丸いウォンバットの観察日記@

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最後のバラード 4

「買いかぶりすぎだよ。梨花ちゃん。
 それになんで俺が音楽を続けてるって思ってるんだい?」

俺は両手を広げ大げさな仕草を見せた。

「それはだねぇ、ワトソン君!」

梨花はシャーロック・ホームズのマネをしながら一歩一歩
俺の方へと近づいてきて、おもむろに俺の左手をつかんだ。

「毎日のようにギターを弾かなきゃ、こんなタコできないでしょ」

梨花の瞳は、本当にすべてのことを見透かしているのかも知れない。
一瞬、俺は本気でそう思った。

「梨花ちゃんには敵わないなぁ」

俺は観念して本当の事を話すことにした。

「半年くらい前から木島に誘われてたんだ。
 脱サラして一緒にライブをしないかって。
 それでずっと悩んでたんだ。
 けど、今日、梨花ちゃんに逢ってなんか吹っ切れたような気がする。
 ・・・・・・もしライブをやったら、
 最低でも一人は聞きに来てくれるお客さんがいるって分ったから」

そう言ったあと俺は照れくさくなって天を仰いだ。

一瞬の沈黙。
表通りの喧騒が思い出したように耳に伝わる。
この街が産みだす独特のリズムがある。

「先輩。私、また先輩の歌が聞けるんですね」

梨花が瞳を潤ませながら微笑んでいる。
俺は黙って頷く。
不意に、梨花が俺に駆けより腕をつかんだ。

「先輩! 私、クリスマスプレゼントが欲しいな」

そう言い、そばにあった猫の額ほどの広場へ俺を引っ張って行った。
そこは地面が石畳で、周囲をライトアップされた街路樹で囲まれた
ちょっとしたダンスホールのステージのような造りとなっていた。

「1曲踊っていただけませんか?」

梨花はスカートを両手でつまみ、膝を曲げながら会釈した。
彼女は昔から、すごく機嫌がいい時には
フォークダンスを踊りたがるという変わったクセがあった。
俺はその事を思い出し、急に微笑ましくなった。

「喜んで。お嬢さん」

 俺は彼女の手を取り、見よう見真似で踊った。
クリスマスの色に染まった都会の真ん中でここだけが隔離され、
また時の流れにさえも取り残された空間となったような気がする。
ここでは梨花の口から奏でられるメロディーが唯一、絶対のものだった。

 気がつけば、いつの間にか二人のまわりに、また雪が降りはじめていた。

最後のバラード 3

「先輩、彼女とかいないんですか?」

 梨花は箸を止め俺を見つめた。眼鏡は曇るので外している。
至近距離で視線が交差する。
しかも、二人の間を遮る邪魔なレンズもない。
 キレイになった。昔より。今、初めてその事に気がついた。
3年の歳月は人をこれほどまでに変えうるものなのか?
すすけたラーメン屋の店内で、彼女だけが別世界の存在のように思えた。
 その瞬間、過去の想いが蘇えり鼓動が高まる。
 思わず俺は息を呑んだ。

「どうしたんです?ぼーっとして」

梨花は首を10度ほど傾けた。
彼女の澄んだ瞳は、俺の心の底まで見透かしてしまう。
そんな錯覚に陥りそうになった。

「いや、美人になったなぁと思って」

俺は正直に答えた。

「もうっ!冗談いって。どうせ口説くのならもっと気の利いたとこにしてくださいよ
 ははーん。その様子じゃあ彼女とかいないんですね」

と言いながら、梨花は小悪魔的な微笑を浮かべた。

「ラーメンのびるぞっ!早く食え」

俺はわざとぶっきらぼうな言い方をし、丼に顔をつっこんだ。


 食事を終えた二人は、夜道を駅に向かって歩いている。
この辺は裏通りにあたり、人影もまばらで、
時おり通る電車の音が響く以外は、静まりかえっている。
 その道を足音を響かせながら、跳ねるように歩く梨花。
その後ろを見守るように歩く俺。
二人とも、何とはなしに黙っている。

 突然、梨花が白いコートをなびかせ、くるりと俺の方に振りかえった。

「私、昔、歌を唄っている土方先輩の姿を見て素敵だなって思ったんですよ
 木島先輩や沢口先輩と3人で『俺たちはプロになるんだ。
 一生、音楽と共に生きていくんだ』そう瞳を輝かせながら話していた先輩達の姿を見て、
 私もデザインの世界で生きて行こうと心に決めたんです。
 あの頃のシャウトしながら唄っていた先輩、
 バラードを優しく唄っていた先輩。大好きだったなぁ」

そう言って、空を見上げる梨花。夕方、降っていた雪はいつの間にかやんでいる。

「今日、先輩を最初に見た時、ああ変わったなって思ったんですよ。
 くたびれたサラリーマンになったって。
 けど、すぐに変わってないって気付きました。
 だって、表面的にくたびれていても、目の輝きは昔のままだったから。
 それに先輩。まだ音楽続けているでしょ」

梨花は自信ありげにそう言った。

最後のバラード 2

「うわぁー、嬉しいな。三年ぶりですよねぇ。
 先輩。今、なにをやってるんです? まだ歌、唄ってますか?」

3年ぶりに会った梨花は、以前より髪も伸び、見た目は大人っぽくなったが、
性格は昔となんら変わりない気がする。

「いいや、ご覧の通り、しがないただのサラリーマンだよ。
 ギターの代わりにキーボードを抱えているのさ」

俺は自嘲的な表情で答えた。

「へぇー、もったいないなぁ。私、先輩の唄う歌って大好きだったのに。
 あのままやってたら、きっと先輩達プロに成れると思ってたんですよ」

彼女は真剣な表情をしている。

「世の中、そんなに上手くいかないよ。それよりも梨花ちゃん。
 これからなんか用事あるか?よかったら飯でも一緒にどう?」

「おごりですか? ラッキー! 実はお腹が空いていたんですよ。
 ちなみに私、中華料理が好きなんですけど」

梨花は右手でVサインをしながら微笑んでいる。

「中華料理か。・・・・・・よし、この近くに美味い店があるからそこに行くか」

俺は梨花を連れて本屋をあとにした。



「先輩、中華料理ってここですか?」

梨花は、少しくたびれたラーメン屋に入りながら、
確認するように呟いた。

「ああ、ここのラーメン、スープがなかなか美味いんだ。
 そうそう、それとギョーザもニンニクが効いていて美味しいぞ!」

俺はカウンターに座りながらオススメを言う。

「先輩〜。ひょっとして私が女だって事、忘れてません?」

梨花はそう言うと、眉間に縦ジワをよせ隣に座った。
そして、カウンターに頬杖をついて壁に書かれたメニューを眺めている。

「なんにする?」

「うーん。じゃあ私、コーンラーメンとギョーザ」

なんだかんだ言っていても、結局ギョーザを頼む梨花。
容姿はキレイだが、変に気取ったところのない
サバけた性格が彼女の魅力の一つだと思う。

 俺は、コーンラーメンとチャーシューメン、それとギョーザを二人前を注文した。
それから数分間、ラーメンが出来上がるまで二人はお互いの近況について語り合った。
 その時間は、一瞬にしか思えないくらい充実したものであった。

最後のバラード 1

   1 再会


 雪、雪が散らついている。数多の人々が行きかうビルの谷間を。

「ホワイトクリスマスか」

俺は、コートの襟を立てながら、一人つぶやいた。

 周りを見回せば、街にはアベックばかりだし、
空を見上げれば、ビルの間から重く垂れこめた曇り空が顔を覗かせている。
 その雲のように重い心、対象的に給料日前で極限まで軽くなった財布。
俺は疲れた身体を引きずるように地下鉄の駅へと向かった。

 途中、週刊誌を買うために本屋に立ち寄り店内をうろついた。
さほど広いとは言えない店内は、本と人であふれかえっている。

「あっ、これだ」

 俺は一冊しか残っていない目当ての雑誌を見つけ、手を伸ばした。
その時、

「えーっ」

悲鳴にも似た声が斜め後ろからあがった。
振り返ると、そこには俺が手に取ろうとした雑誌に右手を伸ばしたものの、
素っ頓狂な声をあげた恥ずかしさのためか、
左手で口をふさいだ体勢のまま凝固したOL風の女性が立っていた。

 どうやらこの女性もこの雑誌が欲しいらしい。

「どうぞ」

俺は半歩下がって彼女にその雑誌を譲った。
彼女は、頬を赤く染めてうつむき、

「すみません」

と眼鏡越しに上目遣いで俺を見つめた。
すると突然、

「あーっ、土方さん?土方先輩でしょ!憶えてませんかぁ?
 私ですよ、ほらっ、大学のサークルで2年下の梨花ですよ。岩崎梨花!」

彼女は瞳を輝かせ、堰をきったように話しはじめた。

「梨花?梨花ちゃん!」

「そうですよ。もうっ、先輩、私の事なんてすっかり忘れてたでしょ」

「忘れるわけないじゃないか」

忘れるわけない。
 彼女は、俺がいた軽音部のマスコットのような存在で、
当時、俺は彼女に想いをよせていた男の一人だった。
 しかし、同じバンドの将が彼女を好きになり、俺は奴の手前、
梨花に想いを告げることができなかった。

 将が彼女に「他に好きな人がいます」という理由でふられたのを俺が知ったのは、
卒業間際の春のことであった。

若気の至り

先ほど、恥についての記事を書きましたが、
人には誰しも封印しておきたい過去がありますww

この前、部屋を整理していて、懐かしい(恥ずかしい?)モノを発掘しました。
若い頃に書いた小説です。

日付を見ると、1994年6月と入っています。
記憶を紐解くと、この頃、酷い失恋をして、
その傷ついた心のはけ口としてこの小説を書いたような気がします。

どうしようか迷いましたが、
面白い(小説がじゃなく若い頃の私と今の私の違いが)と思ったので、
掲載してみます。

精神的自慰行為の結晶ですので、
恥ずかしい事この上ないです。
(読み返したら身体中が、かゆくなりましたww)

・・・・・・若さっていったい。

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