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「君とお前の世界」
それぞれが違う方向を見ながら
なぜ思い通りに人が動かないのか
不思議に思っているらしい
こんなに下っ端な私たちでさえ
あいつらの間違いに気付いているというのに
教えてあげようか
もしおまえが間違いに気付けないのなら
助けてあげようか
2、3枚爪を剥いだ後にでも
塗りたくったファンデーションの隙間に
囁いてあげるよ
君は
この世界の住人じゃない
タクシーを呼んでおいたから
それに乗ってどこかへ行ってしまえよ
雨音がうるさいうちにね
何も知らないわけじゃあないんだよ
見ろよこの記録
背中までびっしりだ
雨がぶら下がって黒く滲んでいる
まだ気付いていないね
濁った水が誰かの足を濡らす音
誰かの一張羅に跳ねる音
はぐれた子供の声
クラクション
君は車なんだから
その傘を貸してくれないか
これから風も強くなる
徐々に重くなりながら鳩が飛ぶ
次の場所は安全?
ラストフライト
大事にしてくれよ
そこそこ高い傘なんだ
立ち止まる
でもいいや
あげますよ
僕はもうかえらないから
国なり星なり探しに行くよ
お前は背中がかゆくないのかい
そんなもの捨ててしまえばいいのに
捨てられない
これは私の人生そのものなんだ
お前は本当にこの世界の住人なのか
わからないよ
ただ君だけ背中が綺麗じゃないか
わかりやすくて羨ましい
開くドア
ひらけごま
探す気があるなら乗りなよ
そんな人生捨てちまえよ
ついてこいよ
なせダメなんだ
お前が必要だ
頼むから
僕たちは違う方向を見ながら
話していたんだ
お互いが間違っていて
指摘し合うことはできるのに
自分の過ちに気付かない
1人はタクシーに乗り
1人は傘をさして歩き出す
途中で背中に殺されながら
それでも間違いに気付かない
僕は君の車に乗れなかったんだ
雨音
別のタクシーが飛ばす水滴が
傷に染みて
思わず
空に叫んだ
背中の文字が滲んで
血の色になって流れ落ちる
君の世界に僕も行けるかな
僕は倒れた
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