Marsのブログ

小さな会を精力的に聴く努力をしてまいります!!

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ここまでのエピソードでお分かりのように、白鳥師匠は全く落語の知識を持たない状態で入門しました。
では、圓丈師匠から手取り足取り新作落語を指導されたのか?と言うとそうでもないのです。
それどころか、圓丈師匠からも入門から3年ぐらいは非常に冷たい仕打ちを受け続けたと本人が仰っております。
「にいがた!お前の心には餓鬼が居る」→打上げでマイペースで飲み食いする白鳥師を見て仰ったようです。
「にいがた!お前の中には暗い雪国根性が根付いている。」→名古屋>新潟という地方同士なのに差別意識があった。
そんな圓丈師匠が、白鳥師匠と打ち解けたというか?認める転機になったのが、二人で青森に遠征した時で、
その際の宿でいきなり言われたそうです。「俺は、お前を仲間・家族と認める」と。
白鳥師匠曰く、何が師匠の口にそれを言わせたか?直接思い当たる事象は無いが、丈二(小田原丈)、天どんと一門が増えて、
総領のらん丈さんと番手の白鳥さんを見ての圓丈師匠なりの判断だったのかもしれないと。


寄席に出られない中、白鳥師匠は、まずとにかく作る事に専念します。作っては卸しダメだったら捨てて新しい根多を作る。
そんな毎回が根多卸しに近い状態で、圓丈師が主宰する「実験落語」「応用落語」を主戦場に、根多を掛けて行くのですが、
この時代の白鳥師匠、作品自身のコンセプトやストラクチャーは今と殆ど変らない才能を発揮していました。 が、
如何せん、技術があまりに未熟。私が聴いたこの頃の白鳥師匠の落語は、人物の演じ分けと言うより、誰が喋っているの?
科白の持ち主が分からないような落語で、それに輪を掛けてストーリーが突拍子もないので、聞いていて全く理解できませんでした。
まぁ、上下が無茶苦茶だから、喋り方が同じでは、誰なんだか分かりませんよね。ただ逆に、白鳥師匠は上下が無茶苦茶だから尚更、区別できる喋りを磨く事になります。
つまり、面白いとかつまらないではなく、伝わらないのです。誰なの?何を言っているの?って感じでしたね。


徐々に、白鳥師匠が変わり始めたのは、二つ目も5年を過ぎた頃です。後輩の喬太郎、彦いちの二人が圓丈師主宰の会に参加します。まだ前座だったと思います。
白鳥師が前座のお手伝い時代から昇太師匠は参加していましたが、キャリアもかなり上なので当時はライバルではありませんでした。
ところが、自分より5年くらい下の二人に、白鳥師匠、初めてライバル心が芽生えます。ここから白鳥師匠の技術的進化が始まります。
これまでは、作ってダメならまた新たに作るサイクルでしたが、作った中で見込みがある作品を、繰り返し掛けるようになるのです。
しかも、録音して自身の高座を聞いて反省し、対策を練って、再度高座に掛けて確認する。このサイクルを廻す事で、白鳥落語は、
物語が聴き手に分かり易くなり、受けない部分は大胆にカットされて短く濃縮され、そして、登場人物により強い個性が生れました。

白鳥師匠は、初期は台本を作り演じる派だったそうです。ところが、書いていくうちに詳細に描けば描く程それ通りに演じてしまい、
編集・修正の作業を加える度に、それを書いて残す必要があるのか?という疑問にブチ当たったようです。
そんな書いて編集する時間があるなら、口述する稽古を増やして、掛けた高座の録音を残しておけば台本は不要だ!となったようです。
このようにして、科白廻しが格段によくなり、キャラクターの人物造形も立体的で個性が生きるようになりました。
この頃から声に出しながら歩いて稽古するスタイルになり、それは今でも続いております。山手通りを歩いて稽古しているようです。たまに、奇声を発して職務質問されるようですが…

更に、最近はキテレツな仕草ばかりでなく、古典落語の基本的な仕草にも磨きを掛けている白鳥師匠です。
おいおい、今頃かよ!と、突っ込みたくなるような、煙管でキザミ煙草を吸うなんて仕草を最近マスターした白鳥師匠です。

一方、白鳥落語は、意外と緻密に仕込みが前半に行われて、この仕込みが後半に利いて来る展開が多いのです。
これは圓朝から脈々と受け継がれる三遊派の創作手法であり、大どんでん返しだったり落ちに繋がる布石だったりと、
繊細な仕込みをする白鳥師匠でもあります。また、白鳥作品には、普通の新作落語の域を超えて連続モノがあります。
御存知、清水次郎長傳にインスパイアされて作った『流れの豚次傳』と、美内すずえ原作「ガラスの仮面」のオマージュ『落語の仮面』
どちらも全十話からなる超大作で、白鳥作品の素晴らしい点は、全十話にダレ場がなく、どの噺も抜き読みしても成立する事です。
そして特筆すべきは、数多くの現役落語家・講釈師・浪曲師たちが、これら連続モノの白鳥作品を演じているという事です。
このような快挙は、おそらく三遊亭圓朝以来のことではないでしょうか?


つづく

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