|
エトランゼ最後のステージを無事終えた俺と木島は、
翌日、谷永仁にレコーディングの打ち合わせという
名目の宴会に誘われた。
顔ぶれは我々三人以外に、ディレクターの木村さんに、
谷さんのバックバンドのメンバーが2名の計6人の集まりだった。
二次会のスナックを出た時、当初6人いたメンバーは
3人の少数精鋭部隊へと変移していた。
「よーし。次いくぞー。次」
谷さんは両手で俺と木島の肩を抱き夜の街をさまよう。
「谷さん。すみません。俺、この辺で・・・・・・」
木島がすまなさそうに口を開く。
ヤツは最近彼女と同棲しており、何か約束があるようだ。
「何だ? もうリタイアか? そんなことじゃ大物になれんぞ」
「谷さん。次はあそこの屋台に行きましょう。さあ、さあ」
俺は谷さんの腕をひっぱりながら木島に目配せする。
「それじゃあ。失礼します」
木島は深々と頭を下げてその場を立ち去った。
「お前らお互いにいい友達を持ったな。これからも二人でがんばれよ」
さっきまでへべれけだった谷さんが急に真顔になって俺に言う。
「ええ」
俺は静かに頷いた。
俺たちが目の前の屋台に入ろうとした時だった。
不意に自動車のエンジンの爆音が夜の巷に響き渡った。
「バンッ!」
一瞬、何か重い物がぶかるような不吉な音を通りに残し
遠ざかるエンジン音。
俺はとっさに後ろを振り返る。
50m後方の交差点に横たわる一つの物体。
その物体が先ほどまで一緒にいた
木島であると理解するまでコンマ数秒かかった。
「きっ、きじまぁー!」
頭が理解した時にはそう叫び駆け出していた。
木島を跳ねた車はもう視界の外へと消えている。
「おい。しっかりしろ。
木島。なんとか言え。この野郎っ!」
俺は血まみれの木島を抱きしめ絶叫していた。
周囲から騒ぎを聞きつけ野次馬が集まってきた。
「谷さん。救急車をっ。はやく」
谷永仁が近くの公衆電話へと走る。
「人の頭の上で騒ぐな恭祐。くそっ、身体中が痛みやがる」
下を見ると木島がうつろな目をしながら俺を見上げている。
「大丈夫か?」
「大丈夫な訳ないだろう。ちっ、せっかくの一張羅が台無しだ」
木島は血まみれのスーツを眺めながらつぶやいた。
路上に倒れたまま、文句を言いつづける木島を救急車に積み込んだのは
それから10分後の事だった。
|