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▽ミッテランはいるか 日本に「ミッテラン」はいるだろうか。残念ながら、いない。ミッテランほどの信念と決意を持って死刑問題に取り組み、強力なリーダーシップをとれる政治家は、現在もいないし、過去にも、いなかった。 死刑廃止は、政治的問題である。まず、法律を変えなければならない。そのためには、死刑廃止法案を議会で可決する必要がある。日本の場合は、衆参両院でそれぞれ可決しなければ、法案は法律にならない。衆参両院の過半数を政権与党が握り、与党のリーダーが死刑廃止の強い信念を持つ政治家であるならば、事はかなりスムースに行く。しかし、2010年秋の日本の政治状況を考えれば、それはあり得ない話である。ミッテランのようなカリスマ政治家いれば、彼の下に超党派の議員が集まり、法案は両院で可決されるという可能性もあるが、日本にはミッテランはいないので、これも無理だろう。 ▽亀井氏の場合 このブログで紹介した衆議院議員の亀井静香氏は国会議員有志で構成する「死刑廃止を推進する議員連盟」の会長を務め、死刑反対運動の旗手的存在ではあるが、ミッテランと比肩できるようなビジョンも政治力もない。亀井氏は2009年9月以降、民主党との連立政権で金融・郵政改革担当相の任にあったが、その間、担務外の死刑廃止問題に関する目立った発言・行動はなかった。2010年6月に閣外に去った後も、たいしたことはしていない。現実問題として、国民新党という極小政党のリーダーでは、何もできないのである。 ▽民主党と死刑 現総理の菅直人氏はどうだろう。2010年9月14日の党内選挙で、やっと民主党の代表になったが、改造内閣の首相に就任したとたん、内憂外患にさいなまれ、その地位は安泰ではない。この人の政治歴をたどってみると、死刑について真摯に考えた形跡はない。多分関心もないだろう。そもそも民主党は、死刑を存置するのか、廃止を含めた見直しが必要と考えているのか、はっきりしないのである。 ▽マニフェストは死刑存置? 2009年8月の総選挙で民主党が掲げたマニフェストのなかで、死刑に関する言及は以下の通りである。(1)死刑存廃の国民的議論を行うとともに、終身刑を検討、仮釈放制度の客観化・透明化をはかります。(2)死刑制度については、死刑存置国が先進国中では日本と米国のみであり、EUの加盟条件に死刑廃止があがっているなどの国際的な動向にも注視しながら死刑の存廃問題だけでなく当面の執行停止や死刑の告知、執行方法などをも含めて国会内外で幅広く議論を継続していきます。 マニフェストは死刑廃止を明確にうたっていない。「死刑存廃の国民的議論を行う」という表現から伝わってくるのは、議論はするが、必ずしも実行するわけではないという消極性である。2009年9月に発足した民主党・鳩山内閣の法務大臣になったのは弁護士出身で、年来の死刑廃止論者だった千葉景子氏である。死刑問題を国民的論議の俎上に載せようという民主党の意図がうかがえる人選であった。 ▽千葉景子氏の迷走 2010年6月発足の管内閣で再任された千葉氏は、8月27日、東京拘置所内にある死刑場を、史上初めてメディアに公開した。それに先立つ7月に同拘置所に収監されていた死刑囚2人の執行命令書に署名し、自ら死刑執行に立ちあい、法務省内に外部識者を入れた死刑に関する勉強会を立ち上げた。 歴代の法務大臣が死刑について何ら実質的な問題提起をしなかった中で、千葉氏は行動した。その実質については、さまざまな評価、議論があろうが、死刑廃止論者であったにもかかわらず、死刑執行にゴーサインを出し、執行の現場を見たという行動は、どうみても、異常である。 長年、千葉氏を支持してきた人たちは、裏切られたとの思いで、猛烈に非難しただろう。大臣就任早々、「死刑廃止を推進する議員連盟」から脱退した彼女の「信念」の軽さを挙げるまでもなく、この人の死刑廃止論は、単なる政治的ポーズにすぎなかったのだ。死刑廃止反対を唱える人々からは、彼女の死刑廃止論が、いかに底の浅いものだったかが証明された、という趣旨の批判が渦巻いたが、正鵠を得ている。千葉氏は、敵、味方の双方から政治家としての信念だけではなく、人権活動家としての人生そのものを否定されたに等しい。晩節を汚した、あわれな政治家である。 ▽節操のない、お調子者大臣 千葉氏は、自らを犠牲にすることによって問題提起を図ったともいえるが、その意図は達成されなかった。死刑場の公開は、死刑を国民的議論にするために役立った。しかし、法務大臣が、死刑場に赴き、絞首刑の執行に立ち会うというパフォーマンスは、何の役にも立たなかったばかりか、逆効果であった。死刑制度の現状を追認することを、法務大臣が行動で示したことになるからである。千葉氏は、いつ、死刑賛成に転向したのだろうか。まことに、節操のない、お調子者の政治家である。死刑場公開の交換条件として、法務官僚と検察庁に死刑への立ち会いを迫られ、丸め込まれたとしか思えない。そんなことは絶対、やるべきではなかった。 死刑の勉強会も所詮、法務省内に設置され、構成メンバーの大半は、法務省関係者だから、現状維持という方向が出ることは、最初から決まっている。これでは、死刑に関する国民的論議が巻き起こることは、期待すべくもない。日本のミッテランが、亀井、千葉両氏のレベルだとしたら、国会で死刑存廃についてまともな議論になる可能性は全くない。死刑存廃を議論できる環境がないことが、死刑制度が存置される最大の要因ではないか、というのが私の思いある。 2010年10月17日記 All Rights Reserved Copyrights (C)
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