今年初めてのにぎわい座でした。『鰍沢』が根多出しされていて、志らく師匠が最近どんな風にやっているのか?
興味が湧いたのと、恐らく1回目の「志らく百席」2009年の3月だったと記憶していますが、『鰍沢』の最中に、
車椅子スペースに停められた乳母車で、赤ん坊が泣きだしたんです。直ぐに母親が、ロビーに赤ん坊を抱いて出たのですが、
この赤ん坊の泣き声が流れたら、志らく師匠は、噺を止めずに、「♪寝ん寝ん、ころりよ、おころりよ〜」と、
子守唄を歌い出して、その場を上手く収めたんですよね。その印象が物凄く在って、今回、2010年志らくのピン、
内幸町ホールで聴いて以来の『鰍沢』でした。残念ながら、このブログを書く前の会なので雑感などは残っていません。
そんな、『鰍沢』を聞きたくて参加した「新志らく 百席」このような内容でした。
1.笊や/志らぴー
いいですね、ナイツのギャグ「のりピー」に通じる芸名です。古今亭の残座噺ですが、立川流でも『道灌』の次に教えているのかな?
可もなく不可もない感じの前座さんですね。近年聞いた志らく一門の前座だと、やっぱりかしめくんが一番だと思います。
2.時そば/志らく
開演前の諸注意をする布目さん、布目さんが審査員を務めた、昨年末の芸術祭撰賞で、優秀賞を受賞した事を誇らしげに報告する志らく師匠。
そこからは、相変わらず談志師匠の思い出を語ります。何度も聞いている北海道のラーメンの話などをして、本編の『時そば』。
こちらも、相変わらず、手の動きが物凄くオーバーで、そんなに手繰ったら、蕎麦が飛んで行くよと言いたくなるぐらい早くて大きい手繰り。
また、くすぐりも20年近く一緒かもしれません。昇太師匠と志らくさんが初めて逢った昇八時代。蕎麦を啜る音が出なかった事を弄ります。
志らく師匠自身、Twitterで「殆ど変わっていない」と仰っておりました。
3.二番煎じ/志らく
この根多を、はめ事を沢山いれてドッカン!ドッカン!受けていたら、それを見た談志師匠から「この噺は爺さんが枯れた感じでやる噺なんだ!」
「地味にやって、受けるな!」と、云われたそうです。なかなか、この地味にやって受けるな!と云うのが若い頃は実践できなかったという志らく師匠。
それでも、この日は、いろいろと、細かい工夫が見られて、面白かったのですが、食べる仕草がどーも美味しそうには見えません。
だから、寒い夜回りから番小屋に戻って来て、温まったぞ!って感じが伝わらない。そう言えば、談志師匠は実際に食べる際、食べ方が美しく無かった。
そんな話をしていましたね。でも、蕎麦を手繰るのとかは、そんなに変じゃなかったけど、確かに物を食べている印象が薄い咄家です。
『らくだ』の屑やが物を食う場面とかは、確かに綺麗じゃなかったですね、談志師匠。
一方、伊勢屋と黒川先生の役回りを逆にしていたんですよ。普通は、伊勢屋さんが葱喰いと言って肉を挟む役何だけど、
これを黒川先生にして、年齢も伊勢屋さんが一番年寄りで演じていました。この方がねぇ。言い訳がすっきりするんですよね。
嘘がバレた後の言い訳が、如何にも武士が云いそうな感じなのがいいですね。より、しっくり来る感じでした。
全体的に、無駄に長くならないようにして、25分くらいで終わりました。
そう言えば、客席にクシャミが止まらないお客さんが居ましたが、それも上手に夜回りで風邪引いたように被せて笑いに変えておりました。
4.鰍沢/志らく
志らく師匠本人が言っておりますが、サスペンスホラーを意識した演出。後半はお熊が完全に化物のようになって身延詣りの貸本屋に襲い掛かります。
上手いのは、部屋の囲炉裏の火の温かさと、外の雪景色の寒さを上手く対比させて、客席に真冬の身延を伝えます。照明も暗くなっていて寒さが一層伝わりました。
あと、お熊の亭主が、誤って飲んだ毒入り卵酒で苦しみ、そして死ぬ場面。ここも一工夫在って、亭主が絶命する際に囲炉裏に突っぷして死ぬんですよ。
それに、「お前さん!!」と、縋るお熊。この演出はいいですねぇ。毎度、この場面を色んな師匠で観るけど、この亭主の死でお熊はスイッチが入り、
修羅と化して鉄砲を持って、髪を振り乱して、旅人を追い掛け廻します。この演出は、それに本当にぴったりだと思います。
以前、私はあまりに苦しむ亭主を見て、お熊は自分の手で殺してやろう!そんな気持ちになる演出はどうか?とも思ったのですが、
それをやると、そんな狂気を秘めた女が差し出す卵酒を、旅人はのほほんと飲むものか?という矛盾にぶち当たります。
確かに、自分で殺しておいて、変身スイッチが入るぐらいに変な奴。それはそれで不気味ですけどね。
最後に、以前は旅人が、材木に掴まり川を下って、お熊の放った鉄砲の弾もハズレて助かった!と、思った瞬間、
川の中からお熊が現れて、旅人に襲いかかる場面でサゲにしていましたが、更にもうひと工夫加わっておりました。
そこまで根多バレさせるのは野暮なので、是非、志らく師匠の『鰍沢』皆さんも観て下さい。
30分くらいの寄席サイズで、実に小気味よくサスペンスホラーが展開されますから。
次回、新・志らく百席は三月十二日(火)です。私は次回は行きません。