Marsのブログ

小さな会を精力的に聴く努力をしてまいります!!

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さて、これまで三回は、新内の『明烏』を中心に岡本文弥の紹介なども交えてお送りしましたが、
今回は、やりますよ!(アサダ二世風)と、いうわけで、落語の『明烏』です。
この噺を有名にしたのは、間違いなく八代目文楽です。寄席で文楽が『明烏』を掛けると、
売店の“甘納豆”が売り切れたと言うぐらいの人気でしたし、文楽=明烏だった。

そして、私が耳にするのは、十代目の馬生の『明烏』も絶品で、ラストの時次郎が布団から顔を出す場面。
ここで見せる「男になりました!」って笑顔が、他の演者には真似できない、源兵衛と多助に投げる眼差しが、
上からで、勝ち誇っていて、しかも、幸せって感じでたまらなかったといいます。(残念ながら私は伝聞)


では、私が聞いた過去10年の咄家は、下記のようになります。先月の小田原・三三独演会の記事でも紹介しました。


2009 5人5回
立川談春
柳家三三
柳家花緑
柳家喜多八
立川生志

2010 4人4回
立川談春
立川志らく
桃月庵白酒
柳家喜多八

2011 4人4回
入船亭扇辰
三遊亭遊雀
柳家三三
立川談春

2012 6人7回
桃月庵白酒×2
鈴々舎馬桜
柳家三三
春風亭一之輔
柳家小満ん 
三遊亭歌橘

2013 2人2回
金原亭馬生
春風亭昇太

2014 2人2回
立川談春
桃月庵白酒

2015 4人4回
入船亭扇辰
五街道雲助
柳亭小痴楽
古今亭文菊

2016 3人3回
入船亭扇辰
古今亭文菊
桂やまと

2017 4人4回
桃月庵白酒
柳家ろべえ
立川談春
柳亭小痴楽

2018 2人3回
柳家三三
柳家小満ん×2



まずは、黒門町の弟子だった小満ん師。音源で聴いても、そんなに黒門町のやり方を踏襲しているイメージはありません。
意識して時次郎の印象を薄く表現して、浦里と一晩過ごした後の印象を強く残す感じで演じます。
特に、艶っぽいやりとりを、小満ん師匠らしく丁寧に描いてくれるのも、特徴です。

次に、亡くなった柳家喜多八の『明烏』。こちらは、時次郎が実にどうも、可愛いよりもちょっと間抜けギミ。
弟子の小八師匠、元ろべえさんのも師匠・喜多八師によく似た演出でやっております。

鈴々舎馬桜師匠と十一代の金原亭馬生師匠のは、教科書のような演じ方で、特に印象が有りません。
一方、同世代の雲助師匠のは、時次郎が可愛い!そして、十代目の馬生の芸のポイントを継承しています。

最後に、回数多く聴いている談春さんと白酒さん。こちらも対象的で面白いですね。談春さんのは時次郎が超可愛いです。
喜多八師匠のは、やや与太郎がかった時次郎ですが、談春さんのは甚兵衛さんがかった時次郎なのです。純粋です。
源兵衛と多助は、談春さんがやると素で演じられて、江戸っ子っぽさ、職人気質が際立って演じられます。
小痴楽さんの源兵衛と多助も、談春師匠のと、テーストは同じですね。

これに対して白酒師匠のは、全編あかるく喜劇タッチの白酒らくごらしい展開で聞かせてくます。
金原亭の雲助−馬生のラインとも違う独自の『明烏』です。
他にも、扇辰師匠や一之輔、そして文菊師匠のも聴いていますが、強い印象には残念ながらなっておりません。





朝は吹雪く雪ん中を、連雀亭へ行き、そこからDOUTOR Coffeeでお茶しながら、4時50分過ぎに箸庵さんへ。
既に17時より少し早目に開場していて、5?6人のお客様が中にいらしていました。
なんとか、最前列の一番下手に席を確保して開演時間を待っていると、開演時間の10分前ぐらいには、
お客様が全員揃う感じで、満員御礼!素晴らしい打ち上げの料理と、お酒も頂ける箸庵さんの落語会!こんな内容でした。

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・オープニングトーク
・徳ちゃん…昇也
・千早ふる…市弥
お仲入り
・真田小僧…市弥
・長屋の花見…昇也


1.オープニングトーク
山田邦子さんのNHKラジオ「日曜バラエティー」ではお馴染みの、市弥&昇也コンビなんだそうで、
この日も二人の団扇を持った、日曜バラエティーの常連さんが来ていて、箸庵さんに付いている一般の落語ファン、
この方々との温度差が半端なくありました。片や、市弥さんに対して“イッチー”と声援を送るコアなファン。
それに対して、箸庵さんに付いているファンは、まだ、落語が30%で、箸庵さんの料理が70%みたいな客です。

更に、この日は市弥さんのお誕生日の前日という事もあり、コアな市弥ファン、市弥マニアはプレゼント持参でした。
イケメン落語家の騎手と呼べる市弥さんの人気は、それなりだという事を認知させられます。同じ新版・三人集でも、
一蔵、小辰に比べると、やっぱり一味レベルの違う人気がありました。昇也さんも成金の番頭さんですからね。
彼にもそれなりにファンが付いていて、その筋の二人のファンが6〜7割は来ていて、盛り上がりました。

さて、トークで面白かったのが、市弥さんが最近行った都内の落語会。敬老会の皆さんがメインの落語会。
そこで、サプライズゲストが、市弥さんの落語の後で登場する趣向で、開演の直前に市弥さんには知らされた。
そのサプライズゲストというのが、本場・男鹿半島から呼んだ、ナマハゲ保存会の青年部のお二人、
赤ナマハゲと青ナマハゲでした。そして、主催者からの市弥さんへの指令は、ナマハゲ登場の科白を場内に流すから、
客が、落語が終わっても帰らないように、ナマハゲ登場までの1分間を繋いで欲しいと言うのである。

その本番。落語のサゲを言って頭を下げて拍手が起きる。普通なら追出し太鼓と「ありがとう!ございました」の声が掛かる所に、
ナマハゲの声が轟く!! 「悪い子はいねぇ〜かぁ〜」「泣く子は、いねぇ〜かぁ〜」、「悪い、嫁さぁ、いねぇ〜かぁ〜」
エッ!これを1分も貯めて流すの?と、思いつつ、市弥さんは、主催者の指令通り、白ら白らしく、「何が起きるんでしょうか?」
「まさか?本物が…、出て来たりしませんよねぇ〜」と、棒読みの科白で繋ごうとするが、お爺ちゃん、お婆ちゃん達は、
ノロノロとではあるが、会場を後に帰ろうとし始める。慌てて、市弥さんは、老人たちの引き留めにかかり、
何とかナマハゲの登場に間に合わせたのだが、登場した二匹のナマハゲに、老人たちは、ポカン状態で、ドン引きだったそうです。

そりゃ、そうですよね。泣く子も悪い子も、ましては、悪い嫁も居ませんからね。
そうそう、昇也さんも言っていましたが、ナマハゲの御当地・男鹿でも、ナマハゲ御断りの家が増えているそうで、
過疎化、少子化が進み、老人だけの家に、ナマハゲに来られても… 迷惑なだけらしいです。



2.徳ちゃん/昇也
今年の目標は、無駄なマクラを振らない事だと言う昇也さん。とりあえず、市弥さんに「イッチー!」「待ってました!」
「お誕生日、おめでとう!」「泣く子は、いねぇ〜かぁ〜!」と、声を掛けましょうと、言って、三道楽のマクラから、
“おいらん”は、尾を使わず人を騙すからと、“花魁”と書き、訓読みすると「はなのさきがけ」=「鼻の先欠け」=かさをかく。
そんなマクラから『徳ちゃん』へ。最近、『徳ちゃん』だけ聴いたのは久しぶり、『五人廻し』への導入どしてばかり聴いていた。

芋を齧る女郎は、昇也のもなかなか強烈なキャラで、笑いを誘っておりました。それにしても昇也さんは誰から習ったのか?
サゲも、芋女郎が廊下の板に足を取られて、“足抜いて?”と客の咄家に助けを求める。すると、助けに入った咄家も足が、
ズブズブっと板吸い込まれ、「若衆!足を抜いてくれ?!」、これを聴いた牛太郎が、返しの一言。
「お客さん、変わった趣味でらっしゃる、こんな女と足抜けとは!?」これがサゲでした。
白酒師匠のは、芋女郎のあまりの様子に縮み上がる、すると、縮み上がるはずだ、この女、越後は、小地谷の生まれだ。
さん喬師匠でも聴いたけど、サゲまでは覚えていないし、一之輔師匠でも1回聴いているが、サゲはどうだったか?
そういえば、雲助師匠のも聴いてます。こちらは、確か、表は締まっている、裏から帰ぇれ!と芋女郎に言われて、
咄家の客が、裏なんか返せるもんか?こんな店、が、サゲだったと思います。


3.千早ふる/市弥
偶然ですが、この日、市弥さんが掛けたネタは、まるまる、連雀亭での遊かりさん、笑二さんのネタと被りました。
市弥さん、今日は楽しい打上げにしましょうと言って、落語会のご贔屓には、暫く落語は聴いていなかったが、
最近の落語ブームで、また、落語を聴くようになったと言うお客さんが、時々、現れると言う市弥さん。
70歳オーバーのオールドファン。志ん生、文楽、そして圓生、八代目正蔵を生で見てきたんだと言う。

今年、35歳の市弥さんは勿論、生で間に合っているはずもなく、最近また聴くようになった贔屓の蘊蓄を聞かされる。
このパターンの打上げは、本当に辛いと言う。ただ、この日は、女性比率がMAXで、40人以上が女性客でした。
男性はつばなれしない人数で、市弥さんが懸念したような打上げにはならなかったと思います。
そんなマクラから、知ったぶりの話を少し振って、『千早ふる』へ。

昼間、遊かりさんの『千早』で、もやもやしていた胸の痞えが、市弥さんの『千早』で、かなりスッキリしました。
この日の昼に、テイトで太福さんとの二人会をやって、ここに来ている市弥さん。何をやったかは知らないけれど、
十分にアイドリングできてから、この高座だったのが分かりました。太福・市弥の会も行けば良かったと少し思いました。

ご隠居が、最初は八五郎のペースで、やや困りながらも「千早ぶる 神代もきかず 龍田川 からくれなゐに 水くくるとは」
この歌を繰り返し、詠んでいるうちに、自分のペースを取り戻す。自信から慢心に変わる様子が、よくできていると思った。
あとね、この業平の歌。私が学生の頃に和歌の授業を習った先生は、濁って撥音していました、「千早ぶる」と。
意味から察しても、“フル”より“ブル”の方が音が、私の耳にもしっくり感じる。皆さんは、“ふる”派ですか?

咄家で、この噺を、“ブル”でやる人に、出逢った事が、私はなく、これまでリサーチした事もありません。
というか、この記事を書いていて、思い出したんです、大学の一般教養の授業で、和歌の授業を2年間受講して、
それを教えてくれた先生が、名前は覚えていないけど、“濁音”は、書かないけど、感性で付けるもんだった時代。
そのれは正しい、正しくないではなく、濁るべきか?は、詠み手の美意識の問題で、それが聴き手に共鳴した時成立した。

日本語って、そういう原点に帰るのが、平成も終わろうとしている現在、実に大切な事じゃないのか?と思う。
小学校の国語の教科書辺りから、濁点を無くしてみては?と思います。『千早ぶる』のススメでした。


4.真田小僧/市弥
マクラで、打上げの席で必ず受ける質問に、「市弥さんは、なぜ、咄家になったんですか?」というのが在る、と言う市弥さん。
今夜も四五回、この質問に答えるかもしれないので、今日はあらかじめ、この答えをマクラで語ります、と言い出した。
物ごころついた頃、寝る前に父親が、絵本を読むとか、昔話を聞かせてくれるなんてのは、どの家庭でも行われる事だと思うが、
市弥さんの父は、非常に変わった人で、絵本や昔話ではなく、小咄を毎夜、毎夜語ってくれたそうです。勿論、落研出身。

こうして、学校に行くようになると寄席に連れていかれるようになり、市弥さんは落研から柳亭市馬へと入門します。
自分が成らなかった、いや成れなかった夢を、息子が叶えてくれて、非常に喜ばれたそうです、父親からは。
らくごカフェの青木さんと同じような幼少期を過ごして、市弥さんは咄家になったんですね。
そんなマクラから『真田小僧』へ。こちらは、金坊も親父もやや平凡です。笑二さんの方が印象に残りました。


5.長屋の花見/昇也
市弥さんのマクラに刺激されたのか?昇也さんは、現在進行形で、娘さんが寝る前に、絵本や昔話をしてやっている話をしました。
まず、絵本。これは、1回読み終わると、娘さんは飽きて眠くなるまで、「もう一回!」「もう一回!」と、エンドレスに、
絵本を読んで!読んで!と、喰い下がり、限が無く非常に疲れてしまうと、言う、昇也さん。よく分かります。
昇也さんも、登場人物を江戸っ子にしたり、侍にしたり、花魁にしたりして、あの手この手で、自分が飽きないように、
工夫はしてみたものの、同じ絵本を十回以上読むのは、そうそう続かない。

そこで、昇也さんが取った行動は?

昔話を聞かせるのですが、複数の昔話をミックスしたり、例えば桃太郎で、犬がなかなか家来にならず、無駄に歳月を過ごした桃太郎。
結局、鬼退治に行けずにただの老人になり老衰し亡くなってしまう。そんな創作をして、娘さんもケラケラ大爆笑だのだが。
これをやると、嫁さんから、娘が幼稚園で虐められる!と、変なストーリーを教えるのを、やっていると止められるそうです。
私は、一回り年下の舎弟に、絵本を読み聞かせするのが非常に退屈だったので、まだ、2歳くらいだったのに、字を教えて、
独りで読めるようにするという方向に、読み聞かせではなく、読書に変える工夫をすることで、克服しました。

ただ、この読書。幼い子供は黙読できないので、声に出して読むのを、真面目に聴いてやる必要があります。
そして、時に間違いを訂正したり、途中で止めて、内容について質問や議論をしながら、興味を繋ぐ必要があります。
また、最初だけ読み聞かせしてから、読書させるのも必要ですね。これを録音、録画してより楽しくしてやる。

さて、本編の『長屋の花見』。最初の長屋の衆が大家さんに呼ばれて集まる場面、ここから店賃の催促ではなく、
貧乏ながらも長屋一同で、花見に行こう!と、誘われて、酒・肴を大家が用意してくれると聞いて、歓喜する一同。
ここまでは、大家さんが仏のように優しく慈悲深い人なのか?と、思わせておいて、「実は…」と、地獄に落としに掛かります。

一升瓶の酒は茶の出がらし、重箱の蒲鉾は大根の香香、そして玉子焼は沢庵だと知らされる。
更に、ムシロを指して「毛氈」と呼んで、これを敷いての宴会を、上野のお山でやろうと言うのだ。
一気にやる気が失せて、大家のしみったれぶりに、今更、納得する長屋一同。それでも強引に花見に連れて行く大家。
この攻防が私は好き。結局、大家に押し切られて、店賃を待ってやるから、全員付いて来いと言われ、渋々参加する長屋の衆。

桜のお山に着いてみても、茶と香香、沢庵では盛り上がろうはずもなく、無理に花見らしさを要求する大家だが、
この要求に反比例して、長屋の衆はシュンと大人しくなり、ボソっと呟く愚痴が笑いを誘います。
最後は、ヤケクソで空元気を出す長屋の衆だが、それでも心の底から騒いでいる訳もなく、なんとも侘しい感じが落語的です。

【打上げのお料理】
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次回は、三月九日(土)17時開場、17時半開演。立川談吉独演会です。
私は、別の予約を既に入れていて、参加できませんが、打上げの料理だけでも参加する価値があります。

雪が激しく降る中、神田駅から須田町交差点経由で連雀亭へ。凄く寒い中を傘をさして歩いていると、神田の老舗まつ屋前を通り掛かってた時10時45分に、若い女の子が三人並んでいる!!
その横を通り、「六文銭そば」の横を抜けて連雀亭へ。幟が無い!!やっているよなぁ?と、思いながら出番表を観ると今日の番組になっている。
そして、幟は階段に雪を避けて取り込まれていたのだった。階段を上がり、連雀亭の入口に着くと既に先客があり、私は二番目でした。そして、結局、あの雪の中13人のお客様が来場。
そんな、決死の覚悟で強者落語ファンが集まった連雀・ワンコイン寄席、このような内容でした。

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1.千早ふる/遊かり
演者が三人。これより多いかな?と思っていたら、つばなれする客席に、いたく感動する遊かりさん。連雀亭の後は、浅草演芸ホールで出番らしく、そちらがつばなれしているか?心配しておられました。
浅草は、タダ券の客が、昼はコンスタントに百人くらい来るから、普通は大丈夫ですが、あの吹雪!吹雪!氷の世界だったから。。。
『千早』に入る前のマクラは、楽屋の師匠たちの中にも、知ったかぶりが居るという遊かりさん。芳香剤・サワデーはCMでは爽やかとか言うけど、本当に爽やかか?
みたいな話題で盛り上がっていたら、そこにとある師匠が遅れて来て、サワデーですよ、サワデー。と、言ってその師匠に意見を求めると、
「俺、サワデー、食うおう食うおうと思いつつ、まだ、食べた事ないから。」と、コメントして、新聞を熟読し始めた。そんな、知っタカあるあるから『千早ふる』へ。
尺を刈り込む為に、導入の隠居と八公の会話を、スムーズに業平の千早ふるの歌を紹介。娘は学校に行っている設定で始まる。八五郎は、まだ、マシだが、隠居さんが全く隠居らしく景色が見えない。
比較して恐縮だが、立川こはるさんの隠居が10点満点の8.5くらいの隠居だとすると、遊かりさんのは4.2くらい。半分以下である。
老人の男性ができていない。使いそうな言葉になっていないし、喋る速度もはやい。また、知ったかぶりして、自信満々に嘘八百を語る老獪さが見えないのだ。
また、ラストの豆腐屋・竜田川と乞食の千早太夫の激突も、工夫もなく迫力も足らない。おからをやる・やらないな場面が一番の山場なのに。
2.真田小僧/笑二
マクラでは、なぜ、沖縄出身唯一の落語家に成ろう!と、思ったかについて語る笑二さん。笑二さんが、初めて人前で何か芸を披露したのは、小学校五年生の学芸会。
出し物は、太宰治原作の「走れ!メロス」の演劇だった。笑二さんの通った沖縄の小学校は、1組から4組まであり、各クラスから一人ずつメロスが選ばれて、リレー形式で演じて行く趣向だった。
笑二さんのクラス以外は、自薦他薦で選ばれた候補を、クラスの皆んなで投票して、多数票を獲得した者が、メロスに選ばれて出たが、
笑二さんのクラスだけ、候補選びまでは、同じく自薦他薦だが、決戦方法がじゃんけんで、笑二さんが選ばれてしまう。
そして、台本でのメロスのリレー分け。1番目のメロスは、妹の結婚式を控えて、その祝いの品を街に買いに行き、街の沈んだ様子を怪訝に思い人々に訊ねると、
市民からは、王様の暴君ぶりの評判を聞くメロス。憤慨したメロスは妹へのプレゼントの事など忘れて、王様暗殺を実行しようとして、捕らえられる。
第二のメロス、捕らえられたメロスは王の前に引き出され、王は人間同士の友情など存在しない!と言い放つのに対し、メロスは俺が友情というものがある事を証明してやると言い返す。
ならば、友情とやらを見せてみろ!となり、メロスは妹の結婚式を祝い街と式場を走って往復する、その間、人質として親友のセリヌンティウスが王の元に残り、万一、メロスが期限の三日経って帰らない場合は、命を王に差し出すと言う。
第三のメロスは、妹の結婚式に参列し、それを祝福。そのまま、大返しで王様の居る街に戻ろうとするが、途中、山賊に襲われて捕まり、もう少しでセリヌンティウスの命が無くなる所だったが、
何とか山賊の手から逃れたメロスは、最後の力を振り絞って、親友セリヌンティウスの待つ街に、何とかギリギリ期限の三日目の日没に帰って来る。
最後の四番目のメロスは、親友セリヌンティウスと熱い抱擁で互いの友情を確かめ合う。メロスが、王に、約束通り戻ったから、セリヌンティウスを解放しろ!代わりに私の命は、お前にくれてやる!と言うと、
セリヌンティウスが、待った!と叫び、自分は最終日、夕日が沈み始めた瞬間、一度だけ、メロス!お前の事を疑い、お前が帰らないかもしれないと、本気で考えたと告白!だから、命を差し出すのは、裏切り者の自分だと言う。
それを聞いたメロス。それなら俺の方が先にお前を裏切った。なぜなら、山賊に捕まり縄で縛られた昨夜。俺はもう戻るのは無理と、一旦、完全に諦めた瞬間があったからと言う。
互いが自分の命を差し出す姿に、王様は友情と言うものが人間にはあり、それを信じる事が人の道だと改心して、メロスとセリヌンティウスの命を奪おうとした、自分を恥じたのでした。
四人のメロス。笑二さん以外は、背が高いイケメンのクラスの人気者。笑二さんは、小5の頃は今より更にデブの肥満児だった。なのにじゃんけんで勝って第四のメロス、ラストのメロスを選びました。
本番当日、笑二さんの両親をはじめ、多数の父兄が見守る中、「走れ!メロス」は上演されて、三日三晩飲まず食わずで走ったメロスが、太って帰って来ると言う、3/4はシリアスな展開だったのが、
最後の最後に、超喜劇になり、会場が爆笑の渦に包まれたそうです。笑二さん曰く、この小5のメロスで受けた程、プロでも笑いを取った事がないくらい、この時のメロスは受けたそうです。
本編の『真田小僧』。笑二さんの金坊は、最初、父親に「ある日のお母さん」を語る時、寄席の前座さんみたいに、
「まずは、おっとうの長男坊、金太で御座います。お後をお楽しみに、まずは一席のお付き合いをお願いします。」
「えー、よく、世間では、知らぬは亭主ばかりなり。なんて事を申しますがぁ。」とマクラまで振ります。この入り、私は大好きです。
3.鬼の面/あん子
上方落語では、お馴染みの『鬼の面』ですが、江戸落語では初めて聴きました。少し筋が違いました。
子守奉公に出た女の子が、母さんそっくりの「おたふく」のお面を、道具屋/お面屋からタダで貰って、毎晩、奉公の悩みや愚痴を母親に相談するかのように話し掛ける。
ここまでは、同じですが、あん子さんのこの日の噺では、番頭がむやみに女の子をパワハラっぽくコキ使い、弱い立場の女の子は、毎晩シクシク泣きながら、面と対面する。
この泣き声が外に漏れて、お店では幽霊騒動が持ち上がり、番頭は、旦那命令で、幽霊の正体を突き止める為に、夜中に泣き声の主を求めて納戸へと入ってみると、子守女中が幽霊の主と分かる。
ここで、あん子さんの方は、番頭さんがナマハゲの面とおたふく面を入れ替えますが、上方落語では、主人が能の鬼面とすり替えます。
また、上方落語の子守っ子は、いじめには合ったていないし、幽霊騒動もありません。
さらに、金を女中が見つけるくだりも、上方落語では、博打の銭を手にするのに対し、あん子さんの方は泥棒の銭を手にします。
あん子さんの方は、連雀亭の限られた時間のせいもあり、やや急ぎ語りで、語尾がはっきりしない喋りだったのが、やや残念でした。次は、もっとゆっくり聴きたい一席でした。
冒頭に、岡本文弥さんの名言を一つ紹介します。「戦争は嫌でございます。親孝行ができませんし、なにしろ散らかしますから。」この言葉は、実にいい。新内のように粋です。
さて、落語の『明烏』を考える!と、言いながら全く触れていないぞ!と、お怒りの貴方!、申し訳ありませんが、まだ、今回も、黒門町でお馴染みの『明烏』は、登場しません。
それなら、今回は何んなんだ?!と、言うと「その1」で軽く予告しておいた、新内『明烏夢泡雪』の続編、『明烏後正夢』に付いて、今回は紹介したいと思います。
普通、新内『明烏』といえば「明烏夢泡雪」を指すのですが、俗に「まさ夢」と呼ばれる「明烏後正夢」は「泡雪」の後、百年ほど経った安政四年(1857年)に、新内中興の祖といわれる富士松魯中が作った、男女道行モノの新内です。
芝居だとね、仮名手本忠臣蔵の「お軽勘平」に代表されるような道行を描いた作品が勿論売りの一つですが、新内では、珍しい展開なんだそうです。
これも「泡雪」と並ぶ、四代目文弥さんが手掛けた名曲と言われていますが、高座にはめったに掛からなかったようで、音源ですら、私は聴いた事がありません。
現在も、落語協会の寄席に出ている色物で、粋唄の柳家小菊師匠。彼女は亡くなった柳家紫朝さんの弟子なので、この師匠から新内修行を仕込まれたと、仰っています。
寄席にお出になる合間に、最近でもたまに、「小菊を聴く会」と銘打って独演会を開いたりもしておられます。『たぬき』を掛けられた、赤坂の会には、小生も行きました。
あとは、比較的長い持ち時間、30分くらい池袋の文芸坐でも、たっぷりと、ホール落語の合間の演奏でしたが、「まさ夢」は聴いた事が在りません。
漏れ聞いた話によると、2007年の夏に、いまから12年前になりますが、世田谷の小さなホールで行われた「小菊を一寸きく会」という会で、粋唄・俗曲を披露する中に「まさ夢」を弾き語りで聴かせてくれたそうです。
余談になりますが、元小圓歌先生が、三代目圓歌のご威光を遺憾なく発揮して、二代橘之助を襲名されましたが、この名跡は、私は小菊さんの方が遥かに相応しいと思います。そう思ったのは私だけじゃないけどね。
そんな意見、巷でちょくちょく耳にします。初代が偉大過ぎるから、それを知る生き証人が居なくなるまで、なかなか襲名出来なかった伝説の名跡ですからね。
忍び寝の、枕二つをそのままに
ほんに辛気な死神に
あすはなき名を竪川や、われから招ぐ扇橋
この世を猿江大島の森の繁みにたどりつく
ってな具合で、道中付けを聴くことができて、言葉も節も優れた作品である高く評価されております。
小生は、なかなか「まさ夢」を聴く機会に恵まれませんが、心に願っていれば、いずれ巡り合えるものと信じアンテナを張っております。
落語の『明烏』の後に「その1」で書いた、全5話を足して、浦里と時次郎を心中にはしない展開で、「まさ夢」を加えて、この道行と、道中付けまで入れて、全6話のハッピーエンドにするというのは、如何でしょうか?
つづく
さて新内「明烏夢泡雪」をベースに、これを落語に直して、皆様と一緒に味わうための前提として蛇足ながら、
せっかく、新内を紹介するのでねぇ、ここは四代目岡本文弥さんを、今回は紹介してみたいと思います。


「その1」で使用した新内のあらずじは、岡本文弥作「定本 新内集」からの抜粋と、遣手婆ぁのお兼だけ小生オリジナルです。
岡本文弥さんは、昭和四十年代、講釈の寄席・本牧亭にて隔月で、10日に「新内・岡本文弥の会」を開催されていたそうです。
残念ながら私が本牧亭に行き出した時には、昭和六十年代から平成になってたのでねぇ。全く出会えませんでした。
岡本さんは百一歳まで生きて亡くなったので、彼が70代の頃に、本牧亭で隔月やっていた事になります。まるで小満ん師匠のよう。
と言うか、小満ん師匠が「岡本文弥」のようです。


◆「定本 新内集」

音源も「岡本文弥 新内珠玉集」として『平凡の友』から発売されているんですが、こちらは流石に買えないので…
CD7枚組です。いちおう、バラでも売られてはいるけど、二千五百円くらいします。


岡本文弥、明治の人で母親が新内の師匠だった関係で、門前の小僧のようにして新内に親しみます。
やがて、中学生になり文芸誌や同人誌に投稿する文学青年だった文弥さん。
高校・大学と進学しますが、早稲田を中退して、新聞社で働くようになります。
やがて、「秀才文壇」の発行元・文光社に勤めて、編集者として昼は働き、夜は新内流しの二刀流でした。

そんな生活が続いていた文弥さんに転機が訪れます、それは関東大震災。文光社が震災の影響で運営が立ち行かなくなり、
文弥さんは、新内一本で生きる決意をします。そこから、新内を政府に「無形文化財」と認めさせるまで伝統芸能として高めるのですが、
この四代目岡本文弥の偉いところは、古典だけでなく新作の新内を作り続けて200を超える作品を世に出した事でしょう。

ただ、YOUTUBEなどで検索すると出てきますが、文弥さんは「赤い新内」「プロレタリアート新内」などと呼ばれる、
戦前、戦中に左翼が喜びそうな新作を発表しています。そして、朝鮮民謡“アリラン”に乗せて、従軍慰安婦の日記を謡ったりしています。
亡くなった後に、朝日新聞のでっちあげであると分かるのですが、本当にご本人には、大迷惑な話だと思います。


少し脱線したので、話を戻します。


四代目岡本文弥さんは、晩年、なぜかテレビによく出ていたし、エッセイから人気に火が付き書籍も売れていました。
更に、俳句、短歌も発表されて、これにも注目が集まりました。それが99歳、百歳まで続いたので驚きです。
私個人の印象深いのが、たしか白寿の祝いだったと思いますが、新宿プーク人形劇場で、あの人形劇団とのコラボ新内をやった。
文楽/浄瑠璃でなくても成立させるのが、文弥さんらしいと思ったし、新内だからなせる技だと思います。


つづく

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