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直近は毎年、落語協会も落語芸術協会も新真打が誕生しておりますね。
それぞれの協会で、また、講談師と落語家で、披露興行のやり方が若干違います。
また、上方は「諸悪の根源」なので、真打制度を止めて、復活の話もありますが、
現在も尚真打制度が存在しないままであります。つまり真打は江戸だけなのです。
さて、そんな東京の落語/講釈の真打制度と真打披露を協会別にみてみましょう。
◇落語協会
基本的に三月下席≪鈴本≫より、真打の披露目が始まります。
今年のように、たまに三月/九月と春と秋に分けてやる事もあります。
これは、主に、寄席側の事情で、正月とお盆は定例の行事があるので、
真打披露なんて入れられない。逆に、春と秋は暇なので… それでこの季節にやります。
次に「真打の基準」。一之輔/文菊/志ん陽の抜擢の後は、完全に香盤順。
心太方式で、10年から11年二つ目をやると真打にしてやっています。
基本的に、会長の意向と理事会の合意で決めるので、一番揉めないのが香盤順だから。
つまり、威光の強い会長が誕生すると、理事会を押し切り抜擢もあります。
まぁ、理事会は、それぞれの派閥の思惑で一本にはならないのでね。
そして、真打披露は、鈴本→末廣→浅草→池袋と続き、若干、GW休みを挟んで、
国立演芸場でフィナーレとなるのです。実に50日間の真打興行が打たれます。
まぁねぇ、50日新真打がトリを取りますから、一人とか二人で成ると大変です。
こん平師匠のような打上奉行は居なくなったと言うけど…
尚、落協は披露目期間中、初日・中日・楽日には、全寄席に弁当配るみたいです。
ちなみに、落協は「師匠」と呼ばれるのは、三月の真打合同パーティーから。
落語協会の真打さんは、芸人仲間向けの合同パーティーと、ご贔屓向けの、
個別の真打披露パーティーの二回やってますね。よりお金の掛かる仕組みです。
最後に、真打披露と言えば、「三点セット」と「後ろ幕」です。
「三点セット」とは、口上書き・扇子・手拭が一式のセットになった祝いの品。
この口上書きを、誰に書いてもらうか?、これが新真打の真価とも言えるので、
皆さん、著名な芸界に影響のある人に書いてもらっています。
一方、「後ろ幕」。これは真打披露興行で、トリを取る新真打が飾る幕で、
多くの新真打は、おダン(ご贔屓筋)から贈られるもので、身銭は切らないと思いますが、
どんなに簡単なヤツでも五十万円は掛かると思います。なかなか大変な存在ですよね。
十人真打とかなら、更に一生に1度しか殆ど使わないのであれば、
プロジェクションマッピングで、それぞれの趣向で映像を動かしてみるのも手だと思います。
◆落語芸術協会
基本的に五月上席≪末廣≫より、真打の披露目が始まります。GWの真っただ中の披露目です。
歌丸会長になり100%心太式、香盤順に例年3名の新真打を誕生させて来ました。
芸協は、末廣→浅草→池袋の三軒なので、3人か2人が都合よく、今年は2人ですが、
3人真打に昇進するケースが多いようです。抜擢を歌丸会長は嫌いみたいですね。
尚、真打になる迄の年期は、落語協会と同じで前座4年、二つ目10年が目安です。
抜擢
これは、香盤の順序を飛び越して真打に昇進する事をいいます。そして香盤とは、
その咄家が入門した時点で付けられる協会内の序列になります。
つまり、後輩が先輩を追い越す事に成り、人間関係を少なからずギクシャクさせます。
過去にも、談志師匠が志ん朝、圓楽両師に抜かれて、最後までこの事がシコリになり、
分裂に至ったのでは?と、言われていますし、小朝師匠が36人抜きで真打に抜擢された事も、
現在まで深いしこりとして、協会内部には残っていると思います。
漸く抜かれた人達が、紫綬褒章で抜き返しているので、少し和いで来てはおりますが…
そんな事情もあり、協会としては波風立てたくない。しかし、席亭さんの思惑は違います。
二つ目で、集客力のある若手が、頭角を表せば、それは席亭しては「金の卵を産む鶏」!!
披露目でまず稼いで、寄席の主任興行を打って儲けにしたいのは人情です。
だから、希に在ります、「席亭推薦から理事会に掛けての真打昇進」有名なのは、
芸協ではありませんが、古今亭菊之丞師匠ですね。席亭推薦の抜擢。
芸協と落協では、チケットの販売に絡む配分がかなり違います。落協は新真打に厳しいです。
当然、チケットを新真打が手売りすると、何がしかのキックバックがあるのが芸協ですが、
なんと!落語協会は、一切、新真打の取り分は無いそうです。だから売る気がしないけど、
売らないと席亭に嫌われるので… 微妙に寄席との関係が芸協と落協で異なるようです。
まぁ、芸協さんは、鈴本と喧嘩別れした経験があるから、それを踏まえてなんでしょうね。
ちなみに、芸協の真打は5月1日から「師匠(先生)」と呼ばれます。
◇圓楽党
最も最速で心太式に真打を作って居るのが圓楽党です。前座から平均8年で真打になります。
遅くとも10年辛抱すると、そろそろと言われて真打です。落協・芸協の1/2〜2/3の年期です。
元々、圓楽党発足の理念からすると、かなり変な事になっています。社会党が自衛隊を認めた。
それに匹敵するぐらいの変革ぶりです。現在で言うと福島瑞穂が「憲法改正!」と叫び、
男の背中で三歩下がって、その後に従うくらいの変革だと思います。
と申しても、圓楽党なりの事情もあると思います。それは、他協会からの流入者の受入です。
他の三団体を破門、クビ、解雇された芸人の受け皿というか、再生というか、セカンドチャンス、
そんな機会を与えてくれる存在でもあるので、すごろくじゃないんだから、振り出しに戻すのは、
あまりにも理不尽なので、このくらいで真打にしてやりましょう的な、そんな考えも多少見え隠れします。
勿論、私が見え隠れすると言っているだけで、圓楽党さんが云っているのではありません。
近年この逆がありました。立川流の談幸師匠が、弟子二人を連れて芸協への移籍です。
ちょうど、談志師匠の七回忌が終わったタイミングでした。そして、談幸師匠は、
落語協会時代に真打になっているので、そのまま立川流真打から芸協真打にスライドしましたが、
既に二つ目の弟子二人は、吉幸さんが1年、幸之助さんが2年、寄席の前座修行が科せられました。
吉幸さんは、真打目前でのまさかの前座降格ですよね。何時、真打にしてもらえるのやら???
尚、落語協会は30歳未満、落語芸術協会と立川流は内規としてではないようですが、30代くらいまで。
それぞれ老人前座のポンコツぶりに悩んでからは、理事会などでむやみに弟子を取るな!と言われるみたいです。
圓楽党の披露目は、お江戸両国亭の四月興行で行われて、他の協会からのゲストも出演します。
だから、新真打によっては、ありえないような豪華なゲストがやって来ます。
萬橘師匠がそうでしたね。西から鶴瓶師匠、東は談春さんを招いての披露目でした。
◆立川流
談志家元亡き後、一番よく分からない方式で真打を決め、不定期に披露目をするのが立川流です。
基本線に、二つ目が五十席、歌舞音曲の素養、真打は百席以上を持ちネタにしている事。
家元存命の時代は、上記をベースに、真打トライアルなる落語会を開く。トライアルとは…
新真打候補が、他の協会に限らず広い芸界からゲストを呼んでの会を4回程度開いて、
その集客や高座の質を家元が確かめて、これは立川流の真打に足りると判断すると真打に昇進しました。
このトライアルをやって真打になる人と、直接昇進試験みたいな面接でなっている人。
あとはいきなり「真打になれ!」と、談志独演会の帰り道に言われた人など、
晩年は、家元の気分で真打が作られた傾向も在ったように思います。
そして現在、家元が亡くなった後は、真打の誕生させ方が一門によって違います。
基本は、師匠が「お前が真打だ!」と、認めて、理事会が追認する形を取るようです。
志の輔一門は、旧真打トライアルに似た形式で、300人以上入るホールでの4回程度の独演会。
この集客と内容を志の輔師匠が観て、OKならば協会に推薦し、許可を貰うかたちです。
晴の輔さん、志の八さんは、この方法で、真打になっています。
一方、志らく一門は、志らく一門会で真打立候補者同士による客と師匠で選ぶ真打昇進レース。
このレースで、真打に足りると志らく師匠が認めた者が協会に推薦され真打になります。
このやり方で、こしら、志ら乃、らく次、志らべは真打になっています。
で、この志らく一門会のトライアルに似たレースを、一門の枠を取り払って、
立川流全体で行われた事があり、レースといいながらエントリーの5人が全員昇進するとおう。
おいおい、できレースかよ!みたいなトライアルで真打になった人も居ます。
志らら、らく朝、小談次、志ら玉、左平次の五人です。
どちらにしても、圓楽党より寄席に出ない立川流は、今後、どうなってしまうのか?
落語協会内部に影響力のある、分裂騒動を知る人が亡くならないと、戻る事は難しいと思います。
◇講談協会
殆ど知られていませんが、東京の講談の協会は、2つに分かれています。
分裂の経緯や、講釈師ってものがどんな存在か?知りたい人は下記を読んで下さい。
日活ロマンポルノが全盛期の頃に、ポルノ講談がきっかけで分裂へと向かった当時の様子。
それが、克明に描かれていて、実に参考になるいい資料だと思います。
・小金井芦州啖呵を切る
人間国宝・貞水先生率いる老舗の「講談協会」と、二代目神田山陽一門の分派「日本講談協会」です。
講談協会は、一部の先生が落語協会に所属しています。というか、六代目貞山は落語協会の会長でした。
講談協会は、四月にお江戸日本橋亭とお江戸広小路亭で5日間の真打披露興行を行います。
この披露目が、昔はさほど入らなかったし、私は講釈の披露目なんて… と、思っていたのですが、
貞水先生の弟子の貞橘さん、彼が講談協会では30ウン年ぶりの新真打と言われて、
騒がれてから、1回は行くようになったのですが、毎年、客の動員が凄くてびっくりします。
◆日本講談協会
芸協の寄席でも活躍した二代目神田山陽先生の一門で、例外もありますが、殆ど芸協にも所属します。
現在では、神田松之丞さんが有名ですね。女流では神田京子先生、神田鯉栄先生などがつい最近真打になりました。
松之丞さんは、寄席の席亭は早く真打にしたいはずですが、歌丸師匠の目の黒いうちは無理だと思います。
まぁねぇ、三代神田山陽が、芸協で真打になったのに… あんな事になったもの芸協としては、
許せないのかもしれませんしねぇ。とはいえ、芸協に在って「日本講談協会」の存在は大きいと思います。
おそらく、来年は、神田蘭さんが真打になるんだと思います。
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真打昇進というと、右朝さんのことを思い出します。
(先週17回忌でした)
時折一朝さんがマクラに振る真打昇進試験で落ちたんですよね。
席亭たちの後押しによって追試というかたちで昇進されました。
寄席のトリをとって初めて本当の真打だ、と言うのも右朝さんで聴きました。
追伸
一朝さん(いっちょうさん)を変換しようとしたら1000000000003と出てビックリした〜 (^^)
2017/5/10(水) 午後 7:28
21世紀になってから再び落語の世界を覗き、またまた足が遠のいているわたくしメの立場(すなわち現状にほとんどツンボ桟敷)すると大変面白いエントリです。
言いたいことは山ほどあるのだが、中々書く時間がないのが残念です。
はっきり言って、簡単に言って、定席に出るチャンスがない落語協会と芸術協会以外の徒党は不要です。
落語を安鶴的定義の「芸術」としてしか追及しないのは邪道です。羽織を引くとか、穴が開いた時に適当な時間で座を持たせるとかそういう修行なしに、いきなり大ネタを振る。
よろしければTB先を。
この死神をやった噺家には一種の殺意を覚えました。
2017/5/10(水) 午後 9:53
法師さんが仰っるレベルの寄席で取りを取れる称号が、「真打」以外に必要だと、私も思います。
2017/5/11(木) 午前 8:00 [ Mars_jj_boy ]
右朝さんは、志ん朝師匠の前に亡くなり、本当に失敗したと、思った一人でした。
高田先生との二人会と、川柳師匠の還暦祝いの会ぐらいしか、私は観てないんです、右朝師匠。
2017/5/11(木) 午前 8:32 [ Mars_jj_boy ]
そうか、定席でトリを取れる真打と定席もなく「呼称」だけの真打とは当然違うのですね。
2017/5/11(木) 午後 0:47
落語協会だけで二百人真打が居ますが、トリは40〜50人しか取っていないはずです。
150人くらいは、名ばかり真打です。食べて行けているのが、不思議ですよ。
2017/5/11(木) 午後 1:04 [ Mars_jj_boy ]
香盤で並んでる『松之丞』『宮治』両師をぜひ同時真打に抜擢して、やや花のあるスター不足に見える芸協に、活を入れていただきたい
2017/5/11(木) 午後 1:09
歌丸師匠が会長の間は、厳しと思います。超お気に入りの小痴楽さんですら、抜擢されませんからね。
松之丞・宮治で披露目なら、席亭は大喜びでしょうね。
2017/5/11(木) 午後 2:03 [ Mars_jj_boy ]
なるほど良くわかります。
2017/5/14(日) 午前 8:04 [ tin***** ]
売れっ子だった当代・神田山陽(元 北陽)は芸協では珍しく秋口での襲名・(単独)昇進披露だったと覚えています。アタシは偶然にも2度観る機会がありましたから…。ただ後年、山陽師は海外留学や地方移住やらで寄席出演から足が遠のいた印象は否めません。現在でも芸協会員なのでしょうか??
講談界が分裂した原因は、アタシも長い間、田辺一鶴師の弟子だった(天の)夕鶴のポルノ講談が物議を醸した結果だと思っていましたが、知故の落語家の言では、協会々長選挙を巡ってのことだと聞かされました。分裂前に会長職にあった(先代)山陽師が自他共に次期会長に選出されると思い込んでいたところ、投票後には別の人が選出されたのが原因となって“ヘソを曲げた”山陽師が一門を引き連れて新協会を設立したのが真相とのこと。まぁ噺家の“楽説”だから、どこまでが真実なのかは怪しいと思いますが(笑)…!?
2017/5/24(水) 午後 5:30 [ dec***** ]
講釈師は、互いが本当に仲が悪かった。
ここで紹介した芦州先生、六代目伯龍先生、先代の貞山先生、そして二代目山陽先生。
その前は貞丈先生が君臨した時代は、二代目大島伯鶴先生が居て、派閥じゃないけと、俺が俺がの集まりですよ。
東京だけじゃなく、上方もですよね。20数人で3つに分裂していますからね。旭堂しかないのに!!
2017/5/24(水) 午後 5:40 [ Mars_jj_boy ]