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ようやく、デビュー。METライブビューイング、初体験。演目は「ばらの騎士」。まず驚いた
のはカメラワークの凄さ。昔からDVDで出ているMETでの上演よりもさらにさらにグレード
アップしている。それはそれで舞台上の歌手たちのありとあらゆる表情をありとあらゆる方向
から捕えているのだが、映画のようになってしまい、どこかオペラ上演のライブ収録とという
感じが薄れてしまうような気も正直あった。
今年1月にMETで上演された「ばらの騎士」。元帥夫人を歌ったのはルネ・フレミング。艶やか
な中にも落ち着いた色気を感じさせる美しい声にはつくづくうっとりとさせられる。全体から
溢れる気品、素晴らしい元帥夫人。この歌手の感情移入の丁寧さはまた素晴らしく、見ている側
をすっかり物語の世界に引き寄せる。第一幕、オクタヴィアンをたしなめ去らせる場面では一筋
の涙が、頬を伝っていた。
オクタヴィアンはすらりと長身のスーザン・グラハム。若々しく端整な歌唱は演技とともに若く
も品格のあるオクタヴィアンを見せてくれた。ゾフィーを歌ったクリスティーネ・シェーファー
も、すこし気の強そうなゾフィーではあったが透き通るような美しい声。消え入るようなソット
ヴォーチェは見事な天上の響きだった。
男声はまず堂々とオックスを演じたクリスティン・ジークムントソン。しかしオックスにしては
幾分、粗野な面に欠ける印象も。バリトンの重鎮トーマス・アレン演じるファーニナルは背伸び
した新興貴族を上手く演じていた。
絢爛豪華なMETの「ばらの騎士」、映画館でゆっくりと3,000円で見れるのは、なかなかいい
企画だと思う。ただオペラの上映というだけでなく、今回はプラシド・ドミンゴだったが
ホスト役が幕の直前・直後に舞台裏で出演歌手にインタビューをしたり、休憩中は場面転換の
設営中の舞台裏を紹介したりという映像が楽しめるのも嬉しい特典。アメリカでは、映画館で
こうした形ではじめてオペラを見て実際に見に行ってみようという若いひとが出てきて、MET
の聴衆の平均年齢も少し下がったという。日本でここまではなかなか難しいが、新しい層を取り
込むマーケティングを、してもらいたいものだ。 <METライブビューイング R.シュトラウス「ばらの騎士」>
元帥夫人:ルネ・フレミング
オクタヴィアン:スーザン・グラハム
ゾフィー:クリスティーネ・シェーファー
オックス男爵:クリスティン・ジークムントソン
ファーニナル:トーマス・アレン
ほか
合唱:メトロポリタン歌劇場合唱団
管弦楽:メトロポリタン歌劇場管弦楽団
指揮:エド・デ・ワールト
演出:ナサニエル・メリル
2010年1月、メトロポリタン歌劇場にて収録
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