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白い天井。視界の右端にぶらさがる点滴の瓶。
そして、心配そうに俺の顔を覗き込む木島。
それが意識の回復した俺が最初に目にした光景だった。
「気がついたか? 恭祐」
「病院か?ここは。・・・・・・どのくらい寝てた?」
麻酔のせいか意識が朦朧としている。
「二日間だ。今日はクリスマス・イヴだよ」
「クリスマス・イヴか。・・・・・・そうか、梨花と再会してもう1年だな。
・・・・・・なにっ、クリスマス・イヴだって!
今、何時だ?」
俺は叫ぶと同時に上半身を跳ね上げた。
ズキンッ。身体中に激痛がはしる。
「寝てろ、恭祐。コンテストは無理だ」
「ダメだ。梨花が来る。きっと来る。
約束したんだ。俺は梨花のために唄うって」
木島は沈痛な面持ちで首を横に振る。
「だめなんだよ、恭祐。お前の左手
骨がグシャグシャでとてもギターが弾ける状態じゃないんだ。
だからゆっくり寝てろ」
俺は自分の左手を見る。
ギプスで固められ包帯をグルグル巻かれた腕が
自分のものとは感じられなかった。
「木島。すまないがしばらく一人にしてくれないか?」
木島は無言で頷き病室を出た。
こんな所で寝てるわけにはいかない。
俺は立ち上がりジーンズとジャケットを身につけた。
そして痛んだ身体を引きずるように病院を抜け出し、タクシーに乗り込む。
目的地はコンテスト会場。
・・・・・・間に合うか?
辺りはもう日が暮れてすっかり闇に覆われている。
そして空からは白い雪がちらちらと舞い降りている。
俺が会場に着いた時にはもうコンテストは始まっていた。
俺は裏口から場内に入り込む。
「次はエントリーナンバー18番、土方恭祐さんの予定でしたが、
残念ながら事故のため欠場となりました。
続きまして・・・・・・」
場内アナウンスが俺の欠場を事務的に告げる。
くそっ。こんな所で負けてたまるか!
負ける? いったい何に?
神崎に? 自分自身に?
俺は力を振り絞りステージに上がった。
ステージにはすでに次のバンドが待機している。
俺は彼らを無視し、中央にあるマイクスタンドにしがみついた。
「エントリーナンバー18番。土方恭祐・・・・・・」
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