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       4月27日、東京第五検察審査会は、政治資金規正法(虚偽記載)違反容疑で告発された民主党・小沢一郎幹事長の不起訴処分(嫌疑不十分)に対し、11名の全員一致で「起訴相当」を議決しました(朝日新聞4月28日版第一面)。ここで旧検察審査会制度下では起き得なかった可能性が予想され始めました。
         現行検察審査会制度では、検察審査会の11名中8名による起訴相当議決(検察審査会法39条の5 第1項1号)に対する検察官による再度の不起訴処分が出た場合、検察審査会は当該審査の当否に対する再審査をしなければなりません(検察審査会法41条の2 第1項)。そして、検察審査会の11名中8名による起訴議決が再度為された場合(検察審査会法41条の6 第1項)、裁判所が指定する弁護士が公訴を提起し、当該事件について検察官の職務を行います(検察審査会法41条の9)。この制度は旧検察審査会制度にはありませんでした。すなわち、民意のみに基づき、小沢幹事長が起訴される可能性が出てきた訳です。
          ところで、たとえ民意に基づいて小沢幹事長が起訴されても有罪になるとは限りません。検察審査会員は裁判官や検察官などの法律専門職とは異なり、専門的な法律判断に基づいて起訴議決をしている訳ではありませんし、指定弁護士も強大な捜査権を有する検察組織を背景にしている訳ではなく、十分な証拠収集や事実認定ができるとは限らないからです。ところで、刑事裁判において被告人を有罪とするためには、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要です(最決20071016日・憲法第31条)。ですから、検察審査会の起訴議決により起訴される事件が増えると、裁判所により無罪とされる事件も増える可能性があります。
         もっとも、今後は別の視点から刑事事件の立件に絞りがかけられる可能性があります。例えば、私人が刑事事件を捜査当局に立件させるための端緒には主に告訴と告発がありますが、捜査当局が告訴や告発の受理を渋ることにより、刑事事件の立件に絞りをかける可能性があります。刑事訴訟法によれば、告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員に対して行うことができます(刑事訴訟法241条1項)。また、通説は、記載事実が不明確な告訴・告発、事実が特定されていない告訴・告発又は犯罪が明らかに成立しない告訴・告発等でない限り、検察官・司法警察員が告訴・告発を受理する義務を負うと解します(東京高裁昭和56年5月20日判決・判例タイムズ464号103P同旨)。そして、検察審査会による起訴議決の制度が、現在は形骸化している公務員職権濫用罪に対する準起訴手続(付審判決定は数年に1件の割合)の代替物としての役割を果たすことも期待されます。
    しかしながら、実際には口頭による告訴・告発は受理されませんし、告訴・告発の最低要件充足性は検察官・司法警察員の判断に依存しています。また、実際には、現在でも検察官・司法警察員に告訴・告発を受理させることが難題であることは実務家一般の実感しているところです。日弁連が2005年秋に弁護士に対して実施した告訴不受理問題に関するアンケートによれば、「質問1:これまでの弁護士業務のなかで、警察に告訴をなかなか受理してもらえず、警察の対応に問題を感じた体験がありますか。」に対する回答は、「ある」70.1%(225件)、「ない」24.9%(80件)、「無回答」5%(16件)でした。また、「質問2:a 平成12年以降、告訴をした件数は、何件ですか。(647件)b 同年以降、告訴を拒まれた件数は、何件ですか。(299件・46.2%)c 同年以降、最終的に不受理だった件数は、何件ですか。(202件・31.2%)。ですから、検察審査会による起訴議決制度が有効に機能しても、必ずしも国民の期待通りの結果にはならないかもしれません。

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