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ウィーンの名歌手ハインツ・ツェドニクの演出はクリムトの絵画がそのまま舞台に
なったような明るく煌びやかな舞台で、流石はツェドニク!と思わされるものだった。
舞踏会の客(合唱)の衣装はみなクリムトの絵画を再現したものだという。
指揮は元ウィーン・フィルのヴァイオリン奏者でオーストリア、チェコ、スロヴァキア
を中心に活躍しているヨハネス・ヴィルトナー。もうちょっと「遊び」があって良かった
かもしれないが、テンポ良く快活な音楽を聴かせてくれた。オーケストラは巧く揃って
はいるが金管の音色がどうもアメリカの音になってしまいウィーン風の音にはほど遠い。
これが残念だった。
歌手陣は演目が演目だからかウィーンで活躍する歌手が見事に揃っていた。特筆すべき
はオルロフスキーを演じたエレナ・ツィトコーワ。決して歌の多い役ではないがそれ故に
か鋭く張り詰めて突き抜ける美声、そして豊かな声量はとても強いインパクトがあった。
涼しげな美形の容姿も、オルロフスキーの人生に飽きた様を演じるのに合っていたのでは
ないだろうか。来シーズン「ばらの騎士」オクタヴィアンにも出演するのが今から楽しみ
になった。
ヴォルフガング・ブレンデルはかつての当たり役ファルケからアイゼンシュタインを歌う
ようになって久しいが、歌に加えて踊る・跳ねる・走る・笑うと大騒ぎ。オルロフスキーに
ヴォッカを飲まされた時のむせ方は本当に巧かったし、おどけてみたり声をひっくり
返してみたり完全に喜劇俳優。極め付けは第3幕、ロザリンデとアルフレードを追い掛け
回す場面。床に散らばる書類に足を滑らせ吉本新喜劇ばりにズッコケて、そこでストーブ
に手を付いて悲鳴を上げるというハチャメチャぶり。ハンス・ザックスやヴォルフラムや
アムフォルタスを演じるのとは全くの別人で、おめでたいアイゼンシュタインを見事に
演じてくれた。
そのアイゼンシュタインと意気投合してしまう刑務所長フランクにはセルゲイ・レイフェル
クス。シリアスな役柄を多く歌っている中で珍しい役柄だが、どうしても真面目な印象が
抜けないせいかブレンデルの大騒ぎのせいかいまひとつ面白みに欠ける演技だった。刑務
所長というお堅い仕事と夜の弾けっぷりの対比をもっと見せてほしかった。ファルケを歌
ったポール・アルミン・エーデルマンもこの狂ったような一日を仕掛けた張本人のはずなのに
語り部に終始してしまい存在感が弱いのが残念だった。
夫人ロザリンデを歌ったナンシー・グスタフソンは明らかに不調で十分に歌いきれていない
ようでやや守りに入ってしまい、チャールダッシュもおとなしくなってしまった。
アデーレの中嶋彰子は流石ウィーン生活が長いだけあってドイツ語の台詞が見事。今では
アデーレを歌うには声がやや重くなってきたのかなとも思ったが、軽快な演技がそれを十分に
補い大物ぶりを見せてくれたように思う。
全体としては演出も良かったし歌手の水準もそれなり高く満足感のある公演だった。最近の
新国立劇場は週末の公演が少ないのだが、なんとか平日に都合をつけてもう一回聴きに行き
たい。
<新国立劇場 J.シュトラウス 喜歌劇「こうもり」>
ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン:ヴォルフガング・ブレンデル
ロザリンデ:ナンシー・グスタフソン
フランク:セルゲイ・レイフェルクス
オルロフスキー公爵:エレナ・ツィトコーワ
アルフレード:水口聡
ファルケ博士:ポール・アルミン・エーデルマン
アデーレ:中嶋彰子
ブリント博士:高橋淳
フロッシュ:ハンス・クレーマー
イーダ:中村恵理
合唱:新国立劇場合唱団
バレエ:新国立劇場バレエ団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:ヨハネス・ヴィルトナー
演出:ハインツ・ツェドニク
2006年6月17日 新国立劇場
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う〜ん、感想がおなじすぎる・・・。今回は自分で記事を書く手間がはぶけました(笑)
2006/6/18(日) 午後 7:55
諸々、同じでしたか(笑)。小さいところを挙げれば色々あるのでしょうが、僕はとても楽しめました。これだけの水準の上演が体験できるというのは嬉しいことです。
2006/6/18(日) 午後 9:30 [ mar*in*bba*o ]
久方ぶりに満足のいく演出でした。以下ネタばれっす。細かい台詞などはウィーン歌劇場来日公演のときの台詞と全く同じでしたが(特に3幕)。ココシュカやクリムトのあの耽美な世界観がそのまま舞台上に再現されていて美しかったですな!しかし、あのオルロフのクプレ・・・、素晴らしひ!!の一言。かくありたし・・・。
2006/6/18(日) 午後 10:49
そうでしたね、役者が一緒でしたからね(笑)。演出も美しく良かったですね。そしてオルロフスキー、素晴らしかったです。もう一回聴きに行きたいです。
2006/6/18(日) 午後 10:54 [ mar*in*bba*o ]
マルさまおかえりなさ〜い!演奏会三昧、まったくうらやましい・・・役者になりきれる歌手ってすんばらし〜ですね。>クリムトの絵を再現した衣装って、聞くだけでゴージャス。キラキラだったのかしら。スケスケだったのかしら。。
2006/6/19(月) 午前 10:21
ほとんどブレンデルの一人舞台みたいなもんだったんですか。ファンとしては、それでも充分納得、楽しめたってことろですかね! しかしブレンデルって真面目すぎる印象があったのですが、そんなことないんですね。それとも近年芸の幅が広がったのかな?
2006/6/19(月) 午後 5:06
rosaさん、お久しぶりです!/あれはぜひ観て頂きたかったですねぇ。ブレンデルともう一人、ツィトコーワも良い演技でした。なりきっているんですね、終演後に会った実物は全く別人でしたからね。/舞踏会の場面は金の破片が散りばめられてまさにクリムトでした。衣装はすけてなかったなぁ…(笑)。
2006/6/19(月) 午後 10:20 [ mar*in*bba*o ]
いえいえ、そんなエコヒイキは言いません(笑)。ツィトコーワの素晴らしさには舌を巻きました。変人ではなかったですけれど(笑)。/ブレンデルの印象をラビ様も同じように仰ってました。ザックスやヴォルフラムを演じる時とは別人です。でも素のブレンデルはとても明るく気さくな人ですよ。
2006/6/19(月) 午後 10:26 [ mar*in*bba*o ]