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平成22年司法統計・刑事事件によれば、地方裁判所の通常第一審における有罪は61585件、一方無罪79件でした。すなわち、日本の第一審有罪率は99.9%(事実上世界一)であり、これは検察官により起訴された事件の1000件に1件しか無罪とならないということを意味します。これに対し、法務省は、「検察官が慎重に選別した事件のみを起訴しており、99.9%の内容は正確であるから問題はない」と主張します。
 
ところで、19世紀のイギリスの歴史学者J.E.アクトンは「権力は腐敗する。絶対的な権力は絶対的に腐敗する」と言っています。これは欧米の政治学の基本原則となっており、欧米の政治制度は「権力は腐敗する」という権力に対する懐疑的態度から成り立っています。独裁政治の方が民主政治よりも効率的なのに、敢えて民主主義が選ばれるのはこの点に理由があります。すなわち、多数の人間が意思を統一して政策を決めるのには時間が必要です。一方、独裁政治は独裁者が一人で意思決定できるので、政策決定の時間は極めて短いのです。橋本大阪市長が「独裁制もやむを得ない」と言っているのは、日本の民主政治の意思決定過程の緩慢さを考えてのことであると思います。しかしながら、いかに効率的でも独裁政治は危険であるというのが歴史的教訓であり、世界の先進各国はこの原則を厳守しています。
 
しかしながら、慎重かつ正確であれば、99.9%の有罪率を正当化でき、検察が事実上有罪を決め得るというのであれば、民主主義の基本原理に反します。これは歴史的教訓から採られた制度であり、歴史的教訓を否定した政治制度を導入するのは極めて危険です。また、捜査当局(検察官及び司法警察員)が請求した逮捕状の発付率は、99,6%、検察官が請求した勾留状の発付率は、99.8%であり、裁判官は原則的に捜査当局の判断を尊重します。にもかかわらず、日本の社会では、逮捕されれば犯罪者視される傾向があります。つまり、これは捜査当局が逮捕状執行すれば犯罪者と同視され、捜査当局が裁判を経ずして事実上犯罪者を決め得ることを意味します。これはマスコミも捜査当局に同調している面があるからですが、起訴や第一審有罪判決を待たずして、逮捕状執行された被疑者が犯罪者と同視され、解雇になったり退学になったり事実上の社会的制裁を受けることも少なくありません。
 
そもそも慎重かつ正確であれば、99.9%の有罪率を正当化でき、検察が事実上有罪を決め得るというのであれば、悪い独裁制に対する良い独裁制の存在を認めることになります。しかしながら、ヒトラーの独裁は失敗したが、誤謬性のない独裁制度ならば認められるというのであれば、何ら歴史的教訓を学んでいないと考えます。三権分立も過度の権力集中を排除する民主主義制度も権力の濫用に対する一般的防止制度だからです。
 
なお、国際人権規約B規約(自由権規約)(International Covenant on Civil and Political Rights)第14条2項は、「刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を有する」と無罪推定の原則を規定しており、日本も国際人権規約B規約を批准している以上、国内的にも同原則が適用されます。実際、日本国憲法第31条は、同「無罪推定原則」を含意しているものと理解されています。しかしながら、有罪率が99.9%ということは、無罪推定原則が事実上形骸化しており、逆に有罪推定原則が機能していると解されます。すなわち、日本は、国際人権規約B規約(自由権規約)第14条2項に違反していると言わざるをえません。
 

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