Marsのブログ

小さな会を精力的に聴く努力をしてまいります!!

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今週は、1週間ホールの会も寄席も行かずに終えた。この週末は3つ行く予定ですが…
そんな事もあって、ゆっくり冬の噺を考える時間を持ちました。久しぶりにブログに沢山“書いた!!”と自分でも思った。
寄席や会の様子や感想を書くのとは違って、日ごろの“よしなしごと”考えるというのも個人的には有意義で楽しいものである。
さて、その最後にいつか書こうと思っていて、なかなか書く機会が無かった、「演者の芸と年齢」について書きたいと思います。

10年くらい前ですかね。談春師が、マクラで喋ったか?インタビューの記事だったか?は、忘れましたが、
「俺の芸は、別に若い頃と、今とでそんなに違わない。ただ、俺の年齢が、落語の登場人物の歳に近付いただけだ。」
と、40歳凸凹になり、突然注目されて、評論家たちが談春師自身を持て囃すようになった理由を聞かれ、こんな事を云ったのを覚えています。
その噺を漏れ聴いてだったか?文蔵師匠だったと思うけど、「確かに、二つ目ん時と変わらなねぇ」と言う意見も耳にしました。

この、突然芸人が化ける!ってヤツ、在りますよねぇ。何が変わったって訳じゃないのに、以前より「良い」と感じる節目。
必ず、どんな芸人にも有るんじゃなく、そうですね。50〜100人に一人くらい、この節目が見える芸人が居ります。
そんな私の目線で節目を感じた咄家を、とりあえず、具体的に上げてみたいと思います。

まず一人目。三遊亭歌武蔵師匠。年齢で言うとちょうど30歳くらいですかね、彼が真打になって間もない頃に、凄く良く成ったと感じるようになりました。
もともと、相撲上がりなので、お相撲さん特有の声の持ち主でした。それが落語に、若い頃はマイナスだったんです。
また、押し出しの良い喋りは、若い頃からだったのですが、真打を迎える辺りから、押し一辺倒ではなくなりました。
抑えたり引いたりする話術を覚えて、より押しが際立ち、個性あるいい芸になって行ったと思います。
そうなると、変なもんで、以前は聞きとりにくいと思った声が、味わいのある声に変わったんですよね。

次に、三遊亭遊雀師匠。以前は、柳家三太楼でした。権太楼一門の総領弟子で非常にムラっ気のある芸でした。
良い時に当ると、びっくりするぐらいに感動する噺をするのに、やる気がまったくない高座に当ると最低でした。
なんだろう。芸人として燻ぶっていました。同期や少し先輩、後輩に対する妬みや嫉みが凄かったように思います。
「人間万事塞翁が馬」 何が良い方向に転ぶか人生分からない典型だと思います。あの事件後、二年の浪人があり、
小遊三師匠に拾われて、芸協に入ったとたん、水を得た魚のように芸に、ムラっ気が無くなりました。落語を高座で語る喜びが、客席にも十分伝わりました。
当時の芸協という環境も良かったと思います。若手の二つ目さん達が、落協へライバル心を燃やして稽古に励み出し、高座では引けは取らない!そんな機運が高まった。
あの成金もその延長線上で誕生しました。その若い二つ目世代に、遊雀となった三太楼の芸が大いに受入られて、
「稽古してください!」「稽古してください!」と、若手の遊雀詣が始まります。
そうなると、頼られる兄貴分として風格が人を育てるかたちで、遊雀師匠の落語は、ワンステージ上の芸へと昇華します。
今、芸協の若手がやる爆笑の『熊の皮』は、遊雀さんの型です。成金世代より若い芸協の連中は、たいがいこの噺を持っていると思います。

最後に、外せないのが柳家三三師匠です。私は小田原に住んでいたから、前座の最後くらいから、小多けだった三三さんを聴いていたが、声がやたらデカく元気よく、ややトボけたフラがある若者だった。

不器用なのと、兎に角面白くない喋りで、ハズレると救いがない落語を何度か聴かされた。唯一褒めるなら声がいいぐらいか?

そんな三三さんが、変わり始めたのは、二つのポイントが有った。ひとつは小三治に弟子入りして、年が近い破門されなかった兄弟子が禽太夫と一琴だったんで、
意識はしたろうが、進む方向性でぶつかる事もなく、上手い距離感で接して行けたのが良かったし、何より小三治師にいつ破門!って言われるか?この緊張感で育ったのもプラスだった。
また環境で言うと、落研とかで汚れた癖もなく、小三治の純粋培養のような弟子になれたのも、後から考えると芸の幅ができたと言える。
一方、もう一つは柳亭市馬の存在だ。ひと回り以上歳下の三三にとって、市馬師匠は格好の手本であり、目標となる。
本当に基本的な所作や、市馬博士と言われるぐらいな蘊蓄を、三三さんもよく吸収していると思います。
そして、真打に昇進した頃から、市馬・談春・三三の落語ユニット「三人集」を立ち上げて、2006年から2009年まで、互いに切磋琢磨した事で、今の三三が生まれたんだと思います。
この「三人集」、当初は五人、七人のユニットをという話もありながら、結局三人になったのですが、今の成金とかと考え方は同じで、その先駆けになりました。
尚、現在、M'sの加藤さんが席亭を勤めながら新版三人集という、一蔵・市弥・小辰の三人が名前を継いで活動中です。

ここまでは「化けた」咄家ですが、逆にあれだけ凄かったのに、今は…って咄家も居ます。
詳しくは、あえて書きませんが、抜擢で真打になり、人気が爆発すると急に忙しくなります。
芸人も、アスリートと同じで努力して練習・稽古を積んでこそ、その素晴らしい芸は保たれている訳で、売れっ子になると、高座数は飛躍的に増えます。
一之輔師匠の例で言うと、真打が決まった披露目の前年は、400席凸凹だったのが、一気に披露目の年は750席ぐらいに増えています。
おそらくそこから真打になって7年?だか8年が経過していると思いますが、800席凸凹を毎年こなしているハズです。
だから、芸が荒れて来るのも分かりますよね。雑な時もあります。それでも、ネタ卸し・蔵出しの会は定期的にやっているし、挑戦し続ける姿勢は立派です。

そんな売れっ子になると、たいがいは、やった事のある噺が200ぐらいで、持ちネタと呼べる噺が120から150ですよ。
一週間、サラう時間があれば80%以上のクオリティで高座に掛けられるが、売れっ子は、なかなか時間が取れない。
地方への移動の交通機関の中やテレビ・ラジオの待ち時間にもサラうけど、稽古の絶対量が足らないと50〜60%のデキでも高座に掛ける。
結果、その同じネタを場所が変われば、また掛ける事になり、本場の高座が稽古になり、追っかけファンは、カミカミだった啖呵が切れッ切れになる過程を見せられる。
まあ、熱狂的なファンだから、一年くらいは楽しいかもしれませんが、年間百席聴いて三十種類くらいの噺だと、三年もしたらファンではなくなり、悪口を言う側に回ります。
こうして、人気者は、まずファンに飽きられて、高座から消え、割のいい仕事にまわり、昔は良かったと言われただのタレントになります。
あの六代目圓生ですら、晩年は移動中のタクシーで常に噺をサラっていたそうです。また、柏木の師匠は300を超える持ちネタがあるから、ラジオやテレビで掛けた噺は地方でも、最低半年、可能なら一年は掛けないように手帳にメモして管理していたと、直弟子さんから聞きました。

一方、中には頭のいい人気者も居ます。自分は芸に専念して、マネージメントは他人を雇う。チームで芸人を核にして動く事で、
分業分担し芸人に稽古や創作の時間を与えてクオリティを保つというやり方。そう!志の輔、談春、志らく、そして小三治や市馬も似た手法です。
昔は、太いオダンが贔屓に付けば、経済的憂いがないので、好きに芸道に邁進できましたが、今は効率よく働き、分業で雑用はアウトソーシングするのが、売れっ子芸人の生きる道のようです。

これは、確かに良い方法ではありますが、志の輔師匠のPARCO公演のように、デカい函で、収益を上げてスタッフを養う仕事を好き、嫌いに関係なく、やり続ける必要に迫られます。
スタッフの家族ぐるみを引き受ける事になるから、この興行のノルマから、一度ハマると抜け出せない、人気者の宿命のような負のスパイラルなのです。

前にも書きましたが、談春師匠がしみじみ言っていました。松之丞は、今何やっても楽しいだろうなぁ〜と。
松之丞さんは、これから五年くらいが試金石ですよね。講釈師を通して夢の講釈の常置小屋が作れるのか?それとも、単なるタレントになってしまうのか?
三代神田山陽のようには、なって欲しくありません。常置小屋を作り「本牧亭」の名前を復活させて、奥さんの理沙さんを女将にし、その功績で七代神田伯龍を襲名して欲しい。

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