La vita e bella

前のことを、たらり・たらりと書いています。ニューイヤー・コンサートのことすら書いていなかったこの怠慢さ…。

全体表示

[ リスト ]

イメージ 1

今回のウィーン旅行の目当て「ニュルンベルクのマイスタージンガー」。

オットー・シェンクによる1974年新演出上演の舞台は第一幕の教会の場面から木の
質感がある壮麗な装置。かなり奥行きもあり、本物の教会さながらだ。礼拝の後に組み
立てられるマイスタージンガーの寄り合いの席もとても厳かで見応えのあるものだった。
第二幕も温かみある木の家が見事に組み立てられていた。そして第三幕では野原に設営
された大きなテントの中で物語が進行してゆく。その野原の緑が見事に鮮やかに作られ
ている。やはりこういう演出で楽しみたいものだ。

キャスト陣はかなりの充実ぶり。今回の公演の収穫はエーファを歌った若手ドイツ人
ソプラノ、アニア・ハルテロスとの出会い。この歌手は素晴らしい。その細い体型から
は想像もつかないほどの豊かな声量、空気が凍りつくかのようにシャープでピンと張った
艶やかな美声。まるでレーザー光線が空に向かって発されているかのよう。ダイナミック
な歌唱と一方でここぞというところではきめ細やかで繊細な歌唱が光る。第3幕、感極
まって思わずザックスに抱きついてしまう場面での感情のほとばしりは渾身の演技で、
エーファの思いが痛々しいくらいに伝わってきた。

一番のお目当てであるヴォルフガング・ブレンデルのハンス・ザックス!第一幕、
マイスタージンガーの寄り合いが始まるのを今か今かと待ちわびていた。マイスター
ジンガーたちがほぼ揃ったところで遅刻ギリギリ的にザックスがやって来る。

渋い!渋い!カッコイイ…。

一般人から一段上にいて、上から物を見るマイスタージンガーの中にあって思慮深くも
あくまで「普通のひと」的な役作りに好感が持てる。第2幕「にわとこのモノローグ」
第3幕の「迷いだ!迷いだ!」での賢人らしい演技を見せる一方、ベックメッサーを
ちくちくいじめるところは茶目っ気たっぷり(自分の軒先にベックメッサーがやって来る
のに気付かないふりをして、声をかけてくるベックメッサーにいかにも大袈裟に椅子から
飛び上がって驚くところではあちこちから笑いが漏れていた)の演技には親近感があるし、
第3幕でのエーファとのやりとりは感情むき出しでザックスの苦悩を見せてくれる。終幕
でマイスタージンガーになることを拒むヴァルターを諭す場面はヴァルターを諭すだけ
でなく民衆皆に語りかけ、温かく包み込むようだった。威厳に満ちた真面目なハンス・
ザックスは他にもたくさんいるかもしれないが、それだけではない「普通の人」の様々な
面をザックスの中に見せてくれる。そんなハンス・ザックスを深く響き伸びのある声で
聴かせてくれた。

ヴァルター役はこれまた楽しみにしていたペーター・ザイフェルトにキャンセルされて
しまい、代役として1回はアメリカのテノール、ジェフリー・ダウドが、もう1回は
ここ数年注目を浴びているヨハン・ボータ。

代役とは言えこれはないだろう、ダウド!ひどい!声は出ないし歌唱は一本調子、演技
は棒立ち。ヴァルターはエーファと結ばれたいんだろ?マイスタージンガーになりたいん
だろ?ヴァルターのどんな小さな切れ端も垣間見ることができずがっかりだった。一方
のボータ、はなかなか良い。声量があって声質がしっかりしている。時に荒々しく情熱に
溢れるヴァルターを好演したにはしたのだが、なにぶんヴィジュアルがひどい。ぶくぶく
とビア樽のように太りどっすんどっすんと舞台を闊歩。これはちょっと…。

ダーヴィッドを歌ったヘルヴィヒ・ペコラーロ、ベックメッサーを歌ったハンス-ヨアヒム・
ケテルセン、ポーグナーを歌ったクルト・リードル、夜警を歌ったヴァルター・フィンクなど
その他の役も充実した布陣で、6時間という長さを感じさせないとても楽しめる上演となった。
オーケストラ・ピットには元新日本フィル楽員の杉山康人(チューバ)の姿があった。


<ウィーン国立歌劇場 ヴァーグナー 「ニュルンベルクのマイスタージンガー」>

ハンス・ザックス:ヴォルフガング・ブレンデル
ファイト・ポーグナー:クルト・リードル
クンツ・フォーゲルザンク:ジョン・ディッキー
コンラート・ナハティガル:ボアス・ダニエル
ジクトゥス・ベックメッサー:ハンス-ヨアヒム・ケテルセン
フリッツ・コートナー:ヴォルフガング・バンクル
バルタザール・ツォルン:コスミン・イフリーム
ウルリヒ・アイスリンガー:ベネディクト・コーベル
アウグスティン・モーザー:ペーター・イェロジッツ
ヘルマン・オルテル:イン-スン・シム
ハンス・シュヴァルツ:ゴラン・シミック
ハンス・フォルツ:ヤヌス・モナルカ
ヴァルター・フォン・シュトルツィング:ジェフリー・ダウド(1月11日)
                  ヨハン・ボータ(1月15日)
ダーヴィット:ヘルヴィヒ・ペコラーロ
エーファ:アニア・ハルテロス
マグダレーネ:コルネリア・サリエ
夜警:ヴァルター・フィンク

合唱:ウィーン国立歌劇場合唱団
管弦楽:ウィーン国立歌劇場管弦楽団

指揮:ペーター・シュナイダー

演出:オットー・シェンク


2004年1月11、15日 ウィーン国立歌劇場

<写真>
カーテンコール。左からアニア・ハルテロス、ヘルヴィヒ・ペコラーロ、
コルネリア・サリエ、ヴォルフガング・ブレンデル、ハンス-ヨアヒム・ケテルセン、
クルト・リードル、ヴォルフガング・バンクル

「過去の公演 (海外編)」書庫の記事一覧

閉じる コメント(3)

顔アイコン

ヴィーンで「マイスタージンガー」を2度見ているわけか。は〜、すごいなぁ・・・。ホント、マルさんは楽しみ方が徹底してますね。どれだけブレンデルを好きかがよく分かりますよ。しかしもうひとりの主役ヴァルターがまずかったというのは残念でしたね。ハルテロスというソプラノ、聞いてみたいものです。

2006/3/17(金) 午後 1:12 zar*th*s*rafu*i

いやぁ、ブレンデルがザックスを、しかもウィーンで歌うとなればこれは逃せません。ちょうど休みも取れるタイミングだったので運も良かったです。ブレンデルは歌手としても人としても大好きなんです。/それにしてもヴァルターが悔やまれます。ザイフェルトが予定通り歌ってくれていたらもっと素晴らしい公演になったはずです。/ハルテロスは「名鑑」にも載せていますのでご覧下さい。http://blogs.yahoo.co.jp/martinabbado/8756053.html

2006/3/17(金) 午後 11:02 [ mar*in*bba*o ]

顔アイコン

リンクからやってきました。

あそこは良くMeistersingerといえども立ち見でがんばりました。Steinの時代だったですね。WPが信頼しまくっていていつもぶっつけ本番でやってました。同じくシェンクの舞台です。

僕の些細な記録によると
20.12.87と26.12.87がシュナイダーで2回、
シュタインは日付が書いてないのですが、1990年の3月に3回行っています。

その後Stuttgartでゲネプロを含むフェロの指揮で4回、クルカの指揮で一回見てます。これが凄くよかった。音楽的にはきちんと練習しているのでWienより上だったです。舞台は実験的なので成功したとはいえませんが。

今いるケルン・ボンでは金が無いのかまだやりませんね。しかしブレンデルがザックスを歌う時代になったのですね。

2008/3/16(日) 午後 6:31 [ kanno ]


.
mar*in*bba*o
mar*in*bba*o
男性 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

過去の記事一覧

Yahoo!からのお知らせ

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

数量限定!イオンおまとめ企画
「無料お試しクーポン」か
「値引きクーポン」が必ず当たる!
CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事