丸山徹の裁判員制度徹底解明

司法、法律について実践的知識満載

全体表示

[ リスト ]

判決とメディア報道

あなたに死刑判決が下せるか


 ▽ハイプロファイル・ケース
 

 裁判官は裁判において新聞、テレビなどの報道に左右されず、証拠と証言を客観的に判断し、公平な判断をするとされている。大方の裁判では、そうだろう。しかし、一部の著名な裁判では、そうではないところがある。著名な裁判とは、メディアが大々的に報道し、多くの人は関心を持つ裁判である。これを英語で、High Profile Case(ハイプロファイル・ケース)という。



 日米を問わず著名芸能人が重大犯罪の被告や被害者になった裁判は派手に報道される。芸能人ではなくても連続殺人、猟奇殺人などの特異なケースは、微に入り細に入り、報道される。足利事件の再審裁判のようなシリアスな裁判も、その衝撃性でメディアの関心を喚起する。このような裁判は、司法システムの見直しを迫るほどの大きな影響力があり、真のハイプロファイル・ケースといえるだろう。


 ▽メディアはやりたい放題


 アメリカでも日本でも、裁判官や陪審員(裁判員)に予断を与えるような報道はしてはならないとされている。これを偏見報道というが、アメリカでは事実上、何の規制もない。メディアはやりたい放題、何でも報道する。タブロイド紙は、逮捕、起訴時に、有罪と決めつけたような報道をしたり、公判中も被告人を犯人視するような記事を書いたりする。


 

 名誉棄損で訴えられるというリスクはあるが、リスクを侵しても、どんどん書き、放映する。言論・報道の自由を定めた合衆国憲法修正第1条によって、基本的に権力がメディアの報道を規制することはできないからだ。日本も同様だ。裁判員制度の発足時、メディアは偏見報道の自粛を決めたが、形ばかりの内容で、報道姿勢は、以前と比べて実質的に変わらない。


 ▽ショー化するハイプロファイル・ケース


 新聞やテレビなど一般の報道裁判がワイドショーで取り上げられるとハイプロファイル化がエスカレートする。裁判がショーになるのである。アメリカでは、裁判専門のチャンネルがあり、24時間、裁判の報道をしている。著名裁判の報道では、法廷の中にカメラが入り、実況中継されることもある。日本では、裁判が実況中継されることは当面ありそうにないが、在京テレビを中心に著名裁判を面白おかしく伝えるワイドショーがいくつもあり、それぞれ派手さやスクープを競って、センセーショナルに伝える。


 裁判官は、こうしたメディアの報道をどのように受け止めているのだろうか。先入観を持たないためにあえて事件について新聞記事を読むことや、テレビを見ることを自粛しているのだろうか。否である。ほとんどの裁判官は、自分が担当した裁判の報道を詳細にわたって、綿密にチェックしている。特に新聞はすべてチェックしている。自分の判決がどう評価されているか、気になるからだ。


 ▽裁判官はメディアの報道に関心


 ちなみに事件の報道に最も関心を持っているのは警察官、次に検察官だが、裁判官も彼らに劣らず強い関心を持っている。新聞やテレビで大きく報道される裁判はほんの一握りだ。ほとんどの裁判は、ベタ記事にすらならず、無視される。新聞の一面トップや社会面トップを飾る裁判は、きわめて少なく、そうした裁判に関わることができる裁判官は、ほんの一握り。ハイプロファイル・ケースの裁判に関わることができるのは、一部の「幸運な」裁判官なのである。ハイプロファイル・ケースは、場合によっては、これまでの判例を大きく変える争点を含んでいることもある。さらに、死刑判断や憲法問題が、からんでくれば、いやがうえにも報道はヒートアップし、質、量ともに最大級になる。


 多くの裁判官は、地味な事件の裁判を粛々と行い、ハイプロファイル・ケースを一生に一度も経験することなく退官していく。だからハイプロファイル・ケースにあたった裁判官はメディアを意識して裁判を行い、判決を出すのである。メディアは、だれが判決を書くのか注目する。その過程で、裁判官は、メディアがつくる「ムード」や「世論」に影響を受ける。

 ▽メディアの報道に影響される裁判官


 「裁判官はどんな偏見報道にさらされても、事件を客観的に見る訓練を受けているし、修業も積んでいるので、メディアの報道に惑わされることはない」と多くの裁判官は言うだろう。それが彼らのプロとしてのプライドである。しかし事実は違うのではないか、と私は思う。


 たとえば、闇サイト事件の死刑判決は、「1人殺害は無期懲役」という従来の判例に従えば全員無期懲役である。が、共犯3人のうち2人に死刑判決が言い渡された。これは、死刑を求める「世論」を受けた判決である。「世論」をあおったのはメディアである。判決は、それを意識し、「異例」の死刑判決を出した。結果的に「世論」に屈した形になったが、判決を書いた裁判官は「1人殺害でも死刑判決を出すことはできる」と反論するだろう。


2人殺害で違う判決の理由は?


 ならば、杉並区親子殺害事件で2人を殺した大学生が無期懲役になった一方、あきるの市資産家姉弟殺害事件で2人を殺した主犯が死刑判決を受けたのは、なぜなのか。後者は多額の現金を狙った冷酷無比で計画的な殺人であり、情状は見いだせない。死刑相当である。前者は、侵入盗崩れの犯行で、気付かれたと思い、寝ている老人を殺し、さらに帰宅した息子を殺した。大学生は、ナイフマニアで、老人の心臓を一刺し、ほぼ即死させている。帰宅した息子をやり過ごして逃げることもできたのに、目撃者を残さないという狙いで、殺した。日ごろから、人を刺す訓練をしているような異常な男だ。永山基準を素直に適用すれば、死刑であろう。しかし、「まだ若く、更生の可能性がある」という理由で、無期懲役になった。


 ▽メディアの報道で判決は変わる


 両者は、死刑相当のケースだが、ひとつ違いがある。姉弟殺害事件は、世間の深い同情を誘い、メディアが、姉弟の悲劇性と犯人の残虐性を繰り返し、繰り返し報道した。一方、杉並親子殺害事件は、発生当初は大きく報道されたが、裁判当時は、ほぼ忘れられていた。結果、姉弟殺害事件については死刑を求める世論が醸成され、親子殺害事件については、世論は形成されなかった。


 メディアの報道で、判決が変わる。これは私の個人的印象である。裁判官は絶対に認めないだろうが、先の二例の違いを合理的に説明しようとすれば、その要素を勘案せざるをえない。中津川一家殺害事件も同じだ。メディアが大きく報道していれば、判決は死刑になっていたのではないか。判決当時、同事件は全国的な関心事とならず、ローカルニュース扱いされた。事件は衝撃的だが、メディアが飛び付くような「ドラマ」がなかった。だから派手に報道されることもなかった。これによって、死刑判決を出したくない裁判官が、へ理屈をつけて無期懲役にした、というのが私の受け止め方である。

           5月13日記

           All Rights Reserved Copyrights ©

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!
いまならもらえる!ウィスパーWガード
薄いしモレを防ぐパンティライナー
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
いまならもらえる!ウィスパーうすさら
薄いしモレを防ぐ尿ケアパッド
話題の新製品を10,000名様にプレゼント

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事