Marsのブログ

小さな会を精力的に聴く努力をしてまいります!!

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三遊亭圓朝の三題噺が元だという噺、『鰍沢』について、今回は考えてみる。
三題は、「卵酒、鉄砲、毒消しの護符」あるいは「身延詣り、熊の膏薬、卵酒」だって説もある。
また、河竹黙阿弥が書いた台本というのが現存していたりして、黙阿弥が原作者なのでは?という意見もあったりします。
それはそうと、現在の『鰍沢』は、名人四代目橘家圓喬の型が、日暮里の志ん生、柏木の圓生、稲荷町の正蔵を経て伝わっている。

『鰍沢』を語る上で、この四代目橘家圓喬を避けては通れない。黒門町の文楽は「あんな風にはできない!」と思って稽古もしなかった『鰍沢』だ。
真夏に寄席で掛けて、客が涼むどころか凍えるようだったと言う。志ん生は、圓喬が自らの工夫で、今の『鰍沢』に仕上げたと言い、
圓生は、あんな恐い目を使うお熊は誰にも真似できない!それでも、少しは近付きたいと思って精進しています“テヘ”と、コメントしたらしい。

少し不思議なのが、黙阿弥が台本にまでしているのに、『鰍沢』が芝居でやられたというのを聞かない。二幕で済むのに不思議な気がする。
しかも、旅人・新吉とお熊の雪の中のチェイスは、芝居にした方が何倍も、手に汗握る展開になるはずなのに、芝居になったと聞かない。
勘三郎丈が生きていれば、絶対にやっていただろうと思う。是非、現勘九郎と七之助の兄弟で是非やって欲しい。勘九郎は旅人と亭主の二役で。
さて、私は直近十年、どんな『鰍沢』を、生で聴いて来たか?振り返ってみました。

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2009年
・立川志らく
2010年
・立川談春×2
・立川志らく
2011年
・立川談笑
2012年
・柳家三三
・鈴々舎馬桜
2013年
・柳家小満ん 
2014年
・柳家三三
・鈴々舎馬桜
・蜃気楼龍玉
2015年
・入船亭扇辰
・三遊亭天どん
・蜃気楼龍玉
2016年
・林家正雀
2017年
・五街道雲助
2018年
・笑福亭たま
2019年
・立川志らく

イメージ 2



















実に、12人の咄家で『鰍沢』を聴いていて、偶然だが毎年聴いている。のべ18回、これは多いのかな?少なくはない気がします。
まず、一番沢山聴いていて、直近も聴いたばかりなのが、志らくさん。比較的コンパクトに纏り、劇画チックな演出で、独自のサゲ。
前回見た時に、お熊の旦那:膏薬売りの伝三郎が誤って毒入り卵酒を飲んで死ぬ場面、伝三郎が囲炉裏の火につっぷして死ぬのは迫力がありました。
ただ、お人よしな新吉が、隣の部屋で寝てから小芝居が増えてくるのは、私はどーもいただけない演出でした。

談春師匠の『鰍沢』。意外と駄目です。ニンに無くはないと思うのですが、上滑りする感じになります。志らくさんの半分も良さが出ないのです。
新吉、お熊、伝三郎のキャラクターが良いバランスで構築できないまま、成城とにぎわい座で4回やったけど、ものにならずお蔵入りですね。
何かキッカケを掴んだら、いい『鰍沢』になると思うのですが、役者稼業がお忙しい感じなので、蔵出しはもっと先になりそうです。

さて、談春・志らくのお二人は、立川談志の弟子。談志師匠の『鰍沢』はというと、不思議な『鰍沢』でした。新吉の懐の大金にお熊が気付き、
そこでお熊が色気を使って毒入り卵酒を新吉に飲ませに掛かる。囲炉裏の火をじっと見ていると吸い込まれるような気分になる。
そんな描写を俺はできなくはないけど、俯瞰のもう一人の俺が居て、それがコっ恥ずかしいんだ。羞恥心が邪魔して普通にできねぇ、だからねぇ〜と言って、
心をト書きにするような展開で先に進めてしまうのです。そのくせ、新吉とお熊の雪の中のチェイスは流暢に地で語り、談志らしさは見せる。

三人目の立川は談笑師匠。この人のはブログにも書いているように、完全に改作でして志らくさんのようにサゲだけをいじるのではなく、
人間関係も独自の設定。元花魁のお熊はそのまんまだが、旅人の新吉は、薬の行商人でお熊の太い馴染み、マブだったと言ってもいい存在。
そして、亭主は根っからのマタギで、地元鰍沢の在の出身なのだ。また、お熊が新吉を殺そうとするのではなく、新吉がマタギの亭主を殺そうとします。
根多バレするので、これ以上は書きませんが、今も改作でやっているのだろうか? 私はあまり好きになれる噺ではありませんでした。
大震災の2011年にできる『鰍沢』ではありました。

2009年から2011年は立川流の『鰍沢』でしたが、2012年に久しぶりに三三師匠で『鰍沢』。しかも、これは特別な会で、北村薫先品を、
三三師匠が一人芝居風の朗読で聞かせる会で、北村作品の「円紫さんシリーズ」の中で春桜亭円紫が演じた噺を高座に掛けるという趣向で、
三三さんが『鰍沢』をやりました。この時の『鰍沢』は、硬い感じで無難な『鰍沢』でした。
同じ年に、馬桜師匠の『鰍沢』も聴いた。落語協会に戻っていますが、元は談志師匠の弟子で、“談生”を名乗った方です。
ただ、明らかに先の立川流発足後の三人とは異なる芸の『鰍沢』でした。また、この師匠の噺は結構独特で、師匠の頑固さが噺に、
本当によく反映されていて、よく云えば奇を衒わない。悪く云うと面白くない、自分勝手な自己満足度の高い噺になります。
馬桜師匠と波長があう人が聴くといいんですけどね。喜怒哀楽が本当に表に出ない演出です。

やっと、2013年に音源でしか聴いた事が無かった小満ん師匠の『鰍沢』に、目白の赤鳥庵で出逢いました。
際立って凄いってのは無いんですが、実に、耽美なのですお熊が。そしてだからこそ、哀れな女にみえる。控え目の芸が小満ん師匠らしい。
翌年、二度目の三三師匠の『鰍沢』。お熊に三三さんらしい色気が加わりました。後述する雲助−龍玉のような毒婦の臭いは薄いのですが、
落ちぶれた女の色気が、小満ん師匠より直球で出ています。耽美な小満ん師匠に対して、もっと生身の女を感じるお熊です。

一方、2014・2015年と聞いた龍玉さんのお熊は、師匠雲助譲りで毒婦の臭いがぷんぷんします。新吉の懐の銭を見て豹変するお熊。
この豹変の感じが実に毒婦です。新吉の話に乗るふりをして、毒入り卵酒を仕込むまでの、用意周到な心の動きがはっきりと描かれます。
そして、誤って毒入り卵酒を飲んだ伝三郎を見切りと立ち直り、更に、その怒りを新吉へと向ける毒婦魂が直球で表現されます。

この龍玉師匠とは対照的だったのが、天どん師匠の『鰍沢』。芝居っ気とかドラマチックな演出とか一切なく、坦々と語られる『鰍沢』。
ただ、その世界に天どん師匠が、引き込もう!引き込もう!とされていて、演者と客の一体感を目指している空気は十分感じる高座なんです。
だから、馬桜師匠の高座とは、結果同じようになる場面も多々あるかもしれませんが、目指しているものは理解できる天どん師匠です。

そして2015年もう一人、初めて『鰍沢』を聴いたのが入船亭扇橋の弟子の扇辰師匠でした。生前・扇橋師匠の『鰍沢』は聞いていて、
扇辰師匠のお熊も、師匠のお熊の延長線にある存在で演じられます。ただ、扇辰さんのお熊の方が色気が凄い!確かに女郎上がりなので、
色気はあるんだろうけど、ちょっと多めです色気。もう少し生活感があってもいいと思いました。

2016年は、稲荷町の『鰍沢』を踏襲し、稲荷町が使った芝居噺用の背景を使った正雀師匠の『鰍沢』を聞きました。
最後の三分くらいが芝居口調で、拍子木と三味線、笛、太鼓が入り、賑やかに新吉を追いかけるお熊を描きます。
ただ、誤って毒入り卵酒を伝三郎が飲んで、苦しみ始めているのに、途中で普通に喋ったりするんですよね。
稲荷町に口調はそっくりなんだが、かなり早口なんですよね。稲荷町くらいゆっくり喋って欲しいです。

2017年の雲助師匠は、芝居気と先代馬生の『鰍沢』の雰囲気、空気をよく再現していると思います。
私は音源でしか馬生師匠の『鰍沢』は知りませんが、こんな雰囲気に会場を包んだだろう感じが雲助師匠の語りに在ります。
この12人の中だと、雲助師匠が僅かの差ですが、一番です。番手は小満ん師匠で、次に龍玉さんと志らくさんがいい勝負かな?

最後になりますが、上方落語に直して、笑福亭たまさんが、三三師匠譲りの『鰍沢』を演じます。
物凄く簡潔に演じますが、スペクタルに見せる工夫と、『鰍沢』の中にもちゃんと笑いを仕込むのは偉い!流石!と思います。
20分弱の短い一席にしているのも好感が持てるし、これも是非、皆さん!機会があれば聴いて下さい。


さて、『鰍沢』。物語の舞台が富士川の急流に近い、雪深い山中。ここで江戸から逃げて来た夫婦が、猟師をしながら薬売りで細々と生活している。
そこに、獲物が舞い込む。江戸から身延山へお参りに来た旅人。その旅人・新吉は熱心な法華の信者で実にお人好し。
この人間模様とスペクタルな大自然の様子を旨く描いて、客に感動を与える。難しいのはほんのちょっとしか登場しない元生薬屋の若旦那の伝三郎。
お熊が拵えた毒入り卵酒、これを誤って飲んで死ぬと言う切ない最期。この不条理と因果応報を両天秤に描き、短時間でお熊が殺人鬼へと変身する。
結構、目まぐるしい展開に、客を一気に巻き込んで、最後は富士川を筏で下るまでのチェイスの描写ですよね。講釈師のようにそれを語れるか?
松之丞さんとかやると絶対に旨そうだと思います。あのグイグイな感じを、ラストシーンは咄家も盗んでみては?と思いますね。
正雀師匠の芝居噺のように、最後の五分だけ、釈台使ってもいいから、立て板に水の修羅場読みで、富士川を筏で下る感じが欲しいと思ったりします。

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