サックス大好き人間

今日も笑顔で・・・しかし不景気だなぁ。

北の峠・・野勢尚文

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         北の峠14    野勢尚文



 それは身分の違いかも知れないし、

 また中尉自身が、

 自分の前途を悲観されたのかも知れない。

 何れにせよ、

 君に簡単に殺される中尉ではない筈だ。

 覚悟をされていたと思われる。

 今の君は殺人罪だ。

 罪に服すか、

 紀子と共に他の人に成り代わって生きるしかないのだ。


  当然それらの道筋は我々がつけるが、

 君の家族は・・・と言っても奥さんだが・・・

 麗子は奥さんの所に残すようにする。

 だから今日の今、君は死ぬのだ。

 今此処にいる君は、もう以前の君ではないのだ、

 分かるな

  それから君が不思議がっていたこの家だが、

 この家の住人は反戦思想家で同士をかくまっていた。

 だから全員逮捕され、

 その後は我々が使っている。

 君達だけではなく、

 多くの同志が互いに気付かれないように使用していた、

 食料の補給場所としてもだ。

 前田中尉も紀子を監視する為と、

 亜弥の住家として使われていた」

 木村少尉の話が終わるのを待っていたのだろう、

 紀子が榊の枝を抱いて入って来た。

 「ほう、榊か・・・たくさんありましたね」

 木村が聞くと、

 「以前から見つけてましたの。・・もしもに時の用意にね。」
 
 「もしも・・、とは。」

 「私が・・死んだ時の、・・・ですわ。」

 木村は紀子の顔を見て頷いたが、

 その木村の襟元には大きなホクロが有った。


 その後木村は、前田と亜弥が居た屋根裏部屋に上がり、

 燃えない物を風呂敷に包んで降りて来ると、

 部屋に並べてある二人の遺体からも燃えない物を取り除き、

 同じ風呂敷に包むと、

 肩掛けカバンの中から書類を出して何かを書き込んでいたが、

 五助に藁と油を用意させた。


 また、屋根裏に有った亜弥の着物は紀子に、

 前田の服を五助に、それぞれ着替える事を命じた。

 そして二人が脱いだ衣類には前田と亜弥の血を付けた。

 その夜三人は榊に覆われた二人の遺体に手を合わせて黙祷した。

 木村は封筒を取り出すと紀子に渡し

 「命令する。君のこれからは封筒の中に書いてある。

 忠実に実行する事、これが最後の命令だ」

 と木村は敬礼した。紀子も最敬礼で答え、

 五助は深々と頭を下げた。

 五助は藁で痛いを覆い隠し、油をかけた。

 火は木村が着けた。

 徐々に燃え広がる火を見て

 「俺は此処で家の燃え尽きるのを見守る、君達は早く行け」

 木村の声に二人は外に出た。


 闇の中で五助は峠を見た。

 暗い星空に真っ黒な高い山々がそびえている。

 「あやめ、すまない・・・」 

 これを最後に長年、五助はこの峠を見る事はなかった。

 紀子に促され五助は暗い道を急ぎ足で篠山に向かった。

 途中から園部に向かう道へと入った。

 この分かれ道で振り返ると、家が燃えてるのだろう、

 夜空が赤く染められたいた。

 「いそぎましょう・・」

 と駆けるように歩きだし、

 二人は二度と立ち止まる事も、振り返る事もなかった。

 県境の峠を越え、園部に着いた頃に夜が明けた。

 駅へ行き、紀子は封筒を開けて何枚もの書類に目を樋していたが、

 「良く覚えてね。あなたが若宮繁樹で、私が若宮典子よ」

 と、五助は生年月日から

 本籍住所までを教えられた。

 園部から満員の満員の汽車に乗り、

 京都で乗り換え、米原で降りた。

 ここが若宮の住所だった。

 この米原の住所で数日を過ごしている間に玄関にが置いてあった。

 典子が封筒を開け中の書類に目を通すと、

 役場や警察に書類を提出した。

 これで総ての手続きは終わり、

 名実共に若宮夫婦になった。


 終戦を迎え、

 米原が汽車の分岐点である事を利用して闇米の仲買をした。

 繁樹は腕には自身があり、

 会計は典子が取り仕切った。

 戦後の動揺が納まる頃に米原にで旅館を買い取り、

 子供も二人生まれた。

 長男は真一、長女は和子と名づけたが、

 共に典子に似たのだろう、容姿も頭も良かった。

 その後真一は弁護士になり、

 和子は典子と一緒に旅館を切り盛りした。


 しかし新幹線の開通や車社会になリ米原は衰退した。

 典子と和子は京都の郊外に旅館を買った。

 旅館は典子和子の手腕で繁盛し、

 割烹も兼ねた。

 繁樹も多くの人達と接するうちに人馴れして、

 昔とは別人のように変った。

 また典子は身分の上下の区別なく誰にも親切だった。

 それは繁樹に対しても同じで、

 子供達も繁樹の素朴で素直な性格を誉めて慕った。

 繁樹は幸せだった・・。

 山の木々の間に横たわる繁樹は何処かで

 自分を呼ぶような声に気が付いたが、

 睡魔に逆らう事が出来ず

 心地よく深い眠りに落ちていった。

 「元の道」と云っても、もう山に返っている。

 闇夜に茂った雑木林の中を電池の明りだけを頼りに、

 辿り捜すことは不可能に近い事だったが、

 真一は先頭になって木々の小枝を払いながら進んだ。

 
 夜明け近くに繁樹を発見したが、

 概に冷たくなっていた。

 京都では典子の用意が出来るのを、和子が車で待っていた。

 典子が車に乗ると、車は篠山に向かって走った。

 典子は終始無言だった。

 やがて右手に北の峠が見えてきた。

 典子はその峠の麓で運び出された繁樹の遺体と対面したが、

 その眠っているような表情に、

 典子は安堵した。

 「一応変死、と云う事で司法解剖をするかも知れませんが・・

 出来るだけしないで済むように努力します。

 親父のこんなに綺麗な姿を切り刻む事には

 抵抗がありますからと言う真一の言葉に、

 典子は大きく頷いた、

 多くの車がたむろするその場所から峠を見上げると、

 青い空を背景に山は高々とそびえ、

 山腹の所々にZ型に見える道路意外は昔の侭(まま)のよう気がした。

 「和子、峠に上がってみましょうか・・か」

 典子は車に乗った。

 走り始めた車の窓から見える風景は、

 典子を込み上げさせた。

 典子はむせたふりをして咳をした。

 峠に着くと典子は車から降りて

 峠からの風景を眺めた。

 歳こそ寄ったが背筋の伸びた姿勢の良い体型には着物が良く似合った。

 衰え、やつえはしたが、

 昔日の面影を漂わせる典子の頬に一筋の涙が光っていた。

 それを強い風に拭わせて、

 集落の方へゆっくりと足を運んだ、

 池の側で立ち止まると、

 辺りを見回して、

 石の馬頭観音を見つけると枯れ草を掻き分けて

 石仏の前にひざまずいた。

 和子は道路から、

 風に流される髪を押さえて母を見守っていたが、

 風に乱れた髪の間から襟元のホクロが見えた。


 それは兄と同じホクロであり、

 木村少尉のホクロと同じだった。


 集落の方から、

 一見して都会の人と分かる中年の女と、

 その娘と思える若い女が

 手荷物を下げて坂を登って来ると、

 枯れ草を掻き分けて石仏の方に向かっていた。

 丸顔に丸い目の母子が石仏の前まで来ると、

 典子はその母子に場所を譲り、

 石仏の前で互いに言葉を交わしていたが、

 典子はハッとした表情に変り、

 親子を改めて見直した。


 母親は草に埋もれた石の馬頭観音を慈しむように両手で撫で続けていたが、

 その頬に幾筋もの涙が光っていた。


 北の峠の空は青く晴れわたり、


 白い雲がひとつ、


 海坊主のように浮かんでいた。   ・・・・おわり

北の峠・・13

    

       北の峠13    野勢尚文



 その夜、

 数台の車に分乗した若い男達が集落の家々を訪ねた。

 老婆の家にも身なりの良い男性が訪れ、

 応対に出た嫁に、捜している老人の特徴を言って尋ねた。

 老婆は奥で寝ていたが騒がしさに目が覚めて、

 玄関での会話をそれとなく聞いている、

 昼間池の土手で会った老人の事らしかった。


 老婆は起き上がると玄関に行き、

 若宮真一と名のる男に、その事を告げ、

 捜している訳を聞いた、


 襟首にホクロのある真一と云う男は、

「老人は僕の父なんです。

 父は病気で入院して居たのですが、

 無断で病院を抜け出したんです。

 母と妹は京都で割烹旅館を営んでいますから、

 急には出て来れないのです。

 今此処に来ているのは、

 私の事務所の者と母の旅館の人達です。

 手伝ってもらっています・・・」

 と言い、駆けつけて来た別の若い男に

 「墓地を捜してくれ」と告げた。


 その男は外に出ると


 「おおい、みんなで墓場を捜してくれ」

 と大声で叫ぶと、

 集落のあちら、こちらから灯りが墓場の方を目指して走った。

 老婆は老人の言っていた、

「昔、峠で世話になった・・」

 と云う話を告げ、その病名を聞いた。

 真一は頷いて他の事には答えず、


 「癌です・・」

 とだけ答えると深々と礼をして去った。


 老人はその頃、

 真っ暗な旧道の中程で枯葉の上に横たわっていた。

 木々の枝の間から見える暗い空には星がちらつき、

 老人にはその星のちらつきが

 自分に話かけているように思えた。


 老人はポケットからウイスキーの小ビンを取り出して口飲みをした。

 喉が熱くなり、

 やがて体中が暖かくなった。


 「この道を・・・この道を何度行き来した事だろうか・・。

 帰りたい、帰りたい・・・あの頃にかえりたい・・・」

 老人は声を出して喚いた(わめいた)。


 だがその声は周りの闇に虚しく吸い込まれて消えた。

「 典子、お前は澄江と言っていたな・・・

 あやめ、寂しかっただろうな。

 麗子・・・今何処にいるんだ・・・」

 老人の発する声は次々と闇に消えた。

 老人はまたウイスキーに口をつけた。


 「前田中尉、木村少尉、澄江、いや紀子

  ・・・典子か・・・あやめ、お前の墓に参ったよ・・。

 きれいに掃除され花まで供えてもらって・・

 未だに集落の人々に好かれているんだな・・。

 本当に良かった・・。

 麗子、なぜ帰って来てくれないんだ・・。

 私は帰って来た・・。

 お前も帰ってやってくれ・・。

 あやめが喜ぶ・・、私も逢いたかった。」


 訳の分からない事を口走って、老人は眠気と戦っていた。

「ウイスキーを飲み、大声を出す」

 これは体を暖めると共に眠気を覚ましたが、

 体力を消耗させた。


 老人はいつしか寝転ぶと虚ろな目で夜空を見上げていたが、

 そのまま瞼を閉じると、眠りに入っていった。

 馬を引いて澄江の後ろに従う自分がいた。


 「澄江さん、この少し下だよ。そこで休もう・・

  ほら岩が見えて来た・・」

 老人は完全に夢の中に入っていた。

 林の中に空家が見え、

 その中で抱き合う自分が見える。

 物音がして五助が中断すると、


「そのまま・・続けて・・」

 と澄江に囁かれ、

 五助は長い間妄想に駆られていた「こと」を続けた。


 襖がスッと開き、国民服を着た年配の男が現れ、

 澄江の上に覆い被さっている五助を蹴飛ばした。


「紀子、お前には兄の汚名を晴らす気はなかったのか・・。

 こうなった以上は俺の手で成敗(せいばい)をしてやる」

 と年配の男は腰の短剣を抜き

 澄江の上に追った。

 五助は何が何だか分からない儘(まま)に、

 隣の部屋に転がり込むと、

 用心の為にいつも持っている鉈(なた)を手にしていた。

 そして澄江に跨がり、

 今にも短剣を澄江の豊満な胸に突き刺そうとしている男の背後から、

 頭に鉈を振り下ろした。


  「うっ・・」

 と男は頭から血を吹き出して、のけ反り倒れた。

 「澄江さん、大丈夫ですか」

 五助は澄江を抱き起こした。

 「私は大丈夫・・それより・・・」

 と横に倒れて息絶えている男を見て

 「前田中尉・・・」

 と、意外にも哀れみを込めた口調で呟いた。

 五助は澄江の澄江の白い肌に飛び散った、

 前田の血を手拭いで拭き取り、

 澄江の表情を窺った(うかがった)。

 澄江は「放心」とも云える状態で

 前田の遺体を見続けている。


 「わしは悪い事をしたのだろか・・」

 五助がそう思った時、明け放っていた襖から、

 若い国民服の男が入って来た。


 「木村少尉・・」 

 澄江は男の顔を見て言った。


「大変な事をしましたね」

 木村はそう言って

 前田中尉の頭にささった侭の鉈を抜き取ると大きな声で、

 「出て来るんだ」

 と叫んだ。何かの物音がして、着流しの若い、

 男好きな顔立ちの女が別の襖を開けて現れた。

「亜弥、君は見ていたのだろう。話してくれないか」

 木村が聞くと、

「はい」

 と亜弥は、今日この空家での、

 五助と澄江の情事を事細かに話した。


「君の他に証人になってくれる人は居ないのか」

 と木村が聞くと、亜弥は首を横に振った。

「わかった・・」

 木村は少し考えていたが、

「亜弥、前田中尉殿は亡くなられた。君はこれからどうする」

 と聞いた。
 

 亜弥は一瞬迷った表情を見せたが木村の顔を見て、

 媚るような微笑を見せた。

「俺は断るよ」

 木村はそういって五助達に、

「衣服を着けるように・・」

 と促した。

 五助は慌てて衣類を着たが、

 澄江は気落ちしているのか、ゆっくりと着た。

 二人が衣類を着け終わるのを待って木村は、

「亜弥、君は木村注意に助けられた。

 その前田中尉が殺されるのを黙って見ていた。

 俺には考えられない事だ。

 此処で君も終わる」

 そう言い終わると咄嗟に腰の短剣を抜き、

 亜弥の胸を刺していた。


 五助はあっけにとられて唖然としていたが、

 澄江は冷静にそれを見つめていた。

 木村にすがった侭、

 ズルズルと崩れ落ちてゆく亜弥に木村は

 「あの世に行っても前田中尉から離れるな、それが君の生きる道だ・・」

 と慈しみ(いつくしみ)を込めた口調で言った。

 木村は足元に倒れた唖弥の首に手を当てて脈を診ていたが、

 「亡くなった」

 と呟き、返り血を浴びた上着を脱ぎ捨てると

 短剣の血を唖弥の着物で拭いた。


 それから五助を促し、

 二人の遺体を整えて並べると顔に布を掛けた。

 木村は澄江に、何か花を取って来るように言い。

 遺体の並んだ部屋で緊張して震えている五助を座らせると、

 「良く聞くのだ!」

 と前置きをした。


 「二二六事件に将校で参加した紀子の兄上は、

 不本意な結末で亡くなられた。

 本来なら事件に加わっていたはずの

 前田中尉は紀子の家族が世間の目を気にしながら、

 相次いで病気で亡くなられてしまい、

 その後一人残された紀子に兄上の汚名返上の夢を託した。

 周囲の反対を押しきり、

 紀子を軍属の身分として自分の部下にした。

 紀子に短期間に過酷な訓練を行い、

 優秀な諜報に仕立て上げた。

 そして新たに前田中尉の受け持ち範囲となった

 篠山連隊の警備に紀子を使った。

 紀子も名前、本籍も変え、

 孤児院から産まれて間もない子供を譲り受け、

 紀子の子供として、

 篠山盆地の見下ろせる集落に定着させる事にした。


 親切に甘えた訳ではないのだが、

 君の家に白羽の矢が立った。

 そして予定通り、

 紀子は本来の役目である不審な人物の探査通報に活躍した。


 だが前田中尉は紀子の様子が気掛かりで仕方がないらしく、

 度々隠れては紀子の様子を見ていた。

 紀子もそれには気付いていたらしいが・・。

 歳は親子も違うが、前田中尉は紀子を愛していた。

 紀子も中尉に想いを寄せていた。

 だが中尉は、そのような事には、けじめをつける人だった。

 越えられない一線は決して越えなかった。

 戦況が不利になれば、なるほど紀子は、

『日本が占領され踏み躙られる(ふみにじられる)前に、この体を前田中尉に・・』

 と思い、

 中尉が潜んで居ると思える場所で

 紀子自身が中尉に様々な挑発をした。

 しかし中尉はそれに乗ってかなかった。

 君も分かっていると思うが・・・

 山中に潜んだり物陰の隠れたり、

 また何気ない人の中に紛れ込んだり、

 各家庭を訪問したり。


 そうして様々な事を探るのが、

 我々の任務なのだ。

 中尉は、或る容疑で挙げたが、

 釈放するにも行き先のない女を亜弥と呼び、

 自分の側に置いた。

 特務中尉と云う職業柄

『もしもの時には不幸にする』と、

 生涯女房は持たない中尉だったが中尉も人間だ。

 亜弥と云う女を紀子の代わりに愛した。

 それに気付いた紀子は、

 この家に中尉が潜んで居る事を知って今日、

 此処で君との行為に至った。

 紀子は君との行為が始まる以前に

 中尉が出て来る事を期待していた。

 だが中尉は今回の戦争の敗北を予想されている。

 まして本土決戦にでもなれば

 日本が全滅するだろう、と言って居られた。

 そうなれば中尉自身は当然戦死する。

 後に残った紀子は、

 鬼畜米英の餌食になるだけだ。

 もし本土決戦がなくても、中尉は裁かれ、

 極刑になるだろう。


 何れにせよ中尉は後僅かな自分の為に

 紀子を巻き込みたくなかったのだ。

 君と紀子が只ならぬ仲になるかも知れないと

 予測はされていたが、君なら紀子を

 守ってくれる、と信じていた。

 だが目の前で紀子が君に抱かれるのを見ているうちに

 堪え難いものを感じられたのだろう。・・・・・・続く

北の峠・・12

 野勢さんの事・・・・野勢さんは、権力が嫌いで、特に警察。免許の更新の時、写真を撮りますね。その時わざとふざけた顔をするのです、警察官は、怒りながらもう一枚獲るのですが、また ふざけるのです。それを3〜4回繰り返します。なんせ、変っています。変なところに度胸がすわっているのです。良い子の皆さんは真似をしないで下さい。 


        北の峠12    野勢尚文



 あやめの日課は

 峠に登って篠山盆地を見下ろす事だった。

 盆地からはいつも強い風が吹き上げてくる。

 夏は心地良かったが、

 冬には長く立って居れなかった。

 福祉の世話になり、何もする事のない、

 あやめには潰れた家の回りや、下の小さな池、

 それに峠しか行く所がなかった、

 峠に居ると様々な思い出がよみがえった。

 養母と馬喰に連れられて、初めてこの峠を登り、

 振り返ると篠山盆地が一望できた。

 馬喰の声に振り返ると一人の男が立っていた、

 それを見送ったのも、この峠だった・・・。


 あやめは懐から古い写真を取り出すと、

 「お母さん・・」と呟いた。

 またあまりにも遅い五助を心配して、

 この峠で待った事もあった・・・。

 そして麗子と峠を降り、

 一人重い足取りで辿り着いたのも、

 この峠だった。


 この思い出の詰まった峠を

 今では工事用の大きな車や、機械が通る。

 「あやめさん、風邪をひくよ・・」

 と元区長の奥さんが声をかけた。

 「堂に行ったら居ないので、此処だろうと思ってな」

 と、あやめの着物や髪に着いた雪を払い落として連れ戻した。

 その夜から、あやめは寝込んだ。風邪だった。

 しかし朝になると、あやめは峠に向かった。

「この峠も、新しい道が出来るとなくなる」

 そう思うと寝てはいられなかった。

 昨日と同様に良く晴れた青い空だったが、

 峠に着くと

 吹き上げてくる風には粉のような雪がまじっていた。


 「また・・・あやめさん・・・帰ろうな」

 と元区長の奥さんに連れ戻されたが、

 それは、あやめが峠に行けた最後だった。

 その日から元区長の奥さんは堂に詰めて、

 あやめの看病をしてくれた。

 看病と云っても話し相手になり、

 食事の面倒をみるぐらいだが


「馬頭さん、馬頭さんと呼んだ昔が懐かしいな・・・」

 と言ってくれる言葉が今の、あやめには

 心強く感じられた。

 その元区長の奥さんが

 家を出ている息子の一人が帰って来るので一晩、

 堂を離れた。

 翌朝堂に来てみると、あやめは煎餅布団から、はい出して

 馬頭観音の方に片手を伸ばした侭で息絶えていた。 

 風邪から肺炎を併発していたのだったが、

 気丈なあやめはそれに耐えていて分からなかったのだった。

 あやめと馴染みだった集落の年配者が集まり、

 あやめの体を元に戻す時に枕の下をみると、

 学校で写した麗子の写真類と古い婦人の写真が出てきた。

「誰だろうな・・」

 皆は古い写真を回して見たが、

「あやめさんのお母さんでは・・」

 としか分からなかった。

 その他にも五助の物と思える腹当てや、

 麗子の幼い時の衣類が綺麗に畳んで敷いてあった。

 集落の年寄り数人による簡単な葬儀が終わると、

 あやめは集落の墓地に埋葬され、

 遺品は元区長の奥さんが預かった。


 その後も堂の傷みが激しく、集落の集会の時に

「堂をどうするか」

 と、議題になったが

 今日では集落に馬は云うに及ばず、牛さえも居なかった。

 「直すより取り壊そう」

 と決まり堂は取り壊された。

 そのついでに、かつてあやめの居た、

 倒壊して久しい家の跡に

 密生したカズラの種が茶畑に飛来して困るので、

 家跡も一掃された。


 そして人々の記憶の中から、あやめも消えていった。


 長い年月が過ぎ、堂の跡も家の跡も、

 今では分からなくなり、

 馬頭観音の石仏は草に埋もれ、

 その横に新しく出来た舗装道路を車が失踪していた。


 その舗装道路に色付いた木の葉が舞う頃、

 上下の背広に帽子を被った小柄な品の良い、

 一人の老紳士が延々と曲がりくねった道路を登ってきた。

 老人は峠に着くと帽子を脱いで汗を拭き、

 篠山盆地を振り返り、
 
 そこから見える範囲の風景を懐かしそうに見ていたが、

 汗も引いたのか、

 茶畑の中を集落の方に降りていった。

 
  道路脇に有る馬頭観音の石仏を見つけると、

 枯れ草を掻き分け、石仏の前に屈み込んだ。

 両手を合わせて長い間その侭でいたが、

 立ち上がると辺りを見回し、

 下に池を見つけるとそこへ行った。


  腰の辺りまで生え茂った枯れ草の土手を歩き、

 上の斜面に目を配らせていたが

 首をかしげると、

 枯れ草を踏み分けて土手に腰を降ろした。


  茶畑の手入れをしていた老婆が、

 「あんな所で何をしてるんだろう・・・」

 と仕事の合間、合間に、老人の様子を窺って{うかがう}いた。

 老人は肩を落とし泣いている様子だった。


  老婆は茶畑の中を老人に近づき、

 土手の下で大きな咳した。


  老人はハンカチを手にして

 振り返ると老婆に驚いた様子で、

 立ち上がり帽子を取って会釈をした。


 「どうしたんですか・・」

 老婆が聞くと、

 「はい、ずっと以前に・・・この上に堂がありましたが、

 その堂に泊まった事があるんです。

 その時、親切にして下さった、

 女の方が居らっしゃたのでが・・・」

 と老人は聞いた。


 「はあ・・・もう昔の事ですが・・・

 あやめさんの事でしょう。可哀想に・・・

 亡くなられましたよ」


「亡くなった・・そうですか。

 確か娘さんが居るらしゃったはずですが?」


「麗子さんですね。何処に居るのやら…分からないんですよ」


「そうですか・・・その女の方が亡くなられたのは、

 何年くらい前の事でしょうか」


「そうだね、二十年近くになるかね」


「二十年ですか・・・」

 老人は大きな溜息をついた。


 それから老人は老婆に、

 あやめの事をいろいろと聞いた。


 話が長引くので老婆は土手に上がり、

 池の水で手を洗うと、

 老人と並ぶように座り、話を続けた。

 老人は特に、あやめの最後を詳しく聞き、

 麗子の事も聞いた。


 「・・あやめさんの最後は

 元区長さんの奥さんが面倒をみてあげたたから、

 詳しい筈やが、もう、亡くなりましたでな・・・」

 と老婆は知ってる限りの事を老人に話した。


 老人は堂や家の有った辺りに目をやっていたが、

「そのあやめさんの墓は何処にあるのでしょうか?」

 と聞いた。

 老婆は集落の墓を指差すと、

 その中の、あやめの墓を教えた。

 老人は頷き、

 「昔の峠道は、もう通れないでしょうね?」

 と聞いた。


 「無理でしょうな、歩く人も居ないでしょうし・・・

 それでなくても道とは云えないような道でしたからな・・・」

「そうでしたね」

 老婆の言葉に老人は、そう呟いた。

 その後、老人は丁寧な礼を老婆に述べると、


 集落の墓に向かって緩やかな舗装道路お降って行った。・・・・・・・続く

北の峠・・11

  

       北の峠11    野勢尚文


 あやめは家に帰ると仏壇の五助の位牌に報告した。

「これであんたが生きていれば・・親子三人の家になれたのにね・・」

 と、しんみり言うと麗子を呼び、

「今日からは、わしがお母さんだからね」

 と麗子のオカッパ頭をなでた。


 梅雨の晴れ間の夕焼けが、開け放った縁から差し込み、

 あやめと麗子を赤く染めた。

「澄江さんのように綺麗なむすめになるんだよ。

 頭の良い、器量の良い娘に・・・」

 あやめは、あぐらをかき、その上に麗子を乗せて、

 夕焼けに染まった部屋の中で

 麗子のオカッパ頭に頬を付けて呟くと、

 その頬に涙が流れた。


 そして八月一五日を迎えた。

 だが、

「本当に戦争が終わった」

 とは信じられなかった。

 数日過ぎて人々は、やっと終戦を本当だと信じた。

 そして人々は重い口を開き、

 思っている事を徐々に話始めた。


 「五助さんは、貴重な品物を多く持っていたでな・・

 強盗にねらわれたんじゃろう。

 澄江さんは、あれだけの器量好だ、

 想いを寄せる者は多かっただろう・・

 それで二人共殺されたんじゃろう」

 と噂話が広がった。

 また役場からは村長、自らがあやめの家を訪れ、


 「澄江さんと麗子さんの件だが、憲兵から強要されて証明書を作制したんだ。

 あなたも今の侭で麗子さんが実の子の方が良いだろう。

 この話は私とあなたの二人だけの話にして下さい。

 他言は無用ですよ」

 と念をおし、

 あやめも約束した。

 麗子は成長するに従い、なんだか驚いたような表情になった。

「澄江さんに似ず、放蕩な男に似たのか・・」

 あやめは少々落胆したが、

「頭は良いはずだ・・」

 と気をとり直した。

 やがて集落にも復員して来る人があり、

 五助がしていた馬をつかっての仕事も、人が始めた。


 母子だけの家は、だんだんと時代に取り残されていった。

 人々が移動し始めると、

 横の堂にも旅人が良く泊まり、

 あやめは以前のように活発に動いた。

 しかし、五助のいない家は生活が苦しく、

 以前ほど旅人の面倒をみる事が出来なくなった。

「観音様、どうぞ許して下さい」

 とあやめはそれを詫びた。

 麗子は集落にある小学校に入り、

 やがて谷川を延々と降つた中学校に通うようになると

「こんな貧乏な家に生まれたくなかった。損をした」

 と愚痴るようになり、卒業が迫ると

「どうせ、高校には行けないのだから・・」

 っと勝手に都会への就職を決めてしまった。

 澄江とは異なった容姿の麗子だが、

 「びっくり美人」

 と、あだ名が付くだけあって

 小柄で浅黒だが、目も口元も丸い、

 びっくり顔の美人で勉強は良くできた。


 「何とかして高校に・・」

 と、あやめが考えていた矢先だっただけに二人は言い争ったが、

 もはや麗子が決めてきた事でもあり、仕方がなかった。

 そして麗子は口数も少なく、

 大阪に旅立つ準備をすると、

 以前五助がしていた仕事をしている人に、

 布団など大きな荷物を篠山駅から就職先に送ってもろった。


 明日は大阪へ鯛脱麗子が、寝息をたてている側で、

 あやめは眠れぬ夜を過ごした。

 翌朝、二人は手にコツを持って峠を降りると、

 五助の墓に参り、

「篠山まで・・」

 とあやめは思っていたが、篠山駅に着くと「まで・・」

 篠山口と気が変わった。

 しかし麗子は

「お母さんが居ると目立つから、もう良い・・」

 と篠山の駅から先に着いて行く事を拒否した。

 あやめはこの時、

 自分の醜さと云う事に気付き、黙って頷いた。

 麗子の乗った汽車が見えなくなるまで見送ると、

 帰る途中に五助が亡くなった焼け跡に立ち寄った。


 焼け跡は綺麗に片付けられ、畑になっていた。

 その集落の墓地にある五助と澄江の墓にも、もう一度参った。

「険しい峠を越える事は滅多にないんで・・次はいつ来れるか・・」

とあやめは誰も参る者のない五助と澄江の墓掃除をした。


 一人で帰る峠道は遠く険しく、風は冷たかった。

 あやめは何度も立ち止まって呼吸を整えると、

 今更ながらに五助の苦労が分かった。

 その後麗子からは何の連絡もなく、

 歳月だけが流れ過ぎていった。
 
 農家の手伝いで生計を立てる、

 あやめの暮らしは歳を増すに従い収入は減り、

 この集落で電気がないのは、あやめの家だけになった。

 世の中が落ち着くに従い、

 旅をして堂に泊まる人もなくなり、

 また東西に点在する集落を結ぶ道が整備され、
 
 バスが入るようになった。


 北の峠も、

 今迄の道とは別に新しい道路をつける工事が概に始まっていた。

 集落の牛馬も減り、

 馬頭観音の日に堂に集まる人達も減り、

  今では年配者が数名集まる程度になっていた。

 白髪が目立ち皺の増えた、あやめだったが、

 馬頭観音の日には張り切っていた。

 だが集まった人達の話を聞いていると、

 一人落ち込んでいく自分をどうしょうもなく、

 何度も席を外した。

 「うちの息子に嫁が決まって・・」

 「うちの嫁はよう出来た嫁で・・」

「息子と娘からは毎月小遣いを送って来るんで・・」

 そのような話の内容は、

 あやめには無縁の事ばかりだった。

 相当傷んでいた家は、台風で倒壊し、

 あやめは堂に移り住んだが、

 これを境に、あやめは急速に老けこんだ。


 役場の職員が見かねて訪れ、

 「娘さんの場所を調べてあげる」

 と、あやめを慰めて帰った。

 しかしその後は何の連絡もなかった。

 元区長の奥さんが痺れをきらして役場に問いあわせると、

 「娘sんも成人されているので、

 本人から『知らせてくれるな』と言われば、

 私達ではどうしょうもないんですよ・・」

 と溜め息をつかれた。

 この区長の奥さんは、いつもきちんとしている。

 白髪の頭は上げて整え、今でも着物にモンペ姿だった。

 丸みをおびた背中で堂にあやめを訪ねる日が多くなった。


「あんたには、いろいろと助けてもろたからな。うちの人も亡くなって、

 息子達はそれぞれ一人立ちしてしまい。

 今ではあんたと似とようなもんじゃ・・」

 と、堂で二人は昔の話をした。

 それが、あやめには嬉しかった。

 時には元区長の奥さんは堂に泊まる事もあった。

 「麗子さんの事じゃが・・公の所ではどうにもならんのなら・・

 私が息子に頼んで調べてあげよう」

 と言ったが、

 「あの子には・・それなりの事情があるのかもしれませんから・・」

 とあやめはもうしばらく様子をみる事を告げた。

 そのあやめも、

 もう農家の手伝いには行けない程に体が衰えていた。


・・・・・・・・続く

北の峠・・8

        北の峠8    野勢尚文


 牛馬が居なくなれば、

 物を運ぶ手段は人の背に頼るしかなかった。

 集落の人は五助に、何かと頼みに来たが、

 そのつど澄江は

 「だめ・・」

 と五助に眼で合図を送った。

 それからの五助の仕事は背負子に

 澄江の荷物を載せて供に篠山を往復する事だった。

 
 その途中で寄る所ができた。

 それは峠の麓の林の中にある空家だった。

 道からは見えない場所で、

 麓の集落からは少し離れていた。

 最近まで人が住んでいたと思われる農家だったが、

 「澄江が、なぜこんな目に付かない空家を知っているのだろう。

 それにこの家の人はどうしたのだろう?」

 と五助は不審に思ったが、

 澄江に言われる通りにした。

 その空家で澄江は着替え、髪を直す、

 五助はその手伝いをさせられた。

  そのつど澄江んお髪に触れ、肌に触れ、白い柔肌の匂いを嗅いだ。

 五助はそのたびに何とも云えぬ衝動が全身を走ったが、

 ひたすら押えていた。

 町に出ると将校の家だけでなく、

 商人の家や富農の家にも行った。

 澄江が家に上がると奥から数人の婦人の声と供に澄江の声も聞こえてくる。


「・・何も不便な所に居なくても宜しいのに・・」

「・・あんな兄でしょう、放っておけなくて・・」

「本当に優しい方ですわね、でも苦労されますわね・・」

「身内ですもの仕方がありませんわ・・」

 それらは澄江の如才なさの片鱗を現していた。


  澄江はそれらの家々で、お茶、お花、舞、書道等々の作法を披露、

 または伝授していたのだろう。

 戦時下に優雅な家々も有ったものである。

 だが言い方を変えれば、

 それらを教えてくれる所は総て閉められていた。

 それ故に年頃の娘を持つ親としては

 作法を教えるのに仕方のない事だったのかも知れない。

 また裕福な暮らしをしていた人達が、急に暗く、厳しくなった世相の中で、

 一時の安らぎを求めるのも当然なのかもしれなかった。

  とにかく、

 澄江と五助の二人はこうして峠を登り降りしていた。

 家では、

 あやめが麗子を連れて牛馬のいなくなった農家の手伝いに出掛けていた。

 だが貴重な品々が手に入る、

 五助の家は羨望の的になっていた。

 それは、あやめが迂闊にも口を滑らしたことから、

 集落に知れわたったのだった。


 その年も暮れ、麗子は満四才になった。

 戦争も三年目に入ると、

 いかに統制化とは云え南方方面での相次ぐ敗戦の噂が巷に溢れた。

 軍部は更に統制を厳しくし、

 隣近所でも迂闊な事を言えないようになった。

 「・・・我が国は神国なり、神風は必ず吹く・・」

「 我が艦隊は敵艦隊を撃滅し・・」

 「・・我が航空隊に敵はなく・・」

 五助が町で耳にするラジオからは威勢の良い言葉が流れていた。

 北の峠でも概に何人もの人が逮捕されて連行された

 と五助の耳にも入っていた。

「この山の何処かに、官憲が隠れているのか」

 五助は、峠の登り降りにおもったが、

 澄江の行動には何ら変化はなかった。

 澄江がよく行っていた町の家の中には、

 家宅捜査をされた家や、家の誰かが連行された家も多く有り、

 五助は澄江にも捜査の手が伸びるのではないかと心配した。

「澄江が捕まれば・・たちまち家の生活が困る・・・

 それに澄江が捕まって酷い仕打ちを受けるのを想像するのも嫌だ」

 五助は澄江の後ろを歩きながら、

 いつも不安な気持ちに苛まれた。


  最近では五助は澄江と供に行動するようになってから急に垢抜けしていた。

 それは澄江に様々な細かい事を注意されるからだった。

 空家の鏡の前で澄江は髪や衣類を整える。

 その時に五助にも髭を剃り、鼻毛を摘む事から、

 男物の着物を用意して着方をおしえ、

 また人に対しての接し方や話し方までを事細かに教えた。

 外を歩く時には、歩き方や様々な仕草を教えた。

  そして五助が、

 それらをまもらなかった時には人気のない所できつくしかった。

 そんな澄江に対して五助は子供のように素直に従った。

 農家の下男のような五助だったが、

 今では町の商家の奉公人に見えるまでにまっていた。

 背負子も、空家で風呂敷包みに変え、

 手甲脚絆、わらじ等も脱ぎ、雪駄風の草履に履き変えた。

 それらはすべて澄江が用意した。


 澄江が訪れる家は減っていたが、

 そこへ集まる人々は差程減らなかった。

 今ではすっかり澄江の使用人のようになった五助は、

 控えの間で待ったが、昼になると、それなりの食事が出され、

「ある所には、有るものだ」

 と五助は戦争が始まる前でも

 食べられなかったような食事を前にして思った。

 訪れる家が減少した分、一軒の家で過ごす時間は長くなり、

 長引けばお茶や菓子も出た。


  そして夏が来た。

 最近、空家で着替えをする時に、

 家の何処かに誰かが要るような気配を五助は感じていた。

 五助が感じる程だから澄江が感じないわけがなく、

 五助は訝しく思ったが何も言わなかった。

 今では五助が汗で濡れた澄江の背中を冷たい水で絞ったタオルで拭いていたが、

 それも行儀作法として教えられている事だった。

 澄江は五助の心の中を見通しているかのように、

 踏み台に腰掛けて足を五助の前に突き出した。

 五助が黙って足を拭くと、

 着物の捲り足の膝までも拭かせた。

  また、背中を向けてではあるが、

 五助の前で着物をスラッと脱いで着替えをした。

 さすがに五助も、そのような時には顔を背けたが、

 そのような澄江の態度はエスカレートするばかりだった。       ・・・続く

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