はてノ鹽竈

東北地方から日本史を眺めていきます。

全体表示

[ リスト ]

 日本国民に「名前を知っている天皇は?」と質問した場合、おそらくベスト10以内には「神武(じんむ)天皇」も登場するのではないでしょうか。なにしろ、いわゆる“神”ではなく、“人間の天皇”としては初代にあたります。
 斯界では、10代「祟神(すじん)天皇」こそが実在第一号、と考える方が大勢いらっしゃいます。つまり、初代神武から9代開化(かいか)まで、特に2代から9代までの「闕史(けっし)八代」は、皇統の歴史をより古く遡らせるための創作であろう、と言うのです。神武天皇のものとされる事績も、実は祟神天皇の事績の仮託ではないかと言う見解もあります。
 しかし、私は全て“実在した”と考えております。
 理由は実にシンプルで、実在否定の立場の方々が論拠のひとつとされている「人間として不自然な寿命と在位期間」を、「架空の天皇を創作しなかったための矛盾」と考えるからです。
 この考えは、たまたま、宝賀寿男さんにおいても『「神武の東征」の原像(青垣出版)』にてほぼ同じ見解のようでしたので、自信を深めております。
 もちろん、古く遡らせた可能性も高いと思うのですが、仮に架空の天皇を創作するのであれば、もっと自然な寿命なり在位期間になるように創作すればいいはずです。
 しかし、記紀上ではあえてそれをせず、在位年数が70年〜80年はあたりまえ、100年をゆうに超える計算になる天皇も出てしまっております。その皇子は一体何歳から天皇になったんだ?と心配になるほどです。つまり、代数自体を尊重したからそのような不自然さが生じるのでしょう。むしろ書き漏らされた天皇さえいるのでは、と疑いたくなります。
 あるいは、私はこんなことも考えております。
 まだ現在のような一元化された国家の体(てい)が整っていない時代でもありますので、必ずしも神武天皇の直系が皇位継承したとも限らず、仮に途中他の氏族に王座を奪われたとして、その部分の記録が無いが為、その期間も在位年数に含まれてしまったのではないでしょうか。
 あるいは、もっと平和的に、特に記紀等に事績記事を欠く2代「綏靖(すいぜい)天皇」から9代「開化天皇」までの“8代――闕史(けっし)八代――”は、各々個人ではなく、例えば宮――皇居――ごとに襲名された“継承の連続体”を一人の天皇として数えられていた可能性もあるのではないかと推測するのです。
 少しややこしい言い回しになりましたが、次のように考えてみていただきたいのです。
 例えば、「江戸時代」と私達がひとくくりに呼んいる約260年間の時代がありますが、仮に現存する文献が失われてしまったとして、辛うじて口伝によって後世に“徳川将軍の時代”として伝わったとしたならば、はるか未来の研究者に「徳川将軍という人物が約260年も将軍として在位していたというのは、人間の寿命としてあり得ない」と主張する人も出てくるのではないでしょうか、ということです。
 では、10代であるはずの祟神天皇が、さも初代であるかのような“ハツクニシラス”天皇と呼ばれるのはどういうことなのでしょうか。
 おそらくは、神武天皇の統治はせいぜい畿内にとどまっていたものが、祟神天皇の時になって畿内を中心にかなり広範囲な一つの大掛かりな連合――統合?――国家が成立したと思われ、その盟主になったことに因むのではないでしょうか。
 少なくとも「神武天皇と祟神天皇は同一人物であろう」とする考え方については、例えば宝賀さんの前述書にありますが、神武崩御後、皇子間の皇位継承争いに勝利した綏靖が2代目として即位したという記紀の記述によって破綻していると思います。
 何故なら、綏靖に天皇としての事績が記録されていなくても、皇子時代の事績が確認できるならば、結局その実在が裏付けられると言えるからです。

閉じる コメント(14)

最後のあたりは知識がないために感じるところがなかったものの、冒頭から「なるほど…そういうことが記されていて…こんな不自然な点があって…でもこう考えるとイイのだな」と思え、説得力を感じました。まるっきりの真実が記載されたわけではないということだけは共通してますね(笑)もちろん、そうなのでしょうが。

2009/5/23(土) 午後 10:56 [ - ]

顔アイコン

ありがとうございます。
歴史、特に古代史に属する分野は諸説紛糾しておりますので、最終的には自分の感性が頼りかもしれません(笑)。
なるべく日本書紀そのものなどに目を通して自分なりに考えるように心がけております。でないと、どうしてもいろいろ流されてしまいそうで(笑)。

2009/5/23(土) 午後 11:07 今野政明

顔アイコン

私もそれぞれの王は存在したのだと思います。
よく考えると、「古く見せるために捏造した」なんて理由としては一番しょうもないと思いますね(笑)
むしろ『正史』としてなら抹消する場合の方が多かったんじゃないかと思います。力のあった豪族の功績とか…。

2009/5/24(日) 午前 0:55 卯喜多ドラみ

顔アイコン

そう思います。
皇国史観への反動が少々大き過ぎたのでしょうか。どちらかというと「存在を認めたくない」という気持ちが先行しているように感じることがあります。
歴史観と思想は、常に背中合わせにあると感じますので、特に敗者の歴史を探ろうとする私自身も気をつけなければいけないなあ、と自戒しております。

2009/5/24(日) 午前 5:57 今野政明

顔アイコン

>歴史観と思想は、常に背中合わせにあると感じますので、特に敗者の歴史を探ろうとする私自身も気をつけなければいけないなあ、と自戒しております。
人生観にも通ずる一言と受け止めました。
自分の思いこみ・思い違い・・・なんと多いことか。

歴史の本に限りませんが、私もなるべく原典を当たるように心がけてます。読めないときは、最初に読むのは、訳者が客観的な人とか、偏っていない人を選ぶようにしています。あと、適当にまとめない人。それからこの人の話は信用できるな〜と思える人。
私は読み込んではいませんが、師匠は谷川健一氏が好きでした。
信用できる人が信用できるといっている人も・・・信用できます(笑)。変な言い回しをしてすみませんm(_ _)m。

2009/5/24(日) 午前 7:24 [ - ]

顔アイコン

いえいえ、変な言い回しなどととんでもございません。まるで「人民の人民による人民のための政治」みたいで、格言にでもなりそうな勢いです(笑)。
谷川さんは地名研究の権威でいらっしゃいますが、特に東北地方のようなマイナーな歴史を調べようとする場合、下手な歴史の本よりも地名研究の論稿に目を通すほうが有益だと思うことが多々あります。

それにしても「原典を当る」とは、梵字を読めるシュミさんが言うと迫力がありますね(笑)

2009/5/24(日) 午前 7:37 今野政明

顔アイコン

余計なことを言ってしまいました(>_<)
そういう深読みはご勘弁を〜。
私、語学はからっきし、崩し字も読めません。。。
あくまでも姿勢としてとらえていただければと。。。(弱)。。。

梵字に関する最終目標は、「空海」の「吽字義」という文書を読みこなしたいな〜というところです。今はまだ全然手が出せないので、回り道をしています(笑)。 大蔵経を梵字で読むなんて大それた事を考えていたらいくつ命があっても足りません〜。

2009/5/24(日) 午前 7:56 [ - ]

顔アイコン

読みこなせたらかなり飛躍的な発想も浮かびそうですね。

ちなみに、私は何故か梵字が羅列されているTシャツを所有しており――まあ、気に入ったから買い求めたのですが・・・――、ところがなんて書いてあるのかはわかりません。勝手に般若心経でも書いてあるのかな?などと思っておりますが、万が一とんでもないことが書いてあったら恥ずかしいですね(笑)
昔、イギリスで日本語Tシャツが流行っていることのニュースを見ましたが、映像を見るに、どうも日本の週刊誌を無造作にコピーしてプリントしているようで、「山口百恵結婚!」とか、その他私達が見ると思わず笑ってしまう内容が書いてあった記憶があります(笑)
おそらく着ている本人達は意味などわからないし、そんなもの関係ないのでしょうが。

2009/5/24(日) 午前 8:12 今野政明

顔アイコン

高野山に着ていったりしなければ、ほとんど問題ないかと(笑)。
興味がありますので良かったらそのうち見せてくださいませ(^^♪

2009/5/24(日) 午前 9:25 [ - ]

顔アイコン

さすがに高野山に着ていく度胸はありませんね(笑)
高野山どころか、寺社めぐり全般に着ていく度胸もありません(笑)

2009/5/24(日) 午後 6:44 今野政明

僕は「杏仁豆腐」というタトゥを身体に大きく入れて凄みを効かせているアメリカのレスラーの写真を見て笑い死にそうになったことがあります。

2009/5/24(日) 午後 6:57 [ - ]

顔アイコン

いや〜いいですね、ルゴサさん。
それを想像しただけで思わず噴出しましたよ(笑)

2009/5/24(日) 午後 7:09 今野政明

顔アイコン

石碑等の梵字を読むのに役に立つかと以下のページを
印刷して持って歩いていたことがあります。

ですが、読みがわかっても意味はわからないことに気がつきました。。。

http://www1.plala.or.jp/eiji/BONJI.htm

2009/5/25(月) 午後 4:35 [ ロビンソン ]

顔アイコン

そうなんですよね。
考えてみたら、ちゃんと漢字で書いてある写経ですらなかなか意味を解読できないわけですから、梵字の訓(?)がわかったくらいではどうしようもないんですよね。
そこから先、教義なども含めた製作者の心の法則性にもある程度精通しないと・・・遠い道のりですね(笑)。

2009/5/25(月) 午後 6:55 今野政明


.

ブログバナー

検索 検索
今野政明
今野政明
男性 / O型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について

過去の記事一覧

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事