を突き破るほどの腐食作用が包丁を痩せさせる可能性が有ります


とりあえず現在までの僕の見解は、対馬黒名倉(および海産物の砥石)は、
「鋼にやさしくないので使用しない方が良い」
です


閉じる コメント(18)

難しくて分からんです・・・

2010/9/4(土) 午前 11:03 [ あきらパパ ]

酪農家さんはpH試験紙を良く使うのですね?

2010/9/4(土) 午後 4:38 ゆうけん

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う〜ん、黒名倉の反応が面白いですね。

2010/9/4(土) 午後 5:52 あるけすさん

こんばんは
大変興味深く拝見しました
いろいろな実験が出来そうですね 素晴らしい・・

2010/9/4(土) 午後 6:58 rinrin

顔アイコン

興味深い話でした。
似たようなことで、某掲示板で刃物に通電して研ぐのを実験している方がいました。
カエリに効果があるそうです。

ところで発熱するほど酸化するなら目に見えて変化があると思いますがどうでしょうか。
砥石や砥汁、刃物自体に拡散するので感じるほどの温度上昇があるのかと思います。
床屋さんに昔聞いた話では「仕上げ砥石で最後は水を使わず熱を持つほどに研ぐ。
そうするとさらに切れるようになる。」だそうですが、本当かどうかは分かりません。

2010/9/4(土) 午後 7:37 天水

あきらパパさん

深く考えずさらっと読んでくださいw

2010/9/5(日) 午後 0:07 [ 酪農家 ]

ゆうけんさん

pH試験紙は前回の仮説の記事を書いた後に取り寄せました
試験紙を使用したのは初めてですよ〜

2010/9/5(日) 午後 0:08 [ 酪農家 ]

あるけすさん

黒名倉について、試験結果を追記しましたので見てね〜

2010/9/5(日) 午後 0:09 [ 酪農家 ]

rinrinさん

キッチンでの試験ですので、大したことは出来ないんですけどね・・・Orz

2010/9/5(日) 午後 0:10 [ 酪農家 ]

天水さん

通電研ぎですか〜 感電しそうですね
包丁に+電極、砥石に-電極を接続して通電すると、Feがよりイオン化するのかもしれません

>発熱するほど・・・
なんとも言えません
「対馬黒名倉を砥石として研ぐ」または「pH1の水溶液で研ぐ」のパターンでは、目視で霞みを確認でき、100倍で粒子模様が出ました
また、なんとなーく研いでいるときに暖かい感じもしました
しかし、外気温も相当高いので冬に実験した方が解りやすいかも?

>床屋さん・・・
最後に水を排除する理由は、水酸化鉄[Fe(OH)2]を大気中の酸素と結合を加速させるためでは?
酸化還元反応により、水酸化鉄+大気中の酸素(O2)→黒錆(FeO.Fe2O3)+水(H2O)へ変化します
また、ここで生成される酸化皮膜(黒錆)はステンレスの酸化クロム皮膜と同じく数nm程度ではと推測します
よって、研ぎ中に熱が発生しても目視でこの錆(酸化被膜)を確認することは無理かと・・・

2010/9/5(日) 午後 0:28 [ 酪農家 ]

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プールのニホヒ。(笑)
私の山産黒名倉(?)は海底から出た石ではないので、
当然何の臭いも無いですが、ph測ったらどうかなあ〜・・・・・。

2010/9/5(日) 午後 5:01 あるけすさん

あるけすさん

海水は塩基性(pH8位)で、さらに海底で高水圧にさらされいる
対馬黒名倉が塩基性(ph11)なのは妥当な結果です

山産黒名倉は僕の推測ですが、酸性です
地下水は弱酸性のケースが多いからです
ちなみに、僕の牧場も地下水を使用していますが、
PHは5.1〜5.3位で水にしては高い酸性値です
この位の酸性水ですと、水道管回りの鉄や真鍮で出来ている部品は、
約3年でボロボロに腐食して交換を余儀なくされるんですよ(*ノ_<*)
最近は出来るだけステンレスの部品へ交換してするようにしていますが・・・

つまり、新大上、大突のpH(5〜6)という数値は、考えているよりも強い酸化作用をもたらします
pH5はpH7(中性)に対して、水素イオン活量は10の2乗(7-5)で100倍だからです
昔、あるけすさんが熱を感じた砥石はもっとpHが低いのかもしれませんね

2010/9/5(日) 午後 7:50 [ 酪農家 ]

↑ですが、昔火山だった山の付近の地下水は酸性の可能性が高いです
山産黒名倉が長崎のどこの山なのかわかりませんが、火山が近くにあったのならば、火山の塩酸(HCl)、硫化水素(H2S)などが地下水に入り込み土壌が酸性化します
他の砥石も火山に近い場所で取れたものであれば、酸性の可能性が高いですね
そうなると、大突や新大上も塩化物(Cl-)を含む可能性も有りますね
逆に考えれば、有名な天然砥石って昔火山が合ったような土壌で採掘されたものが多かったりしませんか?

2010/9/5(日) 午後 9:19 [ 酪農家 ]

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2年前ぐらいに土橋さんの黒蓮華を使ったときに、青二の刃が2秒ぐらいでそれこそ赤のメタリックに着色して驚きました。その後、何度やってもできません。でもつい最近、青砥の次に黒蓮華を使ったら、白二の三徳が同じように2秒ぐらいで、刃先が濃紺に染まりました。
少し染まったなんてものではなく、万年筆のインクのような感じです。さすがに驚きました。この辺の事情、イオンの交換と関係あるんでしょうね。

2010/9/6(月) 午前 1:49 [ りの ]

りのさん

有益な情報ありがとうございます
青色に染まったのは、青砥でヘキサシアノ鉄錯体[Fe(CN)6]3−が生成されたかあるいは、石にヘキサシアノ鉄錯体が大量に含まれており(青砥が「青い」原因かも? 青色=ヘキサシアン鉄錯体?)、黒蓮華(黒色=鉄分(Fe)多い?)で大量の鉄イオン(Fe3)を化合させることで、顔料のシアンブルーFe[Fe(CN)6]が生成された可能性があります

赤のメタリックは「赤錆(Fe203)」?

2010/9/6(月) 午前 9:12 [ 酪農家 ]

↑青砥と黒蓮華を直接擦り合わせると、
シアンブルー顔料が出来るかも(笑)

2010/9/6(月) 午前 9:16 [ 酪農家 ]

酪農家さんは染料の事をどこかで習いましたか?

2010/9/6(月) 午後 4:43 ゆうけん

ゆうけんさん

特に習ってはいませんが、
1つ上げるとしたら、自宅のCanonのプリンタのインク補給時にシアンブルーを入れる事くらいでしょうかw

2010/9/6(月) 午後 8:00 [ 酪農家 ]


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